女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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どうもです。ついにChapter5に突入。前のは自分でも分かるぐらいにエグかったかな……。

あ、ちなみにChapter5は意外と早く終わるかもです。理由は……前の話参照。

それでは、Chapter5、47Sz、どうぞ。


Chapter5 想いは『強く』、心は『弱く』
47Sz 俺と幼馴染


「……手間を掛けさせて」

 

 ミヅチは自然の光しかともっていない東京タワーの屋上でそうつぶやいた。まるで、彼女の孤独を現しているかのようで。

 先ほどのキカワの『サクリファイス』により、彼女自身も大ダメージ。さらには煙のようなマナの奔流で視界が途絶え、晴れたころにはロナを含めた10班達が撤退していた。

 すべては、たった一人の女のせい。『生贄』になるはずの人物が、『犠牲』になってしまった。

 

「かわいそうに……でも、いいわ……」

 

 ゆっくり、ミヅチは手を掲げる。

 神の領域へと、手を伸ばすように。

 

 瞬間、呼応するように、東京タワーから音が響き、水あめのように鉄がゆがみ、天へと伸びていく。

 自身が、神だと証明するためか、それとも―――

 

 

=====数分前=====

 

 

「……来たぜ。オッサン」

「あぁ」

 

 ヒカイとジョウトはずっとロナと10班たちの帰還を待っていた。

 通信は効かず、こちらの消費も少しばかりきつく、それ以前に港区のどこかとは言われていないのでただ待っていただけだ。

 そして、日が傾きかける時間に、ようやく車が、急いで戻ってき、ほっとしたジョウトだが、ヒカイはまだ緊張の顔がにじんでいた。

 車が止まり、急いでヒカイは近づき、扉を開ける前に、運転席からナガレが転がるように飛び出る。

 

「はぁ……はぁ……くっ……」

「……ひどい怪我だ……、ジョウト! 急いで医療班を呼んで来い!」

「あ、あぁ!!」

 

 ジョウトは走って医療班を呼びに行く。その間にヒカイは扉をほぼ強引に開け、中を見る。

 

「っ、ヒカイさん! センパイが……!!」

「これは……なんていうことだ……!」

 

 焦った表情でヒカイはロナを見た。

 すでに衣服はボロボロ。出血は酷く、生きているのかと思いたいぐらいの外傷で、絶望した。

 だが、ヒカイは必死に、動かないロナの手を握り、祈った。

 

「頼む……あと少しの辛抱だ……」

 

 

============

 

 

 扉を開ける。中は静まり返っていて、たった一人しかいなかった。

 

「……あぁ、いたのか、つか、一人しかいないのな。『委員長』」

「あ、うん。ちょっと、ね」

 

 小さな、教室半分の部屋に長い机が二個置かれており、壁などにはトロフィーや学校の広告などが貼られている。やっぱり『委員長』がいたのは生徒会室のようだ。

 そこに、手紙を広げ、読んでいた『委員長』を見つけ、呼びかけた『俺』。

 

「つか、案の出しあいって、明日って言ってなかったっけ?」

「そうなんだけどね、ほら、下調べとか大事よね。そうすれば、自分の意見とか……」

「そう言いつつ、クラスのアトラクションも考えていたんだろ」

「……正解」

 

 困ったように『委員長』は笑う。……コイツ、小学校とあんまし変わらないな。『俺』はその辺の椅子に座って手紙を一つとる。内容は、『中止を要請する』と、明らかに我儘な意見だった。

 まぁ、手紙、っつっても、どうやら数は少ない。……あぁ、スローガン、ってか? もう一つの手紙を取って見て、『俺』はそう思った。

 

「あ、これ」

「何だよ?」

 

 そう思って『俺』は『委員長』の横から手紙を見る。スローガン……って、俺の字じゃん!? うわ、恥っず! 俺はあわてて手紙を奪い取り、どこかに投げ捨てた。いや、なんか、恥ずかしいし!

 

「あははっ。変わってないね」

「る、るっせー。自分のが読まれるとは思われるとは思えなかったんだよ」

 

 自分でも分かるぐらいに赤面してたし、『委員長』は笑ってた。くっそ、マジで恥ずい。思い立ったら吉日とかなんとかで、思いついたヤツ書いてみたらまさか読まれるとは思えなかったぞ。

 チクショウ。そう思いつつ立ち上がり、『俺』はさっき投げ捨てた手紙を拾った。ちょっとクシャクシャで、今の『俺』を沸騰させる。

 

「……ま、その、なんだ」

 

 『俺』は手紙のシワを直しつつ、『委員長』に言った。

 

「その、一人で頑張ってる、よな、『委員長』」

 

 何言いだしてんだよ『俺』。でも、今更退く理由も、聞く奴もいないし、少々ヤケクソ気味に言った。

 

「……だから、その、だから、お前独りで抱え込もうとするなって。メンドくなったら、俺を手伝いに呼んでくれよ?」

 

 あぁもう何言ってんだか『俺』。恥ずかしすぎてもう分からないよ。

 それを笑ってるのか、嬉しいのか分からないけど、『委員長』はクスリと笑って、言った。

 

「うん、わかった。ありがと―――」

 

 うわ、やめろ。『俺』はあわてて目を逸らしつつも、言葉を遮る。

 

「バーカ。ぶっちゃけ長い付き合いだし、それに、俺らって友達だろ? 違うか?」

「―――中学時代はあまり会わなかったけどね」

「るっせーな。友達っつう存在は時間なんて関係ないんだよ」

 

 チクショウ、何言いだしているんだよ『俺』は。なんだかもう、めちゃくちゃすぎて、恥ずかしくなって、部屋を出る。

 ……ま、生徒会室が『委員長』一人なら迷惑にはならないよな。実は『俺』はそれを確認しに来ただけだったりするんだけどな。

 『俺』と『委員長』はなんだかんだ言って、幼稚園のころから知り合いで、小学校も六年間中、四年間一緒で、よくしゃべっていた。流石に中学となると、それぞれの中学校の近いところが違くてあんまり話さなかったけど、まさか高校に入って感動の再会をしてしまうなんてな。

 ちなみに『俺』が『委員長』って呼んでるのは、ただ単に小学校の頃はよく『委員長』ポジを任されていたから、『俺』はそれが浸透して来ているのでそう呼んでいた。

 

―――のちに本当の理由を知るんだけどな。

 

 そんな回想をしつつ、『俺』らの部室に戻ってきた。部室は、使われなくなった教室に―――

 

「よーっす。そっちはどう?」

「あ、『部長』。『委員長』一人しかいなかったんで、大丈夫かと思いまスよ」

 

 俺は『部長』にそう告げる。うんうん、と『部長』はうなずいた。そして、物を持ってスタンバイ。

 

「よっし! じゃあ、文化祭まで後少し、ガンバローオー!!」

「オー!!」

 

 

 

 文化祭当日。

 あいにくの雨だったけど、本番は成功。クラスの出し物も受けがよくって一応盛り上がってる。

 そんな中なのに、『俺』は一回目の本番を終えた後、また生徒会室に寄っていた。どうしても感想聞きたくてな。

 で、案の定いた。独りぼっちで。

 

「……よっ、『委員長』。なんだよせっかく盛り上がってるのにこんなところにいて」

「…」

「で、どうだった? 『俺』達の演奏は?」

 

 俺は感想を聞きたくなって『委員長』に近づいて―――

 

 泣いていることに気づいた。

 

「……え? 『委員長』……?」

 

 最初は、ただ単に感動しただけだと『思っていた』

 

 そして、だんだんと『思いたかった』に変わっていく。

 

「……うん。よかったよ……でも、でも……!」

 

 『委員長』はゆっくりと立ち上がる。その顔に、何処か怒りもあった気がする。

 訳が分からない。どうしてそんなことを思ってしまうのか。そんな状態なのに、それ以上に『俺』は自分の頭が理解できていなかった。

 

「ごめん、でも、もう……嫌なの!!」

 

 途端に、『委員長』は生徒会室を飛び出した。

 

「えっ……どういうこと……って、おい!?どこへ行くんだ!」

 

 反応が遅れたけど、『俺』もあわてて追いかける。自分の心がゾワリとする感覚が、同時に出ていた。

 

 人ごみにぶつかる。思わずしりもちをついてしまうものの、すぐに立ち上がって走る。

 どこいった?

 昇降口まで走って行った『俺』は辺りを見渡して、すぐに見つける。

 

 外へと走って行く『委員長』を。

 

「待てよ!?」

 

 『俺』は必死に叫びながら、『委員長』を上履きのまま走って追いかける。

 分かっている。『俺』と『委員長』の脚力だったら追いつくって。

 

 

 でも、違った。

 

 

 

 

 

―――キキーッ!!

 

 

 

 

「あっ!?」

 

 

 

 

―――ドンッ!!

 

 

 

 

 『委員長』の身体が吹き飛ばされる。

―――キカワさんの身体が、貫かれる。

 

 『俺』は慌てて駆け寄る。

―――俺は必死に手を伸ばす。

 

 

「お、おい! おい! しっかりしろ!! おい――――! おい!!」

 

 『俺』は『委員長』の名前を必死に呼ぶ。黙ったまま目をつぶっている『委員長』を起こしたくって、必死に。

 ひどい出血で、ゆすって起こしたら大変なことになるって、頭が真っ白になっているのにそう思って、せめて雨から護ろうとして身体を持ち上げて『俺』の背で雨を防いで、でも、『委員長』の顔は雨で、濡らしていく。

 

「……ッ―――――――!!!!!」

 

 叫んだ。雨の中、必死に。

 

 まだ死んではいない。死んで、そのままにできるものか。

 

 

 

 

 

 でも、結局、『委員長』の意識は、戻らなかった。

 

 

 

 

 

 

 結局、二回も、『委員長』を、助けることは、出来なかったんだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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