女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

50 / 74
どうもです。今回からは急展開ラッシュです。原作再現だからね、しょうがないね。

……いいですか。これは『運命』をできる限り『変える』物語です。そして、人ひとりの限度は存在します。

では、45Sz、どうぞ。


45Sz 想いを継ぐ者達

 所変わって、東京タワー周辺。

 10班の三人が、キリノを護るように陣形を広げていた。

 その周りには、人の亡骸。そして、ドラゴンたち。

 その光景を見ていたのか、キリノは縮こまって震えていた。

 

「…………ッ」

 

 口の中に血の味が広がり、ペッと唾ごと吐き出すキカワ。だが、目はある敵を見据えていた。

 

「………」

「あははは………!! まさか、ここまで抗うなんてねぇ。しぶとさは『S級』って?」

「……やっぱり、恥ずかしい女」

 

 アオイが声の者に怒りに震えた声でそうつぶやく。ナガレも、口をぎゅっと引き縛っていて、怒りと嘆きが同時に出ている表情をしていた。

 

「……許さない。こんなにまでして、あなたはなぜ、そこまで力を求めるの」

「……ふ、くくく、アハハハ!!」

 

 突然、一本の触手がキカワ目がけて飛んでいく。それをキカワはキリノを素早く突き飛ばし、さらには自分の身体をひねらせて避け、カウンターに一発発砲する。

 

「くそ……何であなたがそんなことを……!」

「ナガレさん、そう言ってる暇はないですよ。………もうあなたは、人間なんかじゃない。そして……これ以上あなたの思い通りにはさせない」

「へぇ? この私にそんな口を利くなんてね……? 人も、竜も、S級も! それすらを超えた『力』を持つ私なんかに、ねぇ!!」

 

 周囲にキィィと、静かに、けれど、大きく音を響かせる。マナを凝縮している合図だ。

 それを見て、キカワはもう一度銃弾をリロードして、息をつき、すでに血まみれの両手を見て、ふと、昔の事を思い出していた。

 

『―――だから、お前独りで抱え込もうとするなって。メンドくなったら、俺を手伝いに呼んでくれよ?』

『うん、わかった。ありがと―――』

『バーカ。ぶっちゃけ長い付き合いだし、それに、俺らって友達だろ? 違うか?』

『―――中学時代はあまり会わなかったけどね』

『るっせーな。友達っつう存在は時間なんて関係ないんだよ』

 

「………ゴメンね。結局、お礼も言わずに『亡くなった』からね」

 

 でも、と、キカワはもう一度ぎゅっと銃を握りしめる。血が噴き出、銃を紅く染める。そして、大きく構え、狙いをつける。

 

「……こうして新たな命をもらったからには―――運命すらも変えてみせる!!」

 

 キカワの感情の高ぶりに呼応して、マナが銃に伝わる。ひどく、シンクロしたような感覚に見舞われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおあああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 国分寺の工場、ブレインルーム。そこで13班は帝竜、『トリニトロ』と混戦を繰り広げていた。

 トリニトロ。中央に点在する、泥団子のように表面は溶けて、そこから二つの長い首の竜の頭が存在する、この国分寺の帝竜だ。動いてはいない、というより、後ろに張り付いている紅いひし形の機械につけられているのか、動けないのだろうが、逆に言えば攻撃に専念してしまえばいい、攻撃と防御の優れた個体なのかもしれない。

 ロナが大きく吼え、銃を乱射。全段命中するものの、効いていないと言わんばかりに一頭が炎弾を掃出し、ロナにぶつける。

 とっさに両腕でガードするものの、今までの疲労がたまっているのか弾かれ、地面を転がる。受け身は取るもの、息は上がっていた。

 さらにもう一度、今度はもう一頭が炎弾を掃出し、一直線に飛ばす。

 

「ちっ、コード防御、FIR……!!」

 

 そこにジョウトがとっさに『ファイアブレイク』を起動し、ロナへの炎ダメージを軽減する。衝突したロナだが、今度はそこまで体勢は崩さずにすんだ。

 

「っ、ハァ……ハァ……」

 

 ジョウトもマナの消費が激しかったのか、片膝をついて息をあげていた。

 急いでのドラゴン退治にSKYとの戦闘。ほとんど休憩もなく戦闘を続けてきた彼らにとって、この状況はまさにピンチだった。

 だが―――

 

「でぇぇりゃあ!!」

 

 ヒカイがトリニトロの一頭の顎に向かってアッパーを繰り出し、怯ませる。その隙を狙われたもう一頭がヒカイを弾き飛ばそうとして炎弾を掃出そうとして―――

 

「させるか!!」

 

 ロナが隙を狙うように銃弾を一点に乱射、『ニーブレイク』で一瞬だが遅らせる。その隙をうまく利用して一度下がるヒカイだが、すぐに大きく飛び上がり、急降下かかと落としを浴びせる。

 

「ふぅぅぅ……!!」

 

 さらにそこから何度も蹴り、止めにサマーソルトキックを浴びせて後退する『崩伏連脚』で大ダメージを与える。

 だが、これでも動きを止めないらしく、二頭は一斉に炎を口に貯める。その攻撃を『感じた』ロナだが、ジョウトの様態から無理はできない。

 だったら―――!!

 

 とっさの判断でロナはヒカイを突き飛ばし、自身のあるだけのマナを使って『デコイミラー』を形成。

 だが、疲労の溜まった状態での防御壁は脆く、触れただけで破壊され、ロナの退避も間に合わずに吹き飛ばされる。

 

「がっ……!」

「チッ、ロナ!」

 

 地面を二度、三度と跳ね、大きくせき込むロナにあわてて駆け寄るジョウト。無事と伝えようとして、大きく吐血する。

 途端にグラリと意識が揺らぐ。滲む視界に、紅く染まっている自分の両手を見て、ロナはぞっと震えた。

 無意識に思考が恐怖に傾く。もう、動きたくなんか、ない。

 でも、死にたくは―――

 

 瞬間。自分の精神が薄まって来たのか、遠く、だが、都内での戦闘が分かるぐらいに『感覚』が敏感になっていく。

 

 その『感覚』で感じたのは、必死に誰かが『竜』と戦っている衝撃。

 

 その『竜』は強大で、戦っている人物たちは勝ち目があるのかと思いたいぐらいに、強い。

 

 でも、その人物たちは退かなかった。

 

 その中には、彼女もいた―――

 

『ごめん、でも、もう……嫌なの!!』

 

―――おい!? どこへ行くんだ!

 

 過去の救えなかった記憶が、流れ込んでいく。無意識に、ロナは立ち上がっていた。

 

 あんな思いも、もう―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰も救えない、そんなのは、嫌だ!!!

 

 

 

 

「……二人とも、数秒だけ、頑張ってくれ……!!」

 

 マナを集中。残りあるだけの、自分の戦闘には支障がないぐらいのマナをかき集め、二人の動きを『同調』できるぐらいのマナを形成。

 

「『無我を形成せし精命(マナフローター)』……! 受け取れ! 二人とも!!」

 

 それらを拡散させ、ヒカイとジョウトを援護させる。飛ばされたマナは二人に憑りつき、スゥ、っと吸い込まれていく。

 

「ありがたい。……いくぞ!!」

 

 ヒカイが大きく踏み込み、トリニトロへと一直線に向かう。その間にジョウトも同じくマナを具現化、キューブ状の物に変更させる。

 

「コード介入、frz……!!」

 

『TROY:アイス』。それをトリニトロに放り投げ、ハッキングを出来やすい状態にをさせる。それを見たヒカイは思いっきり踏み込んだ。

 

「動きを止めろ、『ハンマーヘッド』!!」

 

 トリニトロの一頭を片腕でつかみ、マナを込めた頭突きで怯ませる。先ほどの『崩伏連脚』のおかげでトリニトロの耐性はある程度薄まり、そして、強烈な一撃は相手の動きを止めるのには十分な攻撃となった。

 だが、これで終わらせるわけがない。勢いに乗ったヒカイはさらに、一度手を離して着地、大きく一歩を踏込、地面へ向かって拳を振り下ろす―――!

 

「痛みを裂け、『ランドクラッシャー』!!」

 

 地面に振動が走り、それに連結するかのようにマナもトリニトロに飛ばし、さらに突き上げる。

 今までたまった『D深度』がそのマナに応じるかのように弾けだし、内部からトリニトロを攻撃する。

 さらにそれに乗ったジョウトがハッキングを仕掛け、動きを一瞬だけ止めさせる。そしてマナをパソコンのマウス状に形成。

 

「コード改変、POW……!!」

 

 それを投げ飛ばし、弱体化を図る『ロストパワー.x』を炸裂させ、ロナを見る。

 

「……行けよ。もしトドメブッさせなかったとしても、仕掛けた『(トロイ)』が追撃してくれる」

「あぁ……! 終わらせる!!」

 

 ロナはジョウトに大きくうなずき、トリニトロを一直線に見る。ヒカイの『ハンマーヘッド』の効力がまだ続いているのを確認し、右手をトリニトロに合わせるように突き出す。

 マナを集中、ロナの全身からマナがあふれ出す。それを右手に溜める。

 ドクンと、身体が悲鳴を上げるように震え、頭痛も走ったが、ロナはそれを耐える。

 あれだけの援護をされて、自分が出来ないなんて、そんなの嫌だ。

 

「『集めし精命の呼応(コンセントレート)』、完了」

 

 さらに、目をつぶって自分のマナを右手に集中。集中させ過ぎたマナはロナの右手を凍らせようとして青いオーラがあふれ出す。

 だが、ロナはそれをうまく制御して、自身の手に込める。

 その間にトリニトロは活動を再開するように首を大きく動かし、そして、ロナを見据え、もう一度ブレスを仕掛けようとしたが、それよりも早く、ロナは目を開けて、敵を一直線に見る。

 

「集中せしはその冷徹、呼びかけに応じし者達よ、本来の力を映し出せ―――」

 

 左手を合わせ、発射するように標準を定め、腰を落とす。

 

 終わりだ、トリニトロ―――

 

「『冷徹なる氷の滅鎚(アイシクルエデン)限界点突破(リミットオーバー)』!!!」

 

 抑えきれなかったように、右手から氷が暴れ出し、敵へと一直線に突き進む。トリニトロもそれに応戦し、ブレスをぶつけたが、『ロストパワー.x』が響いたのか、氷を解かせず。

 氷刃が無数に、トリニトロの身体を貫いた。

 

「オ、オオオオ……」

 

 どちらかが雄叫びを挙げたのかは分からない。だが、そいつらは『消滅』した。

 

「…………っつう……」

 

 それを見た後、ロナは全身の緊張が解かれるように地面に倒れ込みかけた、が、ジョウトがそれを支える。ロナは少々弱っていたが、そこまで致命的、ではなさそうだ。

 

「は、はは、悪い、ジョウト」

「………お疲れ」

 

 珍しく、皮肉も飛ばさずにジョウトは素直にそう言った。そんなことは久しぶりに見たものだからロナは一瞬驚いた顔をしたものの、でも、「……そっちもな」と、ごまかすようにそう言った。

 そんな光景を見て、ヒカイはフッ、と笑い、二人に近づいた。

 

「……よくやった。流石だ。二人とも」

「へっ、一番お疲れなのはオッサンじゃねぇの?」

「なぁに、若い者たちにはまだ負けないさ」

「はは、こりゃ一本取られた。なぁ、ジョウ―――」

 

 ト、と呼びかけようとしたとき、ロナはゾワリとした感覚が襲った。

 ……そう言えば、あいつ、倒したのか……?

 

 そう思った直後、中央の赤いオブジェクトが光り出した。

 

「なっ……! いや、あれは……!!」

 

 アイツ……爆発させるつもりか……!?

 

 感動もつかの間、ジョウトもヒカイも声に気づいて中央を見る。

 ゴゴゴゴ、とまるで崩壊させようとする音がこのブレインルームを響かせる。

 

 逃げようにも、恐らくは、この工場全体を爆発させようとしている―――

 

 逃げ道は、なかった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




トリニトロの説明こんなんでよかったのかな……。でも、どこからどう見ても泥団子にドラゴンの頭がある、と言う説明しかできない。
作者の文章力がよくわかる話だな(遠い目

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。