女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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お待たせしましたかもしれません。

……いくらなんでもお気に入り8件は早すぎですよ。エクゾースト使っちゃったじゃないですか(苦笑

会話部分が原作通りじゃないのは仕様です。ごめんなさい。

では、4Szどうぞ!!


4Sz 鼓動

「……はぁッ…はぁッ……」

 

 ま、まだ慣れない……。ほんの少し斬った程度なのにまだ慣れない。

 

 相手はマモノとはいえ、生きている。それを自分の手で終わらせるのは間違っていると思う。

 …いや、そんな考えは甘いな。人間だれしも、特に漁業の人とかは生き物を殺している。それは生きるために、仕方なくやっていることだ。それを責める人なんてほとんどいないだろう。

 俺だってそうだ。生き物を殺してできたモノで今まで生きている。自分が生きるために、それは絶対、一生同じだ。

 

 絶対生きるために、殺すのはしかたないのかもしれない。俺だって、『生きたい』から。

 

「でりゃああ!!!」

 

 目を大きく見開いて、思いっきり短剣を振り下ろす。手ごたえあり。マモノが断末魔を上げて、花弁が散るように消えていく。死体が出ないのが救いだろう。死体なんてみたら絶対恐怖している。

 

「…いい覚悟だ」

「はぁッ……あはは…ヒカイさんのおかげですよ」

 

 そうだよ。全部ヒカイさんのおかげだ。こうしてジョウトとヒカイさんと肩を並べて戦っているのもヒカイさんの言葉のおかげだ。ヒカイさんがいなかったら今の俺はここにはいない。

 

「確かにその言葉は私が送った物だ。だが、それを一瞬で覚悟に変えたのはロナの強さだ。恐らく、私がどんなにたってもその強さは手に入れられんだろう」

 

 …めちゃくちゃ照れる。やめてくださいしんでしまいます。熱的な意味で。

 

「おいオッサン。さっさと行こうぜ。こいつが変な意味で死ぬ」

 

 人の心を読むな貴様っ!!!…いや、でもナイスフォロー。さすが影の支配者。

 

「なぁに。急ぐ様子もあるまい?まだジョウトも実戦に慣れてない筈だ。それに……君の力もちゃんと見せてもらってない」

 

 あー…確かに。ずっとチャクラム一本で戦ってるもんな。ハッカーってチャクラム投げるだけの職じゃないだろうな。と言ったら俺も今までナイフ一本で戦っているから人の事言えない。

 

「ふん。こいつら相手に使うまでもねぇよ。…いろいろもったいねぇしな」

 

 奥の手は最後までとっておく…か。まぁ、確かに自分の能力(スキル)を温存するのは悪くないな。いざってときに出せないと大ピンチだし。

 

「…ま、強敵と遭遇したと思ったら遠慮なく使ってもらえると私やロナも戦いやすくなる。基本的に私が前衛で敵を抑え、ロナがそこに刺し込みをしてジョウトが援護をする。これさえ守ってくれると私も戦いやすいさ」

 

 ………そうは言うけど、俺はどこか疑問に思うことがある。絶対俺のコレだ。

 ナイフ一本で戦ってるけど、他にも何かあった気がする。…何で何かあった気がするんだ?わけわからん。思い出せないし、まぁいいか。

 

 と、なんだかんだで、俺らは多分、いや絶対に、初めて会ったとは思えない連携プレイで次々倒していく。単純な話だ。ヒカイさんが守り、ジョウトが援護、そして俺が隙を突く。やることが単純だからこそなのかもしれない。それかヒカイさんの戦闘スキルがプロだから俺らも安心してるのかもしれない。

 

 …恐怖が治ったわけではない。今でも、マモノを倒すとどことなく空しくなるし震えもする。でも、俺は『生きたい』から戦うんだ。ここで死ねない。死ぬ気はない!

 

 そして三階。シャッターだらけでいろいろ遠回りさせられたけど、何とか無事に試験官の二人の元に来た。

 ………あれ、なんで二人何だろ。つか、なんで違和感あるんだろうな。

 

「…お、きましたねぇ候補生!!」

「他の連中は先に行ったが、まぁ戦闘スキルの良さからプラマイゼロってところか」

 

 どこで見ていたのかガトウさんは俺らを評価する。その辺の監視カメラで見てたのかな?……つっこみはないほうがいいよな。絶対。

 ガトウさんの横でメモを取る仕草をする……えーっと、キカワさん……だよな。キカワさん。…キカワさんはその仕草をしながら、俺を見ていた。

 …あー…そういやずっとへたれこんでいたっけ。心配してくれてたのかな。俺は大丈夫です。といった意味のサインを片手で送る。それを見た、のか分からないけど、キカワさんは笑顔で手を振ってくれた。なんだか心配させちゃったかな…。

 そんな俺を見て、ガトウさんに訊ねるヒカイさん。

 

「ところで、試験はまだありますかな?」

「そうだな…じゃあ奥へいけ。そこで試験官が……」

 

 ピピピピピ………。

 どこからか何かを知らせる音がした。すぐにガトウさんが応答する。

 

「何だ」

 

 しばしの沈黙。ガトウさんは聞いているようにうなずく。何の会話しているのかは分からない。一体何が……

 

 

 瞬間。俺の感覚がマヒしたようにビクンと跳ね上がった。どこからか殺気がやってきたように。

 その殺気………違う。これは殺気なんかじゃない。…………これは……………『攻撃』………?

 それにこの殺気……さっきまで戦ったマモノとは比にならない。マモノよりも何倍も危険な存在を知らせるようだ。

 

 

「チッ……試験官が手こずってちゃ候補生に示しがつかないだろうが」

 

 ガトウさんはイラつきながら上を見る。やっぱり、上に何かがいるんだろうな…。俺はなんとなくそう察した。

 

「どうかされましたか?」

「ん?…そうだな。お前らもちょっと来い。少し面白いもんが見れるかもしれんぞ?」

 

 ガトウさんは俺らにイタズラを仕掛けるような顔で俺らを見る。

 ………ガトウさんのことだし、マモノ関係なんだろ。

 

 …………違う。これは『マモノ』じゃない。これは――――――。

 

「え?ガトウさん。この子たちを連れて行くんですか?」

「ったり前だろよ。こいつらにもちゃんとしてもらわなくちゃいけねぇ。オレらだけで日本全国のマモノ狩れるか?」

「だろうねー。……ほら、いくよ。この状態のガトウさんでは拒否権はないからね」

 

 そう言ってキカワさんはガトウさんと共に階段を上がって行く。残されたのは俺らだけになった。

 

 ………やっぱり危険な存在なんだろうな。……そりゃあそうだよ。俺が思っているワードが正しいなら、ソイツはまじで危険だ。

 やっぱり行きたくない。マモノ以上の危険ならなおさらだ。汗の感覚が首筋をつづる。

 でもよ、俺だけ退くわけにもいかないだろうよ…!!

 

「…俺らも行くべきだよ。このまま…放っておくわけにもいかない」

 

 …もう退けないな。俺から言い出したんだから。でも、退いたところで予想はつかない。だったら予想がつく、『前』に行くしかない。

 俺から言い出したのが驚いたのか、ジョウトとヒカイさんは俺の顔を見た。だが、すぐにヒカイさんはうなずいた。俺もうなずき返す。ジョウトのアクションがまだだ。俺はとっさに言う。

 

「ジョウトは?行かないのか?」

「……フン。拒否権はないだろうよ」

 

 その声は見栄を張っているようにも聞こえたけど、覚悟もある。俺は無言でうなずいて階段を駆け上がって行く。

 

 階段を駆け上がり、通路を走ってガトウさんチームと合流する。ナガレさんは絶賛ガトウさんに説教されていたようだが、足音を聞いたとたんにガトウさんは説教をやめて俺らの方に向いた。

 

「おう!喜べ候補生!今回はサービスだ!折角だから本場の仕事に同行させてやる!!」

「え、本当ですかガトウさん!?」

 

 ……まぁ、ナガレさんが驚くのも無理はねぇよな。俺らは候補生だし、こんなところで死なれたらいろいろ困るもんな…………。

 

 …って言ったところで、俺の腕はすごい震えてたし、正直泣きたかった。そりゃ、怖いに決まってる。今度ばかりは死ぬかもしれない。

 そしたら、他の候補生はどうなるんだよ。あのすげぇ怖かった初戦なのに拍手くれたらしく、そして行ってくれたアイツらだって、死ぬのかもしれない。

 俺は責任とれるのか?答えは、『だったら最小限に喰い止める』しかない。どことなく、確信していたんだ。俺一人じゃ怖い。でも、俺のチームだったら怖くない。

 杞憂なんかじゃない。心からそう思ってる。

 

「ナガレさんいきましょう。人数は多い方がいいですよ。そうしたら生存率は高くなりますよ!」

「わ、分かりましたよ………」

 

 キガワさんに促されてナガレさんは渋々うなずいた。ガトウさんは俺らを見る。俺は、いや、俺らかな。俺らは無言でうなずいた。

 

 この扉の先、なんとなく予想はつく。

 

 どんなものでも砕きそうな牙、どんなものでも吹き飛ばしそうな翼、どんなものでも傷つかなそうな鱗、そして、どんなものでも恐怖に追い込むような容姿。

 

 実際に見たわけじゃない。俺の『感覚』がそう言っていただけだ。確証なんてないけど、でも確信している。

 

「さぁ、いくぞ候補生!強敵のお出ましだ!!」

 

 ガトウさんは扉を開けて中へ侵入していく。そこにナガレさん、キガワさん、そして俺らが続く。

 

「ほう…!これは……」

「おいおい嘘だろ……!?」

 

 二人は驚いていた。俺も驚いている。心臓もすげぇ分かりやすく動いている。全身が震えて、汗が出る。見るだけで逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

 

 でも、逃げられない。俺がみんなを危険な場所に誘導したんだ。責任は取らなくちゃ人間じゃないだろ。

 

「……ドラゴン……」

 

 俺は扉の先のマモノ、いや、『竜』を一点に見ていた――――――。

 

 そして、竜が獲物を見つけたように大きく吠えた。

 

 俺らと、竜。どちらかが生き残る戦争が始まり、

 

 

 

 そしてこの物語の開幕を大きく告げたのも、ここが始まりだったのかもしれない――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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