女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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どうもです!……ついつい初代に夢中になって小説作業に手つかずだったんですけど、何とかかけました。

……あー……でもこれ書いたらちょっと疲れましたね。……今回から工場へと突入。そして彼らとの競争。

では、41Sz、どうぞ!


41Sz 課せられた試験

「……うわ……」

 

 途端に暑くなった建物内で俺達は一瞬動きを止めた。

 ……間違いなく、工場だ。でも……下に溶岩がある……。

 ……熱源反応、これと間違えたんじゃないか?いや、ツッコミはいいや。面倒だし。

 

「……砂漠と来て、次は溶岩込の工場かよ……マジでダレるっつーの……」

「……でも、進まなくちゃいけない。そうだろ?ジョウト」

「ま、そうだな。……しっかし、マジでダレるな」

 

 文句をブータレ言いつつも俺達は先へ進む。……見た限り、工場の設備らしいのはなさそうだ。どちらかと言えば、セメント工場、ってところか。

 ……あー……見てるだけで暑いのに、確かにこれは消費がすごいことになるかもな……。流石に、こっちには行ってない……かな?

 

「……む?あれは……」

「……オブジェクト?」

 

 正方形が何個か重ねられて作られたソレは、本当に、ロビーとかでありそうなオブジェクトだった。なんか、奇抜だけど……。

 

『……いえ。先ほどの熱反応は恐らく、その装置が発するモノ―――』

「やっぱり来てたな。13班」

 

 声をかけられ、ミイナの言葉も一時的に止まり、俺達は振り向いた。……四人。タケハヤさんと、ネコさんと、ダイゴさん。それに……フウヤ。

 ……やっぱり、アイテルさんの言った通りだな。

 ……よくわからないけど、俺達を試すために。

 

「しかし、かの13班でも、尾行のプロには気づけなかったか?」

「……フウヤのことですか?」

「何だ、気づいていたのかよ」

「いえ……この中じゃ、それしか考えられないですし。……いや、それ以前に一体いつから……」

 

 ……あっ、もしかして……

 

「……地下道のときから……?」

「ビンゴ。いやー。一瞬バレると思ってひやひやしたわ~」

 

 フウヤがおだてた声で俺に、おそらく挑発した。流石にそんな挑発には乗らないし、気づけなかったことにはちょっと悔しいけど、それだけだ。

 でもそれだとおかしい―――

 

「……待てよ。じゃあ何で俺達が―――」

「ハイ、雑談はそこまで。とにかく、ここだと都合がいい。邪魔されずに済むからな」

「……何を、ですか?タケハヤさん……」

「簡単に言やぁ……『テスト』だ」

 

 ……テスト?……一体、何の……

 

「お前がアイテルの探してる相手なのか確かめておきたいんだよ」

「……どういうことですか?」

「ま、詳しくは言えないね」

 

 ……拒否権は……なさそう、か……?

 でも……今は時間が一秒でも欲しい。……はっきり言って、付き合ってる暇はない。今は帝竜を倒すのが先決だ。そんなの、後でいい。

 

「……詳しく言えないなら、俺、いや、俺達は付き合えません。今は俺達の都合があるので」

「そう言うと思った。お前らはこの工場の帝竜を倒しに来たんだろ。だが俺達は……それを邪魔するかもな、ってことだ」

「え……何で邪魔するんですか!?」

「あぁ、先に言っとくが、竜の味方をするわけじゃあねぇ。単なるテストさ。命がけの、な」

「………なんでそこまでして、俺達の今の状態でテストをするんですか。……今は、時間がない―――」

 

 そこで、俺は慌てて口をふさいだ。……今迂闊に「都庁からいろんな人が姿を消している」なんて言ったら、さらに面倒なことになりそうだからだ。

 うまいことに、口をふさいだのかそんな怪しい雰囲気を察せずにタケハヤさんは話を続ける。

 

「ま、そんな時間の無いロナ達13班のためにも、非常に単純。お互い、帝竜のもとに無事たどりつけるか……そんなテストだ」

「……さすがに、罠とかはないですよね」

「お。やる気か。もちろん。俺達もここから同時にスタートする。だから、汚ぇ罠なんぞは仕掛けてねぇぜ?」

「……分かりました」

 

 ……じゃあ、いいかな。……拒否権は……ないはずだし。

 

「おいロナ。いいのか。こんなわけのわからない話に乗るなど……」

「……早めに帝竜の元へたどり着く。……それだけですよ。要は俺達が早くたどり着けばいいだけの話です」

「……それも、そうだな」

「ジョウトも、乗るよな?」

「……ま、しかたねぇか」

「ハッ。話が早くて助かるねぇ。お利口さんだな。ロナは」

 

 タケハヤさんは大層愉快そうにそう言った。……俺も、黙ってうなずく。……ここで拒否したとしても、多分意味ないしな……。

 

「言っとくが、遊びじゃねぇ。本気でかからねーとお前らは死ぬ。……そーゆーことだ」

「分かってます。……テスト、ってことは、遊びではない」

「……始めるか」

「そだね!」

「仕方ねぇか……」

「ふむ……私も納得できんが……ま、付き合ってやってもいい」

 

 上からタケハヤさん、俺、ダイゴさん、ネコさん、ジョウト、ヒカイさんの順に話す。

 ……どうやら、お互い承認したみたい……だな。

 

「んじゃ、よーい……」

「……ちょっと待て。……この感覚……」

 

 フウヤが合図を出そうとしたが、俺は思わずオブジェクトを見る。全身が何かを感知するような感覚、まさか……

 

 そう思った直後、そのオブジェクトが光り出し、止んだころには一体の、まるで機械で作られたドラゴンが現れ出た。

 

「……ハッ。邪魔しやがって……散りな!!」

 

 突然の出来事だったが、驚かずにタケハヤさんは素早く長剣を取り出し、斬る。

 早い。俺は思わずそう思ってしまうほどだったが、すぐに臨戦態勢を取る。マナを右手に込め、素早く『エアスピアー』を放つ。一瞬怯んだ様子のドラゴン。さらにヒカイさんとダイゴさんがほぼ同時に胴体にアッパーを放つ。

 ドラゴンは妙な音を立てながら、ガチャンと、地面に伏す。

 

「……なるほど。もしかしたら、このオブジェクトからドラゴンが出るかもしれねぇってことか」

 

 ジョウトはじっと見ながらそういう。

 ……あれ、タケハヤさんたちは?

 

 俺は思わず辺りを見渡したあと……あっ、もうスタートしてる!?

 

「マジか……!? 二人とも、俺たちも急ぎましょう!!」

 

 俺達は別の道を走る。……まぁ、筆記じゃないなら、いいけどさ。俺は基本的に筆記は無理だし。……けど、なんだってこんなときに……?

 ……いや、今は……いいか。とにかく、SKYよりかは早くいかないと!

 

 その途中。通信がかかったのでとりあえず入れてみることに。……キリノからだ。

 

『……ミイナから話は聞いたよ。とりあえず、そのSKYのテストに付き合ってくれないかな?……もしかしたら、今の事件の真相を知っているのかもしれない』

「……そうだね。……そっちの調子はどうなんだ?」

 

 俺は走りつつも、気になったことを言ってみる。答えてくれたのはキカワさんだ。

 

『こっちは目標ロストしちゃった。……港区探してみて、いなかったらポイント切り替える予定だよ。……無理はダメだよ。ロナ?』

「分かってますよ。……そっちも注意してください」

『あ!それと!』

「アオイ?」

『途中で見つけた問屋さんの倉庫でお菓子を大量にゲットしました!!』

 

 なにやってんのぉ!?俺は盛大にコケかけそうになりつつも体勢をなんとか立て直す。……こっちがある意味急いでるってのにもかかわらず、なんでそんなことするかなぁ?

 そんな俺の思考を無視するように、アオイは続けた。

 

『ふふっ、都庁のみんなが戻ったら、パーティしましょうね!』

 

 ……その言葉に、どこか心に針が刺さったように痛んだ。

 ……分からないけど、分からないけど………でも、確かに、アオイの言うとおりだ。

 

「……うん。……必ず。アオイも、もちろん、ナガレさんもキカワさんも、キリノも、俺達も入れて………ね」

『はいっ!では、お互いに頑張りましょう!』

「あぁ!」

 

 そうだな。……たまにはパーティしたいよな!……そういや、俺は前はパーティに参加できなかったんだっけ。……あー……本当に、やってみたいもんだな。

 ……大丈夫。みんな必ず帰ってくる。絶対に。俺が悲観的になってちゃ、ダメだろ。

 

「……って、おい!あれ!」

「あっ!?もうあんなところまで……!」

 

 ジョウトの声で俺達はさらに急ぐ。……その先は大きな扉。まさか……エレベーター……か?

 いや、考えてる暇はねぇ!!とにかく、急げ!!!

 必死に走って、俺達、そして、SKYはほぼ同時に入ってスイッチを入れるという事態発生。……すっげぇな俺達。

 ……とにかく、俺達はこのエレベーターがどこかにたどり着くまで一緒になっていた。……けど、なんでこんなことをしてるんだろうか。……今、協力すべき事態じゃないのか……?

 

『今、人類は一つになって協力すべき……それを阻害する者は排除すべきだと思うの』

 

「……違う」

「何が違うって?」

 

 ……あぁ、タケハヤさんに聞かれてたのか。……ここからだと少し時間かかるし……質問して、いいよな?

 

「……あの、タケハヤさん。……このテスト、何故やるんですか?」

「さァ……。その質問に答える前に逆にたずねよう。……ロナ。お前はなんで戦ってる?」

「俺……?」

 

 ……何で戦ってるって、そんなの……。

 ……あ……でも……確か元凶は転生初日。ムラクモの試験の時からだ。……となると……

 

「…下手をすれば、ある意味成り行きなのかも」

「……クッ、はははははッ!そう言いきっちまうなら世話ねぇや」

「でも、今は違いますよ?……二人が戦ってる。だから、俺も戦う。……そして、取り戻したい。この世界を」

「へぇ。今は大層なモン抱え込んでいるようだな?」

「……普通、今の状態じゃそうなんじゃないんですか?」

「……ま、俺もある意味そうかもな」

「じゃあもう一度質問です。……なんでタケハヤさんはこんなテストをしているんですか?」

「あぁ。俺がなんでこんなコトしてるのかって?」

 

 そりゃ、わざわざ渋谷離れて俺達を試す、なんてこと言うし。気になるよ。それに……アイテルさんがさっき言った言葉も気になる。

 タケハヤさんはかなりハッキリした言葉でこう告げた。

 

「ま、一言でいや、惚れた女のためだな」

「……アイテルさんのことですか?」

「……ま、そういうことだな。人類のために命張るつもりなんてさらさらねェけどよ」

「いや……立派だと思いますよ。冗談なしで。本当に」

 

 ……確かに、誰か、たった一人のために頑張るのも、理由になる。

 俺も………前はそうだった気がする。覚えてはいないけど。

 

「ハッ……そう面と言われちゃ、嘘とはとれねぇな」

「……タケハヤさんにとって、アイテルさんはそういう存在なんですね」

「……アイツのためなら、死んでみるのも悪くねぇ。確かに、俺にとっちゃ、アイテルはそういう存在だ」

「そうなんですね」

 

 ……いや、さすがに死んでみる、なんてことは思ったことはない。……思ったことは、ない…………よな………?

 ………胸の突っかかりが気になる。……ここまで、欠けた記憶がもどかしいって感じたのは久々、いや、初めてなのかもしれない―――

 

「……お前にもいつかそういった恋人ができるといいな?」

「はは……まさかぁ……」

「……ま、その点じゃ、俺はお前らよりも幸せモノなのかもな。命かけられるような相手がいるんだからよ」

「……そうかも、しれませんね。……俺には、命かけるような覚悟なんて……一生出来ないかもしれません」

「そうかもな」

 

 ……面と言われたら、結構否定したくなるな。……でも、俺にはそこまでの覚悟がなくたって、それ相応の覚悟はあるつもりだ。……そうじゃなかったら、俺は今までやって来れなかったはずだ。

 そんな考えにふけっている俺を無視して独り言を始めるように、タケハヤさんはそっとつぶやく。

 

「そんな女がさ……苦しんでるのを知っちまった」

「………」

「『星を守る』だがなんだかしらねぇが、アイツはそのためだけに生きているんだ……長い間一人ぼっちでよ」

「一人で………何でそこまで……?」

「……『狩る者』を探している。気が遠くなるような時間をつかってよ……」

「……『狩る者』? ……タケハヤさんじゃないんですか……?」

「……違う。俺達まがい物じゃなくって……お前らだよ」

「俺達……?」

 

 俺達が………『狩る者』………? そんな……まさか……。

 

「お前らがアイツを救えるのか……それを見極めなきゃ、俺は死にきれねぇ」

 

 ……違う。……そんな言葉、間違ってる………。

 

「……死ぬのは、アイテルさんをさらに悲しませます。……部外者の俺が言うのもなんですけど、少なからず、今まで救っているのは、タケハヤさんだとおもいます!!」

「………ロナ………」

 

 タケハヤさんが驚いた表情をする。

 エレベーターがゆっくりと止まる。

 ゆっくり、タケハヤさんが口を開く。

 

「……そうやって揺らがすつもりだろうが、俺はそんなの効かねぇよ。……でも、ありがとよ―――」

 

 

 

 エレベーターを降りた俺達。………遠くで聞いていたはずのヒカイさんとジョウトも恐らく信じられない言葉を聞いたけど、でも、あんまり顔には出てない。……そりゃ、今は敵同士だけどさ。でも、今までの言葉は絶対嘘ではない筈だ。

 

「さてと……オシャベリはここまでだ。ここからが本番だぜ」

「……はい」

「……ネコ、ダイゴ、フウヤ、いくぞ!」

「ヒカイさん、ジョウト。いこう!」

 

 

 俺達は進む。

 タケハヤさんはテストで俺達を試すため。

 俺はそのテストをクリアして帝竜を倒すため。

 

 道は交わらず、絡まる。

 でも、いつかほどけて、今度は交わる。

 本当に、確証はなかったけど、俺はそんな風に思っていた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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