女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
わずか半年以下で40話とちょっぴり書き上げると言う、自分にしてはこれまでにないほどの更新スピードと化してます。本気を出せばこうなるんですね!
と、雑談はここまでで、39Sz、どうぞ!
「………でかい」
どことなく明るいその地下道で、妨害しているのにもかかわらず邪魔をしている帝竜を見て、改めてその大きさに絶句した。
『コール13班』
今回はミイナがやってくれるらしい。となると、10班の方はミロクか。大丈夫、だよなうん。
『目の前の巨大な物体が地下帝竜の胴体です』
「うん、見ればわかる」
『今は寝ているみたいですけど、起こしたら大変ですので、近づかないように』
「迂闊に近づきたくもないよ」
余計な消費はしたくない。起きなければ幸いだ。俺達はそのまま、道が塞がれているので横道から突入。……うわっ、やっぱり、ここも地下栽培みたいなところになってた。
マモノも、どうやら強くなっているみたいだ。かといって、今の俺達の敵ではないはずだよな。
「……うっし。いくか」
「うん!」
「もちろん」
ジョウトの合図とともに、俺達は中へと歩む。
何か、とても嫌な感じがしていたけど……でも、それはすぐになくなってしまう。
杞憂、だろう。いつもの俺の悪い癖だ。ずっとずっと不安で、仲間がいるのに、不安になってしまう。……抱え込んでも、仕方のないことなのにな。
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「『スコルピオ』ッ!」
「鋭き連拳、『釣瓶マッハ』!!」
嵐のように吹きすさぶヒカイさんの拳、そして、急所を狙いつけた俺の一突きが次々とマモノを蹴散らしていく。
「―――オオオ!!」
その騒ぎを聞きつけたのか、ドラゴン、アノマルスがやってくる。が、俺達は冷静に状況を分析し、戦闘を継続する。
「『タランテラ』ッ!!」
麻痺性のある短剣技で動きを一時的に封じる。そこにヒカイさんが走り込んだ。
「でやっ!!」
大きく殴り飛ばし、怯ませる。……うん、ヒカイさんもレベルアップしてる。もちろん、俺だって強くなってるよなっ!
「コード介入、HACK……go!」
さらにジョウトがハッキング。さらに動きを止めて、こっちに流れを作る。
「コード吸収、MAN……start!」
すかさずジョウトが『スケイプゴート.x』を発動して、相手のマナを吸い取りつつダメージを与える。その隙に俺はマナを増幅させ、攻撃準備をする―――
「『
周囲一帯を凍らすようなマナを拡散させてさらに追撃。動きを止めたコイツに、止めをヒカイさんが―――!
「でぇぇい!!!」
氷ごと壊すような強烈な一撃で、ドラゴンを討伐する。
……だいぶ俺達も強くなったな。って思うぐらいに連携も取れるようになったし、スキルもだいぶ幅が広くなってる気がする。この調子なら、大丈夫そうかな?
っと、ここで通信だ。……だれだろ?
『センパーイ!そっちは順調ですかー!?』
「そんなに大きな声を出さなくても……うん。俺達は大丈夫だけど、そっちが心配」
『もう、センパイは心配性なんですから』
「お前だよアオイ!!」
ったく……こっちはただでさえきつい状況なのに、すっげーのんきなんだからよ。……毎度のことだけど、それがいいのかもね。
「で、そっちのほうはどうなんだ?」
『うん。今追っているけど、微弱すぎてとらえきれないんだ。少し休憩してから、もう一度探索しようと思う』
「分かったよキリノ。無理はしないでよ」
そう言って俺達は一度通信を切る。……あっち本当に大丈夫かなぁ……。いろいろと……。
「……けど、なんで帝竜一体がそんな微弱すぎるんだ?んなのあったのかよ」
「確かにな。しかも、それだと少しおかしいことがある」
おかしいこと?ヒカイさんの言葉に俺は耳を傾ける。
「本来、帝竜はある一部の区間に住み、こちらから接触しない限りは動かない筈だ。だが、それ以外の影響化は見られず。私たちは四体も見てきてはいるが、いずれも何らかの形で変わっていることが多い」
ちょうど、私たちが今いる地下道のようにな。と付け加える。
……なるほど。確かに今の今まで俺達は帝竜と戦うためにダンジョンを潜り抜けている。のにも関わらずそれの予兆?みたいな……あぁ、見た目かな。それすらも見受けられない。今まで前科がありすぎるから、こうしないとおかしい。
「意外と、どこかいいところ見つからねぇかなーって探しているんじゃねぇの?」
「まっさかぁ……あれから一か月もかかってるんだよジョウト。可能性はないと思うけどな」
「ま、微弱なまでに弱いってことだから必死に逃げてるのかもなぁ?」
クッ、それはねぇよ。思わず笑っちまったじゃねぇか。ったく、見境ない言い方しやがって……。
俺達は歩きながらも、今回の不可解な現象について意見を出し合っていた。
「……けど、確か、今の一説によると、『マモノが先導し、帝竜が何処かへと向かわせている』というパターンが有効と言われている」
「けれど、それだと俺達が経験した『ダンジョンを作ってその場所にいる』という説は崩れるんですかね?」
「だとよ、んだったら、今いるデカ竜どうなんだよ。移動しない方がおかしくねぇか?」
「いや、あれは明かりが苦手と言う明確な弱点が存在しているからだろう。迂闊な移動は避けたいのでは?」
「……あっ、だったら、渋谷はどうなんですかね?」
「あ」
「……あー……そういや、そうかもな。確かにあそこもおかしなことになってる。そこに目を付ける、か」
「だったら、通信入れて連絡してみますか?」
「いいんじゃねぇの?とりあえず意見を入れるだけ入れときゃいいだろ」
そうだな。俺はとりあえずトランシーバーに手をかけて、通信を入れようとして……
「………いや、やめよう。今の状況でSKYのみんなを余計に刺激したくない」
「だが、誘拐も兼ねてるかもしれんぞ?」
「そんなことはないはずです。現に、マモノをこっそり入れるなんて、もしタケハヤさんだとしてもありえないと思います。……それに……」
「それに?」
……それに、なんだろうな?
なんか、ダメだと思う。いろいろと……。今は、いない気がして……。
「……いえ。今の今まで手を出してこなかったので、大丈夫かと」
「………なぜそこまで信用できる?ロナ」
「……あくまでも同じ人間だからですよ。今いがみ合ってる訳にも……」
っ?視線……?俺は思わず後ろを振り返った。……誰もいないけど、誰かいそうな気がする。
……いや、気のせい……か?
「どうした?」
「……気のせい、みたいですね。なんでもありません」
そういって俺は先に歩く。
先はまだまだ長そうだな。……早くお天道様がみたいよ。
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「……あっぶねぇ。バレるところだったぜ」
同時刻、少し離れたところの影でフウヤは息をついていた。ロナが元々何らかの形でさまざまな、恐らく、殺気だったりするものを感知できると思われる変な力があると確信していたからだ。
「……とにかく、どうやら国分寺方面で合ってたらしいな。さてさて、連絡するかねっと」
そう言ってフウヤはケータイを取り出し、誰かに連絡。ディスプレイには『オカン(ダイゴさん)』と書かれていた。
何回かのコール音のあと、やっとダイゴが出る。
『……こちらダイゴ。どうだ?』
「オレの予想通り、あいつらは国分寺方面向かうみてぇだぜ」
『そうか。……タケハヤに代わる』
しばらく無音が続き、すぐにタケハヤに切り替わる。
『………おう。俺だ。とりあえず、お前の予想は合ってたみてぇだな』
「ま、ちょいと疑り深い性格なんでね。つーわけで……今から行くんですかね?」
『…………あぁ。そろそろ確かめねぇとな』
「はいよっと。んじゃ、オレはこのまま尾行して三人の合流を待ちますよっと」
そういってフウヤは通信を切り、ふぅ、と短めの息をつく。
「……オレはなんも間違ってないよな―――」
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「……やーっと、太陽の光だな」
ほんとだ。……あー……今まで暗闇の中にいたから結構まぶしく感じるな。
プロのミュージシャンの人が舞台へ上がる感じもこうなのだろうか。……なんか、興味深いな。
「……む?」
「どうしました?ヒカイさん」
「……砂だ」
砂?…………マジだ。……待って、階段上がって行くたびに多くなってないか……?
「……まさか……」
そう思ったより早く、外に出る。
ひどくまぶしく感じる太陽。そして、反射するように輝いている砂。まるで、何か影響を喰らったように砂に巻き込まれた辺り一帯。
それは、かの『鳥取砂丘』を思い出させるような―――
国分寺が、砂漠地帯と化していた―――