女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
私も原作と同等、いや、それ以上にこの『ルシェかえ!』を最後まで作り上げていきたいなとは思っています。どうか最後まで楽しみにしてください!
それでは、chapter4、37Sz、どうぞ!
37Sz 消え去る住民
某時刻、アメリカのある場所にて―――
「止めだ!いくぞっ!!」
「了解!!」
男女二人が、華麗なコンビネーションでドラゴン―――大きさからして、帝竜だろう―――を圧倒。男が手りゅう弾を投げ、それを女がマナを込めた一閃を放って大爆発させる。
爆発が止んだ時、帝竜は地に伏せていた。
「……ふふっ!やったね!」
「あぁ。とりあえずこれで6匹目だ。あとは1匹」
サングラスを頭にかけた男性が帝竜の生体サンプルを採取しながらも、ある方向を見た。さまざまな人が集まっている。おそらく、この一組の仲間なのだろう。
「とりあえず今回も楽しませてもらった。……だが!あと一体!油断せずに、次の指示を待つぞ。……そして、指示を受けた後は……
戦場を、楽しもうぜ!!」
「「「サーイエッサー!!」」」
某時刻、日本の都庁にて。
……
………あっれ?夢か?意識はもうろうとしてるし、しかもここ……廊下?
……つか、ここって……?見覚えあるような……?
「……ッ」
あっ!?おい!?どこいくんだ!?俺は誰かを追いかけて、必死になってこの場所を抜け出して、駐輪場へ―――
一瞬にして背景が切り替わって、雨が降っているのに、ある場所へと必死に漕いで、そして―――
「……うっ」
……目が覚めた。……静かな、いつもの部屋。
今のって……一体?……全身から汗ふき出してるし、きっと嫌な記憶だった……のか?
「……さっぱりしねぇ。……外の空気を吸ってこよう」
しょうがないのでニット帽かぶって外に出る。廊下に出て、歩いて―――
―――ポーン……ポーン……
……なんだこの音……ふあ……途端に、眠気が……。
「……寝よ」
結局戻って寝ることに。……なんか、記憶も薄れていくような。
「……あれ……あそこにいるのって……いや、気のせいか……」
眠い。眠いから確認とらずに寝ることにした。……はぁ、本当に眠いな。
……ムニャ……。
…
……
………
…………
『……もう、身体は持たない……そうなんですね?』
『……あぁ』
あ?
『……いいんです。……私なんて―――』
意識が反転する。気づいた時には、ポッドの中。水の中に入っているのに、冷たくも、息苦しくも感じない。
…ここ、どこだ……
『……実験はもう少しで成功する……』
声は途中で聞こえなくなり、泡の弾ける音が耳に響く。泡で視界が急激に狭くなっていく。
……さっきの人って……
『……そろそろ、目が覚めますかね』
『あぁ……だが……っ!』
ガシャン!何も見えない暗闇の中で、誰かが暴れているような音が炸裂する。何が起こっているんだ?目を開けようにも、開けられない。
つか……何なんだよこれ……
…………
………
……
…
……う……っ……。また……夢かよ……。
「……三度寝プラス悪夢とか、マジでついてねぇ……寝よう」
さすがにもう悪夢はみねぇだろ。あー眠い。寝ようっと。
……
………
…………
「……畜生眠れねぇ。……もう一回外でよ」
もう一回ニット帽をかぶって扉をガチャリと開け、外を確認。………あーっ!?朝日出てる!?チクショウ!何でこんなことになっているんだよォ!!
「あー……マジなほうで今日はついてねぇ。寝たい。でも眠くない。くそっ!もう一回ポンポンなってくれねぇかなぁ!?」
と、突然子供が泣きながら横切る。
……あれ?一般人……だよな?
……どうなってやがる?確か、このムラクモ居住区って一般人基本立ち入り禁止だろ。なのに……警備、どうなってんだ……?
「……嫌な予感しかしねぇ」
俺も気になってさまざまな場所を回る。居住区、医務室、自衛隊駐屯区と。
そして、何気なく屋上。……誰もいなそうだな。いや、そうだけど。
でも……結構住人が少なくなっている気がする。気のせいなんかじゃなくって、本当に―――
「……ん?」
って、あれは………マモノ……?タヌキっぽいマモノだ……。どうしてここに……?
「……ポン?」
ちっ、こっちに気づいた!……やっべ、今手ぶらだ……だけど……!
「ポンポコ!!」
「『
さっさと倒すに限る!俺は『フリーズ』を発動させて突っ込んできたマモノに氷をぶつけて動きを一旦止め……って!こっち来やがった!
「ポンッ!」
「いつっ!」
っ、なんだよこいつの攻撃!?マモノと比べ物にならねぇし……しかも、この一撃……あの帝竜に似ている……!?
「いや、……気にしない方がいいか……『
とっさに下がりながらも、雷を撃ちこんでさらに動きを止める。怯んだ隙に……!
「だぁりゃああ!!」
さらに蹴り飛ばして上空へ吹き飛ばす。……よし、この隙に……!
「『
オトリを設置。その間にマナを増幅。威力を高める……!
「ポンポーコッ!!」
マモノがオトリを破壊する。……よし、作戦通り……!
俺の目の前にやってきたマモノに、両手を突き出し、マナを放出―――!
「『
『フレイム』とは比べ物にならない炎術がマモノを焼きつくし、吹き飛ばす。
…………でも、結構疲れるな……。火力を高めるためにかなりマナを使うし、集中力も必要。……でも、その分一撃は別枠だよな。……今回初めてだしたけど。
「……やったよな?」
とりあえず気絶程度らしい。……いや、だって気になるしな。いろいろと。俺は動かなくなったマモノをヒョイっ……あっ重っ!?両手で運んで何とかもてる重さだったのが救いだな。
……こいつを研究室に運んどくか。何か分かるかもしれないし。
……多くの住人が行方不明になった事件の解決のきっかけになるはずだ。
「……もうちょっと焼けばこいつ美味しく食べられるかな?」
……腹減った。
======数分後======
「うん……分かった。こっちで調べてみるよ」
「ありがとうございます」
研究員の一人にマモノを預け、とりあえず俺は部屋に戻ろうとして振り返る。……あっと。ジョウトだ。
「……はぁ。ここにいたのかよアホ娘」
「るっせーな。開口一番それかよ」
……てか、何でジョウトがここに? 俺は疑問に思ってけど、すぐにジョウトが言う。
「……会議室集合、だってよ」
「……どういうこと?」
「いや、どうやら通信が来たらしいな。アメリカからよ」
「アメリカ……?……なんだってこんな時に……」
そう思いながら、俺達は会議室へ。……と思ったのか!
「……腹減ったからなんかもらってくる」
「お前……」
マナの消費のしすぎで腹ペコだった俺はジョウトとは別れて何か食い物もらいに。腹減ったんだよ!マジで!
======そしてまた数分後======
「……すんません。遅れました」
「はぁ……本来なら20分早く通信をつなぐ予定だったんだけど、ロナのせいで時間かかっちゃったよ……」
「……すみま……あれ?」
……なんか、おかしいな?……何か、違和感がある。
……えーっと、お偉いさんも一部欠けてるな。いや、そうじゃなくって!……10班のみなさんも無事。なんか違和感あるけど……。うん?
「……いや、まぁ、いいか……というか、なんで俺を?」
「君にもちゃんと聞いてほしくてね。……それでは、通信を繋いでください!」
「はっ!」
通信を接続。パッとモニターが切り替わって、アメリカの……お偉いさんがいる部屋が写る。……あれ?なんか、違和感あるけど……気のせいか?
「……」
いや、まぁ、いいか……。俺は黙って話を聞くことにした。金髪の、多分アメリカ大統領の人が話した。
『お互い無事で何よりだ。……まずはこちらから朗報を聞かせよう』
朗報?……まさか?
『我々は昨夜、六匹目の帝竜を討伐し終えた。確認されている限り、我が国に残る帝竜は一匹―――その一匹を討伐できれば、そちらへの戦力派遣も現実的になる』
マジか!?そう思った俺と同時に、周囲から歓喜の声が上がる。……早いな。よっぽど、そっちの戦力はすごいに違いない―――
『いくよ!―――』
『オーライ!』
…?今の声は……?……うーん、声は聞こえたけど、姿までは写ってない。……何だろ、今のって。
『そちらの状況はどうだね?』
あー……こっちか。……キリノが一歩前へ出て、説明した。
……あれ?キリノ?何で……?
……そっか。違和感の正体は―――
「総長の日暈が不在のため、私が代わりに報告させていただきます」
……ナツメまでいなくなっていた。なるほど。違和感の正体はこれか。
……何か、嫌な予感がする。けど……今は、目の前のことに集中するしかない。
『不在とは?体調でも崩しているのかね?』
「いえ、少々トラブルがありまして……」
『ふむ。まぁいい。先に報告を聞かせてもらおう』
「はい。現在我々ムラクモは帝竜三匹の討伐に成功。しかし、ドラゴンに対し優勢と言い切るにはまだ不安要素が多い状態です……」
『なるほど。かぎられた戦力でよくやっているようだ。うちの研究チーフによれば、帝竜はその地方で最も人口の多いエリアに七匹で群れを構成しているらしい』
なっ……七匹も!?……頭がクラクラしてきた……。あんな奴らがあと四体もいる……だって?……不安すぎる……。
「七匹も……」
『あまり悲観的にならないでくれ。すでに七匹の内三匹を討伐できている、ということでもある』
うーん……そうは言っても、でもあと四体か……。大丈夫……だよな?
いや……今更不安になってる訳にもいかねぇよな……。どうせ、倒さなくちゃいけない存在だ。……神様に誓っちゃったもんな。全滅させるまで来ないでくださいって。今更、帰りたいいえねぇよ。
『我々も最後の帝竜を討伐でき次第すぐに援軍を送る準備を始める。それまではなんとか現有戦力で踏ん張ってもらいたい』
「……最善を尽くします」
ま、今の今まで何とかやって来れた。最善を尽くすしか、ねぇよな。……とにかく、これで通信終わりかな?と思っていたが、予想は外れた。
『我々の対ドラゴン研究チーフ―――エメルから一つ質問があるそうだ。一度代わろう』
……エメル?もしかして……
画面上に、一人の若い女性が現れる。
あれ?エメルってこんなひとだっけ?あれ?
『……単刀直入に聞く。ナツメがこの場にいない理由は?』
……ん?何でちょっと目を逸らしたんだ……?いや、方向からして……俺の方か?
「それが……こちらでも把握できていないのです。実は本日未明、都庁内半数の市民や自衛隊たちが忽然と姿を消しました。そしてナツメさんも……その行方不明者の中に含まれているんです」
な……半数!?いくらなんでもそんなにいるのかよ!?今でも信用できなかった。くそ……いくらなんでも多すぎる……!
『……帝竜の影響か、あるいは……』
……いや、さすがに帝竜の影響ではないはずだ。……確証の一つとしては、俺の『感覚』。最近鈍ってるけど、ドラゴンが近くに来れば察知できるはずだ。
でも、それが今回ない。眠ってると感知できない、もしくは、かなり遠くにいる。と思われる。だけど、それもありえない。だったら、俺らだってそれの影響喰らうはずだ。……くそっ、分からねぇ。
『……いや、今はあらゆる可能性を考慮にいれ、速やかな事態の解決を図ってくれ。彼女と私が共有しているデータは歴史を超えた、非常に貴重なものだ。失われてはかなわん』
……どういうことだ?歴史を超えた―――?
そう思っているより早く、大統領のほうが声をかける。
『我々はこれから最後の帝竜討伐に向けて作戦を立てる。作戦の成功次第、また連絡しよう。その時まで、日本が無事であることを祈る』
『……ミュラー大統領。もう一つ、いいですか?』
『ぬ?……あぁ。構わんが……』
まだ通信?……どういうことだろ一体?
『……そこの白髪の女性と話したい。すまないが、全員席を外してくれ』
俺と一対一?………どういうことだろうか?
『……エメル。理由は?』
『……うまくは言えない。すまない』
……それなのに、なんで俺と?そう思っていたけど、次々とこの場にいた全員が外へ出る。……残ったのはヒカイさんとジョウト。
「……二人も外で待っててくれ」
「……分かった」
「あぁ」
何も言わずに二人が外へ。部屋には俺だけ、そして、モニター越しには、エメルさんしかいなかった。
「……俺と対談……って、どういうことですか?」
『……単刀直入にいう。……お前は、『ルシェ族』ではないか?』
「っ!?……はい……」
証拠に俺は、一旦辺りを見渡して誰もいないことを確認した後、ニット帽を取り外す。耳がピョコンと出てくる。
『……やはり、か。……どこで生まれたか、覚えているか?』
「いや……全く」
だって、俺転生してきたし……。でも、言えない。……それ以前に、どうやって……
あっ、そう言えば……何で目が覚めたら車の中だったよな?何で?今思えばおかしいシチュエーションだったよな。
そう思っていたけど、その間にエメルさんが会話を続けた。
『なるほど………。アイツはもう、完成していたのか?』
「な、何のことですか?」
『……お前はルシェについて、知っているか?』
「いえ……。俺がルシェだってことだけです。それ以外は全く……」
『………もしかしたら、お前が竜を狩る兵器なるかもしれん。……少し教えよう。ルシェと言うのは―――』
「いや、別にいいですよ。……俺がルシェ族で、みんなとは違う。それだけで十分ですよ。……今知るべきことじゃない。だから、今は俺達の東京を、仲間たちと取り戻す。…ルシェについて知るのは、後でいいと思う」
『……そうか。……分かった。……通信を切る。検討を祈るぞ。ルシェの民よ―――』
プツリと、通信が切れた。
……ルシェを知るのは、後でいい。つか、知ったところで何も変わらないよ。絶対。
今はヒカイさんがいて、ジョウトがいて、その仲間と共に日本を奪還する。
今は、これだけを知っていればいいだろ……?