女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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どうもです!久々に完全オリジナル展開の話を書かせていただきます。

ただ、以前と違って0.5はつかず、そのまま35Szとして導入。外伝であって、『ルシェかえ!』での正史、といった立場ですね。

では、35Sz、どうぞ!


35Sz 月が起こした存在

「よいしょっと。設置完了。ミロク。見えてる?」

『バッチリ。残りはあと一台。……次の設置エリアに進んでくれ!』

「了解!」

 

 三台目の探知機を設置した俺達は前へと進んでいく。

 不思議と、肝試し気分ではなくなってきているし、恐怖も薄れている。テンションも好調。絶対、あの人のおかげだな。

 

「……」

 

 でも、ちょっと気がかりなのはジョウトだ。……アイツ、またどこか遠くを見るような目をしていて、やっぱり、集中できていないような。

 

「……ちょっと休憩、いいですか?」

「ロナ?」

「……疲れちゃって…」

 

 嘘だけど。でも、気がかりも気がかりだし。……でもヒカイさんのことだしなぁ……休ませてくれないかも。

 

「……確かに、今までの連戦と現象から、疲れてきているのだろう。ここで休憩しようか。……幸い、へ、変なのは見えないからな」

「……人魂ですか?」

 

―――ゴチン!

 

「いった!?」

「……休んでおいとけ」

「へ、へい」

 

 痛い……容赦ねぇヒカイさん。俺は頭を抑えつつ(ついでにこっそり『キュア』をかけ)その場に座る。……異常なまでに、フロワロも、墓石もない。ちょっと広いぐらいの屋上。

 ふと、今座っている場所についていた、ちょっとした塔のようになっている看板を見つける。

 えーっと……読めるところは……『四 口糸 完』……空白の部分は崩れていて読めず、読めた部分もどこか壊れていて完全には読めていない。が、「完」の字は縦に細長くなっているので、恐らく「院」と読める。で、ここは「四ツ谷」なので、「口」は「谷」、その間は「ツ」だと思う。「糸」……は、読めない。細いから、いとへんだとおもうけど。

 ……ん?ジョウトがそのでっぱりにある扉に近づいてる……。

 

「おいジョウト……どこ行く気だ?」

 

 俺はジョウトに近づきながら質問する。ヒカイさんもやってくる。

 

「……開いてるかどうかだ」

「いや、今は開いてないんじゃ……」

「開いていたんならどうすんだよ」

「……開けてみろよ」

「はいよっと」

 

 ガチャッ。音はしたが、開いていない様子。

 

「………っかしいな……基本ココは開いているはずだが」

「そーなのかー?」

「まぁ、な。……過去の教訓だから、今では違うのかもな」

「………気になるのか?ジョウト」

「ヒカイさん?」

 

 俺は、何故かナックルを取り付けているヒカイさんを見て、なんとなく察したけど、でも……いや、それって器物損壊じゃ……。

 そう思っている時、ジョウトは扉に下がりつつも、答えた。

 

「……まぁ確かに気になるわな。今の現象じゃ……な」

「……そうか。……下がってろ」

「え……でも……」

「もしかしたら、要救助者がいるかもしれないだろ?」

 

 ……確かに。器物損壊は……ドラゴンやマモノのせい、ってことで!俺しーらねっと。俺はうなずいて、納得する。言い訳はできるしな。

 

「……うりゃっ!」

 

 扉を殴打、もう一発、さらに一発。ドアノブが壊れ、ロックが外れる。……どうやらスライド式の扉だったらしい。その扉はゆっくりと、ひとりでに開く。……まるでホラーだな。

 

「……ロナ。休んでいてもいいぞ。私とジョウトが見てくる」

「いえ。俺も興味あるのでついていきますよ」

「……興味だけではだめだ。……覚悟も必要だぞ」

「……分かりました」

 

 覚悟……か。

 確かに、この中は地獄のように、先が見えない。どうなっているのか分からない。マモノの気配はざっと感じた限りはなさそうだ。

 ……そういや、さっきのゾンビたちは妙な気配だけはしなかったな。だからか。腕とかが振るえなかったわけは。けど……精神的にはきつかった。正直に。

 そして……この中も、恐らく……

 

「……行くぜ」

 

 珍しくジョウトが先行して入る。

 

『13班。どこ行くんだ?』

「救助者探し」

 

 通信越しに、先にジョウトが言う。……なんか、珍しいな。ジョウトが仕切るなんて。こういうのは面倒くさがってやらないたちっぽいんだけど。

 

『……確かに、な。了解。暗いから気をつけろよ』

 

 意外と早くミロクが決断。……それだけ言うと、一旦通信は切れる。……にしても、深いなぁ……本当に、底が無いんじゃないかって思いたいぐらいに。

 

「よっと」

 

 ジョウトは懐中電灯をどこからともなく取り出してスイッチオン。これで前は明るくなったぞ。安心できるな。

 ……でも、中は異常に静まり返っている。いや、当たり前だけど。……やばい。いくらなんでも雰囲気出しすぎだろ。

 中に進むと、冷たい床、あまり光が刺し込まない通路、閉じていて中が分からない扉、もしかしたら昼間にドラゴンが襲来したせいか、全くついていない電灯があった。そのせいで、どんどん確証へと、変わっていく。

 ここは、病院だ。

 ……そう言えば、ジョウト言ってたな。『その女の子は病弱で』って。

 病弱……となると、病院に住んでいたことが考えられる。で、ジョウトはその女の子と接触。理由は分からないけど。

 ……つか、ジョウトはどこに行ってんだ?窓も開いていない通路をただひたすら進んで、俺にはちょっと怖い。……扉を開ける勇気もない。

 

「……ここ、だな」

 

 ……ある扉の前に立った。……「503」号室。……誰か、いるのか?

 

「……なんでだろうな。……もう、ここにはいねぇってのに、今の現象を見てると、そんなことはねぇって思ってるオレがいる」

「………」

「この病室と、オレは、切っても切れねぇ縁なんだな……改めてそう思っちまったよ」

 

 ……ここにジョウトはいたのかな。俺はそう思っていた。……暗い中、かろうじて見える番号の下の名前を確認する。……無し。しばらく誰も使ってなかったっぽいな。

 

「……」

 

 手をかけ、開けるジョウト。……異臭はしなかった。いや、整理されている……外の空気が重苦しいと感じるぐらいに、どことなく心地よい空気がやってきた気がする。

 俺らは中に入り、確認する。電気は何故かつけなかった。

 ベットには誰もいない。………あるのは、手紙と、ぬいぐるみだけ。

 ちょっとだけ光が入っている病室で、そのぬいぐるみは、言ってはなんだけど、結構雑だった。白い布地に、頭と胴体だけ。こけし?

 

「ジョウト、そのぬいぐるみ………何がモデルなんだろうな?」

「見てわからねぇのかよ?」

「………ネコ?」

「イヌだよ」

「何でわかるのさ?」

「げ、………ね、ネコだよな、うん」

 

 嘘つけ。盛大にイヌっつったろ。盛大に。

 

「……しかし、まだこんな風になってるとは思えなかった。……あの時にタイムスリップした感じだなぁ?オッサ―――」

「ジョウト、これ君宛てじゃないか?」

 

 そう言って渡したのは、手紙。ジョウトはライトを照らしながら手紙を確認する。そこで俺もちょっと見てみた。………律儀に、「ジョウ君」へ。って書いてるな。つまり、ジョウトか。

 ……つながった。いろいろと。

 ここは「病院」。「あの子」はここにいた。そして「ジョウト」もいる。で、ぬいぐるみを作ったのは「ジョウト」だ。そして、「数年前」。

 間違いない。ジョウトの言葉嘘偽りなく、真実だ。数年前に「あの子」は亡くなった。

 

 ――――――

 

「……ん?」

 

 俺は思わず、周囲を見渡す。……誰一人、いないよな……?

 ……そんな馬鹿な。いや、冗談じゃない。でも―――

 

 どこかで、聞いたことがある気がする……?

 

 ――――――

 

 声はまだ続く。いや、本当に声なのか? 気になった俺は、二人の様子を一旦確認する。

 ……二人は、気づいていないらしい。ということは、気づいているのは俺だけか?

 

 ……でも、少なくても……悪い予感のするやつではない。不思議な感覚だ。

 

 ……いや、多分気のせいかもしれない。でも―――

 

「…………ヒカイさん。俺達は外で見張りしてましょうか?」

「うん?どうしてだい?」

「……いやなんとなくですよ。なんとなく」

 

 手紙をゆっくり、読ませてあげたいからな。俺はそれを隠しながらも、ゆっくりうなずきながら行こうとする。……察したのか、ヒカイさんも黙って病室を後にする。

 

「……………」

 

======視点切り替え======

 

「………」

 

 あれから何分したか分からない。でも、結構な時間たったと思われる。

 ベッドに座って、手紙をそっと、ウエストポーチに入れる。

 

「………そう言うことは、生きているうちに言えってんだよ……」

 

 悲しみにも、そして、照れにも聞こえる言葉をそっと言って、この病室を後にする―――

 

 

「―――フフフッ」

 

「…え?」

 

 

 誰かの声が聞こえて、思わず振り返るジョウト。

 ……そこには、一人の女の子、どことなく、髪が少し短めで、耳が上についていない、数年前のロナのように思える子がいた。

 

「……悪霊?」

「ひどいよジョウ君。……でも、悪霊だね。今は」

「………」

 

 言葉を失っていた。まさか、会えるとは思えていなかったからだ。

 先ほどの、あの人の現象を見てから、もしかしたら、と思っていて、でも、そんなのはおかしいと思っていた。

 けれど、まさかこうして会えるとは、思ってもみなかった。

 

「………」

「うん、久しぶり。ジョウ君。……懐かしいね。ここ」

「……いい加減、その呼び名やめろよ。俺はもう年とっちまったからな」

「でも、私は年をとってない」

「だからってなぁ……」

「うふふ。……ぬいぐるみ、まだあったんだね」

「だな。……そういや、本当に懐かしいな。……確か、そいつは…」

 

===

===

===

 

「え?君は……?」

「……やっべ、部屋間違えた。じゃ、お邪魔しまし……」

「あ、待って」

 

 呼び止められた『オレ』は、渋々後ろを振り返る。……見ると結構かわいいなこいつ。……って、何言ってんだよオレは。

 

「……で?お前さんだれ?」

「私?私はね―――」

 

 そいつから名前を聞いて、オレはゆっくりうなずいた。んで、しかたねぇのでオレも名乗る。

 

「……ジョウト、ジョウト……うん。ジョウ君、だね」

「ばっか。オレはジョウトでいいよ」

「でも、私はそう呼びたい。いいよね?ジョウ君?」

「……好きにしろ」

 

 じれったくなった。いつの間にか、オレはその辺の丸椅子に座っていた。なんとなく、こう、魅かれるもんがあったのかもしれねぇ。

 

「……お前何読んでるんだよ?」

「イヌの本。……実物見たことないんだよね」

「ふーん……」

「ジョウ君も、好き?」

「……別に」

「じゃあ、ネコ?」

 

 ……よっくしゃべるやつだな。ちょっと耳障りすぎて、でも、どっか落ち着く―――

 って、なんで違う奴の病室でなに思ってんだよ。……ちょいと面倒になったもんで、俺は席を立つ。

 

「もういくの?」

「まぁな」

「……また会える?」

「会えねぇよ」

 

 それだけ言って、俺は部屋を後にする。

 ……能力の事知られたら、アイツも引くはずだが……。

 にしても、あの女、実物を見たことねぇ……か。

 

 ……

 ……

 ……

 

 ………ま、いってやってもいいか。

 

 

―――んで、いつの間にかオレはアイツの病室にこっそり来てはなんか話して、適当に聞いて、それで後にする。それだけの日々だ。

―――それだけって、ひどいなぁ。でも、私は嬉しかったよ?

―――かもな。……そのせいか、オレの心に、……今思えば、光が入ってきたのかもしれねぇ。その光を失うのが怖かったのか、オレは何度も何度も来ていた。

―――うん。その日々も覚えてる。

―――だから聞いたよな。オレが何度も来て邪魔じゃねぇのか。

―――でも、私は「基本的にずっと独りだから、全然邪魔じゃない」って。

―――……もしかしたら、その言葉のおかげで、今のオレがいるのかもしれねぇな。ったく、今じゃ恥ずかしい話だ。

―――ううん。全然恥ずかしくないよ。

―――るっせぇな。

 

そして、数週間ぐらい経ったある日。

 

「……ね、ジョウ君って、何か趣味ある?」

「………機械いじり」

 

 ……機械いじりは趣味だ。だが、基本的に「生きている」機械しかいじらなかった。

 ……この時からすでにオレにハッカーの能力が生まれていたからな。

 …………ま、オレのさらに過去の事は思い出したくないんで、それ以上は黙っていた。

 

「機械いじり?」

「悪いかよ」

「全然。でも、そんな顔かも」

「るっせーな。そんな顔で悪かったな」

「……ね、裁縫できちゃう?」

「できねーよ。科学物しか専門がないんでな」

「そっか……残念」

「……じゃーな」

 

 例の如く、数回ほど言葉を交えて後にする。……会話が続かないと思ったら帰る。それがオレ。その数回が、暖かいのかもな。

 

「……裁縫できる男子、見てみたいな」

 

 ……その言葉を聞いて、一瞬固まった。

 ………オレは機械いじりにしか興味ねえんだよ。

 そう感じながら、病室を後にして―――

 

「うおっと…『おっさん』いたのかよ」

「悪いかね?」

 

 まさかのおっさんと遭遇。白衣を着た白銀の髪のおっさん。つかみどころ無さ過ぎてこいつは苦手だ。

 

「……まさか聞いていたのかよ」

「数週間ぐらい前からかな。……あの子が楽しそうになってなによりだよ」

「フン」

「……一ついいか?」

「なんだよ」

「……何か一つ、才能を開花して見たいと思わないかい?」

「あ?」

「……医者としての、言葉だ」

 

 それだけ言って、オレと替わるようにおっさんは病室へ。

 

 ……

 ……

 ……

 

 ………開花。ねぇ―――

 

―――で、しばらくオレはお前の病室に顔を出さなかった。

―――じゃあ何をやっていたの?

―――……単純馬鹿に、裁縫の勉強だよ。なんで勉強したのか、分からねぇ。当時は。今考えると、感謝だったのかもしれねぇな。

―――えへへ。ありがと。

―――元凶はおっさんだ。お前はオレと話していると楽しそうって、あのおっさんが言っていた。だからなのかもな。

―――今頃、私と会わなかったらどうなっていたのかな。

―――さぁな。

 

で、またまた数日後。

 

「……久しぶり」

「ジョウ君……」

 

 何か言い淀んでいたソイツだが、オレはその言葉を遮るように、「ぬいぐるみ」を取り出す。

 驚いた顔をして、見て、受け取って……

 

「……ネコ?」

「イヌだ」

「何で?」

「イヌ耳は垂れてるだろうが」

「いや、そうじゃなくって。……もしかして、ジョウ君?」

 

 ……逃げよっと。

 恥ずくなった。感想聞かずに、そのまま。

 ……で、なんでバッタリおっさんと遭遇するんだっツーの!

 

「……まさかキミが裁縫するなんてな?」

「るっせーな。あれはオレのじゃねぇ」

「じゃあ誰かね?」

「………さぁ、だれでしょうかね」

 

―――当時負けず嫌いだった性格か、オレはさらに裁縫の勉強をするようになった。そのせいで、お前と会話する回数は減った。が、お前と会話する時間は逆に増えた。

―――確か、いろんなぬいぐるみ、たまに、クッションだとか、だね。

―――ときどきほつれるときがあるので奪って縫って、んで返す。それを繰り返しちまったせいで、オレに余計な趣味が出来ちまった。あぁ、実に今の今も繰り返す悪夢見てぇな趣味。と、特技。

―――今も繰り返しているの?すごいね

―――るせぇよ。……ただ、その中で印象に残ったことって言やぁ……初めてお前にオレの裁縫を縫う過程を見せた時だな。

―――うん。覚えてる。

 

冬の寒い昼間。天気は、曇り。

 

「……今回だけだぞ。こうして見せるのはな。つか見てるだけはつまんねーんじゃねーの?」

「全然。むしろ、楽しみ。何織ってくれるの?」

「さぁね」

 

 オレは白の毛糸を器用に黙って編む。コイツは、ずっと見ていた。

 ふと、言いやがった。

 

「……ねぇ、ジョウ君……。これ聞いたら、嫌、だよね」

「あん?」

「………わたしね、能力持ちなの」

「……」

 

 動きが止まった。………コイツは続ける。

 

「……炎を出したり、氷を飛ばしたり、できる。……それを見せたせいで、いろんな人から恐怖の対象にされて、誰も近づかなくなって、……それで、病気になっちゃって」

「……」

「だ、だから……嫌いになったら、もう、来ない方が……」

「奇遇だな」

「え?」

「……以前機械いじりが好きだって言ったことあるよな?」

「うん……」

「……オレ、それが原因かしらんが、それで能力が開花してる」

「………本当に?」

「今すぐ、そのTVをハッキングしちまうぞ?」

 

 ……我ながら似合わねぇ会話だ。……それなのに、コイツは笑った。……同時に、泣いたように見えた。

 

「……よかった……本当に………ジョウ君にあえて……」

「……オレは、悪いぜ。こんな趣味重ねやがって」

「……ごめん」

「ま、別にいいんだがな。……完成だ」

 

 そういってオレは、出来たもんをコイツに投げ渡す。

 ……作ったもん?……白のニット帽だよ。なんか知らねーけど。ま、マフラーって手もあったが、それで首絞められたら危険だからな。

 

「……キレイ……」

「オレの自信作だ。……い、いや!自信作じゃねぇ!失敗作だ失敗作!!そうだ!失敗!!」

「………じゃ、もし失敗しないように……はいっ」

 

 ……渡されたのは、バンダナ。ちょっとオシャレなやつだ。……ま、まぁ……センスはいいんじゃねぇか?

 

「……頭にまけりゃいいのか?」

「うん」

「しゃーねー……よっと。……こんなんでいいか?」

「うん。似合ってる」

「っるっせーな……」

 

 ……恥ずかしいに決まってるだろ。こうして、面と喜んでいる奴を見るとな。……くそっ、オレもう帰る!そういって席を立とうとして……

 

「あっ!ジョウ君待って!」

「今度はなんだよ……!」

「……こっちきて?」

「……へいへい」

「目をつぶって」

「何で」

「いいから」

「……分かりましたよっと」

 

 素直に、オレにしちゃ素直に目をつぶる。

 

 

「……好きだよ。ジョウ君―――」

 

 

===

===

===

 

「……ホント、なついな」

「うん」

 

 いつの間にかジョウトと女の子は、過去に親しみを持つように、女の子はベッドに座り、ジョウトは丸椅子に座っていた。

 

「……で、あのあともいろんなことあったな。……渋谷にこっそり買い物行ったりとかな」

「あのあと散々怒られちゃって。……でも、いい思い出」

「お前はそう思うからだよ。……今生きているオレにとっちゃ、思い出したくない記憶の一つだね」

「……そっか」

「……あぁ」

 

 不思議と、二人の顔が穏やかになって行く。

 そして、ジョウトは、今やるべきことを思い出し、立ち上がる。

 

「……そんじゃ、オレはもう行くよ」

「……うん」

「意外と悲しくねぇんだな」

「だって、私はいてはいけない存在。……なんでいるのかも、分からないの」

「………それは帝竜のせいだ。……もし望むのなら、帝竜つぶしてやるよ」

「……お願い。……ジョウ君……」

「……引き受けた」

 

 それだけ言うと、ジョウトはあの時のように病室を後にする。名残惜しいが、でも、今は仲間たちの心配をかけないために、早めに戻ることに。

 

「あ、待ってジョウ君」

「……今度はなんだよ」

「………ねぇ、もしかして………女の子がかぶっていたニット帽って………」

「……ロナのことか。……安心しろ。以前のに似せたレプリカだ」

「……うん。そうだよね。……あと、あの……」

「………悪いけど、オレはそろそろ行かなくちゃいけねぇ。悪いな」

「……次会えるのは、いつかな?」

「…………オレがおっさんになったときだ」

 

 それだけ言って、ジョウトは病室のドアを閉める。

 女の子と、最初に作ったぬいぐるみを置いて。

 

「………」

「ジョウト……」

「………行こうぜ。クソ竜狩るためにもな」

 

 どこか悲しむような背を、二人は見た。

 

「………そうだな」

「あぁ」

 

 だが、理由は全く聞かず、二人もついていく。信頼しているからだろう。

 

「(………最後のお前の願い………引き受けたぜ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なお、今回の建物は今作だけのオリジナルです。そんなのは現実でもないはず、もちろん、原作ではないのであしからず。

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