女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
さて、今回は、三台目の探査機設置前の話です!……なんでそんな簡略的な?……原作プレイ者は印象深いイベントだからじゃないでしょうかね。
それでは、34Sz、どうぞ!
「あれ?こっち、進んだっけ?」
「……見覚えあるのような光景だな」
「……ちょっと待て」
そう言ってジョウトは石を三つ、積み上げる。マーキング、ってところか。それを確認した後、もう一度戻って、戻ったつもりをしてみる。言い換えれば、普通に戻っている。
「……にしても、ひでぇところだな」
今まで全体に気を取られていて分からなかったけど、地面とか穴ぼこだらけで、もしかしたら
生きる者は死に、死に眠る者は生き、そんな力だ。
……進むたびに異臭が、どうも強くなってくる気がする。……ゾンビ化。そう言った意味もかねて、だろうな。
「……今頃アイツがこの光景見たら、悲しむだろうな」
「ジョウト?」
「うっ!?……独り言だ」
「いや、……いや、うん。そうだよな」
よくよく考えると、ヒカイさんは気絶していたからジョウトの過去の話を、ヒカイさんは、俺はまだ知らない、と考えた方がいいよな。……そのヒカイさんも、何か考えるような顔だけど。
「……嫌なもんだ。……よりにもよって、『満月』……か」
「……」
「ま、この状態でお月見やった良い雰囲気になるんじゃねぇの?なぁオッサン?」
「……そう考えたか。ハハッ」
お、ヒカイさんが笑った。意外とジョウトってセンスあるなぁ。
……あーよく考えると、……地形考慮しなければそれなりにロマンチックだな。肝試しにも、お月見にもなる。……どっちが悪なのか、ゾンビ問題がなければ、分からなかっただろうな。
「……しかし、満月の夜は苦手でね……」
「え?意外ですね?」
「満月は不吉の象徴。……私はそう思っているのでね」
……確かに、でかい月はいつ落ちてくるのか分からないぐらいに―――まぁそんなことありえない現象だと思うけど―――輝いている。そう思うと、不吉にも見えるな。
……あ、ちょっと思い出した。……俺も、物心ついたときは満月は怖かった気がする。多分、いつ落ちてくるのか分からなかったからだと思う。いつの間にかそれは克服してたっぽい。
……月、か。
人の見方によっては『肝試しっぽい』とか、『お月見』とか、『不吉』とか、個々の解釈に分かれる。……あぁ、あと、すごい余談だけど、日本ではクレーターがウサギっぽく見えるけど、他の国ではカニとかに見えるらしい。
けどまぁ……そういった、一部の人が抱く、『不吉の予兆』を告げているのかもしれない。今、昼間だと言うのに輝いている、月は。
「……あ、あれ」
そう言って俺が指差したのは、三段重ねで重なっている石だ。
……どうやら、ループしているらしい……
「って、ありえねぇよ!?超常現象すぎ!!」
「……途端にループするように仕向けられている、そう考えた方が妥協じゃないか……?」
……ヒカイさんの言うとおり。……だけど、どう聞いても自己主張のように聞こえる。気のせい。だよな。でも、正論なので俺はうなずいた。
「……じゃあ、こっちですね。行きましょう」
俺達は歩いていない方向へと進んだ。
……決して、迷子にはなってない筈だ!!
======少し進んで======
『ぐぬぬ……むぅ……この数値がここで……うーん……』
「わっ……マイク入ってるぞキリノ」
バカヤロウ。ちょっとびびっただろ。いきなりトランシーバーから声が出るなんて。お前……頼むから驚かせないでくれ。
『ぬわっ!?13班!?』
「どわっ!……バカ!脅かすなっての!」
『あ、す、すまないね。作業に集中すると、どうも周りが見えなくて……』
タハハ……と、キリノの苦笑いしている声が、トランシーバー越しにやってくる。
「……で、チューニングは難航?」
『うん……い、いや!イイ線まではいってるんだよ!でもそこから先が……あはは……』
「……俺達のせいじゃねぇだろ」
『分かってるってば!……でも、とりあえず集中して作業するために一旦通信を遮断させてもらう』
「は?なん……」
で、と言う前に通信はプツリと切れた。
……お、おい……?……キリノさーん……?
……不安なので、ミロクに通信っと。
「……コール。ミロク」
『あ、え、お、おう!……意味分からない……オレにどうしろって……』
「……不安なら、一旦俺達戻ろうか?ミロク、データ上のものしか信用できないって。チューニング終わってからでも遅くねぇ筈だけど」
でも、俺は一刻も早くアイツをぶっとばしたかった。……でも、さすがに、勝手に一人で進んだら二人に迷惑かけてちまうだろ。さすがに、学習したからな。
『……それはダメだ。任務の放棄になる……』
「んじゃ、設置、だな」
『うん。……そのまま進んでくれ』
了解っと。俺は通信を切って二人にうなずいて進む合図を送る。
「……はぁ、でも通信ぐらい入れたままでもいいのではないか……?」
……進んでいる間に、誰かの声が聞こえたけど気にしない。っと。
橋を渡ってもう一つ……
「……ん?」
俺は後ろを振り返る。……ヒカイさん、ジョウト、それから……
「……」
俺は無意識に二人の間を通って、対面する。
……自衛隊……の、ゾンビ……だよな。それも、複数。
「……また、か……」
「さすがに克服したか?オッサン?」
「……今回ばかりは認めよう」
……二人の会話は気にせず、俺は自衛隊の人たちを見る。
……目に光も伴ってない。皮膚も青い。……完全に、ゾンビとしての本性丸出しだ……。
……俺は銃に手をかける。……本当は、撃ちたくなかった。
「……でも、ごめんなさい」
それだけ言うと、二体に連射。フルヒットした二体はバタリと倒れる……。
……でも、また数体……また数体……!!
「……くそっ!!」
銃じゃ無理やり対処できない!……そう思った俺は腕にマナを込める―――
「……チッ、こっちからもきやがった!!」
「え!?」
振り返る。……やべぇ、何なんだよこれ!?
見る限りのゾンビの集団が襲い掛かってくる。……一体、何体いるんだと言わんばかりに、しかも、大半が自衛隊のゾンビ……!
「―――アアアオオオ!!」
「っ、しま……うわっ!」
振り返った途端、一体のゾンビに押され、地面に倒れる。
「……あ、うわ……っ……!!」
声も、出せないぐらいに、視界にはゾンビの顔。
痛い、苦しい、悲しい、悔しい。グチャグチャのゾンビの顔がそう言っている。言っていて、俺は思わず目をつぶった。
「……ひっ……!」
いやだ……来ないでくれ!!完全に攻撃することをやめて、腕で顔を覆って、見たくない物から無理やり逸らして、
頭も真っ白になって、何も聞こえなくなる。
何かが、身体に触れる。……風切り音がする……!
俺……死ぬのか…………
……何故だか、それは仕方のないことだと、この時の俺は感じていた。
独りは……嫌だもんな……
『―――だから、お前独りで抱え込もうとするなって。メンドくなったら、俺を手伝いに呼んでくれよ?』
「……コラアアアアアアアアア!!!!」
「うわっ!!?」
思わず起き上がって、ついでにゾンビも突き飛ばす。……い、今の怒声………?
……いやそんなバカな!?聞き覚えもあるけど、そんなの……
……あっ、いや、ここでは『自然の摂理が崩壊している』。逆を言えば『常識なんてない』と言ってもおかしくない。
……ありえないことではない。現にそう言う現象にあってるし……で、でも……やっぱり……
「おいボサッとしてんじゃねぇ。ナビは何やっているんだ……?」
「……あっ……」
今度こそ、声を捕えて、そっちの方を向く。
……頼もしい、後姿。間違いない……。
「…………ガ……ト……」
「まーたデータがどうとかグジグジ言ってやがるんじゃねえの?」
「……………」
「あーあかわいそうに。ナビがオロオロ悩んでいるうちに13班はオダブツ。肝心なときにはお子様ってままなのかよ。なぁ?ロナ?」
「……あ、は、はい……」
「それにロナも、やっぱ甘ちゃんだな。戦場では真っ先に死ぬタイプ。あの胃袋娘から聞いてなかったか?」
……う、うっさいなぁ!!俺は心の中で反論したかったけど……。
「かと言って、あなただってとても勇敢なことしたじゃないですか!?」
『そ、そうだ!……オレは、そんなんじゃない!!』
口が出てしまった。ミロクもついでに。
「……とにかく、俺はそれしか取り柄がない、と思う。……けど、……俺は、あなたが見ていないところで、強くなったはずです。……ちょっとゆらいだだけですが」
『……それに、だれだか知らないけど失礼だな!絶対、なんとかしてやる。……そう言ってくれ。ロナ』
「はいはい。……絶対、なんとかしてやる。って」
その声を聞いて、後姿の人物はうなずいた。不思議と、嬉しかったはずだ。
「おうおう。言うねぇ……!」
「……だから、見ててくださいよ。……俺の……俺達の、決意を!!!」
そういって俺は短刀をとりだして、近づいていた複数体を斬りつける。ドサリと倒れて、動かなくなる。まだ来る。けど、もう、躊躇してられない。……こんなところで、恥ずかしい恰好はしてられないだろ。
応じるように、ヒカイさんもジョウトも戦闘を継続。後ろの方でヒカイさんが俺の背を護ってる。そして、その二つの背を押すようにジョウトも援護してくれる。
「ガッハハハ!そう。お前らのそのクソ生意気なところ、俺は結構、気に入ってるんだぜ?……だから、ボサッとすんな!シャキッと、声出せ!!」
「はい!」
「了解!」
「おう!」
俺達13班が一斉に答える。
「……ミロク、そっちは大丈夫か!?」
俺はその最中に通信を入れ、確認する。
『分かってる!……少し粘っててくれ! 何か突破口を探しているんだ!』
さらに、襲い掛かってくるゾンビを斬り倒す。……少なからず、揺らぐけど、でもさ、もう……これ以上苦しませないためにも、一瞬だけ苦しむことになる。
一発で呪縛を解く苦しみなら、我慢してくれるはずだよな!!
「……たく。世話が焼けるやつらだぜ。……おっと、お迎えだ」
何か、聞こえた。けど、俺達はそっちに集中する暇はなく、こっちに手いっぱいだ。
……俺も分かってる。本来なら居てはいけない存在なんだ。目の当たりにしたから、本当に、ダメなんだ。
「……頼むぜ。安心して眠らせてくれよ?」
「……了解です」
「あ、あとそれとだ!」
「……なんですか?」
「……あのヤローは、ちゃんとしてるよな?」
「もちろん。……今では立派な10班班長ですよ」
「ガッハハハ!!それだけきけりゃ安心だ。あの弱虫がな……へへっ」
そう言った途端、シュンッ、と何かが消えるような音がした。
振り返らなくても、分かる。消えた。俺達にもう一度決意をくれて。
……死んでも、頼りに、なるな。……いや、そんなのだめだろいろいろと。
だから、もうそんなことがないように俺達が――――
「がんばらなくちゃな!ヒカイさん!ジョウト!」
「もちろんだ!これ以上、迷惑かけられまい!」
「言われなくても、オレはとっくにやる気だ!」
そう言って、さらに粘る。きっと、この言葉がミロクにもとどいたから、俺達は信用できるもの全てを信用する!
『……よし、分かったぞ13班!この人たち、音に操られている!』
「音……?」
『あぁ!ドラゴンの影響もない、けど、このダンジョン中に『聞こえない音』が鳴り響いていて、生物の神経を誤作動させるみたいだ。それがたとえ、死体でも、あやつり人形みたいに動き出すような!』
「マジか!?」
なるほど。さっきの無限ループ、そして、今のこの現象の正体は音か。死体にも聞く、催眠術ってところか。
「だったら、どうすればいいんだ?」
『対策もある! 今から探知機を使って全パターンの音波妨害をかけてみる!確か、二つとも持っていたよな!それも使って、……上手くやれるか分からないけど、やってみる!』
「分かった。やってくれ!」
『……あぁ!やってやる!!うるさいかもしれないから、耳を防いで!』
そう聞こえ、俺達は探知機を手放して、さらに耳を防ぐ。
―――ビイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
これでもか、という騒音が辺り一帯を響かせる。その音がまるでトリガーになったかのように次々とゾンビが、糸の切れた人形のように倒れていく。
「……すげぇ」
音が鳴りやんだ時、ゾンビたちは地に伏せていた。一匹残らず、例外なく。
「……よっし!やったな!ミロク!!」
『あ、ああ!……あ、あの……さ』
「うん?」
『……さっき、オレを叱ったのって……』
「…………いくらなんでも、そんなのデータに保存できないだろ?」
『……けど、オレには伝わった。……それで、いいんだよな』
「……うん。……データを見るだけじゃ、伝わらないものがある」
俺のギター弾きや、……悔しいけど、多分、『ロア・ア・ルア』が出した音のように、譜面だけでは分からないものも、実際に聞けば、伝えてくれる。
今の現象は、まさにそれ。
そんな不可思議現象を、俺は改めて感じつつも、ゆっくりと目をつぶり、黙祷を捧げた。
……どうしてここまで運ばれたのか、分からないけど、けど絶対におかしい。こんなことして、何をしたいのか。
俺はそんな疑問を思いながらも、黙祷を終えて先へ進む。