女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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どもこんにちは。chapter2もある意味佳境に。

……この話、原作を知らない方たちは酷い話になるかもしれません。そこは用心してください。

それでは、22Szどうぞ……


22Sz 転生者の見殺し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 悲鳴が上がる。俺のでもあって、その場にいた人たちのモノでも……

 

 ゆっくりと、紫色のバンダナが、赤い髪の男性に落ちていく……

 

 

 

 

 二つの過去が、俺の中に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、見殺しにしたのか―――――――――いろんな人を―――――――

 

 

   ガトウさんを―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンさんに言われた通りに、30分後に俺達は池袋に到着した。

 

 

 ……そこには、何故か10班の人たちもいた。

 

「……ガトウさん達?」

「お、おいおいおいなんだありゃあ……!」

 

 え? 俺はジョウトの指差したものを見た。

 

 …

 ……

 ………

 

 …………なんだあれ………!いろんなレールが集まって毛糸玉みたいなものになってやがる……!!

 

「ん、あ、ロナー!」

「キカワさん……。あれ、なんすか一体!?」

「そうだね……。多分、磁力の力でレールをめちゃくちゃにされたんだと思う。注意していかないと、私達もあんなふうになっちゃうかも」

「うわ……それは……嫌ですね」

「……でも、そうは言ってられないよ。もう自衛隊の人達が入って行ったからね」

 

 ……そう言えばそうだ。

 確かに、見ただけで弱音は吐いていられないもんな!

 

 よっし、俺は気合を入れるように頬を叩いて息を吹いた。……大丈夫。行ける。

 ヒカイさんもいるし、ジョウトもいる。大丈夫だ。絶対!!

 

「さてと……13班達も集まってきたところで、俺達も作戦を始めるぜ」

「了解!!」

 

 俺達は返事して、池袋の『天球儀』に突撃した。

 

 ……この時の俺は、信じたくなかった。

 

 

 

 ……この先の光景、ただの地獄だったことに―――

 

 

 

 

===============

 

「……自衛隊の人達はもう先に行っちゃったんですかね……?」

「うん……多分、ね」

 

 アオイが不安そうに、ナガレさんに言う。

 ……確かに、侵入者用の電磁砲ってのは見つからない。……ドラゴンがちらほらいる程度で、どうやら突破はできたようだ。

 

「……さて、帝竜との叩きあいの前に、このドラゴンたちを仕留めとくべきだ。そうだろ?」

「えぇ。そのほうがよろしいかと」

 

 ガトウさんとヒカイさんがそう言う。どことなくぎゅっと閉まっている顔のガトウさんだ。……やっぱり、戦場だと自分も緊張するだろうな。

 

「んじゃあ……俺達はこっちにいく。……13班達はそっちを頼んだぜ?」

「了解です!」

 

 俺は返事をして、一度別れた。

 

 ……確かに、どっちか分かれて進んだ方が、ドラゴンを狩る効率もいいはずだ。

 ……よし、頑張らなくちゃな……!!

 

「ロナ!あっちにドラゴンだ!」

「分かりました!!……飛んでいるな。だったら、『空穿の疾槍(エアスピアー)』!!」

 

 俺はマナをうまく制御して槍を作る。そしてそのまま宙に浮いているドラゴン、『ホバードラグ』の体勢を大きく崩す。

 

「落ちろ……!!」

 

 そこにヒカイさんのかかと落とし。ドラゴンはなすすべもなくそのまま落下。

 ……結構高い……よなここ……。落ちたら……いや、だめだ、考えるな……!

 

「……ふん。オレの出番なし、か」

「次は援護頼むぞ?ジョウト」

「へっ、期待しないで休憩させてもらうわ」

「いや、それダメだからな?」

 

 俺はツッコミながらも進もうとして―――

 

 

 突然の音に、俺達は動きを止めた。

 

 

 ……今の砲撃音……は?

 

 

 その時。横を何かが通過して、落ちていった。

 

 

 …今……のは……?

 

「……おいボケ娘」

 

 ……俺の、ことか?

 

「……さっさと行くぞ」

 

 ジョウトは勝手に歩いて行った。……って、だめだよ一人行動は!……俺は前やらかしていたけど。

 

 ……いや、今のは気のせいだ。きっと、マモノが落ちていったんだ。……きっと、そうだよ。

 

「………」

 

 ……背いていた。現実から。

 

 見たくない、現実から。

 

 でも、認めたくなかった。

 

「……くそっ……」

 

 誰かが、そう言った、少なくても、俺ではない。

 でも、俺の言葉でもあった。

 

===============

 

―――ドウン!!

 

 

「っ!!」

 

 また爆発音………!!

 

「あっちだ!」

 

 ジョウトが叫ぶ。そして指差す―――

 

「……な……!」

 

 途端に、リンさんが言っていた言葉がよみがえる。

 

『幸いにも、電磁砲は自衛隊各員だけでも、犠牲を出さずに倒せるようだ』

 

 ……あれは、嘘だったのか……?

 

 嘘だったのか……

 

 嘘だったのか……!!!

 

「ち、チクショウ―――!!!」

 

 俺は叫びながら、電磁砲の近くまで走る。こっちには来てない。

 

―――理由は単純すぎる。……代わりに、自衛隊の人が攻撃を引きつけていたからだ。

 

 無理やり、『フレイム』を発動させて焼き尽かす。そこにやってきたのはヒカイさんだ。……その電磁砲を殴り飛ばして、落下。同時に、爆発した。

 

「……………あの……人は………」

 

 見た。……目は、背けない。

 

 ………横たわっていた。

 

「………なんで、なんで……」

 

 腕が、振るえる。

 

 途端に、誰か掴んできた。

 

 ガッシリしている手は、絶対ヒカイさんだった。

 

「……飛び出すな。……そして、我々の目的を……果たすんだ……」

「……ヒカイさん……それ、見殺しにしろと……?」

「………」

「…………こんな犠牲を出した道を、俺達に歩け……って?」

「…………」

「そんなの……俺はできない……できるわけがねぇよ!!!」

「………人は犠牲もなしに、生存できないんだ」

「勝手な言い分だろ!!………いや、……確かに……そうだけど……」

 

 ……正論しか、言ってないんだ。ヒカイさんは。

 でも、その正論は、時として俺を怒らせるんだ。

 

 ………どうして。正論を出して俺を止めようとするんだよ―――

 

「……嘆くのは後にしろ!!まだ間に合うはずだ!!オッサンだってこんなところで見殺しにしたくねぇだろ!!」

 

 ……ジョウト…………。

 

「…………分かってる」

 

 ヒカイさんは俺の腕をつかんだまま、歩き出した。

 

「……見殺しには……しないさ―――!!」

「急ぐぞ!これ以上被害を出さないためにもな!!」

 

 ……そうだ。ジョウトの言うとおりだ。

 

 ………見殺しには、できない………!!

 

「だから……死ぬな……突っ込まないでくれ………!!」

 

===============

 

――――――けど、俺の願いは叶わなかった。

 

 本当に、こんなに、急いでいるのに……。

 

 俺達は、無力だった―――

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 犠牲だらけで造られた道を、俺達は必死に走っていた。

 

 もう、犠牲なんか……見たくないのに……

 

「……おい、あそこ……」

 

 ジョウトが、今までの現実のショックから立ち直れないように、言った先にいたのは、別行動していたガトウさん達の班だ。

 

「……ひでぇありさまだぜ……」

「……こっちも……そうですよ……」

 

 やっぱり、ひどい光景だったんだろう。

 ……誰だよ……こんな犠牲を伴った作戦を出したのは……

 

 少なくても、リンさんじゃねぇ……。

 じゃあ………誰だよ……こんな作戦を出したのは……!!

 

「………総長から……だ」

 

 ……え?

 

 ………どういうことだよ……?

 

「自衛隊のヤツらは、ババァから直々に先発隊を依頼されていたんだよ」

 

 …………どういうことだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で、分かってて言わなかったんだよ……ジョウト!!!!」

「…………」

 

 お前……見殺しにしたのかよ……

 お前が……お前が……!!!

 

「や、やめなってロナ!!!」

 

 声を聞いた時、俺は今何をしようとしたのかを確認できた。

 ……殴りかけてた。

 それだけで、十分だ。

 

「………見損なったぞ、ジョウト……」

「……オッサンだって言ってただろ……犠牲はつきものだ。……けど……オレだって……オレだって……」

「……………」

 

 …………

 …………

 

「………アホな上司に命令されて死ぬのも、兵士の仕事の一つだ。………現場で兵士が勝手に働いても余計な被害が増えるだけだ」

 

 ……ガトウ……さん……

 

「……1日も早く、帝竜共から人間の世界を取り戻す。……そうだろ?13班」

「……………」

 

 納得………できねぇよ。

 じゃあなんだよ。犠牲と分かっていて、ジョウトは止めなかったのかよ。

 それが……平和ってやつなのかよ……!!

 

 

 

―――ドオン!!!

 

「……っ!!」

「今のはでかいぞ……!ロナ、ジョウト。……どうする?」

「止めに行くに決まってんだろ!!」

 

 叫んだ。

 

 もう、嫌だ。きれいごとでもかまわない。でも、手を伸ばせる距離にいる人たちを助けられないのは、嫌だ!!

 

「……ジョウト。お前も来い」

「……分かってるよ。オッサン」

 

 それだけいうと、俺達は急ぐ。

 

 そして……俺のトランシーバー越しから、通信が。

 

『……が……応援戦力、なんてのは期待できないんだよな……?』

『………残念ながら。多少のイレギュラーがあっても、作戦は予定通り遂行してもらうしかない。……本当に……』

 

 

 

「――――――っざけてんじゃねぇよ!クソババァ!!!!!」

 

 

 

 声の出している物を、投げ捨てた。

 

―――聞きたくねえよ!!テメェの正論(言い訳)なんて!!そんなもんが存在するなら、なんで俺達に頼まねぇんだよ!!

 

 とにかく……俺はただいろんなものでゴチャゴチャとした頭で、ただイラついていた。

 

 

 

「リン!!!」

 

 俺は遠くで、やってはいけない作戦を練っている自衛隊(コイツら)を見た。

 絶対に……ダメだ!!!

 お前らも犠牲になっちゃ、だめだ!!!

 

「……13班……そして10班……

 

 

 

   あとは、任せた」

 

「……まさか……!!」

 

 やめろ……!!まだ、まだ間に合う!!!

 

 

 やめろ!!!!!

 

 

 

 

「……じゃあな」

 

 

 

 

 それだけ言うと。

 

 リンたちは、先ほどの電磁砲よりも何倍もでかい電磁砲に走って行った。

 

 

 ……畜生……!!止められないのかよ!!!

 

 

「―――だめだよそんなの!!!」

 

 ……!?

 

 あ、アオイ……!?

 

 待って……だめだ!!お前も―――!!

 

 

「くっ……バカ野郎がッ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電磁砲が、放たれた―――――――――

 

 けど―――

 

 自衛隊の人達は……無事だ……

 

 けど―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………畜生………」

 

 電磁砲は、壊した。

 

 ………けど―――

 

「や……やだ……起きてくださいよ!私のこと、叱ってくださいよ!!」

「いやだ……!!いやだ!!お願いです!!目を閉じないでください!!」

「へ……へへ……この、バカ胃袋娘と幸せ者……っつっても、……ザマァねぇな……」

 

 ………まだ、まだ間に合う………

 

 俺は急いで手をかざして、マナを使って傷を抑えようとして―――

 

 

 払われた。

 

「……分かるんだよ……もう、動けねぇしよ。……さんざん戦争だなんだ……カッコつけといて……一時の感情に流されて死ぬなんてよ………」

 

 ……俺は……

 

 手をかざして……

 

 ……あきらめたくなかった。まだ、生きているから……

 

「……やめとけ……お人好し……。今、最高なんだ……

 

 最後にこんな、人間くせえ死に方ができるとは…思わなかったぜ………」

 

 ……………

 

 ……………手を、止めて、しまった………

 

 

 

「俺は後悔してねぇ……『俺の意思』で戦って、死ぬんだ。

 

 お前たちも……後悔のねェ生き方を………しろよな……

 

 もうちょい……手伝ってやりたかったが……」

 

「が、ガトウさん……!!」

 

 必死に、ナガレさんが掴んでくる。

 

 …………俺には、どうすることも、できなかった。

 

「ガ……ッハハハ……お前も……まだ……甘いな……」

「だ、だから……だから……!!」

「悪いな、先に……だからよ………

 

 

 

 

  10班を、任せるぜ……?ナガレ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それだけ告げると、

 

 

 ガトウさんは、それ以上、何も言わなかった。

 

 

「ガ……トウ………さん……?」

 

 …………ちくしょう………ちく……しょう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悲鳴が上がる。俺のでもあって、その場にいた人たちのモノでも……

 

 ゆっくりと、紫色のバンダナが、赤い髪の男性に落ちていく……

 

 俺は――――――助けられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 誓った……筈なのに――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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