女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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どうもこんにちは!これを書いた日、そしてその後の日は本当に暑いですね……熱中症には気を付けてください。

なお、今回の話では半分オリキャラが出ます。どんな人なのかは実際に読んでみてくれるといいです。

では、17Sz、どうぞ。


17Sz 二刀流対二重能力

「……一体、どういう理由でこんなことしなくちゃいけないんだ……」

 

 俺はまた、樹海の中を歩きながらそう言った。近くで、ゆっくりとしたため息が聞こえてくる。ヒカイさんだ。

 

「……ナツメ総長のソレの意味もある。……確かに、今は少しばかりおとなしくしてもらわなくちゃいけないからな」

「でも……」

「……人とは争いたくない……か?……まぁその考えは悪くはない。もし戦うことになったら少しばかり下がっててもいいからな?」

「……はい」

 

 でも、納得いかねぇよこんなこと!俺は拳を握ってそう思った。

 

 くっそ、なんで今の時代、人が人と戦わなくちゃいけないんだよ。

 

 ……俺は、ゆっくり、数時間前の出来事を思い出していた―――

 

=================

 

「……は?」

 

 改修したばかりの研究室。俺達は次の任務の説明をうけていたけど……

 ……俺は今、ナツメさんから言われた言葉に戸惑いと憤りを感じていた。

 

「……前回の任務で『SKY』と言う組織と接触したでしょう?」

「……そうですけど、でも……」

「彼らはこの有事の東京で人に危害を加えている……そうじゃない?」

「いや、そうだったんですけど、あれは……」

「すべてを鵜呑みするのかしら?ロナ」

 

 ……いや、でも全部が全部、悪い人たちじゃない筈なのに。俺は否定したかったけど、ナツメさんの言葉も確か過ぎて反感出来なかった。ナツメさんは続ける。

 

「今、人類は一つになって協力すべき……それを阻害する者は排除すべきだと思うの」

「……待ってくださいよ!!彼らだって、襲いたくて襲ってるわけじゃないんですって!!元はと言えば……」

 

 …え?

 ……元はと言えば?

 ………なんだよ?

 俺は自分の右手を思わず見てみる。……まるで、ナツメさんが悪いんだって言わんばかりに人差し指を突き出そうとしていたところだった。

 

 ……ナツメさん……何かあったのか?

 

「……元はと言えば?何かしらロナ」

「……いえ、なんでもありません。続けてください」

 

 ……くそっ……なんだってんだよ。俺は俺自身に苛立ち、でもこれ以上は分からなくって、黙っていた。

 ……だめだ、次の言葉が容易に浮かんでくる。……あぁくそっ、これで当たったらまじでおかしいだろう……。

 

「……アナタ達には再び渋谷に出向いて、『SKY』を討伐してもらいたいの」

 

 …

 ……

 ………予感的中。しかも、討伐だとか……そんなの、おかしいだろ。

 

「……なんで討伐しなくちゃいけねぇんだよ」

 

 今まで沈黙を貫いていたジョウトが、俺の気持ちを弁解するようにそう答える。確かにそうだ。俺だって、殺したくない。流石にマモノと人間とじゃ、全く違う。

 

「……でも、このまま放っとけば、さらなる犠牲が出る。……こうした状況で、簡単に人を裏切る憂いを除外しておきたいのよ」

「……それって、ただのジコ中だろ」

 

 思わず、俺の心の中の声が出てしまう。空気が少し凍る。

 あの人達はあの人達なりに共存しているのが、なんとなくわかるんだ。それで協力できないなんて、そんなの、間違ってる。

 ……でも、あの人たちは俺ら……ムラクモの事を嫌いと言っていた。……まるで、ナツメさんを嫌ってるようにも思える。

 ……少しして、ナツメさんがゆっくり言葉を紡いだ。

 

「……ジコ中。……いいえ。これは今のみんなの事を思っての事よ。……あなたに責任を取れるの?」

「……それは……」

「ロナ、もういい。……任務を全うしよう。こうなったからには、やるしかない」

 

 ……ヒカイさんは、全部、任務と思って仕方なく思うんだろ。……でも、なんとなくわかっていた。ヒカイさんだってそんなこと、本当はしたくないって思っているはずだから。……そして、俺にはほとんどできない、責任を負うことから少し遠ざけてくれた。

 ……ほんと、助かった。でも……内心では許せなかったし、まだ反論したかった。でも……

 ……俺も、呆れたのかもしれない。それ以上は何も言わなかったし、ほとんど聞き流していた。

 

 ………でも、それ以前に、俺はまるで「分かっている」ような発言をしていた。それがある意味、錘にもなってたのかもしれない―――

 

================

 

 ……どうやらムラクモとSKYって相当仲が悪いらしい。

 というのも、俺達が、いつの間にか入っていたSKYのナワバリに入って来るや否や、襲い掛かってきて、でも、俺は戦った。……説得以前の問題だった。こっちの話を聞くよりも前に思いっきり。

 ……武器は引き抜けなかった。間違って殺すのが怖くて。相手は得物を持ってたけど、運がいいのか悪いのか、動きがなんとなく大ぶりな気がするし、寧ろ手加減しながら実力差を見せつけるだけで逃げて行ってくれた。

 ……これが、強者ゆえの……か。

 

『……いや、だからって、全部……』

『でも、仕方ないよ。……全て、見た目で分かってしまうから……』

 

「いっつ……」

 

 俺は思わぬ頭痛に顔をしかめた。……何か、過去の事を思い出しそうな気がしたからだろうか。その動きを見たのか、ヒカイさんとジョウトは立ち止ってこっちを見た。

 

「……辛いか?」

 

 ヒカイさんがそう訊ねてくるが、俺は黙って首を横に振った。

 

「ま、いつもの発作じゃね?」

 

 ジョウトがそう言って、さっさと前へ行こうぜって合図を送る。

 ……二人だって辛いはずなのにさ。人同士でやり合うのって。

 今までの動きを見ればわかる。ヒカイさんは素手で応戦してたし、ジョウトは『ディフェンスゲイン』をいつもかけてくれて。

 ……だから、これ以上は迷惑かけたくなかった。俺はそのまま、一緒についていく。

 

 

 ………少しして、大きく空が見える場所にたどり着いた。

 ……そして、遠くに……大男とネコ女。

 何も包み隠さず、二人に近づく、やっぱりか、こっちを見るや、戦闘態勢を整えてきたようだ。空気がピリピリする。

 

「……やはり、来てしまったか。……警告はしたはずだがな」

「……いえ、多分、違います」

 

 俺はとっさに大男さんの話を遮るように言う。

 ……俺だって、無駄な争いはしたくないから。

 

「……俺達は、お礼を言いに来ただけです」

「……お礼?」

 

 ネコ女さんが興味深げにこっちを見てくる。……二人も同意見だったのか、こっちを驚いて見ただけで、それ以上は何も言わなかった。

 ……本当に、この二人が仲間でよかった。俺は心からそう思いながら、大男さんとネコ女さんに告げた。

 

「……多分、都庁で俺達を助けてくれたのは二人ですよね。……ありがとうございました。おかげで、今こうして二人に会っています」

 

 ……通信通して、ミロクの息をのむ音が聞こえてきたが、気にしない。……SKYの二人も、沈黙してしまった。

 

「……だから、……その、お願い……というわけではないんですが、あの……

 

 

 

「おーいお二人さん、ちょいと誰か一体黙らせとくわ」

 

 

 …え?

 

 瞬間、俺の身体が防衛を呼びかけてきた。

 

 殺気、突撃、背後、刺突、回避、不可、逸らせ、逸らせ、逸らせ逸らせ逸らせ逸ら―――!!

 

 俺は思わず、瞬間的に短刀を取り出して、ほぼヤケクソ気味に背後を向いて思いっきり振り上げた―――

 ガギン!!と、金属と金属がぶつかりあう音が聞こえ、それがはじき返したことを意味していた。

 そして見えたのは、水色のフードをかぶった、人物。

 目はその人物の長い髪の毛で見えない。でも、少なくとも、男性なのは確かだ。……そして、

 

 本当に、俺を殺しにかかってきた―――!!

 

「……やるじゃねぇか嬢ちゃん。……だが、宣戦布告ってことで」

「……!!」

 

 思わず俺は体ごと飛び退く、そしてコンマ数秒。俺が本来いたはずの所に短刀の軌跡が走った。

 

 ヤバイ、こいつ、強い……

 

 全身にやな汗が噴き出る。恐らく、俺じゃなかったら今頃致命傷を喰らっていたところだろう。

 

「おーいネコちゃん、そしてオカン。この女は俺がやっとくから、そっち頼むぜ」

「……あまり殺すなよ。殺したらそれはそれで面倒だからな」

「へいへい。……二度とこっちに来れなくなるようなお土産は渡しとくけどなぁっ!!!」

 

 そう言ってこっちに突撃してくる―――。

 ダメだ、思考にふけってる暇はない。……本能的にいかなくちゃ、こっちが殺される―――!!

 

 

==========

 

 

 刃と刃がぶつかり合う。

 ロナは防衛的に。

 そして、フードの男は殺人的に。

 

「……さすがに、ムラクモ名乗るだけあるな。だがっ!!」

 

 刃を刃に押しつけつつも、それを軸とした後ろ回し蹴りでロナの腹へ一発。

 だがそれをロナは左腕で防御する。

 威力のつけた蹴りととっさの防御。勝つのは当然、その蹴りで、ロナを防御ごと蹴り飛ばした。

 数m転がり、咳き込みながら受け身を取るロナはとっさに相手の方を見る。……まだ突撃してくる。両手に一本ずつ、計二本の短刀を携え、殺しに。

 

「こうなったら……『焦撃の灯火(フレイム)』!!」

 

 ロナは防戦だけだときついと感じたのか、足元に『フレイム』を飛ばし、火の壁を発生させる。

 小さな防壁は彼の動きを止めるのには十分な壁。その行動に驚いたのか、一度急ブレーキをかけて様子を見る。

 

「へぇ。ただの暗殺者(トリックスター)と思いきや、超能力者(サイキック)でもあったんだなお前……」

 

 けどな。と彼はつぶやくと―――

 

 短刀を炎の壁へと振りかざし、一瞬だけ切れ目を発生させた。

 そこには、彼女はいなかった。

 だが焦らず、彼は縦一文字に振って、攻撃する。

 途端に手ごたえ。だが、肉を切るような感覚ではない。鉄と鉄がぶつかり合う感覚だ。

 そこか。彼はもう一本の短刀を、動きを止めた短刀の下へと突出し……

 

「『無垢たる魔撃(エナジーピラー)』……!!」

 

 今まさに攻撃を仕掛けてきた手を避けるように突き出された手が、彼に向かってロナの超能力が炸裂する。

 防御が間に合わない。そう彼は思った。

 ゴムにでも弾かれたように吹き飛ぶ。だが、手加減しているのか、軽く腹を殴られた程度の、打撲に似た痛みだけで済んだ。

 

「……」

 

 炎は吹き飛び、そこには大きく息をついているロナがいた。

 ロナは死んでいないことに何よりも安堵を感じていた。

 もとより、ロナは殺す気で撃ったのではなかった。そもそも、殺意は全く出してはいなかった。

 その行動に大層不満なのか、彼は舌打ちをすると短刀を一つ、構える。

 

「……ま、お前さんはなかなか優しそうだけど……」

「……だったら……」

「それで俺が殺さねぇ理由はねぇわな。……じゃあ、こいつに刺されて……逝っちまいな!!」

 

 高速で、左手に持った短刀をロナに投げつける。

 彼もS級を証明するような、超速で飛んでいく短刀を見て、思わずロナは防御を固めようとするが―――

 

 静止、状況、見る……

 

「……!!」

 

 そう。これだけが彼の攻撃ではない。

 短刀に追いつくように彼も飛び出してきた。

 二重……いや、何重もの固められた大胆かつ精密な攻撃にロナは驚きながらも、素早く、判断した。

 

 右はダメ。樹の根があって制限させられている。

 左はダメ。開けすぎて逆に分かりやすい。

 後ろはダメ。速すぎて今度は体勢を崩されるかもしれない。

 

 だとしたら……!!

 

 跳んだ。真上へと。何mも。

 

「チッ……そっちか……でもな!!」

 

 さらに追いかけるように彼も飛んだ。素早い判断だが、予想がつかなかったのでどことなく動きは鈍かったが、それは一瞬でなくなった。

 

 ロナも、まさかこっちまでは来ないと思った油断で驚いてしまい、一瞬だがガードを固めるのを忘れていた。

 そこを彼が狙わないわけがない。

 

 素早く、空中で短刀で短刀を退ける。弾かれたときにロナははっと気づくがもう遅い。

 彼はロナの首を左でつかみ、そして、自由落下を利用して、上にのさばるような形を取って短刀を大きく振り上げ、突き刺しにかかる。

 

「じゃあ……ゲームオーバーだ」

 

 思いっきり、ロナの顔面へと振り下ろされ、

 そして、地面と激突した―――

 

 

==========

 

 

 ……何があった?

 ……俺は目をつぶっていて、状況がよくわかってない。

 あの後殺されそうになって、そのあと地面とぶつかって……

 恐る恐る、目を開ける。

 

 ……

 

 俺は自分でやったことに驚いていた。

 

 人差し指と中指の間から刃が覗き込んでいて、まさに殺される瞬間を止まってみているようで、

 

 ……俺は、間一髪で止めたのか?

 

「……やるじゃねぇか」

 

 その言葉に、俺ははっとなって、自分の短刀を素早く手放して横からボディーブローをかけるようにひねりながら振り払う。……攻撃は当たらず、フードの彼は飛び退いた。……俺も素早く起き上がって、彼を見た。

 ……目はやっぱり見えなかったけど、だけど、口は笑っていた。

 

「はっはは!おいおい!この技見切ったやつ見たの久しぶりだなオイ!!お前最高だよ!!」

 

 ……その言葉を飲み込むのに俺は数秒かかった。……よくこんな状況で笑えるな。アイツ……。

 彼はふ~っと息を吐いた後、こっちを見た。……まだ、やるのか?俺は思わず身構えた。

 

「お前さん、名前は?」

「……え?」

「まっさか、名前思い出せなくなったーってわけじゃねぇだろ?」

「……ロナだ。河城野炉奈」

「ロナねぇ。そして、野にある河の城って苗字か。……おっと、言い忘れてたな」

 

 彼は大層満足そうに短刀をクルクル回しながら、自分の名前を言った。

 

「俺は空影(くうえい)フウヤ。空の影って苗字に楓の谷って名前だ。覚えときな。ロナちゃんよ?」

「……覚えやすくて助かるよ」

「ははっ!そんな緊張すんなって!……ま、お互いの名前を覚えたところで、第2ラウンド行こうぜ?」

 

 まだやるきかよ……俺は汗を拭きながら、でも、構えずにフウヤを見る。

 やっぱり、フウヤは呆れたようにため息をついた。……頼むから、もう来ないでくれ……

 

「おいおい。お前ら楽しそうなことしてんなよ」

 

 …まるで今の状況を察したのか、誰かがやってきた。

 ……オレンジの髪の男の人に……青髪の女の人……?

 

 ……やっぱり、どこかで、見たことあるのか………?

 

「おやまぁタケハヤさんじゃないっすか。もしかしてこっちの状況見てましたかね?」

「ついさっき来たばっかだよ新入り。……とにかくまぁひどいもんだ。ネコとダイゴが手加減してるってのによ」

 

 ……マジなのか?ジョウトはともかく、ヒカイさんはそうでもないはずだろ……?

 それほどまでに、この二人……ネコさんとダイゴさん、それと、フウヤは強いのかよ……。

 

「ま、どういった理由であのババァにそそのかされたわかんねぇが、とにかく目障りだから消しておきたいってところか」

「……少なくても、ナツメさんはそうなのかもしれない。……でも、俺は違う」

 

 俺が言った言葉にタケハヤさんは驚いた。まぁ、そうだよな。……でも、次に伝えられた言葉は俺を驚かせた。

 

「ハハッ……そうだな……どうだ?ムラクモやめて、SKYに入らねぇか?」

「え!?」

「ちょ、タケハヤ!?」

 

 俺は驚き、ネコさんは慌ててタケハヤさんに突っかかってくる。……タケハヤさんは冗談だって顔をして俺を見た。……まぁ、冗談だよな明らかに。敵の筈の俺にそんな軽く……

 

 …

 ……

 ………

 …………

 

 ……………あれ?

 

 ……敵、だったっけ……?

 

「ま、今後はこっちに来ないこったな。まぁ二度目だし、それとお前に免じてしばらくおとなしくしとくぜ。……ただ、次に入ってきたときは容赦しねぇからな?」

 

 そんじゃぁな。と言ってタケハヤさんは撤収した。残りのメンバーもそれに続いていく。……後ろのフウヤがこっちを振り返った。

 

「……まぁそういうこった。……次は容赦しねぇからな?ロナちゃんよ?」

 

 ……容赦しない、か。

 ……また、戦うことになるのかな。

 

「……これでよかったんですよね?二人とも」

「……かもしれん」

「さわらぬ神にたたりなしってところだ。まぁあのバァさんにとっちゃ失敗かもしれねぇけど……」

 

『コール、13班。お取込み中悪いけど』

 

 ん、ミロク……どうしたんだ?

 

『今さっき、東京地下道の国分寺方面から救難信号を受信した。13班には悪いけど、そっちに向かってもらうぜ』

「あぁ、分かった。……やっと、マトモな命令で助かった」

 

 俺は心の底からそう思っていた。

 ……今度は人を助ける仕事だ。……待っててくれ。俺はそう願いながら、渋谷を後にする。

 

 ……それにしても、フウヤってやつ……あった気がしないのに、どこかであった気がする。

 しかも……身近なところで――――


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