女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
転生した『転生者』に待ち受けた運命とは一体。
では、どうぞ!
1Sz 候補生
「―――うずっ!?」
ちょ、いててててててて!?いてぇ!!めちゃくちゃいてぇ!!全身型番に入れられたようにいてぇ!?
でもその痛みはすぐに引いていく。どうやらいきなりすぎて俺が驚いてしまったようだ。
いや、まぁ確かにそれは仕方ないか。……だって、身体の感覚がまじでおかしいし…。一応、女体だし…。
やべぇよ。俺絶対この状況化で赤面しているよ。いや、まて。まずここどこ?
辺りを見渡してみると、どうやらここはワゴン車のようだった。証拠に外の風景は動いているし、車の匂いもする。誰かが俺の前で運転をしている。
………なにこれ。連れ去られているんですか?えー……………
…
……
………
…………
………………まてまて!転生したらいきなり連れ去られてるってどゆことなんだよそれ。神様アンタどういう場所に転生させたんだよ!つっこみたくても神様はいねぇし、こんなところで独り言はまじでおかしいし、とりあえず心の中でつっこませていただきます。なんでやねん!
いや、さらにそれよりもこの身体だ。転生して代わりの身体のこれ。恐る恐る、まずは頭。……さすがに胸などはいきなりは無理です。いや、確かに自分の身体だけども。女の子だし。身体は。
…………あり?頭の感覚がなんかおかしい。頭の上のところ、二部分がちょっとぽっこりしている。
……そういえば、神様言ってたよな?『ヒトではない、ルシェになってもらう』的な事。
………これ耳?………でも、なんでバンダナなんかしてんだ?つか、してたっけ?気になって俺は窓越しにサイドミラーを見た。確かに、オシャレそうな紅いバンダナをして頭の上を隠している。で、髪はロングヘア。
そして思わず俺も息を止めてしまうほどのきれいな白い髪だ。
………でも、悲しいかな………胸、ちっさいね。いや、逆にありがたい……筈なのに……筈なのに…っ!!なぜだっ!!すげぇ悲しく思えてきたぁッ!!!
いつの間にかふとももに向かってバンバン両手を叩いていた。……やっぱり清潔なまでの肌だ。………スカートだけどっ!!!見てるこっちが恥ずかしいわっ!!………めちゃくちゃだ。とりあえず落ち着こう。ふっと外を見た。
………赤いタワー…確か、東京タワーだったよな…。それは覚えているらしい。んで、ここは高速道路だと思われる。…うん。忘れただらけだけど、一部は覚えているようだ。
…………って、あれ?2020年?………それに何かさらに忘れている気がする。何だ?一体………。
だめだ。思い出せない。すごいもどかしい。ちくしょう。俺は心の中で毒づき、座席に身を沈める。どうせどこに行くか分からないし、せめて平和なところに行ければ十分だ。せめて、な。
………そういや、その、『マモノ』ってのは見かけないな。窓の外からざっと見た程度だけど、それらは至って、かすかな記憶に在った東京そのものだった。
「…………でも、なんだこの嫌な予感は………」
心臓の鼓動が大きく感じる。まるで悲しさを教えるように。
「……知ってるのか、俺、……いやそれはおかしい。だって俺………」
……待って。俺、はさすがにまずいか?一人称に『俺』を使ってる女子なんてたまにいる程度だが、見た目のよさから『俺』を使うのもどうかと思う。………私、にしとくか。私、私、私………。と
「…わ、私は…転…っと危ない危ない」
聞かれたらまずいか。つかそもそも信じない筈。お、いや、私は思考だけで言った。
だって転生ってことはその世界を知らない筈だ。なのに俺、じゃなかった。私は何故だか知っているような感じだ。
……転生のはずなのに。
「……着いたぞ。候補生」
……候補生?どういうこと?聞いてないけど……
「行けばわかる。早く行け」
…なんだそりゃ。でも、一応行ってみよう。行くだけ行くだけ。やばいと思ったらすぐに逃げればいい。それだけの脚があったらな。
………えーっと、私は運転手にお礼を言うと車を出る。……そこに見えた光景。確か、東京の都庁、だよな?誰にも確かめられないからとりあえずそう思うことにした。
……それにしても物騒だな。見るからして武装した警備員たち、いや、自衛隊か?それらが徘徊している。…一体何をさせられるんだよ。…それにどこいきゃいいんだ?俺は…じゃねぇな。私は近くの自衛隊の一人に質問する。新設ご丁寧に、そこの階段を昇ればいいとだけ言われた。一言礼を言って階段を昇る。声が聞こえた。
「―――――――――で全部かしら?キリノ?」
「いえ、あと一人………あぁ、君だ」
昇り切ったとき、俺は………もういいや『俺』で。俺は指名された。辺りには俺と同じように、だと思われる老若男女問わずなまばらな人数。…やっぱこっち見るよな普通。
「君。名前は?」
「……俺ですか?」
あ、しまった、つい一人称が。だが至って驚いた様子もなく―――と言ったらうそになるので近くで聞いていた一、二名は驚いていたことを付け加えておく―――「そう。君だ」と、緑髪の研究者のような顔をした男の人に聞かれた。
「………えーっと」
………さすがに本名はまずいよなぁ。だって男の名前だし。ちょっとまずい気がする。…でも男の名前の女キャラっていたような気がし
「君。名前」
あ、いけないいけない。……えーっと、名前名前………
「………ロナ。
……よくとっさに思いついたよな俺。それになんか気に入ってる。どうしてだろうなぁ。そんな俺の心の独り言を無視して、確か、キリノ、だったよな。キリノが説明を始めた。
「…よく来てくださいました。皆さん。……率直に言いましょう。それは……ナツメさんから」
「…ッッ!!?」
ダンっ。音がしたと思ったら俺は大きく飛び退いていて、視界のキリノが少し小さく見えた。
…待てよ。何で俺は飛び退いたんだ?敵がいたわけでもあるまいし………。………敵?
「…続けていいかしら?」
…どうぞ。と俺は無言で促した。それを知ったらしい、いわゆる巨乳美人である、ナツメ……だよな。ナツメは全員に、演説でもするように声を出した。
「単刀直入に言いましょう。……ようこそ。『ムラクモ候補生』」
その瞬間。俺の頭の中に一瞬で見えない文字が浮かんでいき、聞こえない声がそれを読み上げ始めた。
ムラクモ。それはこの時代の東京を中心に活動する組織。恐らくだが、他にも組織はあるはずなのだが、現状はそれしか知らない。
そしてムラクモ機関の審査は厳しいとされ、それに選ばれる前提条件は『S級』の持ち主であること。
S級とは、単純に言えば『凡人が数十人合わさって初めて手に入れられる能力を一人で持っていること』。つまり、この時代に非常に重宝する人材だ。
そのS級を束ねるムラクモ、その総長が『日暈棗』――――――
待て、なんで、何で俺はこんな情報を持っているんだ………!?いや、それのせいでもう二つ。疑問と予想が浮かんだ。
一つの疑問。まだこの情報には続きがある。
そして一つの予想。
俺はムラクモ機関に入ることになる――――――――――――?