女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
えー……Chapter1は次回で終わりそうです。また、最後の部分を重要として今回の話はいつもよりほんの少な目になっています。ほんの少な目なので、気づく人でも気づかないかと(笑
それでは、筆者もハラハラした12Sz、どうぞ!
例の如く俺達は借りた軽自動車でもう一度都庁に向かうことになった。……いや、今回も自衛隊装備一式はトランクだよ?違和感ないよね?
んでもって、何も話すことなくたどり着く。……まぁ、それでいいんだけどさ。なんとなく。
………確証なんてないけど、誰かが死ぬ気がして―――
………いや、確証………なのか……?
普通……いや、あんまり思いたくないけど、普通、どこかで人は死ぬ。
なのに、今後の出来事が容易に思い浮かぶような気がして………
「ロナ?どうした?」
「え?……あ、すんません、少し考え事を……」
「考え事?」
ヒカイさんは興味深そうに尋ねてくる。でも、俺は黙って首を横に振った。別に相談できるような話じゃない。
俺はトランクから装備一式が入った重そうなバックを持ち上げる。……意外と重さは感じられない。……あれか。S級の特権ってか。
歩きながら、俺は考えていた。………よく考えると、俺は『転生者』なんだよな。今まで非現実な出来事ばかりあったからそのこと自体忘れていた。
あぁ………今、『みんなして』何しているんだろ…………って、あれ?
みんなって………誰だ?
…
……
………
…………
………………やべぇ!?思いだせねぇ!?何で!?
「って、うおわああ!!?」
ゴチン!!!
「痛ってぇ……そうだ……入口入ってから重力逆さまだったんだっけ」
アホ。と、俺の隣でジョウトが嫌味を言う。……うう、ジョウトにアホ言われた。頭からぶつけたせいでものすげぇ痛いし………。
「二人ともいいか?まず任務の再確認をするぞ。……私たちの目的は自衛隊の援護、およびドラゴンの討伐。……それ以外はない」
「……一ついいですか?ヒカイさん。……やっぱり、ヒカイさんもアイツを討伐したかったんですよね?」
「………」
ヒカイさんは黙ってしまう。………別に、変なことは聞いてないよな?………しばらくして、ヒカイさんの口が動き始めた。
「……確かに、私もやられっぱなしで我慢できるほど忍耐強いわけではない。……だが、仕事とあれば甘んじて受ける。……それが私だ」
それだけ言うと、ヒカイさんは先行して歩いていく。俺らも黙ってついていく。……と、その途中でジョウトに小突かれた。何だと思って振り向く。
「で?テメェはどうなんだ?やっぱ倒してぇんだろ?」
「……そりゃ俺だってそうだよ。でもさ……やっぱり、怖いんだ。本当に俺なんかが倒せるのかって」
別に、今は競争じゃない。今は一つの目的のために『ムラクモ』が動いているんだ。……素人の俺なんかより、熟練者のガトウさん達がやった方がいいかもしれない。
「……ま、そんな考えするなんて、やっぱお前は女なんだな。口調は男っぽいが」
「なんだよそれ……」
つーか俺は男だっつーの。今は女だけど。って言いたいけど黙っておく。どうせ信用してくれないし。
ジョウトは「あっそ」とだけ言って前を向く。……なんだよこいつ変なヤツ。
………それにしても、何ださっきから……
『俺』は何故か『早くしろ』とせかしているようだ。
まるで、この世界を知っているかのように。
知らない筈の変わった東京なのに―――
と、その時。俺の不安が一発で繋がった一つのきっかけが訪れた。
トランシーバーが
『よ。そっちの方は順調だよな?』
この声………ガトウさんか!
この声に反応したヒカイさんが答える。
「……えぇ。こちらは大丈夫です。ポイントにたどり着き次第、こちらの任務を全うします」
『がっははは!そうか!!それはいいな!!』
いつものガトウさんの笑い声が響いて、俺はうるさそうに顔をしかめた。……まぁ実際にうるさかったんだけどね。
そんな声に安心して、なんとなく笑みを浮かべていた俺。なんでだろうな?聞くだけで不安がなくなるような―――
『……さてと。俺達は今から帝竜とランデブーしてくる。なーに。地獄の底までエスコートしてやるさ』
その瞬間。
俺の頭に『映像』が浮かび上がる。
いわゆる、第三者視点。『三人』の人物の上を見ているようで。
そして、文字が浮かび上がる。
その言葉に俺は思わず吹き出してしまって――――――
そして―――――――――
ナガレが………――――――
『アイツの仇はオレが……!!』
「―――――――――!!!!」
俺はこれでもかと目を大きく開かせる。二人は気づく様子もなく、何かを聞いているようだ。
待て、待て、ナガレさんが……ナガレさんが……!!
死ぬ…?
「……二人ともゴメン!!!説教は後で聞く!!!」
そう言って俺はバックをその場で投げだし、全力疾走で駆けていく。二人が俺を呼びとめる声がしたきがする。でも、気にしていられない。俺はマモノが多数いる場所を全力で駆け抜け、そして、何故か頭に浮かんでいる都庁の進み方と、その場所を頼りに走る。
そして、俺は『外の光景』が見えて急ブレーキをかける。
都庁のある階の壁がぶち抜かれていて、そこから外が見えた。外には多数の浮遊瓦礫。そして、上を見ると、『天井』が――――――いや、地面が見えた。
その光景に思わず吐きそうになるがぐっとこらえる。そして、浮かんでいる瓦礫を見て、飛べばいけそうな気がしたが、そんな時間はなさそうな気もする。
下を見る。―――まるで皆既日食しているような太陽……もしかしたら月なのかもしれない。それがあって、それに吸われていくようにフロワロの花びらが舞っていた。
そして、都庁の下。そこには同じように壁が一部ぶち抜かれていた。
「………」
汗がつたる。俺の考えていることが恐ろしくて。
でも、手にはもう一つの短剣があって。
今すぐ、やれ。と言っているようで。
あんな思い、したくはない。
「う、うわあああ!!!」
飛び降りる。
瓦礫ではなく、
都庁の『下』の階へと。
直接。
壁に短剣を喰い込ませている。恐らく命綱代わりなんだろう。
分からない。自分が何をやっているのかも。
短剣が悲鳴を上げている。限界だ、と。
でも、俺だって極限状態だった。めちゃくちゃだ。何やっているんだよ本当に―――
そして急に、短剣を持っている腕がガタリと空を貫き、体がフワリと浮かぶような感覚。
しまった……落ちたか!?
いや、違う!!
とっさに俺は壁……いや、崖を掴みブレーキをかける。衝撃で腕が引きちぎれそうになるが思いっきり、転生してない頃の俺ではできない動きで、腕の力だけで跳ね上がり、地面に着地する。
何があった?俺はふるえる体を抑えるように倒れ込むと、恐る恐る外に顔を出して、上を見上げて状況を確認する。……どうやら、命綱なしの高速逆ロッククライムをやったらしい。短剣は恐らく、壁に沿わすために使ったものだろう。
実際に、短剣はボロボロだった。―――ワジさんからもらったものじゃない。最初に自分で持っていた物だ―――刀身の半分が摩擦で削れていて、マモノ一体に致命傷すらも与えられない可能性もあるだろう。……ほんと、ワジさんからもう一本もらっといてよかった。と思った。
トランシーバーから振動が響いて、俺ははっとして起き上がる。
っと、そうだ……急がなくちゃいけない!!
俺は深く息をつくと、全力疾走で、ガトウさん達の元へと向かった。
頼む………間に合え!!間に合ってくれ……!!!
主人公がハイスペック過ぎた。
多分、そのハイスペックっぷりは今回限りかと。まぁトリスタ&サイキだから仕方ない………?