女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
今回は久々の戦闘描写でまたあっさり終わった感じがあります……。もう少しうまくなりたいです。
では、10Sz、どうぞ!
「よっと」
……すげぇな。一階分を降りただけでは反動なしとかどんな身体だよ一体。二人もこれと言った怪我はなし。これがS級か………いや、そんなんじゃねぇし。
とにかく俺達は下に降りてドラゴンの元に向かう。ナビちゃんがいるし、そこまで案内してくれるはずだ。
……それにしても、俺達は天井を歩いているんだよな…。………やべぇ。まじで頭痛くなってきた。
「………俺、天井歩いているんですよね…」
俺の何気ない一言がジョウトを硬直させた。………アカン。なんかすごい罪悪感がある。でも気にしない。気にした時点で負けだ。俺しーらねっと。
「……二人とも。お取込み中悪いが……」
ヒカイさんが俺とジョウトに呼びかけた。何だ?そう思って通路の先……でいいか。通路の先を見た。
………マモノだ。
姿を見た瞬間、鳥肌が立った。
なわけない。そりゃあ、確かに久しぶりに見たし、どことなく怖かった。
けど、アイツに比べてしまえばどうってことはない。
大丈夫だ。行ける。俺は心を落ち着かせるように深呼吸をして短刀を取り出す。
相手をよく見る。シカ型のマモノと花が意思を持ったような一つ目の妖怪っぽいマモノ二体。
「……覚悟はいいな?」
「もちろんです」
「あぁ。いいぜ」
それぞれが戦闘態勢に入る。……空気が異様に静と静まり返っている。
「いくぞ」
一言だけ発するとヒカイさんはマモノ達に突撃。俺も後に続く……って、やっべ!抜かしちまったっ…でも気にしない。一瞬の隙も晒しはしない。その覚悟で俺はシカ型のマモノに向かって短剣を突き刺す。ヒット。素早く戻して後方へ大きく飛んで反撃をかわす。
そこにヒカイさんが走り込み、隙も与えずに右フック。こっちからでも分かる。非常に重く、強い一撃が。
喰らったマモノは断末魔を上げ、倒れる、同時に消滅する。
まだ二体いる。俺はその内の一体に向かう。そこに眼から弾丸っぽい種が撃ちこまれる。とっさに両腕でかばってなるべくダメージを軽減させようとする。
……つっ…くそっ、やっぱり痛い…。でも………
「まだ……いける!!」
両手を思いっきり握りしめて痛みを無理やり打ち消して突進する。その横から風切り音が。ジョウトの投げたチャクラムだ。チャクラムはうまく敵にヒットした。さらにそこに俺は追撃を加える。振り下ろし、振り上げの二連撃。……なんだろう。草なのか分からないけどあんまり手ごたえがない。
あっさり敵を倒せた俺達。一度辺りを見渡して敵がいないか確認する。………とりあえずは、いないっぽい。
「……ふむ」
…ヒカイさんが俺の事を見ている。……やっぱり、あのことだろうな……。
正論だったし、正直その前に二人に迷惑をかけた。あんまり信用無いのも無理はないかもな……。
「……まだ、一応戦えるほうか」
……うう、なんかひどい評価だ。
……でも、まぁ今はこれぐらい……だよな。つか、ポジティブに考えれば、また信頼してくれているってことだよな。そういうことにしとこ。そんな考えにふけっている間、ヒカイさんはナビのほうと連絡を取り合ってるようだ。
「ところで、ドラゴンはどこにいるのかね?NAV3.7」
『はい。あなた達の50m以内にいます。この個体は頭が鋼鉄のように固く、まともに受ければ大ダメージは免れません』
まるでラム○ルドみたいだな。……いや、アイツと違って額の部分は平らだし………。
……え?平ら……?
「……もしかして、そいつって『ドラゴハンマード』って個体……か?」
俺がそいつの名前を言ったら、一瞬トランシーバーを通して息をのむような音が聞こえた。―――あ、ちなみに俺のはトランシーバーだ。ヒカイさんとジョウトのは小型のインカム。……絶対俺の耳見ての
ちなみにこれについて俺はなぜなのかを訊ねてみたら、「インカムがなかった」かららしい。ほんとかよ。
『…なぜ、分かったのですか?』
「あー……いや、鋼鉄って言ったら基本的にハンマーだし、ドラゴンだからそうかなーって」
うーん、ごまかせない。というか………何で俺この名前とか知っているんだ?
容姿もおぼろげだけど、なんとなくわかる。恐竜の姿、どっちかって言うと肉食獣によく似た姿に額から首辺りまでがハンマーで埋め込まれてる様なそんな感じ……なのか?
『……とりあえず、その個体がいるので13班はそれを討伐してください』
「ん、ああ……分かった」
……ドラゴンか。アイツ以来久しぶりになるな……。言っただけでゾッとする。トラウマが刻まれているからだと思う。
一瞬で俺らを遊ぶように蹴散らしたアイツ、ウォークライ。今回はガトウさん達が討伐するみたいだけど、もし俺達にもその仕事がまわってくるとしたら、そのためにもコイツらと戦ってトラウマを克服しなくちゃいけない気がする。いや、しなくちゃいけない。
「……さて、こちらから仕掛けるか?二人とも」
「ったりめーだよおっさん。先手必勝だ。テメェもそうだろ?」
「…ん、ああ。うん。それに、一度サイキックを使って身体慣らしたいし」
さっきの戦いでは結局使わず仕舞いだったからな。どうも身体の感覚がまだ慣れていないからね。
俺らの返答に、ヒカイさんは無言でうなずくとゆっくり、音を立てずに歩いていく。俺らも抜き足差し足で後をついていく。そして曲がり角の奥に、ソイツの姿があった。
………やばいな。完全一致、そしてビンゴ。さっき言った通りのドラゴンの姿が俺の眼に映っていた。汗が首筋をなでる。……怖い。でも、逃げたくはない…。
「……いつも通りにな?……いくぞ!!」
ヒカイさんが合図とともに突撃。俺もある程度加減するように突撃する。ジョウトは準備のためにその場待機だ。
こっちに気づいた。ドラゴンは俺達を見るや雄叫びを上げた。その声を聞いて俺は一瞬止まってしまった。
脳裏に刻まれたウォークライの雄叫びと照らし合わせてしまった。止まった反動でそのまま前のめりに倒れてしまった。
「おいバカ!!テメェがコケてちゃおっさんの負担だろうが!!」
ジョウトの呼びかけに俺ははっとして急いで立ち上がる。俺の奥、多分10m先にヒカイさんがドラゴンと交戦……くそっ…この距離からじゃ短刀じゃ到底間に合わない。……だったらこれしかない!!
俺は右手を突き出して、マナを腕に集める。熱気を帯び、右腕に赤いオーラが纏われる。……行ける!!!
「
右手が呼応する。突き出した手から炎気が放出され、ドラゴンの表面を焼き焦がす。でも、ドラゴンは動きを止めない。一直線にヒカイさんにヘットバットを喰らわした。
「ぬ……ぐっ…!」
潰されはしなかったものの、やはり大ダメージを負った。……けど、ヒカイさんはその場で踏みとどまり、拳を引いた。
「返すぞ!!」
一度ドラゴンが、その頭を引いた瞬間に喰らわしたカウンター、『迎撃スタンス』。物理的攻防に重点を置いたデストロイヤーだからこそできる
……いや、そこにジョウトのハッキングスキル『アタックゲイン』が入ったからさらに効いただろうな。これは味方の物理攻撃を上げるハッカーお得意のスキルの一つの筈だ。確かに、俺の武器にも力がこもった感じがする。
怯んでいる。そこに追撃をかけるしかない。俺は自身を鼓舞して素早く走った。一瞬で距離が詰んでいく。流石に速いな。俺は心の中で感心しつつも短刀を握りしめる。
「そこだっ!!」
喉の部分を思いっきり薙ぎ払う。……手ごたえはさっき以上にあった。到底俺一人じゃできないその火力を実感していた。
……でも、こいつはまだ倒れない。二、三歩退くと、ドラゴンは吠えた。
瞬間に俺の身体はまた震えた。……いや、違う。恐怖の震えじゃない。危険信号を発しているんだ。俺の今の身体だから分かる。どういう原理なのかは分からないけど、今はどうでもいい。
「ヒカイさんは防御を固めてください!!ジョウトは俺達に『ディフェンスゲイン』を掛けてくれ!!」
俺はとっさに指示を出す。意外にも二人はすぐに従ってくれて、ヒカイさんは俺の目の前に出て防御姿勢を、ジョウトがそこに素早く『ディフェンスゲイン』を掛けて俺達の防御性能を上げる……。
すぐにドラゴンの槌の一撃がヒカイさんに向かって振り払われた。……両腕に鳥肌が走る。壁になってくれたんだ。すぐにお返しをしなくちゃいけない…!
素早く俺は右腕をヒカイさんに向かって突き出す。マナを集中。今度は優しい緑色のオーラが右腕を包んだ。
「
溜めたマナを放出。ヒカイさんの身体を包んだ。……成功した。俺はそう確信した。
「助かるぞロナ!……これで仕舞いにしようか!」
「了解です!!」
ヒカイさんが飛び、俺も合わせて飛ぶ。ドラゴンは反動でバランスを崩している。いける!ここしかない!!
「いっけぇぇぇぇぇ!!」
「でりゃあああ!!!」
ドラゴンの背中に向かって、短刀と拳が打ち下ろされた。地面に沈むドラゴンの身体。ドラゴンは断末魔を上げ、動かなくなった。
………本当にやったのか……?俺は短刀を突き刺したまま、軽くドラゴンをつついてみる。………動いて、ないのか……?
「あ、ははは……また、いけたか」
バタンと、俺は疲れたように床に、いや、天井か。天井に倒れた。少ししか動いていない筈なのに息が上がっていた。そこに俺の顔を覗き込むヒカイさん。……あ、口元に笑みを浮かべているな。
「……よかったぞ。ロナ。ジョウトもお疲れ様」
「フン。まだいるだろーよ。礼はここを攻略してからだろうが」
「それもそうだな。……立てるな?ロナ」
ヒカイさんは手を差し出してきた。……あーそうか。まだいるっけな。俺は素直に手を出して立ち上がらせてもらった。
「さて、回収だな。……どうやって回収するんだろうか」
………そういや全く聞いてないな。おーいナビちゃーん。
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えーっと、とりあえず俺らはドラゴンからいろんな素材を取り出した。……ドラゴン一体でこんなに素材集まるもんなんだな…。某一狩り行こうぜなのか?……いやまぁ、いいか。
え?何でこの部分スキップしたかって?……ほら、あんまり見せるもんじゃないし……って、だから俺は誰に向かって話しているんだっつーの。
「ロナ」
ヒカイさんが俺を呼んだ。……なんだろ急に。振り向いた先に、真剣な顔をしたヒカイさんがいた。
「………」
「………」
どうなんだろ。今ので信用に事足りたのかな……。俺は不安だった。そりゃあ、俺は一度戦力外言われたし……。
「……まだいけるな?」
「え?」
…………いや、まだ行けますけど……一応。
「怖くはないか?」
そりゃ怖いと言ったら、怖いですよ。ドラゴンとなんて本当に戦ったことないし……。
「……安心しろ。私もだ」
「……え?」
ヒカイさんも……怖かったのか?俺は意外な眼でヒカイさんを見ていたに違いない。
「だから前の時にあんなきついことを言ってしまった。……謝罪させてもらう。すまなかった。……そして見事だ。今の的確な指示はな」
………はは。あはは。なんか、嬉しいな。ヒカイさんに認められたって感じでさ。俺の顔は笑っていたに違いない。
「おーいおっさーん。とりあえず女の子を砕く口があるならドラゴンの心臓を砕いてくださいなーっと」
「あぁ。ジョウトも的確かつ見事な援護だ。……これからも期待させてもらうよ」
「……フンッ。減らず口言ってんじゃねぇよ」
ほんと、素直じゃねぇなジョウトは。
……今までどことなくぎこちなかった俺達の心が、また一つになった。……今までのは俺の杞憂だったのかもしれないけどな。
どことなく、恐怖は薄れていた。一人では怖いドラゴンも、三人いれば、どうにかなりそうな気がした。
でも、一つだけ思うことがあるとすれば、さっきから誰かが死ぬかもしれない、この悲しい感覚だ―――