女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
さてさて、今回からchapter1に突入します。chapter1、となると、あれですよ。でかいてーりゅーとの最初の戦いのアレ。
今更ながら、この話はゲームを知っている人知らない人でも楽しめるような話を目指しています。こんなしがない小説でセブドラに興味を持った人はぜひともやってみてください。個人的には面白いですよ。……ボス戦が大変ですが。
自分の雑談はこれまでにして、ではではchapter1、8Sz、どうぞ!!
8Sz 奪還作戦
「……知っていると思うけど、日本全土の98%はドラゴンたちによって支配されたわ」
そういってナツメさんはモニターを表示するように誰かに指示する。表示された。……確かに、映像だけだけど、赤い部分で塗られた、といってもほぼ全部の日本で完全に支配されたと言っても過言じゃない。
「でもこのまま黙ってドラゴンたちをのさばらせてはおけない。そこで私達ムラクモ機関は少数精鋭の局地戦を展開しているわ。……キリノ。説明を」
「はっ。……この作戦ではムラクモ機関、機動10班、ガトウさん達のチームを中心に、まずは人類の拠点として都庁奪還作戦を展開しています。すでに作戦は70%まで達成、あとは都庁内の残りのドラゴンと、帝竜……ウォークライの討伐を目標としている」
………ウォークライ?………そういや、先にその名前を言ったのは俺だよな。
…いや、まて。何で知らない筈のドラゴンの名前を知っているんだ?それに、キリノが一語一語間違えずに言ったのも何か違う。……どういうことだ?
「……ゴホン。続けていい?」
「あ、……あー、すみません。続けてください」
「うん。……それで君たち、13班には10班の後方支援を担ってもらいたい」
「……あァ?それってつまり……」
ジョウトが突然割り込んできた。………まぁ、いいたいことは分かる。ウォークライとの決着をつけるのはガトウさん達ってことになる……。
瞬間、俺の身体が震えた。
………なんだ、これ。一瞬、俺は寒気を感じた。まるで、誰かが死ぬことを予想したように。
「まだあなた達は起きたばかりよ。これ以上戦力を減らさないためにも、他のドラゴンの討伐を行ってもらいたいの」
「んだ…とコラ―――」
「分かりました。引き受けましょう」
…あ、あぶねぇ。ジョウトがナツメさんに殴りかかろうとしていた。それをすぐにヒカイさんは抑制して止める。ジョウトはまだ納得いっていない。
「おい待ておっさん!!」
「ジョウト、君の言い分は分かる。でも、我々で勝てる相手か?」
「ハァ!?あんときは……」
「あー、分かりました分かりました!!!とりあえず後方支援ですね分かります。じゃあ二人とも一旦外でるか」
俺は早口で遮り、二人を部屋から押しのける。途中でキリノに「スキルカスタムについて説明するから病室にいてね!」と言われて俺は素早くうなずいた。ぐいぐい押して二人を外へ。……ジョウトは抗っていたから、無理やり押したけど。
外に追い出した後、一礼しようとして振り返る。一礼。そのまま外へ―――
「……あぁ、待ってくれる?ロナ?」
「…はい?何ですか?」
ナツメさんに呼び止められる。ナツメさんは何か言おうとしているようだ……。多分、俺のケモミミについて、じゃないな。俺の種族の『ルシェ』についてだろう。こっちが知りたい。ルシェって何なのか。
「………………いえ、いいわ。また今度」
「分かりました」
よかった。これ以上追及されないで。…というか追及されたら絶対言えない。
……それともこの口調かな?後者ということにしておこうそうしよう。
俺は一旦部屋の外にでると、やっぱり納得いかない顔をしているジョウト。よく言いつけている辺り、あの二人は実は親子なんじゃないかと思うと、俺は笑ってしまった。二人には悪いけどね。
「……まぁ、ジョウト、落ち着こうぜ。確かに分かるけどさ…。もちろん俺だって一発ぶん殴りたいよ?」
「だったらよ!!」
「でも、今の俺らで勝ち目あるのか、って言われたら、俺は無理って答える。…だから、キリノがスキルカスタムの説明をくれるんじゃないのか?」
……まぁ、説明したところで、到底行けそうにないのは内緒だけどな。
俺のある程度の嘘言にジョウトは腕を組んで考え、やがて諦めたように首を振った。
「……わかったよ。んじゃあとりあえず、他のクソ竜どもを地獄送りしておこうぜ。さっさとな」
「おうよ」
ヒカイさんは苦笑していた。多分、仲良いように思えたんだろうな。…まぁ俺男だから、こういうのは楽だって思えることもあるからなぁ。
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「………えーっと、まずはその針がカッターナイフのようにでかいそれは何なんですかキリノさん」
「え?見て分かんないの?」
……………いや、明らかに殺人兵器だろーよその針のデカい注射器はー!!!
…俺らはスキルカスタムの説明を受けて、それで身体をより慣らすためにも一度注射を打ってもらわなければいけないらしいけど………。
絶対おかしいだろそれ!!!その殺人注射器!!
「大丈夫。痛くない、痛くないからね……!!」
絶対いてぇから!!!あと顔!!マッドサイエンティストのような顔になってんぞキリノ!!!
「………とりあえずヒカイさん!!あなたが先に……!!」
「こういうのは若者の役目だろう。私は後にしておくよ」
うわー!!こういうときだけ下がりやがってー!!
……ハッ!待て、待てキリノ!!まずジリジリ前に歩くのやめて!!普通にこえぇから!!!
「……おいジョウト!!女の子が殺人兵器によって殺されかけるんだぞ!!」
「おっさん言ってただろ?俺は後方支援やってりゃいいってよ」
なんだそれ!!遠回しにさっさと逝って来いって言ってるんだろ!?
「さ、早く!君たちも早く作戦に参加しないといけないんだよ!!」
笑顔で言うんじゃねぇよキリノ!!全く説得力ねぇから!!
「逝って来い」
「逝ってきたまえ」
………テメェラアトデケシズミニシテヤル。
畜生逝ってきます……じゃない、いってきますよ!!
「……!!!」
ズキュゥゥゥゥゥン!!!
「ギャアアアアアア!!!」
痛ぇ!!!ちょ、SEおかしい!おかしいって!!確かにいろんな意味で正しいけどいろいろ間違ってる!!注射器として間違ってるって!!!まるで某幼き紅い吸血鬼のアレだ!!
「さ、次は君たちの番だよ。…君たちはこれでいいか」
そう言って取り出したのは、普通の注射器だった。
…
……
………
…………
キリノ消し炭確定。
「燃えろやお前らー!!!」
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で?あの後?
とりあえずキレた俺を二人が抑え込み、キリノが素直に謝ったとさ。普通のがあるんなら最初からしろよお前……。
「……と、とりあえず、君たちをサポートする、情報支援班、第2班のナビを紹介させてもらうよ」
二人とも来てー!と奥の方に呼びかけるキリノ。間もなく扉が開いて、そこから子供二人、男の子と女の子がやってき………あれ、男の子のほうがすげぇ涙目だけど、何かあったのか?俺は女の子の方に尋ねてみた。
「……えーっと、気にしないでください」
…分かった。気にしないでおこう。
……って、あれ?この子たちが情報支援班………?
「幼ぁっ!!?」
……とは言ったものの、何故か内心あんまり驚いてはいなかった。何でだろうな…。まるで元から会っているように。転生先の世界なのに。
…って、転生先って……いや、まぁ気のせいだよな…。
「やっぱり驚いた?…そう。この子たちが第2班の二人だよ。…ほら二人とも、自己紹介を」
そう言って男の子のほうを見た。……まだ涙目だよこの子。まじで本当に何があったの?
「……第2班のNAV3.6。今回はガトウ達の隊のナビを行っている。じゃあな」
それだけ言うとどこか行ってしまった。……涙目だ。どっかでこけたのかよ。つーかもう泣き止んでくださいお願いします。
「ごめんなさい…彼は少々ぶっきらぼうで…あと、注射が苦手で…」
察した。アレだ。きっとアレだ。もう言わないけど。
「そういうキミは薬が苦手じゃなかったっけ?」
「………」
キリノー。そういうのは女性に禁句だぞー。
「……ゴホン。任務の説明をしますね。あ、私はNAV3.7と言います」
…うん。してください。
「今回ロナ達13班はガトウさん達の10班の後方支援のためにドラゴンの討伐、およびそれらの死体から『Dz』と呼ばれる物質を回収してきてください」
………それだけ?
「まだロナ達は意識を回復したばかりです。無理をしないためにも、後方支援程度でお願いします」
……まぁ、仕方ないか。仮に万全の体勢で戦えなかったらそれは足手まといだもんな。
でも、それってつまり……。
「俺らがなじんできたと思ったら、ガトウさん達と一緒に戦っても……」
「……それはだめです。あくまで中心はガトウさん達。その中心に迫るマモノ、およびドラゴンを討伐するのが今回のあなた達の役目です」
………つまり、戦えないってことか。
ふと後ろを振り向く。ジョウトは納得いかない顔だったし、ヒカイさんもどこかしら残念そうな顔だ。ヒカイさんも負けず嫌いなんだろう。俺はそう思った。
「……分かったよ。とりあえず、それでいいか。二人もいいよね?」
「……しゃーねーよ。ぶっつぶせねぇのは残念だが……」
「あぁ、任務は必ず遂行する」
そう二人は告げた。キリノがうなずいた。
「ナツメさんが言っていたよ。『大事なのは、任務を必ず達成させること。無理をせずに引き返すのも手』だって」
「分かった。……あー、それと……」
俺は聞きたいことがあったために、NAV3.7……めんどくさいからナビちゃんで。ナビちゃんを見ながらキリノに言った。
「…何で二人とも、コードネームみたいな名前なんだ?」
「え?」
「……あー、やっぱいいや。プライバシーがなんたらってやつだろ」
……多分、違う気がしたけど、今はこれでいい。……だって、俺がコードネームって言った時にナビちゃんが暗い顔してたからな。
「ごめんな。無理に聞き出すつもりはなかったんだ」
「いえ、気にしてません」
「じゃ、じゃあ、さっさと任務達成しに行こうぜ。ガトウさん達の負担を減らすためにもな」
俺が率先して二人に言う。うなずく。俺もうなずいた。
「………でも、何だ、この嫌な予感は……」
さっきからひっきりなしに出てくるこのひどく冷たい感覚。
まるで、誰かが死んでしまうような、そんな気がしていた―――
……キリノごめん。キャラ崩壊させるつもりはなかったんだ。注射のシーンを入れた作者のせいなんだ、ごめん。