幼馴染の凛ちゃんがうざすぎる   作:nao.P

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プロローグ

俺が初めて凛に会ったのは小学2年の桜が咲き乱れる春のことだった。

 

当時、親の仕事の都合で俺は転校を余儀無くされ、友達を失った悲しみを抱いたままに今の住む地域の音ノ木坂小学校へと通うことになった。

 

俺は転校先の小学校へ行くのが嫌で朝から家で、学校へ向かう途中で、学校の授業中でも所構わず毎日泣いてばかりいた。

 

知らない人、知らない所へ行く事が嫌だったわけではなく物心ついた時から当たり前の様に一緒にいたクラスの仲間と学校へ行けないことがただただ悲しかった。

 

なぜ自分だけが。

なぜ離れ離れにならなきゃいけない。

大人の残酷さに酷く傷ついた。

 

だったら友達なんかいらないじゃないかって。

 

俺は訴える様に約2週間泣き続けていた。

 

だけど大人は子供の言うことなんか聞いてくれず。

 

咲いていた桜も散り、景色も心も暗く沈む中。

 

泣いてばかりで話しかけられても誰とも喋らないのに、それでも諦めず構わず話しかけてくる一人の女の子がいた。

 

「ねえねえ見て見て! これね! 凛の大好きなお菓子なんだけど、君にあげる! 甘くてと〜ってもおいしいの! 食べるときっと笑顔になるよ! ね! 食べてみて!」

 

泣いて余程お腹が空いていたのかもしれない。

 

「どう! おいしい? でしょでしょ!えへへ〜。よかったぁ。 明日また持ってくるから今度は一緒に食べようね! 一緒に食べるともっとおいしいから! あっでも先生に見つかったら怒られちゃうから凛と君との秘密! だからね。泣くのやめて笑おーよ!」

 

 

そしてその日から、俺は泣くのをやめた。

 

 

 

 

 

 

「さっきからずーっと窓の外見てるけどなに見てるにゃ?」

 

「……桜」

 

教室から見える校庭に広がる桜が俺のトラウマと在りし日の思い出を呼び起こしていた。

 

今はもう別の、音ノ木坂学院という高校の桜だがこの季節を感じれば嫌でも思い出す。

 

それは目の前にいる、星空凛という幼馴染の顔を見れば尚更だ。

 

多分あの日のことを凛は覚えていない。

こいつはそういう奴だ。

 

「うーん。見てたらなんか凛、桜餅が食べたくなってきちゃったなー」

 

「お前は花より団子だな」

 

「あー! 女の子に向かってひどいこと言ったニャー! 罰として帰りに桜餅買うの付き合うにゃ!」

 

「いや、行かねーよ。速攻家帰んだから」

 

昨日買ったばかりのゲームが俺を待っている。1分1秒でも早く帰らなければならない。

 

そういえばこいつからコントローラーを奪われ俺の2時間を台無しにされたことを思い出し腹が立ってきた。

 

「ダメにゃ。一緒に食べないと美味しさ半減しちゃうじゃん」

 

「……」

 

「もお〜!! 凛は食べるって決めたら食べるの!!」

 

「わかった怒んなよ。行けばいいんだろ行けば」

 

 

うざい程に強引に俺はこいつに引っ張られながら高校生活を送り始めるのだった。

 


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