実況パワフルプロ野球 -三日月の約束-   作:もす代表取締役社長

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お久しぶりです。
めっちゃ期間空いちゃいました。

今回は場面がコロコロ変わって読みづらいかも・・・



第六話 説得

 

東條の目の前には一人の男が立っていた。

帝王実業の蛇島桐人と同じ制服を来た男が。

 

「久しぶりだな、東條」

 

東條は言葉が出なかった。

なぜだ。なぜこいつが俺の目の前に・・・

 

「俺さ、帝王実業に進学したんだ。あそこにいる蛇島先輩に連れてきてもらった」

 

その男は『猛田慶次』。

東條はこの男のことを知っていた。

 

「で、東條。部活には参加しなくていいのか?」

 

東條は猛田と目を合わせられない。

少しの間、その空間に静寂が広がった。

そして二人の間に風が走り、静寂が破られる。

 

「やっぱり、あの事気にしてるのか?」

 

猛田は言った。

 

「俺はもう野球はしない・・・できないんだ。お前も知っているだろ・・・俺に野球をする資格は無いんだから・・・」

 

東條は、そう言ってこの場から離れようとした。

猛田に背を向け足を前に出す。

 

「まだやりたいんだろ?野球」

 

東條は歩みを止め、猛田の方を仰ぎ見た。

 

「言っただろ。資格が無いって」

 

東條は再び進みはじめた。

 

「おい!」

 

次は振り返らない。決して。

 

「おい!東條!」

 

東條は何の反応も見せず歩き続ける。

 

「おい!」

 

突然腕を掴まれた。

そして腕を引かれ、身体が回る。

目の前には猛田が立っている。

そして猛田は東條の胸ぐらに掴みかかった。

 

「何だよ、突然」

 

猛田の顔には先程までの穏やかさはなかった。

 

「お前が一番辛いみたいな顔しやがって!一番辛いのはあいつに決まってんだろ!それなのにお前が、あいつの夢を託されたお前が、何野球辞めようとしてんだよ!お前が野球辞めたら、あいつはどうなる?あいつが知ったらどうなる?自分の夢を捨てられるんだぞ!それだけじゃない。お前という親友の夢も、自分のせいで捨てさせた。そう思うだろうよ。あいつがどれだけ自分を責めるかお前なら想像できるだろ!」

 

「なら!なら俺はどうすればいいんだよ!あいつの夢を壊した俺が、自分の夢を追う権利があると思うかよ!」

 

「無い!権利なんかねえよ。お前には、あいつの夢を受け継ぐ義務と責任があるんだろうが!」

 

東條は言い返せなかった。

猛田の言う通りだった。

自分は責任から逃げていただけだ。

それに気づいた時、東條は酷く胸が傷んだ。

 

「なあ東條」

 

猛田は東條から手を離した。

 

「それ、何であいつがお前に渡したか分かるか?」

 

東條は黙って聞いていた。

自分の手の中にある『それ』を見つめていた。

 

「夢を形として俺に渡したんだろ」

 

「違う」

 

「違うって、それじゃあ何なんだよ」

 

「自分で考えな」

 

猛田は東條に背中を向け「じゃあな」と言いながら歩いていった。

 

ああ、分かっているさ。明日、その答えを出そう。

 

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「お前が投手としての俺を殺したんだろ!」

 

蛇島はニヤニヤ薄ら笑いを浮かべたまま何も言わない。

そこに猛田が現れた。

 

「蛇島せんぱーい。って何すか!この状況!」

 

蛇島は笑みを崩さず返答する。

 

「友沢君が変な因縁つけてきて困ってるんですよ」

 

すかさず友沢が口を開く。

 

「変な因縁だと!?ふざけるのも大概にしろ!」

 

友沢は蛇島を睨みつける。

それに対して、蛇島の口角は常に上がっている。

 

「友沢、一旦落ち着け。何があったかは知らんが暴力沙汰は問題だからな。蛇島を放してやれ」

 

佐賀が友沢を嗜める。

友沢は「クソッ!」と言いながら、胸ぐらを投げ棄てるように放した。

 

「友沢には悪いが、練習試合の件は受ける。まあ顧問間でも話し合いは終わってるようだし、断れもしないだろう。だからもう帰ってくれ。部活も終了時間だ」

 

「片付け!」という佐賀の掛け声と共に全員が動き始めた。

蛇島と猛田は背を向け、校門の方へ歩いて行った。

 

「友沢君、練習試合楽しみにしてますよ」

 

そう言いながら、蛇島は去っていった。

 

 

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「すみません。さっきは感情的になってしまって」

 

友沢が頭を下げた。

 

「何があったのよ。あんなに血相変えちゃって」

 

みずきは遠慮もなく聞いた。

完全にアンタッチャブルな雰囲気だったのにも関わらず、どストレートに。

 

「別に話す必要はないぞ」

 

佐賀が一応一言加えた。

しかし友沢は返答した。

無駄なことは一切喋らなかったが、ただ一言だけ、事実のみを伝えた。

 

「俺の肘は、あいつに壊されたんだ。直接な」

 

大体予想はできていたことだった。

だが、実際にその言葉を聞いた時、皆が固まった。

あまりに無機質な言葉だった。

その言葉と蛇島のあの薄ら笑いが頭を過ぎり、聖は身震いした。

 

友沢は意外にもあっさりと、過去を語り始めた。

 

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友沢・中学三年生 冬

 

高校受験も近づき、皆が勉強に勤しむ頃。

俺は月姫学園の推薦を通り、勉強もほぼ必要ない手持ち無沙汰な日々を送っていた。

そんな俺が毎日部活に参加することは自然なことだろう。

後輩の指導から自分の練習まで、引退前と変わらないメニューをこなしていた。

そしてある日、俺は耳にしてしまった。

部活が終わり、部室に入ろうとした時。

 

「友沢先輩さあ、毎日部活来るとかだるくね?」

「ホントそれ、俺ら指導とか求めてねえっつーの」

「あの人の練習メニューのせいで疲れとれねー」

「天才が俺らに同じレベル要求すんなっての」

 

部室の扉の前で俺は放心した。

それから、俺は部活に顔を出さなくなった。

 


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