ブラック・ブレット 黒血の復讐者   作:浮霧 劉牙
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第003話――同業者・里見連太郎

「あぁん?お前が俺たちの応援に駆けつけた民警だぁ?馬鹿も休み休みに言え。まだガキじゃねぇか!」


 千景が依頼で指定された場所に着いてバイクを停めた時のことであった。マンションの入り口から渋い怒鳴り声が聞こえてくた。


「んなこと言われても仕方ねぇだろ。俺が応援に来た民警だよ。拳銃も持ってるしライセンスだってある。ウチの社長に言われたから仕方なく来てやってんだ。疑うなら帰るぜ?」


 怒鳴り声の後にはまだ若い声でため息混じりの声が聞こえる。千景はこの声に聞き覚えがあった。マンションの入り口に向かうとそこには体も顔もゴツい刑事と千景と同じ制服を身にまとう細い男子高校生がいた。


「帰るなら帰れ。俺が引き継ぐ。」
「「あぁん?」」


 千景が声をあげると2人仲良く不快な顔を向けてくる。


「なんだアンタ?お前も民警か?悪いな。俺が先に来てんだ。早いもん勝ちだ。」
「帰るんだろ?なら問題ない。」
「それは言葉の綾というか……。」


 千景と同じ制服を着ている男――里見蓮太郎は、千景と同じ民警である。千景とは違う会社に勤める民警だが、蓮太郎は千景と同じく未織に気に入られており、勾玉高校への通学やテスターなどを請け負っている為、よく未織から話を聞くことがある。なお、蓮太郎からしてみれば高校など興味は無く、授業はいつも寝ていてクラスメイトにも無関心な為、千景のことは知らないようだが。


 それにしても同じ制服を着ているのにそこに突っ込まないのは分かっているのかそれともただの馬鹿なのか……、千景が考え込もうとした時に刑事から声がかかる。­


「なんだ、テメェもガキじゃねぇか!しかも同じ制服ということはお友達同士で仲良く民警ごっこかぁ?」
「ごっこじゃねぇ。この事件でごっこなんてできねぇのはお前らが一番分かってるだろ?」
「ちっ、……許可証(ライセンス)だせ。」


 千景は胸ポケットから速やかに許可証を差し出す。刑事から制服のツッコミがあった為に「同じ高校!?そういえば見たことあるような……。」と考えていた蓮太郎も千景が軽く肘打ちすると、慌てて許可証を出した。


「おっ、お前さんは司馬民間警備会社のモンか。ならある程度は信用はできるな。」
「……!!未織んとこの……。」


 蓮太郎は驚いた顔をするが無視。千景は「俺は多田島だ。」と軽く自己紹介をしてきた刑事から許可証を受け取る。多田島刑事は千景に対してはある程度の信用はしたのかニヤッと笑い、先程までの無礼を侘びるような態度であったが、蓮太郎の許可証を見た瞬間、その顔は不審なものに変わる。


「対してお前は『天道民間警備会社』ねぇ、聞かない名前だな。」
「売れてねぇからな。」


 多田島刑事の態度が癇に障ったのかぶっきらぼうな顔で許可証をひったくる蓮太郎。かくいう千景もその会社の名前はほとんど聞かない。未織のお気に入りである蓮太郎が所属している為にいろいろ話は聞いているものの、千景自身が仕事を通じて警察やら他の同業者から聞いたことは一度も無い。


「ところでお前は帰らねぇのか?」
「ちっ、悪かったよ。」
「冗談だ。……仕事の話をしてくれ。」


 千景達のやり取りに苦笑いしていた刑事は渋い顔のまま今の状況を説明し始める。


「場所は二〇二号室。上の階から血の雨漏りがするっていうんで、一〇二号室の奴が悲鳴を上げながら電話してきた。情報を総合すると間違いなくガストレアだ。まぁ、いい、とっとと入ろう。やれやれ、やっとだな。」


 多田島刑事がため息をつきながらマンションの中に入る。千景もすぐ続くが、蓮太郎はなにやらマンションの入り口前で少し立ち止まったようだが、2人がそそくさと入っていく様子を見て駆け足で続く。


「なんだ。びびったのか?」
「ちげぇよ!……なんでもねぇ。」


 こいつはこれから弄れるな、と思いながら蓮太郎と並ぶ千景。先に歩く多田島刑事は2階へと続く階段を昇り始めたところで急に立ち止まると、振り返り千景達に顔を近づける。


「お前ら。相棒の『イニシエーター』はどうした?お前等民警の戦闘員は二人一組で戦うのが基本なんだろ?」


 やはりその質問が来たか、と千景は思った。この質問はどの現場でも言われる質問だ。千景も依頼の数はこなしているが、司馬民間警備会社、という大きい名前に隠れて、千景の名前は余り広がっていない。蓮太郎に関しては全く知らないが。ちなみに階段の上から顔を近づけている為、影とそのゴツさから地味に威圧感がある。こいつはあのゴツイ先生にも負けないくらいのゴツさだな、心の中で思ってしまう。


「あ、あいつの手を借りるまでもないと思ってな!」


 蓮太郎は冷や汗を掻き、明後日の方向を向きながらそう答える。途中自分の方を睨んだのは何故だろうか、と考えながら千景も答える。


「俺のイニシエーターは来ない。俺はソロで活動してる。」
「「何!?」」
「なんだお前ら仲いいな。」
「「誰がこんな奴と!」」


 顔を引き攣らせながら睨みあう2人であったが、すぐに千景を見て不審な顔をする。そして多田島刑事は前を向き、再び歩き始めながら話しかけてくる。


「イニシエーターがいない?本当なのか?」
「いないんじゃなくて来ないんだ。」
「どうゆうことだ?」
「説明する義務はないな。」
「ちっ、気取りやがって……。」
「これは俺達の問題だし、個人的にも法的にも刑事に知らせる道義はない。IISOにも許可は貰っている。戦闘でも俺だけでも戦えるから問題はない。」
「ふん。ずいぶん自信ありげだな。おら、ここだ。」


 そこには既に武装した大量の警官隊がドアの前に待機していた。何故か何人かは青い顔をしていたり、焦っているような落ち着きのない雰囲気があり、千景は嫌な予感を感じる。


「なにか変化は?」


 多田島刑事の言葉に青い顔をしていた警官隊の1人が振り返った。


「す、すいません!たったいまポイントマンが2人、懸垂降下にて窓から突入。その後、連絡が途絶えました……。」
「馬鹿野郎!どうして民警の到着を待たなかった!?」
「我が物顔で現場を荒らすあいつ等に手柄を横取りされたくなかったんですよ!主任だって気持ち、わかるでしょう!?」


 その言葉に千景は失望する。民警がガストレア関連の事件に同伴しているのは決して金や名誉の為だけではない。民警のシステムが出来るまでに発生した(おびただ)しい数の警察の死亡者を減らす為だ。それなのに、この警官隊の用に民警を快く受け入れるどころか嫌悪する者が絶えない為、警察と民警との溝は広がる一方だ。


「よかったな。」
「な……に……?」


 後ろで舌打ちして、拳銃を準備している連太郎も目を見開く。


「今までもこんなことを繰り返していたのか?いや、分かっているなら普通こんなことしないよな。俺達民警が警察(お前ら)の任務に同行している理由はなんだ?みたとこ若い奴らもいるが、お前らが警察になる前の警察の死亡者数とその理由、知らない訳はないよな。……おいお前。」


 突然の千景の言葉に驚いている警官隊の中で、先程多田島刑事に状況を報告した警官睨みつける。


「な、なんだよ……。」
「突入した警官はお前のなんだ?友人か?先輩か?後輩か?……それともただの道具か?」
「仲間だ!道具なんかじゃない!」


 必死に千景の言葉を否定する警官。その警官にゆっくり歩いて近づき、見下すように睨みつける千景。身長は同じくらいだが、顔の近さとその眼光で怯え、座り込んでしまうほどの恐ろしさを警官は感じた。


「そうか。仲間か。いい答えだな。」
「……え?」
「……だが。俺らに手柄を取られたくない、というくだらないプライドのせいで、2人が死んだ。まぁ、まだ100%そう決まったわけではないが、俺らが関与しているという時点でその可能性は限りなく高い。だからよかったな。大事な仲間の命2人分で、これから一生タメになる勉強ができたぞ。」
「あ……。」


 涙を流した警官を見て、連太郎の方を向く千景。


「準備はもう出来てるか?」
「あぁ。……でもそこまで言うことは無かったんじゃないのか。」
「そうかもしれないな。でも必要なことだ。」


 千景はこちらに目を向けている多田島刑事に目配せをする。多田島刑事はハッとすると扉破壊用散弾銃(ドアブリーチャー)を構えていた警官隊2人に顎をしゃくって命令する。命令されたと警官隊が、ドアの蝶番に銃口を当てると同時に、千景と連太郎もドアの前に立って突入の準備をする。


「言っておくが、俺らが許可するまで現場には入るなよ。手柄も罪滅ぼしも考えるな。分かったな。」


 誰が呟いたのかも分からない小さな声を聞き、千景は目を瞑り深呼吸をする。長く、長く息を吐き再び息を吸うと、目を見開く。その目には殺気が篭っており、その集中力が目にとれる。その真剣な顔を見て連太郎も気を引き締める。頬を冷や汗が垂れるが、これは先程の千景の説教とこの殺気のどちらから来ているのか、と考えてしまう。先程の説教はいくらなんでも言い過ぎだ。確かに被害を少なくする為にはあのようなことも必要なのかもしれないが。蓮太郎はこの千景という青年に興味を持った。この仕事を通して、もっと――


「カウント、3(スリー)。」


 千景の発した言葉で現実に戻された。今度は先程とは逆の頬に冷や汗が垂れる。軽く千景の顔を見るが、汗1つかいていない。


2(ツー)。」


 拳銃をを握り直し、腰を落とす。千景も制服の中から拳銃(ベレッタM92)を取り出しスライドを引く。


1(ワン)。」


 ――。


「GO!」


 千景は言葉と同時にドアを蹴り破った。隣の連太郎も同じくドアを蹴破り、その2つの蹴りがドアに当たった瞬間にショットガンも火を吹く。ドアが吹き飛ぶと同時に2人は中へ駆け出す。廊下を真っ直ぐ駆け抜けた部屋に入った瞬間にそれぞれ違う方向へ拳銃を向ける。


 夕焼けで紅く染まった部屋。しかしその部屋の赤は夕焼けのせいだけではなかった。夕陽の色よりも赤いものがリビングにぶちまけられていた。そして生臭い、血の臭い。連太郎が拳銃を向けている方向の壁に2人の警官隊が叩きつけられて絶命していた。千景の方向には何もおらず、即座に連太郎と同じ方向へ構えなおす。


 そこには、高身長で細い肢体の男が立っていた。しかもその恰好は紅い燕尾服にシルクハット、さらに舞踏会用の仮面をつけた奇抜なものだ。


「民警くん。遅かったじゃないか。」
「なんだ……?アンタ、同業者か?」


 連太郎は不審に思いながらも問いをかける。しかし、千景はその仮面の下にもっと恐ろしいモノを感じていた。


『バンッ!』


 千景の持っていた拳銃から弾丸が飛び出す。燕尾服の男は素早くかがみ、弾丸を避けると床を蹴り、千景に肉迫する。


「お前っ!何を!」


 連太郎が叫ぶが、既に千景と燕尾服の男は戦闘に入っていた。
 燕尾服の男の掌底を右腕で払い、すぐさま左手の拳銃で2発発砲。だが燕尾服の男は新体操のような柔軟な体を曲げ回避。そのまま手をつき回し蹴りを放つ。千景は腕を交差して防御するが、壁まで叩きつけられる。


「ふむ。なかなかやるね。……そこの民警くん。先ほどの問いに答えよう。確かに私も感染源ガストレアを追っていた。しかし同業者ではない。なぜならね、この警官隊を殺したのは――私だ。」


 既に口元が上がって笑っているような表情の仮面をしているのに、そのしたで更に燕尾服の男の口元が上がるような感じがした。男の言葉が終わると同時に千景は左足で踏み込み、お返しとばかりに回し蹴りを放つ。同時に蓮太郎も間を詰め、拳を放つ。燕尾服の男は右手で連太郎の拳を掴み、左手で千景右足を掴む。と、同時に連太郎を千景へ向かい投げつける。


「ちぃ!」
「ぐあっ!」


 千景は舌打ちをすると、燕尾服の男に掴まれたままの右足を利用し、蓮太郎を避けるかのように左足で男の顔を蹴りつける。蓮太郎は千景の背後の壁にぶつかり、倒れこんだ。千景の蹴りは仮面をわずかに掠るが、男にダメージは無い。その空中の不安定な態勢のまま投げつけられ、警官隊の死体と並ぶように壁が凹んだ。


 ――強い。
 千景も連太郎もそう思った。2人が再び、構え突撃しようとした時だった。


『ピリリリリリ』


 男の燕尾服の中から携帯の着信音が鳴り響く。千景達が攻撃してこないのを確認すると、静かに携帯を取り出し、電話に出る。電話に出たと同時に2人に背を向け、ベランダに体を向けたのは余裕の現れだろうか。


「小比奈か……あぁ、うん。そうか、分かった。これからそっちに合流する。」


 隙がない――。千景は自分に背を向け、電話をしている男に一撃を与えるビジョンを作ることが出来なかった。いや、()()()を使えば……。千景は目を強く瞑り、葛藤する。


 しかしその時、蓮太郎が飛び出す。


「『隠禅(いんぜん)黒天風(こくてんふう)』ッ!」


 連太郎の強く踏みしめた回し蹴りは首の動きだけで躱された。やはり届かないか……、と千景は思った。しかし、連太郎は素早く足を踏み替え、ハイキックを繰り出す。


隠禅(いんぜん)玄明窩(げんめいか)ッ!!」


 まさかっ……!蓮太郎の一撃が仮面を捉える。燕尾服の男の首は180度回転し確実に仕留めた、と蓮太郎は心の中でやった、と叫ぶ。
 

 しかし――。


 そのまま衝撃で倒れると思われた燕尾服の男は携帯の持っていない左手で自身の首を力任せに回転させる。回転した首は怪音と共に元通りになり、すぐさま態勢を立て直した。そして、何事も無かったかのように通話に戻る。


「いや、なんでもない。ちょっと立て込んでてね。すぐそっちへ行く。」


 なんだ、こいつは。千景は男を驚愕の目で見る。連太郎も同じだった。男は携帯電話をとじると、蓮太郎のことをジッと見つめる。何秒経ったか、男は仮面に手を当て、キキキ、と不快な笑いを漏らす。


「いやはやお見事。油断してたとはいえまさか一撃をもらうとは思わなかった。ここで殺したいのは山々だが、今ちょっとやることがあってね。」


 腕を広げ、蓮太郎に賞賛の言葉を送る。


「ところで君たち、名前は?」
「……里見、連太郎。」
「七誌、千景だ。」
「サトミ君にナナシ君……ね。キキッ。」


 その言葉が終わると、千景達に背中を向け、ベランダへ出て手すりに足をかける。


「またどこかで会おう、里見くんに七誌くん。」
「アンタ、何者だ。」
「私は世界を滅ぼす者。誰にも私を止めることは出来ない。」


 男はそう一言言うと、ベランダから飛び降りて姿を消した。



初の戦闘シーン。
上手く書けてるか不安。

でも原作準拠なのでオリジナルの展開には期待しない方がいいです←






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