上条当麻が風紀委員でヒーローな青春物語   作:副会長

29 / 63

 早くもこのサブタイを使ってしまったぜ……


妹達〈シスターズ〉

 

 結局、事情説明を求める超電磁砲(レールガン)ガールズに押し切られ、上条は事情を簡単に説明してやる事にした。

 

 先程までにぎやかにパーティが行われていたソファーに少女達を座らせ、上条と一方通行(アクセラレータ)、食蜂はそれと向かい合うようにカーペットに腰を下ろした。

 縦ロールはいつの間にか用意したスイーツをインデックスに提供し、話の邪魔にならないように隔離している。ていうかインデックスの扱い酷いな。

 

「……それじゃあ、上条さん。説明していただけますか?」

「……ああ。だが、今から話すことは、学園都市にとって秘中の秘、絶対の極秘情報って奴だ。学生どころか教員やそんじょそこらの研究員すら知らない。……万が一にも、他言無用だ。――いいな」

 

 ギンッ! と、強制的に背筋を矯正させられるような、鋭い上条の眼光。

 

 その有無を言わせない迫力に、少女達は唾を呑みこみながら、重々しく頷く。

 

「……よし。それじゃあ、打ち止め(ラストオーダー)。こっちに来て、自己紹介しろ」

「は~い♪」

 

 そう元気よく返事をして、御坂の傍らに居た少女は、トコトコと歩いて胡坐をかいている上条の膝の上に座った。

 

 そして、向かい合う御坂達に、にこやかに笑いかけながら、自身の名を名乗る。

 

 

「私は検体番号(シリアルナンバー)20001号――打ち止め(ラストオーダー)だよ! 改めて、よろしくねお姉さま! ってミサカはミサカは高らかに自分の名前をコールしてみたり!」

 

 彼女は無邪気に、朗らかに言った。

 

 

 だが、御坂は限界だった。混乱の極致だった。

 

 

 自分と同じ――いや、自分の少女時代に瓜二つの――見知らぬ少女。

 

 

 そんな人物が、自分のことをお姉さまと呼び、まさしく姉として慕ってくる。

 

 

 そして何より、そんな存在が、自分の知らない所で、上条や食蜂と親交を深めていた。

 

 

 もう訳が分からない。御坂は立ち上がり、その年端もいかぬ少女を怒鳴った。

 

 

「――いい加減にして!! 何なの、アンタ!! なんで私とそっくりなの!! お姉さまって何!?」

 

 

 ビクッと打ち止め(ラストオーダー)が怯える。上条は御坂を止める為に立ち上がろうとした。

 

 だが、完全に頭に血が上っている御坂は、それらが目に入らず、そのまま、決して言ってはいけない言葉を吐き出した。

 

 

 

「私に、妹なんていない!!」

 

 

 

 その言葉に、打ち止め(ラストオーダー)の体がピクリと硬直するのと。

 

 

 バリィィン!! と、一方通行(アクセラレータ)がテーブルを叩き割るのはほぼ同時だった。

 

 

「きゃぁ!!」

 

 佐天と初春が悲鳴を上げる。

 

 透明なガラス製の高級感あるテーブルは粉々に砕け、御坂は思わず我に返り、若干怯えた様子で一方通行(アクセラレータ)に向き直った。

 一方通行(アクセラレータ)の華奢な拳には、傷一つなかった。

 

 ギロリと、その白い少年の真っ赤な瞳が御坂を睨み据え――

 

 

「やめろっ!!」

 

 

 上条は立ち上がりかけていた一方通行(アクセラレータ)の肩を、その右手で抑えつける。

 

 一方通行(アクセラレータ)は、文字通り血走っているかのようなその真紅の目で上条を睨みつけるが、上条はまるで怯むことなく、それを真っ向から受け止めた。

 

 

 しばしの静寂。食蜂以外の全員が、二人の男の睨み合いを固唾を呑んで見守る中――

 

 

「……ちっ」

 

――と、一方通行(アクセラレータ)は舌打ちをしながら、ドカッと再びカーペットに腰を下ろした。

 

 皆が息を吐いてホッとする中、それでも一方通行(アクセラレータ)は変わらず御坂を鋭く睨む。御坂は悲鳴を漏らしかけるが何とか耐えた。だが、一方通行(アクセラレータ)の方を見ることは出来ず、俯き、ソファーに再び腰を下ろして、膝の上で拳をギュッと握る。

 

「……片付けますね。上条さんはお話を続けてください」

「……すまない、縦ロール」

 

 先程までインデックスの給仕をしていた縦ロールが、自然と掃除用具を取り出して上条達と御坂達の間に入り、ガラステーブルの残骸を処理する。

 

「……打ち止め(ラストオーダー)。あいつ等は全員帰ってるか?」

「うん! 今日は調整もないから! って、ミサカはミサカは空気を変えるべく不自然に元気よく答えてみたり!」

「悪いが、ここに呼んできてくれるか?」

「了解っ! ってミサカはミサカは我が家に向かって元気よく駆け出してみたりぃ~!」

 

 上条の膝に座っていた打ち止め(ラストオーダー)は、ぴょんと立ち上がると、そのまま廊下に向かって駆けていった。

 

「……打ち止め(ラストオーダー)、さん、のお家はどこですの? 一人で行かせてしまって大丈夫でしょうか?」

 

 今度は白井が重たい沈黙の時間を失くそうと恐る恐る質問する。

 それに、上条は淡々と答えた。

 

「あぁ、大丈夫だ。アイツ等の家は佐天達の家とは反対側の、この部屋の隣だ。いくら打ち止め(こども)でも、隣の部屋の行き来くらい、この時間でも一人で出来るだろう」

「え、そうなんですかっ!?」

 

 それを聞いて佐天達は驚愕するが、一人、御坂は爛々とした目で上条を睨みつける。

 

「……アンタ……どこまでっ……」

「………………」

 

 色々な感情の詰まった御坂の睨みを、上条は動じずに受け止める。

 

 室内に、再び重たい沈黙が満ちた。

 

 その静寂を壊すように、ガチャと玄関の扉が開かれ「連れてきたよ~! ってミサカはミサカは元気よく帰還を告げてみたり!」という打ち止め(ラストオーダー)の甲高い声とトタトタという慌ただしい足音が聞こえる。

 

 そして、それに続く数人分の足音。

 

 まず、打ち止め(ラストオーダー)が部屋の中に入ってくる。

 

 

「ただいま~とミサカはミサカは再びヒーローさんにダ~イブ――と見せかけて、ヒーローさんに怒られて少し落ち込んでるあなたに向かってダ~イブとミサカはミサカはフェイントをかけてみたり!」「うぜぇ」「反射!?」という打ち止め(ラストオーダー)一方通行(アクセラレータ)のやり取りに誰も注目しないほど衝撃的な光景が、そこにあった。(怪我をしないようにベクトルを操作して跳ね返しているところに彼の不器用な優しさを感じる)

 

 

 打ち止め(ラストオーダー)の後から部屋に入ってきたのは、常盤台中学の制服を着た、五人の――御坂美琴。

 

 

 打ち止め(ラストオーダー)のように少女時代の姿ではない。正真正銘、現在の中学二年生、十四才の御坂美琴と、瓜二つで、同一といっていいほどそっくりだった。

 

 双子や遺伝といったレベルではない。天に任せた采配では、ここまで同一には創れない。

 

 まさしく、人が、自らの意思で、作らなくては、こうはならない。

 

 

 白井達は、開いた口が塞がらない。打ち止め(ラストオーダー)の時は、似ているとはいっても外見年齢に差があったから、それこそ本人が言うように妹のように見ることが出来たが、これは違う。衝撃が違う。

 

 友達と全く同一の顔が、存在が、五人。御坂本人を含めて、六人が同じ空間にいるのだ。

 違和感で、混乱でどうにかなりそうだった。さすがのインデックスもケーキを食べる手を止めて「……みことがいっぱいなんだよ」とフォークを落としていた。

 

 しかし、そんな彼女達よりもはるかに強烈な衝撃を受けている少女がいる。

 上条、一方通行(アクセラレータ)、食蜂、縦ロールの事情を知っている四人の視線は、その少女に集中する。

 

 

 少女は――御坂美琴は、顔面を蒼白させ、額から不健康な汗を流し、わなわなと全身を震わせながら。

 

 

 自身と唯一異なる部分――感情をまるで映さない瞳で自分を見つめる五人の“自分”を恐れるかのように、忌避するかのように――拒絶するかのように、一歩、後ずさりながら、叫ぶ。

 

 

「あ、」

 

 

 わなわなと、唇と肩を揺らして、ブルブルと震えるながら指さして、叫ぶ。

 

 

「――アンタたち、一体何者なのよ!!」

 

 

 キーン、と御坂の叫声が、室内に反響する。

 

 

 白井達は、固唾を呑んで御坂を見守る。

 

 上条達は、神妙な顔つきで、御坂と瓜二つの少女達の方を見た。

 

 

 五人の、御坂と同一の少女――その中で、最も御坂に近い位置にいた少女が――一瞬アイコンタクトで上条とやり取りし(上条は少女に頷いた)――一歩前に出て、淡々と、無感情に言った。

 

 

「初めまして、お姉様。私は――私たちは、『妹達(シスターズ)』。学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)である御坂美琴(オリジナル)の、『量産能力者(レディオノイズ)計画』によって“製造”されました。御坂美琴(おねえさま)の――」

 

 

 

――体細胞クローンです。

 

 

 

 彼女はそう淡々と自らの出生を語った。自己紹介した。

 

 

 御坂は、目の前の存在から逃げるようにさらに後ずさり、ソファーに躓き、その上に倒れ込む。

 

 

「み、御坂さん!」

「御坂さん!」

「お姉様!」

「みこと!」

 

 四人の少女が駆け寄るが、御坂はブツブツと「……うそよ……こんなの……」と呟くばかりだった。

 

 それを見て、上条は立ち上がり、御坂に歩み寄って、見下ろすようにして言った。

 

「……どうする、御坂。……今日はここまでにしとくか?」

 

 上条はそう言った。そこには気遣いが込められていたが、それが御坂に向けられたものなのか、それとも別の誰かに向けられたものなのかは、御坂には分からなかった。

 

 だが、それでも確かなのは、“ここまで”という言葉。それが意味するのは、まだ何か続きがあるということ。

 

 

 ここまで衝撃的なことよりも、先の、奥の、闇があるということ。

 

 

「……いいわ。全部、聞く。……聞かせて」

 

 御坂はゆっくりと体を起こしながらも、上条の目をしっかりと見据えて答えた。

 

 上条は「……そうか」と答えた後、白井達に目を向けて言った。

 

「……悪いが、白井。佐天。初春。それに、インデックス。……ここからの話は、御坂と、こいつらのプライバシーに関わる問題だ。……出来れば、席を外してもらえるか。……詳しくは、後日、本人から聞いてくれ」

 

 白井達は、しばらくは逡巡していたが、やがて頷き、部屋を後にする。

 

「……そうですね。私たちは、帰った方がいいみたいです」

「まずは、御坂さんだけが聞くべきですね」

「お姉様。何かありましたら、わたくしはいつでも力になります」

「……そうだね。みこと。それからクールビューティーたち、ラストオーダー、またなんだよ」

 

 上条は四人を玄関まで見送った。

 

 そして玄関前で、最後にもう一度、念を押す。

 

「……お前ら。今日、聞いた情報だけでも、知っていたらヤバい極秘情報だ。絶対に漏らすなよ。…………そして、なんでお前らにそんな危ない情報を教えたか、なんだが」

 

 上条は、少し顔を俯かせる。

 そんな上条に四人は不思議そうな顔をしたが、上条は顔を上げると、毅然と答えた。

 

 

「あいつ等の、友達になって欲しいんだ」

 

 

 上条は、目を見開く四人に対し、更に続けた。

 

「……アイツらは、今言ったような事情を抱えているから、アイツらの存在を知る人間は少ない。……そして、悔しいが、受け入れてくれる人も。だが、アイツ等も立派な命だ。アイツ等も、一人一人が、命ある人間だ。好きなものがあって、笑って、泣いて、喜ぶ――普通の女の子なんだよ。……御坂には、いつかは話さなくてはいけないと思っていた。……そして、御坂に一番近いお前達にも……話したいと。……お前達に迷惑をかけてしまうことになるかもしれない。もしかしたら、命を狙われてしまうことになるかも。……だが、お前達は、俺が、全力で守る。絶対に守る。……だから、怖がらずに、またアイツ等に……会ってやってくれないか?」

 

 上条は、そう言った。懇願するように、頭を下げた。

 

 そんな上条に、白井達は、目を見合わせ、当然のように、言った。

 

 

「「「「あたりまえです(わ)(なんだよ)!」」」」

 

 

 その迷いのない、まっすぐな言葉に。

 

 

 上条は、安心したように、微笑んだ。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 上条がリビングに戻ると、妹達(シスターズ)五人は縦ロールがすっかり綺麗にガラステーブルの破片を片付けたカーペットに律儀に正座しており、打ち止め(ラストオーダー)は今は食蜂の膝に座っていた。縦ロールは食蜂の背後に立っていて、一方通行(アクセラレータ)は部屋の隅の壁に寄りかかっている。

 

 そして御坂は、ソファーに腰かけながらも、両肘を膝に乗せ、両手を口元に持ってくる体勢で懊悩としていた。

 

 上条は縦ロールに目線で座るように促すと、自身は御坂の隣に座り、「さぁ。何から聞きたい?」と促した。

 

 御坂はしばらく考えた後、「……じゃあ、まずは」と切り出す。

 

「――そもそも、どうやって私のクローンを作ったの? 私は、もちろんそんな実験にも研究にも協力した覚えはない。いくら学園都市の科学力だって、何もないところからは――」

「あら、御坂さん。とぼけてはダメよ。あなたはこの計画力にバッチリ協力しているわぁ」

 

 そう言って、食蜂は御坂の言葉を遮り、煽るように嘲笑する。

 御坂は瞬時に沸騰し食蜂を怒鳴り散らそうとする――が、食蜂の顔を見て、その表情を見て、頭が急激に冷える。

 

 打ち止め(ラストオーダー)を膝に乗せた食蜂には、いつも御坂を煽る時の笑みはなかった。

 

 ただただ冷静に、冷徹に、御坂を糾弾していた。

 

 

 いつまでこの子達の前で被害者面するつもりだと。

 

 

 お前は、紛れもない、加害者だと。

 

 

 だが、御坂にはやはり、何の身に覚えもない。

 

「そ、そんなこと言われても、私は――」

 

「筋ジストロフィー」

 

 食蜂は、尚も言い募る。

 

 御坂美琴を、追い詰める。

 

 

「かつて、この難病の治療に繋がると“唆されて”、提供したでしょう?――あなたの、御坂美琴の“DNAマップ”を」

 

 

 その言葉によって、御坂の脳裏に、幼き日の情景がフラッシュバックした。

 

 

 記憶の海から、引っ張り出される。

 

 

 御坂が、目の前の打ち止め(しょうじょ)と同じくらい、幼かったあの日。

 

 

 目の前に、苦しむ筋ジストロフィー患者達の様子を見せられ。

 

 

 少女の、淡く、純粋な正義感と義務感に付け込んで。

 

 

 正しい医者の仮面を被った黒い笑顔と、差し出してきた右腕。

 

 

 御坂は、それをとった。確かに、御坂美琴はあの日、片棒を担いだ。担がされた。

 

 

 いいことをしたと、意気揚々と、私は。

 

 

「…………ぁ……ああ……」

 

 

 まさか。

 

 

 あの時のアレが。

 

 

 だが。あれは。あの人達を救う為に。

 

 

 苦しむ人を。助ける。その為に。私は。

 

 

「はっ」

 

 

 一方通行(アクセラレータ)が、嘲笑う。

 

 

「人工的に脳味噌弄くって、超能力者を大量生産しよォなンて考える学園都市(やつら)だぞ。そンな人道的な(イイ)ことに精を出すはずねェだろうが。どいつもこいつも頭イカレてンだよ」

 

 その第一位の言葉に、御坂は木山春生の言葉を思い出す。

 

 

『……君は私と同じ、絶望に限りなく近い運命を背負って……』

 

 

 絶望に限りなく近い運命。

 

 

 それは、この事、なのか。

 

 

「……だが、実験は失敗したんだ」

 

 上条の言葉に、御坂は顔を跳ね上げる。

 

「『量産能力者(レディオノイズ)計画』――この計画は、さっきアイツが言った通り、“超能力者(レベル5)”を量産することが目標だったんだ。……だが、御坂のDNAをそのままコピーしても、その強度はせいぜい異能力者(レベル2)。よくて強能力者(レベル3)程度らしい。ここにいる五人も、二人が強能力者(レベル3)で、三人が異能力者(レベル2)だ。――つまり、実験は失敗する、ということが樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)による演算の時点で分かり、計画は頓挫した」

 

 学園都市の学生の六割が無能力者(レベル0)という現状では、100%確実に、それも単価18万円で、異能力者(レベル2)とはいえ能力者を作れるというのは一見利潤を生むように思えるが、国際法に完全に違法しているというリスクを犯しながらも、兵器としては商品価値のない程度の能力しか発現できないのであれば、やはり割に合わないということだろうか。

 

 いや、学園都市の研究者は、そんなわかりやすいこと――利益目的では、そもそも動かない。奴等が動くのは、ただただ自身の中に巣食う歪んだ知的好奇心のみ。

 

 ここでは、ただ、超能力者(レベル5)超能力者を大量生産できるか? その証明のみが目的で、それが叶わないから止めただけに過ぎない。

 

 

 御坂は一瞬安堵するが、今の言葉に違和感を覚えた。

 

 

樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)による演算の時点”、で?

 

 

 それは、実験の結果失敗だったというわけではなく、その『量産能力者(レディオノイズ)計画』は、計画段階で頓挫――つまり、実行されなかったということ、ではないのか?

 

 

 では、なぜ。それならば、一体どうして。

 

 

 こうして、妹達(シスターズ)、目の前にいるのだ?

 

 

「だが。学園都市はそんなことで諦めるような物分かりのいい連中じゃなかった」

 

 アイツ等の欲望と狂気は無限大だ――と、上条は吐き捨てるように言った。

 

 そう。この街の研究者は、ただその知的好奇心のみによって動く。

 

 そして、それを満たすためなら、決して手段を選ばない。

 

 それが例え、どれほど悍ましく、恐ろしく、歪んだ、許されない手段であろうとも。

 

 

 悪夢はまだ終わらない。始まってすらいない。

 

 

 ここからが、本当の絶望だ。

 

 

「――これは、何もお前だけの問題じゃない。いろんな人間を巻き込み、いろんな思惑が絡み合い、いろんな悲劇が、それによって生まれたんだ」

 

 

 上条は、語り出す。

 

 

 食蜂が。一方通行(アクセラレータ)が。縦ロールが。

 

 

 打ち止め(ラストオーダー)が。五人の妹達(シスターズ)が。

 

 

 そして、御坂が。

 

 

 その物語に、神妙に耳を傾ける。

 

 

 

「――始まりは五年前。俺が十才の頃の話だ」

 

 

 

――俺は、金髪星目の少女と、白髪赤目の少年に出会ったんだ。

 

 

 

 上条当麻は、そう切り出した。

 

 

 物語を、紡ぎ出した

 





 次回、過去編へ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。