艦隊これくしょん -艦これ- ~空を貫く月の光~   作:kasyopa

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今回は第二支援艦隊交流会。
そして明石さんから渡された包みの真相が明らかに!!

あと金剛さんが結構英単語多いです。スペル間違ってたらすみません。


第四話『些細な契』

荷物と自作の地図を持って扉の前に立つ。

部屋割りが睦月さんや夕立さんの案内通りであればここのはずだが。

 

扉を数回ノックして開ける。

そこに居たのは響さんと暁さんの二人。

 

「あれ? 涼月じゃない。そんな大荷物を持ってどうしたの?」

「この度『第二支援艦隊』に転属になりました涼月です」

「ん……君は確か第三水雷戦隊に配属になったんじゃ」

「正式はこちらに配属される予定だったのですが実は書類に手違いがあったそうで」

「なるほど。災難だったね」

「書類を書き間違えるなんて、レディとしてなってないわ!」

「あ、あはは……」

「荷物はこっちに置くといい。

 後、隣の部屋にも同じ艦隊の人達がいるから挨拶も忘れないようにね」

「はい。ご丁寧にありがとうございます」

 

苦笑しながら空いている机に荷物を置く。

手早く荷物を纏めて挨拶を済ませよう。

第三水雷戦隊の時の様に出撃の直前で顔合わせなどという事態は避けたい。

 

「あれ? 何その風呂敷」

 

私の持っていた大きな風呂敷に向かって指を指す。

普通ではない大きさからか、興味があるようだ。

第三水雷戦隊の歓迎会が終わってから開けようと思っていたのだが、

歓迎会が終わり次第すぐ移る事になったので言われる今まで開ける機会を失っていた。

 

「随分大きな荷物だね。中身は何だい?」

「実は私もここに配属されて落ち着いてから開ける様にと釘を打たれていまして」

「だったら今ここで開けましょ! 流石にもう配属の間違いなんてないわ!」

 

目を輝かせながら暁さんが迫ってくる。

私としては明石さんから渡された物なので、

彼女の期待に答えられるものが入っているとは限らないと予想する。

それでもここまで期待されては開けないのも失礼なので、ついにその封を解いた。

 

「「おおー(!)」」

「これは……」

 

風呂敷に包まれていたのは増設用のマスト。

そしてころんと可愛らしく転がって出てきた一人の妖精さん。

どうやら風呂敷を背もたれにしていて、急に開けられ勢いそのままに後転したのだろう。

そのマストを覗き込むともう一人の妖精さんが眠っていた。

 

「これは……装備?」

「そうですね。私が泊地での演習で使っていた「この妖精さん可愛いー!」」

 

説明の途中で暁さんが転がり出てきた妖精さんを両手で捕まえる。

果てには頬ずりする始末。妖精さんは何が起こったのか解らず困惑している表情だ。

先程の大声でマストの中で眠っていた妖精さんも飛び起き、

勢い余って窓から飛び出し転げ落ちる。

机に落ちるギリギリで手を出して受け止めると目を回していた。

 

「暁さん、妖精さんが苦しそうですよ」

「はっ! べ、別に欲しいと思ってないし! ほんとよ!」

 

欲しいと言われても私の大切な妖精さんなので上げることは出来ない。

暁さんから妖精さんを返してもらって、目を回している子の目を覚まし、

二人が何故ここにいるのか事情を聞いてみた。

 

「なるほど、『演習でいっぱい使ってくれたのに離れ離れになるのは嫌だ』、と」

「解るの?!」

「なんとなくですよ。えっと『だから明石さんにお願いして付いてきた』んですか」

 

ある程度事情が分かったところで、この装備をどうするか考える。

装備と言っても主砲や魚雷などの火器で無ければ機関や電探と言った精密機器でもない。

マストは妖精さん達が高い所から見渡す為の物で、探すのはこの妖精さん二人。

大人しく呉の工廠に預けるという事も考えるが、

慣れない場所故に寂しがりやなこの二人は、きっと抜け出してここにやってくるだろう。

だからと行って無断でここに置くのも気が引ける。

 

「何を騒いでるのよ暁ちゃん。もうちょっと静かに……」

 

本格的に悩みだしたところで扉が開かれ、女の人が顔をのぞかせた。

千草色の髪で短髪。頭の後ろで深緑色のリボンで髪を一括りにしている。

注意する為に来たようだが私の机の上に立っているマストを凝視していた。

 

「あ、すみませんすぐに片付けますので「待って!」」

 

部屋に入って来た彼女はそのままマストをいろんな角度から観察し始める。

まるで私がこの鎮守府の地図を作成した時の様に。

掌の上に居る妖精さん達は怖くなったのか、服に向かって飛びついて肩までよじ登る。

私は大丈夫? という意味を込めて、人差し指で優しく二人の頭を撫でた。

 

「簡単そうに見えて頑丈な作り……ねぇ、これって貴女の装備?」

「は、はい。マストを増設して熟練度の高い見張りに特化した妖精さんを配備させる、

 『熟練見張員』です」

「まさかこんな懐かしい装備が見られるなんて思わなかったわ。

 それに中まで見せてもらったけど、このマスト随分丁寧に作られているのね」

「こちらでは普及していないのですか?」

「電探がある程度普及してからはあんまり見なくなっちゃったの。

 重心も三脚の角度もぴったり……ねぇ、これ貴女が開発したの?」

 

身長は私の方が少し低い程度なのだが、

目を輝かせながら近付いて訪ねてくる彼女に威圧され思わずたじろぐ。

誤解を招くのも悪いので首を横に振ることで違うという事だけ主張する。

 

ただ私が威圧されてしまったのもあって肩の上に乗っている子達は完全に怯えてしまい、

首の後ろの襟まで逃げてしまった。小さな手が首に触れているのでくすぐったい。

 

「あの、失礼とは思いますが、お名前を伺いたいのです」

「私は軽巡洋艦の『夕張』。貴女は?」

「第二支援艦隊に配属になった『涼月』です」

「貴方があの防空駆逐艦の……ねぇ、この装備、誰が作ったか教えてくれないかしら」

 

またも興味津々に聞いてくる『夕張』と名乗った彼女。

どうして彼女はここまで装備に興味があるのか。

 

「夕張さんは、兵装実験軽巡として有名だからね」

 

後ろで見ていた響さんがやっとのことで助け舟を出してくれる。

兵装実験軽巡。その名の通りなら確かに自然と装備に目が行くのも解る。

一方の暁さんはどうやら私の襟にしがみついている妖精さん達から目が離せないようだ。

足を滑らせてしまったらしく、頑張っている二人に手を伸ばして何とか助ける。

落ち着くも、まだ夕張さんの事が怖いらしく今度は袖の中まで逃げようとしていた。

 

「あの、一応落ち着きませんか? この子達が怯えてしまって」

「ああ! 驚かせるつもりは無かったの。ごめんね」

 

謝る彼女を見て二人はお互いに顔を見合わせて頷いた後、胸を張って敬礼する。

それを見た夕張さんは感心していた。

落ち着いたところで先程の質問に答えよう。

 

「この装備を開発してくれたのは、工作艦の『明石』さんなんです」

「工作艦?」

「はい。艤装の修理や兵装の開発に関する全てを担当している艦娘さんで、

 泊地ではとてもお世話になりました」

「兵装の開発に関する全て?!」

 

更に目の輝きを増させる彼女。これは那珂さんよりももっと特徴的な人かもしれない。

好きな物に対して熱心に取り組み回りが見えなくなるような。

そう言う意味では、明石さんにも似ているかもしれない。

 

 

 

その後も立て続けに質問攻めに遭い、今はどこに居るのか、

普段はどんなことをしているのか、趣味は何なのかなど、

そして最後には明石さんをいつか紹介してほしいという約束までしてしまった。

 

「(私は問題ないのですが、明石さんの都合を考えず引き受けてしまいました)」

 

その代わりに暁さんと響さんの合意の上で、

あのマストと二人の妖精さんを部屋に置いていいという事になった。

ただそれが秘書艦である長門さんに知られると何かと言われかねないらしく、

今まさに夕張さんが交渉しに走っている。

 

気分が重くなりながら隣の部屋へ。

暁さんと響さんの話によればこの鎮守府の主力である高速戦艦の二人とのこと。

 

気を引き締めて扉の前に立ち一度だけ深呼吸。

ノックをしようと手を上げた所で、扉が開かれる。

 

部屋の中から現れたのは茶髪で腰まで伸ばした髪で、

お団子とは違う、三つ編みにした髪を輪の様にまとめた髪型をした女性。

頭には金色の金具のような髪留めが。

 

服装は巫女服のような、でもミニスカートや肩や脇を見せる露出の多いデザインで、

平安貴族の和服の様に袖は横に長い。胸元には金色のしめ縄の様な物が。

 

暫く視線が合ったまま見つめ合っていたが、先に口を開いたのはその女性であった。

 

「Oh! 貴女が最近配属になったNew Faceデスカー」

「にゅ、にゅーふぇいす?」

「英語で【新顔】って意味デース! つまりは【新人】!

 welcome to the second support fleet!」

「う、うえるかむ……?」

「第二支援艦隊へようこそ! 私の名前は『金剛』! よろしくお願いしマース!」

 

先程した深呼吸がまるで意味を成さない。

いや、何をしたとて意味を成さないだろう。

 

それほどまでに、この『金剛』という女性はマイペースなのかもしれない。

マイペースという言葉自体合うのかは解らないが、

自分のペースで皆を引っ張っていくようなそんな女性。

とりあえず自己紹介されたのだから私も返さないと。

 

「秋月型駆逐艦、三番艦『涼月』です。こちらこそよろしくお願いします」

「榛名の様に礼儀正しい子デスカー。可愛いデスネー♪」

 

不意に抱きしめられる。痛くはなかったがあまりに突然の事なので言葉を失った。

大和さんの様に何かを教える為ではないのははっきりわかる。

ただこれは流石に堪える物があった。

 

「こ、金剛さん、急にだと苦しいです……」

「Oh! sorry. Physical intimacyのつもりだったのデスガ」

 

慌てて解放する金剛さん。何回かゆっくり呼吸をして整える。

 

「あの、金剛さんはご用事いいのですか?」

「What's? どうしてデース?」

「部屋から出たという事はどこかに用があるという意味では」

「Oh! 思い出しましタ! 歓迎partyの為のTeaが無くなっていましタ!」

 

そう言って彼女は風の様にいなくなった。

歓迎と言っていたので、歓迎会に必要な何かが足りないのだろう。

 

扉が開け放たれたままの部屋の中からは甘い香りが漂う。

大和さんが作る洋風のお菓子の香りに似ていた。

それに誘われるように部屋の中を覗いてみると、

金剛さんによく似た茶髪で短髪の人が忙しそうにお菓子を盛り付けていた。

服装や頭にしている髪留めは同じ物なので、姉妹艦の人なのだろう。

 

と、不意に視線が合い動きが止まる。

暫くじっとしていたが何も動きが無いので私の方から名乗り出る事にした。

 

「あの、この度第二支援艦隊に配属になりました、『涼月』と言います」

「ああ! あの提督が前仰っていた! 金剛型戦艦二番艦『比叡』です!」

 

慌てて敬礼をする比叡さんを見て思わず笑ってしまう。

なるほど、あの時大和さんが笑ったのが解る気がする。

 

「あの。何か私、おかしいことしました?」

「いえ、ただこの艦隊も素敵な人達がたくさんいるんだなって」

 

暁さん、響さん、夕張さん、金剛さん、比叡さん。この五人とこれから過ごしていく。

ただ一つ言えることは、退屈しない毎日が送れそうだ。




最上は犠牲になりました。
というかこの小説最上が空気どころか登場しません。
いわば最上のしていたであろう役回りを涼月がやっている感覚かもしれません。

この小説はアニメのストーリーとキャラ配置に乗った、
史実を織り交ぜつつゲームに近づけるという路線で書いております。

なのでチマチマですが、『ゲームにしかない台詞』を言ってたりします。
(例:大和「夾叉か……うん、次は直撃させます!」など)
アニメしか見てないよ! と言う人はゲームのWikiと照らし合わせながら見ると、
面白さが倍増するかもですよ!

また、ゲームをプレイしている事前提の文章になっていることが多いので、
自問自答コーナーにはゲームに関する要素も含めていきます。長文不可避なので注意。


簡易的な自問自答コーナー

Q.熟練見張要員って何ぞや
A.艦これの装備です。電探(レーダーっぽいやつ)より性能は低いですが、
 この小説では肉眼と言う利点を生かして演習などに使われています。
 マストを増設する必要がある理由は、装備なので1スロット分枠を圧迫するという事。
 駆逐艦でも涼月の基準となった秋月は3つ装備可能なので、
 主砲と魚雷、機銃と言う形になっています。これを装備する時は背後の魚雷を外します。

Q.金剛ってこんなに英語喋るっけ。
A.さらにキャラを濃くした感じだと思ってください。
 なおアニメよりゲームの方が英語そんなに使わないです(台詞の数もありますが)。
 Physical intimacyは日本で言う『スキンシップ』で、
 そのまま英語にすると、性的な意味が強くなるらしいです。和製英語らしいですね。

Q.今すぐ比叡から菓子の準備をやめさせろ!
A.出来上がったものを配膳しているだけなので、問題ありません。
 そもそも比叡は軍艦時代お召艦(天皇陛下を乗せた艦)として有名で、実は相当に飯が旨いらしい。
 問題は自衛隊のイージス艦で、そこはメシマズらしい。

Q.実際アニメ版のキャラクターってどう作られてるの?
A.大抵台詞からです。全く持って一概には言えないのですが。
 料理は時報ボイスと呼ばれる定刻になるというボイスに、
 お料理関係の物が含まれる場合、その発言によって決定される場合が多いです。
 ただし『吹雪』が憧れているのは『扶桑姉妹』(公式キャラ紹介)だったり、
 『赤城』が『大食い』なのは完全な『二次ネタ』で実は加賀が最も食ったり、
 『睦月』の台詞がもっと如月みたいに古参艦風で小悪魔的だったりと、
 結構改変が入っている場合があったりするので、
 ぶっちゃけアニメとゲームは別次元のお話として見てください。(逆輸入多数あり)
 後個人的には吹雪や赤城書いてる絵師さんの画の方がアニメより好きです。

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