艦隊これくしょん -艦これ- ~空を貫く月の光~   作:kasyopa

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アニメ第五話後半戦。
表で第五遊撃部隊が旗艦決めをしている後ろで、
第一機動部隊はどう動くのか……(完全な想像)




第十四話『二人三脚』

翔鶴さんの言葉を聴いたその日の夜。私は一人月を見上げる。

 

「何か、大きな物を変える……ですか」

 

私の中でも、ここにきて大きく変わった物がある。

いや、正確にはこの海域を解放した時、『彼女』を見てからだ。

彼女を見てから、彼女の言葉を聞いてから、それは現実の様な記憶の様な夢を見た。

 

でもそれは私だけではない。如月さんも、言ってしまえば榛名さんも同じだ。

似たような物で言えば、川内さんの『夜戦好き』と言うものも、

蒼龍さんや飛龍さんのいう『鬼教官』と言うのもある。

 

まるで速いのは当たり前と言わんばかりの才を持つ島風さんの様な者もいれば、

睦月さんの様に最初から艦娘に向いていないのではと思えるまでに弱弱しい者。

それでも練度を高めれば実力は確実に上がっていく。

 

私達は何を想い、何を願い、何を持ってして、艦娘になったのか。

 

自分で問いかけながらも、私には難しすぎる問いでもあった。

 

 

///////////////////////

 

 

第一艦隊旗艦として正式に認められた私は、

提督から与えられたある海域の攻略に当たっていた。

 

それはバシー島と呼ばれる島の付近に豊富なボーキサイトが見つかったらしく、

大規模反攻作戦に向けた航空戦力強化の為の資源を確保する物。

その為その付近の敵を掃討するのが私達の最初の任務となる。

 

敵艦隊には空母が確認されている上に、これが完了後の別任務遂行の為、

この様な大規模な編成になったとのこと。

 

「赤城さん、翔鶴さん、索敵機の発艦を。

 敵空母が確認されている以上、敵もどこから見ているか解りません」

「解りました」「ええ、解ったわ」

 

複縦陣を取りながらも注意して海域を進む。

因みに私の装備は魚雷発射管が破壊された影響で、

暫くは見張員の妖精さんにお世話になる。つまりは決定打に欠けるのだ。

 

「榛名さんと霧島さんは電探での索敵をお願いします」

「言われなくてもやっているわ。大丈夫よ」

「榛名達にお任せ下さい」

 

ここまで言ってくれるとは本当に心強い人達だ。

艦隊戦ではまたも彼女達に頼ることになるだろう。

私は対空と駆逐艦が役目。魚雷が無くとも変わらない。

 

「変ってないね、ホント」

「私の出来る事はこのくらいです。今度ばかりは戦闘でお役に立てないですから」

「ならその援護が私の役目だね」

 

川内さんは索敵を行えない物の、私の援護に徹してくれる。

確かに翔鶴さんの言っていた積み上げた信頼と言うのは、悪くないのかもしれない。

ただ一度崩れれば立て直しずらいのも解っていた。それをいかに保つか。

それが真の力量が試される物である。

 

「涼月さん、偵察機が敵艦隊を発見、編制は軽巡1、雷巡2、駆逐3です」

「了解です赤城さん。空母は含まれていない……別動隊ですか……」

「どうされますか」

「榛名さん、霧島さん、電探にそれらの反応はありますか?」

「いいえ、見当たりません。おそらく離れているのかと」

 

榛名さんも首を横に振る。ならば敵はかなり離れている可能性がある。

やり過ごすことは可能だが、何があるかは解らない。

 

「赤城さん、その偵察機さんを触接させて下さい。危険ですが……お願いできますか」

「……つまり、戦闘は回避すると」

「敵空母が発見された以上はこちらの制空権は確実な物ではありません。

 敵の動きを探りつつ敵機動部隊を発見、挟撃にならぬよう誘導しながら殲滅、

 そして反復出撃によって輸送ルートを確実化させたほうが良いと思います」

「念には念を入れよ。という事ですか」

「はい。W島奇襲の失敗も敵空母によるもの。

 そして連戦は出来る限り避けておきたいのです」

「解ったわ」

「翔鶴さんは引き続き索敵にて敵機動部隊の発見に努めてください」

 

翔鶴さんが首を縦に振るのを見て私は再び気を引き締める。

あちらもこちらと同じ空母、偵察は行っているはずだ。

どちらが先に見つかるか。見つける事が出来るか。

空母はその点では心強いが恐ろしいものでもあった。

 

「見張員の皆さんも、お願いしますね」

 

可愛らしく敬礼するこの子達も、電探とまではいかないが重要な役割を持っている。

視認することしか出来ない雷跡を発見したり、煙を発見したり。

そのお蔭で幾度となく助けられてきた。

それを考えるとこの前の南西諸島に出向いた時、

この子達を連れていかなくて本当に良かったとも思う。

 

「涼月さん! 偵察部隊が敵機動部隊を発見したわ! 編成は……っ!」

「翔鶴さん!?」

「大丈夫……ただ偵察機が落とされてしまったわ」

「了解です。赤城さん、敵水雷戦隊の様子は」

「この進路だと問題ありません。むしろ停滞している……」

「解りました。赤城さん、翔鶴さんは艦戦を集中させつつも先制を撃ってください。

 敵機動部隊との接触を優先、赤城さん、翔鶴さんを中心に輪形陣を!」

「「「「「了解!!」」」」」

 

偵察機が即撃墜されたという事は相手にこちらの存在も気付かれたという事。

航空戦は不可避である時点での制空権確保のための艦戦を集中発艦し、

向こう側の攻撃機が発艦している事態を想定しての輪形陣。

私が最前列に移動し、後ろに翔鶴さん、赤城さん、川内さん。

翔鶴さんと赤城さんを挟み込む形で榛名さんと霧島さんを置く。

 

「航空戦に突入、制空権の状況としてはこちら側が優勢ね」

「翔鶴さん、もしもに備えて直掩機をお願いします」

「えっ?」

「いくらすぐ出せるという状況であったとしても、敵襲に遭ってからでは遅すぎます。

 敵の直掩機は先程翔鶴さんの偵察機を撃墜しています。

 そのまま攻撃機としてこちらに向かっている可能性も、無い訳ではありません」

「……解ったわ」

 

艦戦を発艦させる翔鶴さん。

そして赤城さんは信じられないと言った顔でこちらを見ていた。

 

「榛名さんと霧島さんは艦隊戦を優先して徹甲弾を。

 川内さんは敵護衛艦との戦闘に備えてください」

「「「了解!」」」

 

三式弾を使うという手もあったがこれは航空戦。味方も巻き込まれる可能性がある。

やれることは全てやった。後は戦闘に備えるのみ。

見張員の妖精さん達が遠くで航空戦を繰り広げる方向を指さした。

 

「ありがとうございます。

 妖精さんは役割分担で攻撃機を探して下さい」

 

それを敬礼で返すと他の攻撃機を探してくれる。

私は航空戦をしている空に視線を向けた。

 

「涼月さん、直掩機から敵の編制が解りました。空母2、重巡1、軽巡1、駆逐2よ」

「解りました。皆さん、参ります!」

「さぁ榛名、行きますよ」

「主砲、砲撃開始!」

 

二人の砲弾は水平線の向こうへと飛んでいき、いくつかの敵を貫いて爆発した。

 

「敵軽巡が撃沈、重巡が中破!」

 

霧島さんの報告を聞く。やはり二人は相当な腕だ。

向こうがそれによってこちらの存在に気づき、駆逐艦がこちらに向かってくる。

そして敵空母がこちらに向けて艦載機を発艦させようとしていた。

 

「勝手は、榛名が、許しません!」「主砲、敵を追尾して、撃て!」

 

射程を行かした戦艦の砲撃戦が開始される。

 

「第一攻撃隊、発艦してください!」

 

赤城さんが弓を構えて放つ。その矢は艦攻となり海面の近くを飛んでいく。

艦爆を選ばず艦攻を選んだのは彼女の判断だ。

航空戦が行われている中で上空から爆弾を投下する形である艦爆を発艦させるのは危険。

交戦に入ったこの一瞬で艦攻を選ぶというのは彼女の経験の賜物なのだろう。

 

一方の翔鶴さんは直掩機と航空戦をしている艦戦に意識を集中させていた。

すると直掩機の一部が赤城さんの艦攻の直掩機となって援護に入る。

そして突撃してきた駆逐艦を残りの直掩機達が足止めしていた。

 

「さあ、砲雷撃戦よ!」

「艦隊戦でも、守って見せます!」

 

その足止めしている駆逐艦に対して川内さんが砲撃を開始する。

私も航空戦をしている方へ砲撃は届かないので駆逐艦を狙った。

 

駆逐艦の砲撃だけでも、決定打にはなりえないが駆逐艦や軽巡クラスは落とせる。

直掩機を含めた二人掛かりで無防備に突っ込んできた駆逐艦に損傷を負わせ、

航行に支障が出たところで川内さんの魚雷を突き刺す。

そうやって二隻の駆逐艦を落とすことに成功した。

駆逐艦の足止めを行っていた直掩機の艦戦は私達の周囲を再び巡回する。

 

敵との距離が近付いていき間もなく狙える距離。

主砲を構えた時に敵空母の近くで大きな水柱が立った。

その付近を飛んでいたのは赤一本の艦攻。翔鶴さんではなく赤城さんだ。

それを見た榛名さんと霧島さんが砲火を集中させて敵空母を一隻落とすにまで至る。

 

「私は制空権の完全な確保を目指します! 他の方々は残敵の掃討を!」

「「「「「はい!(了解!)」」」」」

 

まだしつこく航空戦をしている敵機を機銃や長10cm砲で撃ち落としていく。

私が攻撃を外しても赤城さんや翔鶴さんの艦戦が、

それを避けた隙を狙って落としてくれる。

 

「これで……終わりです!」

 

最後の一機も確実に撃墜、空には私達の艦載機が飛び回っていた。

 

「制空権完全確保です!」

「ありがとうございます涼月さん。第二次攻撃隊、全機発艦!」

 

赤城さんと翔鶴さんから放たれたのは艦爆。

上空からの攻撃も加えての回避を困難にさせるものだ。

 

中破していた重巡がその餌食となり、最後に残った空母も呆気なく爆沈していく。

 

「皆さん! 被弾箇所の報告を!」

「お蔭様で全員無被弾だよ」

 

川内さんが親指を立てる。他の皆も笑顔を浮かべていた。

 

「涼月さん。先ほどから触接させていた偵察機ですが、

 敵水雷戦隊は撤退していったそうですよ」

「ということは……」

「この海域の主力艦隊の撃滅に成功。海域解放、というわけです!」

 

霧島さんの言葉を聞いて、全身から緊張が抜けていく。

バランスを崩しそうになって何とか持ちこたえた。

 

「見張員の皆さんも大丈夫ですか?」

 

妖精さんは二人とも首を縦に振る。周囲に敵は見つからないようだ。

 

「皆さん、ありがとうございます。皆さんのお蔭でこの海域は無事解放されました」

「それだけではありませんよ」

 

赤城さんがこちらに面と向かって話しかけてくる。それによって再び体に緊張が戻った。

しかしその顔は優しい顔をしている。

 

「貴女が全ての起こりえる状況に対処し、最善の手を常に打っていたからこその結果。

 これは、貴女が旗艦であったからこその結果と言っても、差し支えないわ」

「ありがとうございます。それでも私は、私の指示に従ってくれた皆さんに感謝します」

 

「さあ帰りましょう。帰るまでが任務です」

「「「「「はい!」」」」」

 

その後解放されたバシー島に暁さんが率いる第六駆逐隊の皆が遠征に向かい、

大量のボーキサイトを持って帰って来てくれたのは、また別のお話。




今回はバシー島。ゲームで言う2-2攻略のお話でした。
敵空母が2体出てくる編制でしたが、赤城さんからの練度からして、
そこまで問題はない海域だと思われます。
ただしアニメの方面で完全勝利を取るには、
かなり大きく先手を取らないといけないんだなと思いつつ作成。

次回はアニメ第六話!

追記:艦これ二周年おめでとうございます! 
   特に祝えないけどボイスで癒しを貰います! うおおお五月雨涼風新ボイスだー!!

簡易的な自問自答コーナー

Q.何故バシー島?
A.W島やらMO作戦が南東の方角だったので、
 資源確保の為に南西諸島に引き続き出撃した感じに。
 アニメ第六話に向けたお話でもあります。

Q.輪形陣ってどんな形?
A.縦中央4隻、その間2隻を守る様に左右に1隻ずつ。
 旗艦と言えど空母防衛を優先して空母を中に入れています。

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