艦隊これくしょん -艦これ- ~空を貫く月の光~   作:kasyopa

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第四話後半戦と第四話終わりの後日談的な物。

そして十二話にして初めてあの人が……

4/22 睦月と如月の名差しで改二だと……


第十二話『黄昏時の涼月』

荒れ狂う海とスコールの中を複縦陣で進む。

お茶会が終わり、私達は再び南西海域に向かっていた。

深海棲艦の編成は戦艦2、駆逐4。

スコールで視界が悪いことを考慮しつつ見張員の二人はお留守番だ。

 

「っ、凄い雨ですね、これじゃ見渡そうにも……」

「今回は見張員の妖精さんもお留守番です。

 あれを装備していると魚雷を装備できませんから」

「涼月さんの魚雷って背中にあるんですね。なんだか島風ちゃんみたい」

「島風さんと違って発射を行う時は着脱による艦首との接続に改造してありますがね」

 

吹雪さんの緊張をほぐす為にも軽い会話を挟んでおく。

こうやって意思疎通しておくのも時には必要なことだ。

 

『榛名さん、先程襲撃を受けたばかりです。速度を落とした方が!』

 

夢の中の自分の言葉が頭をよぎる。

彼女は返答せず行動で示すわけもなく、ただそのままの速度を維持したままだった。

今は私達が先頭に居る為彼女の後姿を見ることは当然できない。

 

『そう。それもとっても怖い夢。私が水底に沈んでしまう夢』

 

如月さんの話を思い出す。

ただ夢の話だというのにそれに似た光景を見ずに済んだという事に、

少しだけそれに安心感を覚えてしまう。

 

「戦艦は私達が引き付けマース。駆逐艦はブッキーとズッキーに任せるネ」

「涼月ちゃんは、吹雪ちゃんをしっかり見ててあげてね」

「解りました比叡さん」

 

間もなくあの島だ。それはつまり、戦闘がもうすぐ始まるという事。

私はペンネントを強く締めて気を引き締めた。

 

 

Side 吹雪

 

 

涼月さんが気を引き締める様にペンネントを強く締め直す。

もうすぐ戦闘が始まるのだろう。

それでも彼女がしっかりと見てくれるという事に、

言葉では言い表せない安心がそこにあった。

 

「電探に艦あり! 戦艦2、駆逐艦4です!」

 

前に禍々しい空気が立ち込める。

その空気の中現れたのは、2隻の戦艦とその後ろに続く4隻の駆逐艦。

 

「OK霧島! 比叡、切込みお願いネ!」

「もちろんですお姉さま!」

 

私のすぐ後ろに居る比叡さんが主砲を斉射して、戦艦と駆逐艦の隊に分断した。

 

「ではブッキー、ズッキー! さっき言った通りお願いネ!」

「「はい!」」

 

私達も分れた駆逐艦を撃破するために分れる。

 

「吹雪さん、一時的にとは言え数としてはこちらが不利です。

 こちらの機動力を生かして更に分断し各個撃破していきましょう」

「解りました!」

 

涼月さんがそれを言い終わるとほぼ同時に特殊な主砲を構えて発射する。

砲身が長くて私の主砲より長射程の様だった。

 

同じように複縦陣を取っていた駆逐艦の水柱が上がり、丁度左右に敵が分れる。

その分れた右側の駆逐艦をすぐに発射された弾が先頭の駆逐艦に直撃した。

 

「右側は私が相手をします。左側は吹雪さんに」

「は、はい!」

 

全く動じず鮮やかに深海棲艦を撃つ姿に思わず見とれていたけれど、これは戦闘だ。

私も、涼月さんの期待に応えないと!

 

「(大丈夫。私ならできる!)」

 

正面の駆逐艦を捉えて主砲を撃つ。初弾夾叉。次!

続けて放った弾は直撃。その隙を逃さず魚雷を発射する。

主砲の攻撃で怯んでいたのか、魚雷がそのまま直撃して沈んでいく。

 

後続の敵駆逐艦は一旦形勢を立て直そうとしたのか、旋回して離れようとしていた。

 

ここでもっと頑張れば皆が楽になる。

そして何より今まで失敗して助けられてばっかりの私じゃない事を、

尊敬する涼月さんに見せてあげたい。

 

「私が、やっつけちゃうんだから!」

 

追撃戦を敢行。相手は逃げ腰今攻撃して不意を突けば確実に落とせる!

 

「吹雪さん!!」

 

後ろから名前を叫ばれたと思えば、艤装に引かれて重心が移りバランスを崩す。

当然何度も海面に叩き付けられて思いっきり後ろに吹き飛ばされた。

体勢を何とか起こしつつも顔を拭うと、さっき私の居た場所には涼月さんが立っていた。

 

「涼月さん! 急に何するんですか!」

 

彼女はそれに答える事無く急旋回。その瞬間彼女の背後で大きな爆発が起きた。

 

「……えっ」

 

そのまま涼月さんは蹴られたボールの様に吹き飛ぶ。

涼月さんが居た場所の先には、戦艦ル級が笑っていた。

 

つまり、つまり、つまり、さっきの爆発は……ル級の……

 

跳ね返る様に転進して私は吹き飛ばされた涼月さんの元に駆けつける。

そこに居たのは海面で仰向けになりながらも、弱弱しく呼吸する涼月さんが居た。

生きている事に安心しながらも、どうしてこうなってしまったのか考える。

 

「吹雪、さん……」

「涼月さん! 喋っちゃ駄目です!」

 

体を起こそうと背中に手を添えるも、彼女が顔を歪めたのを見て慌ててやめる。

その背中にある筈の魚雷が既に無い。

手に生暖かい物がべったりと張り付く。赤い。それは、血。

 

「こんな、血が……」

「戦艦は……射程、長いんですよ」

 

こんな時だというのに、この人は私に教えてくれる。

私が追撃したのが原因で、いつの間にか戦艦の射程に入っていたようだ。

それを見た彼女は私の艤装を引っ張ってまでして、射程外にまで飛ばしてくれたんだ。

すぐに彼女も離脱しようとした。でもその途中に被弾した。

背中に付けていた魚雷発射管に直撃して魚雷に誘爆したんだ。

 

「吹雪……さん」

「だから喋っちゃ駄目って!」

「駆逐、艦……は、出来る事を、見極めて……」

 

そのままぐったりと何も言わなくなってしまう涼月さん。

 

「涼月さん! 涼月さん! 起きてください!」

「大丈夫。気を失っているだけですよ」

 

榛名さんが後ろから声をかけてくれる。確かに、涼月さんは息があった。

でも一時を争う事態であるのは変わりない。

 

「ブッキー! ズッキーの事は榛名に任せてブッキーは駆逐艦を!」

 

金剛さん、比叡さん、霧島さんはル級を必死に引き付けている。

でも残った一隻の駆逐艦がこちらに向かっていた。私の取り逃した一隻。

涼月さんは既に二隻落としていたようだ。

 

「今度こそ、守ってあげてください」

 

榛名さんが私の目を見てそう言ってくれる。

私が、涼月さんを守る?

出来るか出来ないか考えるも、現実は考える時間は与えてくれない。

私は前に出て迫りくる深海棲艦と対峙する。

 

12.7cm砲を発射するもそれを右に旋回されて回避される。

回避した駆逐艦に対して次発による偏差射撃。

それを想定していなかったのか、その艦首部分と言える場所に直撃した。

 

間髪入れずに魚雷を発射。でも魚雷は到達するまでに時間がかかる。

艦首のみの被弾だったからか敵駆逐艦は魚雷をよけようと速度を上げた。

このままだとかわされる。何か、確実に足止めできる物があれば。

 

不意に涼月さんの持っている主砲が目に移った。損傷はなく、まだ使える。

無我夢中でそれを左手で持って速度を上げる駆逐艦を狙う。

 

「私が皆を守るんだから!!」

 

発射したと同時に反動を殺しきれず後ろにバランスを崩すも榛名さんが支えてくれた。

放たれたその弾丸は駆逐艦の右舷に直撃しその衝撃で動きが止まる。

その直後先程放った魚雷が直撃し、駆逐艦は荒波に揉まれて水底へ消えていった。

 

「や、やりましたよ金剛さん! 榛名さん!」

「Good Jobブッキー! 後は私達に任せるネ!」

 

遠くに見える二隻の戦艦を、じりじりと内側へ寄せていく霧島さんと比叡さん。

そしてついにその二隻がぶつかり合い、バランスを崩した。

 

「「お姉さま、今です!」」

「OK,熱々のローストチキンにしてあげマース!!」

 

金剛さんの主砲が火を噴き二隻の戦艦に直撃。

敵戦艦は引火し合い大爆発を引き起こしてスコールを吹き飛ばし、私達の勝利を飾った。

 

「Heyブッキー! How you like me now?」

 

金剛さんの浮かべる満面の笑みとピースサインは、まさに金剛石の様に輝いていた。

 

「お姉さま、涼月ちゃんの為にも早く離脱しましょう!」

「OK、皆さん、最大戦速でこの海域から離脱しまショウ!」

 

榛名さんが気を失っている涼月さんを背負っている。

帰るまでが任務。そう痛感する私だった。

 

 

Side 涼月

 

 

全身に包み込むような温かさを感じる。こんな感覚を感じるのは久しぶりだ。

そう。初めてトラックで目覚めたのもこんな感じだった。

私は今入渠している。私は今生きている。

 

目を開けるとドーム状に膨れ上がった天井が目に映った。

 

「目が覚めたようね」

 

隣に居たのは短い短髪の女性。彼女は一人で何故か将棋をしていた。

彼女は確か、鎮守府正面海域の解放の時に第一機動部隊にいた……

 

「『加賀』よ。吹雪さんから話は聞いているわ。彼女を庇って大破したらしいわね」

「は、はい……」

「貴女の活躍は私達の耳にも入っているわ。もちろん『赤城』さんにも」

 

黙々と将棋をしながらも淡々と話す加賀さん。視線は常に盤上にあった。

赤城。第一機動部隊の旗艦にして『一航戦』の一人。加賀さんもその『一航戦』の一人。

そんな凄い人が何故ここに居るのだろうか。

というよりも、一人将棋が出来るほどの余裕があるのだろうか。

 

前に乗り出して加賀さんと私のの入渠時間を見比べてみる。

私は約3時間。大破した関係もあるだろうが少し時間を要する。

一方の加賀さんは約12時間。半日である。

何の為に高速修復材が必要なのか解った気がした。

 

「私の顔に、何か付いていて?」

「いえ、入渠時間が随分長いんだなと」

「そうね。艦種の関係もあるけど練度が高まればそれに応じて時間が伸びていく。

 練度が上がればその分腕も上がり、繊細な事が得意になっていく。

 それを元の状態にまで戻すとなると、自然と時間がかかる物よ」

「リハビリのようなものも兼ねている、と」

「まぁ、そうなるわ」

 

話題が無くなってしまう。

彼女は相変わらず将棋に集中しているけれど、私は特にこれといって暇を潰す物が無い。

そもそも大破したとはいえど3時間はかなり酷な時間であった。

 

「……暇そうね」

「……はい」

「駆逐艦でそれほどの時間を要するという事はむしろ誇るべき事よ。

 これが唯一と言っていいほどの練度の目安なのだから」

「とはいえ、この暇がマシになる物ではありません」

「……蒼龍と飛龍、この二人を知ってるわよね」

 

将棋が済んだのかこちらを向いてくる加賀さん。

初めて視線が合い、その釣り目に少しばかり威圧される。

 

「怒っているつもりはないのだけれど、質問に答えてくれないかしら」

「あっ、すみません。はい。日頃お世話になっています」

 

あの入渠から悩んでいたことはもう忘れたかのように振舞い、

都合に合わせてとは言えほぼ毎日防空射撃演習を行ってくれる二航戦の二人。

最近は行えていないものの、あの二人は何かと楽しんでいるような気もする。

新たな戦術を開発するかのように。まるで新たな訓練法を思いつく教官の様に。

 

蒼龍さんも飛龍さんも、日に日に何か怖さが増している気がする。

あの人達を鬼教官と言った方がいいのではないだろうか。

 

「あの二人が言っていたわ。『貴女のお蔭で私達も練度を高め合える』と」

「『二航戦』であるお二人が、ですか」

「『一航戦』も『二航戦』も、所詮は戦隊の名前に過ぎないわ。

 その点で言えば、貴女も私も、同じような物よ」

 

『当然よね。私が努力してやっと『五航戦』になったのに実戦に使ってもらえなくて、

 突然入って来た駆逐艦がいきなり戦果を挙げて栄転だなんて、怒りたくもなるわ』

 

それを聞いて瑞鶴さんが落ち込んでいた時の言葉を思い出す。

そして理解する。これが彼女と加賀さんの圧倒的な考えの違いだと。

でも彼女は『五航戦』でありながらも未熟であることは知っている。

 

「加賀さんは瑞鶴さんの事、どう思ってますか?」

「……そう言えば貴女はあの子にも関わりがあったわね」

 

見るからに嫌そうな顔をしている。

これは答えを待つまでも無いのかもしれない。

 

「そもそもあの子は色々となってないわ。

 技術、姿勢、構え、集中力、忍耐、精神。一度に上げればきりがない。

 教えようにも一々文句を付ける程度じゃ、とても空母として一緒にやっていけないわ」

 

私が目覚めてままない時の会話に比べて、彼女がここまで言葉を羅列させる事に驚く。

そこまで嫌われているのかと思うに至るまで。

 

「何かと熱くなりすぎるのも問題ね。

 何かと挑戦的なあの姿勢はどうにかしないといけないわ」

 

「そのくせ一つの事に執着しているのも問題ね。

 空母たるものもっと物事を大局的に捉えて、把握する力も必要だというのに」

 

『だったらこの『五航戦』である私が『防空駆逐艦』の名前に相応しいかどうか、

 直々に判断してあげるわ!』

 

彼女をフォローしてあげたいのだが、ごもっともで返す言葉が見つからない。

なので私は万能な切り札を使う事にした。

 

「加賀さん。『好き』の対義語はご存知ですか」

「……? 『嫌い』よ」

 

突然変な事を聞くのだなと、そう言いたげな顔をする彼女。

確かに普通であれば好きの反対は嫌いだ。これは誰もが答えるだろう。

その新鮮な表情で威圧感を覚える事が無くなり、私は言葉を続けた。

 

「大概はそうなのですが、私としては『無関心』だと思います」

「それはどうしてかしら」

「好きも嫌いも、人や物に対して抱く感情の一つです。つまり好きでも嫌いでも、

 共にその物や人に対して『関心』があるという事です」

 

「これを応用すると全ての感情は『関心』に繋がります。

 だからこそ対義語は『無関心』につながると思います」

「ではあなたは好きな料理と、食べれば体を壊しかねない料理、

 『好き』と『拒絶』を共に『興味がある』と言う言葉で片付けられるのかしら」

 

何も言い返せなくなる。言わずもがな、そういう料理を口にしたことがあるからだ。

そう言う点においては磯風さんは素敵な人だが同時に罪な人だと思う。

 

「つまりはそういう事よ。だから私はこう言うの。

 『五航戦の子なんかと一緒にしないで』と」

 

決別するかのように言う彼女であったが、

その目には少しの迷いが生じていたことを見逃さなかった。

 

 

///////////////////////

 

 

入渠ドックから出るとまたも吹雪さんに謝られた。

それでも私は『誰一人失うことなく帰ることが出来たことを喜ぶべきだ』と伝えて、

自分の部屋に戻った。

 

第二艦隊からは吹雪さんが外され、島風さんも遠征のみなのでいない。

夕張さんも第四水雷戦隊に配属されているのでいない。

榛名さんと霧島さんは基本的には金剛さんと比叡さんの部屋で、

寝泊まりするだけのスペースが確保してある為、実質的な一人部屋と化していた。

とは言っても、見張員の妖精さんが居るので寂しくはない。

 

だが、今日は違った。

 

「入渠、終わったんですね」

「榛名さん……」

 

榛名さんが一人部屋の中で待っていた。

隣の部屋が騒がしいのを考えると、金剛さん達三人は隣にいるようだ。

しかし何故彼女が居るのだろうか。何故、彼女なのだろうか。

 

「涼月ちゃんは、覚えてますか? 私と初めて会った時のことを」

「……あの時は、すみませんでした」

 

提督室で心配してくれたのに、跳ね除けてしまったこと。

その時の私は、本当の意味で気が滅入っていたと思う。

 

「むしろ謝るべきなのは榛名の方です。

 私、涼月ちゃんを見た時、初めて会った気がしなくて」

「えっ」

「だからずっと私を見ている貴女を見た時、

 貴女も私に似た感情があるのかなと思いまして」

 

「だから聞かせてほしいんです。この榛名を、貴女はどう思っているのかを」

「私、は……」

 

口を噤んでしまう。こんなことを言ってしまっていいのだろうか。

もしかしたら沈んでしまうかもしれない未来を。

それが私かもしれない。彼女かもしれない。私に似た誰かかもしれない。

既に二人が損傷を受けたあの場所を、敵が潜んでいるであろうあの場所を、

こちらの言葉を無視して全力で離脱し向かおうとする彼女の事を。

他の誰でもない彼女に、言ってしまっていいのだろうか。

 

不意に抱きしめられる。入渠の温もりとは違う温かさを感じる。

これは、大和さんの時に似ている。

 

「大丈夫です。榛名がついています。榛名も大丈夫です」

「いいんですか。もしかしたら、貴女が……」

「榛名も、涼月ちゃんが居るから、大丈夫なんです」

 

「『ですから、共に強くなりましょう。心も、体も、私と共に』」

 

言葉が重なる。その言葉に、言葉では言い表せない安心と、

今まで溜まっていたあの夢の感情があふれ出て来て。

 

気付けば私は彼女の胸の中で、ただひたすらに泣いていた。

 

 

 

ひとしきり泣いて落ち着いた後、その夢の事を話した。

 

「そうだったのですか……敵の潜水艦がそんなに本土の近くまで」

「はい。それで私は声をかけたのですが、榛名さんは応じてくれなくて」

「その後は、どうなったのですか?」

「夢は、そこで終わっています。無事につけたのかどうか、解りません」

 

榛名さんは少し考えるそぶりを見せた後、私に笑いかけた。

その一連の仕草が妙に可愛らしく見えて私は笑いをこぼす。

 

「榛名も、貴女も、その護衛艦の人も、大丈夫です」

「根拠は?」

「ありません」

 

満面の笑顔でそう答える彼女に呆気を取られてしまった。

その根拠のなさがむしろ夢の中の彼女と、今ここに居る彼女が同じだと思わせる。

少しだけ、実はそっくりさんの別人だという気がしたのだが、

今ここでそれが意外な形で裏切られた。

でも、それは悲しい事ではない。むしろ嬉しい事だった。

 

「不思議ですね。私も誰も沈まない気がしてきました」

「はい! その意気です!」

 

二人で笑い合う。この感情の根拠は解らない。

でも解らないままでもいいかもしれない。

だって、誰も沈まないと解っているのだから。

 

その日は一人ではなく、榛名さんの腕に抱かれて眠るのだった。

 

 

**********

 

 

夢。白黒の世界。薄明るい世界。夜明け前のようだ。

 

私達は何事もなかったかのようにその海域を抜けて、目的地である呉に着いた。

私を含めた三人は、何事も無かった事に安心して胸をなでおろしている。

 

私と、私に似たその人が話している。その顔にはノイズが走って誰かは解らなかった。

ただ、私と同じペンネントをしている。『第六十一驅逐隊』と書かれたペンネントを。

 

荒波に揉まれた疲れを癒す為に、そして榛名さんはどこかで受けた傷を癒す為に、

三人で仲良く入渠するのであった。

 

 

**********

 

 

目が覚めるといきなり柔らかい感触と温かさを感じる。

誰かに抱きしめられているようだ。

 

「榛名は……大丈夫です……むにゃ……」

 

声が聞こえて、そう言えば昨日は榛名さんと一緒のベッドで寝たことを思い出す。

どうやら榛名さん抱き付き癖があるらしい。

金剛さんの熱烈な歓迎を思い出しながらも、私はもう一寝入りすることにしたのだった。




涼月大破。金剛拳(ガノンの魔人拳的な)はないのです。
吹雪はまだ未熟。しかし憧れの人の前では……。良くあるパターンですね。
スポ魂風ストーリーと言えど、しっかりとした戦闘物なので、色々あります。
なんとなーく王道ストーリー書いてる気がしなくもない。でも王道は正義。

加賀さんとの接触。一人将棋とか寂しいとか言っちゃいかん。
彼女達も入渠の時間をつぶすのに精いっぱいなんです。
しかしこれで後接触していない正規空母は赤城さんだけ……。

そして悪夢からの解放。これも史実ネタです。
(因みに悪夢で出てきた軽空母は隼鷹さんだったりする)

次回から第五話に入ります。さて、涼月はどこの部隊に配属されるのか……
後、このキャラとオリ主の絡みが見たいという意見がございましたら、
活動報告のキャラ設定や、メッセージ送信などでお伝えください。
アニメ第六話の終わりぐらいにそう言う場を設けた外伝的な話を作りたいと思います。
なお、トラック泊地に居る子達とはストーリー上関われないのでそこはご了承ください。

簡易的な自問自答コーナー

Q.吹雪さんカッコイー!
A.吹雪の使った攻撃は、自分の脳内補正のかかった『主砲+魚雷カットイン』です。
 先行で魚雷を放ち、回避前に主砲を命中させて機関停止にして魚雷を差す。
 ゲーム内ではそこまで強くないんですが、こう考えると相当強そう。
 ゲームでは夜戦でしか使えないのですがこういう風にゲーム要素もいれたかったり。

Q.ローストチキンとか『How you like me now』って何ぞ?
A.『大 統 領 魂』   ……すみません真面目に解説します。
 まず訳としては『私の事を好きになってくれた?』です。
 これは『メタルウルフカオス』というフロムソフトウェアが出した、
 XBOX(初代)のみに対応した伝説のバ神ゲーです。
 副大統領の起こしたクーデターによって政権がひっくり返ったアメリカ合衆国を、
 パワードスーツを着込んだ大統領がほぼ単身で救いに向かうというストーリー。
 興味がわいた人は字幕実況動画がありますので是非ご覧ください。

Q.駆逐艦で3時間も入渠時間必要?
A.逆算すると涼月のレベルが見えてくる。

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