001
入学式翌日の朝。
一年生寮の食堂だ。一夏と箒そして忍野が同じ席で食事を取っていた。今朝忍野と合流した一夏が箒に紹介して友好を深めようと一緒に食事をしているのだが、
「なあ、忍野さん。それだけの食事で大丈夫なのか?」
忍野の食事に思わず箒は聞いていた。一夏は和食セット、箒は別の和食なのだが忍野はなぜかざるそば。普通は朝食のメニューではない。
「まぁ大丈夫かな?」
「箒、無駄だよ。忍野は朝食を少量しか食べないタイプだから」
本人と一夏に言われて納得はしたがそれでも見ていて不安になる食事である。
「お、織斑くん、相席いいかなっ?」
「忍野くんもいい?」
見ると朝食のトレーを持った女子が三人立っていた。この机は六人掛けだからまだ空いてるから一夏は承諾して三人とおしゃべりを始めてしまった。
「・・・一夏、私は先に行くぞ」
「ん? ああ。また後でな」
それを見ていて不機嫌になった箒は食事を済ますと行ってしまった。
「箒のやつ、一体どうしたんだ?」
「さぁーどうしたんだろうねぇ」
何で箒が不機嫌になったのか分かってない一夏とそれを見透かしたような笑みを浮かべて見ている忍野であった。
002
「おい、一夏。試合は大丈夫なのか? 相手は仮にも代表候補生なんだぞ」
その日の放課後、廊下に出た一夏を箒が 声を掛けて呼び止めた。忍野はまだ教室にいる。
「ん? ああ、大丈夫だ」
箒からの問いに至極普通に答える。
「そ、そうか・・・もし良ければ剣道場に来ないか? 私が稽古をだな・・・」
「悪いけど、気持ちだけ受け取っとく」
恥じらいがちに本題を切り出そうとする箒だったが、即座に一夏から断られる。
「な、何故だ!?」
一夏の返答に声を荒げる箒。 箒からしてみれば自分が思いを寄せる一夏と二人きりになるチャンスがふいになってしまうのは面白くないだろう。
「それに剣道場で何するんだ? ISに関係ないし、俺もう剣道やめてるからなぁ」
「な!? 剣道をやめただと!? どういう事 だ!?」
一夏の発言に箒は更に声を荒げて一夏の胸倉に掴かんだ。
「理由を言え! 何故剣道をやめた!?」
箒は噛み付かんばかりに問いただす。彼女にとって剣道は一夏との唯一の繋がりであったのだ。しかしその相手が剣道をやめたと聞き許せずはいれないのだろう。
「最初は俺も剣術を磨いてたよ。けどさ、それってどこまで行っても千冬姉の真似でしかなくてさ、それでやめたんだ」
箒の態度に多少理不尽さを感じながらも一夏は箒の手を払いのけながら淡々と戦闘スタイルを変えた理由を説明する。
「だがしかし、お前は剣道を
「箒だって何かを理由にやめたものが一つくらいあるだろ?俺だって飽きたからやめたりしたわけじゃない、自分で決めた事だ。それを否定するなら怒るよ?」
箒は説得をしようとしたが一夏の怒気を孕んだ言葉に何も言えなくなった。
「それじゃ、今から家に荷物を取りにいくから」
そう言うと一夏は箒を置いてその場を立ち去った。
~箒サイド~
「一夏・・・」
私の呟きは消えそうほど弱々しいものだった。
姉である篠ノ乃束がISを開発してから私は重要人物保護プログラムにより一夏と離ればなれになってしまった。
手紙も電話も許されず剣道以外の繋がりはなくなってしまった。小学生低学年から共に励んだ剣道。当時の一夏は強かったので剣道さえ続けいればいずれ大会などで会う事ができると思っていた。
しかし現実は違った。
一夏は大会におらず私は優勝してもすぐさま転校させられた。寂しかった。IS学園にも篠ノ乃束の妹として強制的に入学させられた。
一夏がISを動かしてIS学園に入学すると知って嬉しかった。また一夏に会えると。
そして入学し一夏が私を覚えていてくれた事、一夏と同室になった事。すべてが嬉しかった。
だが変わりに唯一の繋がりだと思っていた剣道をすてていた。すごく悲しく、寂しくなった。私は『また転校させられたら本当に繋がりは無くなってしまう』と不安になった。そんな事は無いと分かってるのに、それでも不安にかられた。
それなら一夏にまた剣道をしてもらおうと思った。でも一夏は願いを聞き入れてくれなかった。
『自分で決めた事だ。否定するなら怒るよ?』
私はいったいどうすれはいいのだろうか?
「そんな所で何をしてるんだい? 篠ノ乃さん」
後ろから声を掛けられて振り向いて見るとそこには忍野さんがいた。今朝紹介された一夏の友達、千冬さんを怒らせて楽しんでる何を考えてるか分からない同年なのか怪しい変わり者。しかしそれでも今は聞かずにはいられなかった。
「お前のせいで一夏は剣道をやめたのか?」
私の問いに忍野さんは少し悩んだようなそぶりをしてから口をひらいた。
「それは違うよ。確か一夏が剣道をやめる原因には他人が関わってるけどそれを決めたのは一夏だ。それにしても突然そんな事を聞いてきて、何かあったのかい?」
私は彼に事の顛末と思っていた事を話した。今の私は誰かに話を聞いて欲しかったのだろう。
「一夏が剣道をやめて寂しいのは分かるけど無理強いは良くないよ?それに今は同じ学校なんだから他の繋がりを見つければいいさ。少なくとも幼なじみという繋がりがあるんだから」
すると忍野さんがそう言ってくれた。
確かそうだ。今は同じ学校なんだ、それに一夏は私の事を覚えていてくれたんだ。不安になる必要はどこにもないんだ!
私は一夏が帰って来たら謝ることにした。謝って新しい繋がりを見つける事にした。
「ありがとう、忍野さん。おかげで気分が晴れたよ」
「忍野でいいよ、同級生なんだし」
「なら私の事も箒と呼んでくれ」
「分かったよ箒」
彼は案外優しい人なのかもしれない。
「そうだ箒、一つ忠告」
「なんだ?」
「繋がりを見つけるのはいいけど性的なのは駄目だぞ?」
「そんな事言われなくても分かっておるわぁぁぁぁあ!!!」
前言撤回、やっぱり何を考えてるかわからない人だ。
またやってしまったタイトル詐欺。
箒のアンチ回避をしたらトレーニング出来なかった。
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