周に一回くらい投稿できるように頑張ってますが全然ダメですね。はぁ~。
あ、本編どうぞ
001
ビーチにいる一同は昨日と違い、全員がISスーツや学園指定のジャージを着て整列している。
IS学園臨海学校二日目は、朝から夜まで丸一日、ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。
一般生徒は数人でやるのでまだ良いが、一部を除いて専用機持ちは皆、コンテナ数個分の装備が送られて来ているから大変だ。
因みにその一部は、一夏と忍野、それと簪。
男子は機体の出所と特性ゆえに。簪の専用機は自作なので今のところ他の装備が送られてくる事はない。
「各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え。解散」
千冬の指示のもと、各自が自分の担当場所へと移動し始める。
そんな中、千冬は箒を呼び止める。
「あ、篠ノ之はここに残れ」
「何でしょうか、織斑先生?」
「あー、その・・・だな、」
「?」
千冬は歯切れが悪そうにしながら呼び止めた理由を、
「今日はお前の誕生日だからあーーー
「ちーちゃ~~~~~ん!!!」
ーーーいつが来た」
・・・言いきる前に原因がやってきた。
砂煙を上げながら砂浜を陸上選手もビックリなスピードで走ってくる人影。童話の中から出てきたような服にメカメカしい兎耳。
篠ノ之 束、その人である。
両手を広げ、最高の笑顔で千冬に飛びかかっていく束。
「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 愛を確かめーーーぶへっ」
しかし千冬のアイアンクローが発動。
まるで飛んできたボールをキャッチするかのように、束の顔面を鷲掴みした。
「束、サッサと要件を言え。そうすれば手心くらい加えてやらんこともないぞ?」
「言う! 言うから離して! このままじゃ束さんの頭が“パァーンッ!”ってなっちゃうよ!? 破れた水風船になっちゃうー!」
「チッ」
舌打ちとともに束を捨てる千冬。
いや本当、ただ手を離して解放すればいいのにまるでゴミを捨てるかのように、放り投げたのだ。見ていた全員が“あ、捨てた”と思った。
「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困ってる」
「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」
ぽかんとしていた一同も、やっと騒ぎだした。
と、言うより目の前でいつも学校で見てる気がするようなバカをやってるのがISの生みの親、篠ノ之 束だと思いたくなかったようだ。
聞こえてくる評価は、“割と普通”とか“忍野くんと同じ事やってる”とか“年考えようよ”など、親しみやすさを感じるものから失礼極まりないものまである。
一夏も額に手をあて溜め息をついている。
「それで、用件はなんだ束」
「おお~っとそうだった! けどその前に・・・」
すると束はポケットから、さながら四次元ポケットのように大きさを無視して黒電話を取り出した。今ではテレビでも見かけなくなった回転ダイヤル式電話機。海外組の生徒はそれが何なのか分からず首を傾げてる。
そんな生徒たち眼中にない束は早速ダイヤルを回してどこかに電話をかけはじめた。
「あ、くーちゃん? 浮上して」
すると突如として轟音と共に海に発生する大きな水柱とその中から現れた人工物。
観ようによっては鯨が跳ねたようにも見え、その巨大な構造物は重力に従って徐々に傾き、多量の海水を押しのけて海上に鎮座した。
銀色に輝く船体。旅客機のエンジンにも見える推進器。亀の甲羅のように丸みを帯びた船尾の構造物。既存の物とはまるで違う姿をしていたが、それが何なのか全員に分かった。
「「「「せ、潜水艦!?」」」」
「あ、そんな事どうでもいいから」
((((ええーーー!???))))
突然現れた潜水艦に驚く生徒一同。
しかし束は折角のリアクションを冷たい一言で済ますと箒のそばへ駆け寄る。
「やあ! 箒ちゃん!」
「・・・どうも」
「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが」
「・・・そうですね。篠ノ之さん」
「苗字呼び!? それにさん付け!?」
「あっ、特に用件がないのであればこれで失礼させてもらっても宜しいですか?」
「他人行儀!? 殴ってもいいから束さんを捨てないでー!!」
箒の足元にすがって、よよよ~っと涙を流す束。
最初は照れくさそうな顔をしていた箒だが、数年ぶりの対面でいきなりセクハラが出てきた途端、無表情になりゴミを見るかのような絶対零度の視線を束に向けた。
暴力をふるわないだけマシか?
「はぁ~。それで、どうしたんですか姉さん」
「こほん、箒ちゃんの誕生日プレゼントを持ってきたんだよ」
「プレゼント、ですか?」
「そうだよ! とくとご覧あれなんだよ!!」
束が右手をあげると、潜水艦から何か白煙を上げながら射出され生徒たちの目の前に落着した。飛んできたのは、機械の箱。その箱は駆動音を立てて開いていき、一機のISがその姿を現した。
「これが、箒ちゃんのため第三世代型IS・・・『紅椿』だよ」
002
「わ、私のIS・・・」
「おい、束!」
千冬が声を張り上げる。
それはそうだ。一応、代表候補生に登録されてる箒だが、いきなり専用機を持つことになるんだ。教師としては見過ごすことはできないだろうし、例え第一世代のISだったとしても束が作ったとなれば政府が横槍を入れてくるのが目に見えてる。
「第三世代って・・・」
「篠ノ之さんがそれを貰えるってこと?」
「大した努力もしてないのに・・・」
「肉親だからって、なんか不公平じゃない?」
生徒たちの間に、箒が専用機を受け取ることに対する不満が広がっている。
しかしその空気を一変させる声が響いた。
「不公平じゃないよ」
束は作業を中断して不満を漏らしていた生徒に詰め寄ると、周りの生徒にも聞こえるように言う。
「箒ちゃんは“束さんの妹”として命を狙われるかもしれない。なのに今まで
ISの産みの親である篠ノ之 束。そして束の技術を悪用しようとする奴らが人質として真っ先に狙うのは、妹である箒である。
表沙汰にはなっていないが、IS登場初期の頃は誘拐未遂が何度もあったのだ。犯人が箒に接触する前に政府か束によって潰されたが・・・。
そんな彼女が、万が一の時のためのISを持っていないのは、政府的思惑があったのだろう。
「国がほうきちゃんに専用機を持たせないから束さんがプレゼントするんだよ? どこが不公平なの? ねえ!?」
詰め寄られている生徒は涙目になり声にならない悲鳴を上げた。
「その辺にしてあげなよ。それより早く箒に専用機を渡してあげれば?」
見かねた忍野が束の注意を逸らす。
興味がある相手との話の途中であれば、束の注意を逸らすことは出来ないが、
「お~っと、そうだった! ちょっと待っててね、箒ちゃん! あ、これいっくんたちの新装備の資料ね!」
言いたい事を言ってすでに目の前の生徒に興味がないのか、最適化がやりかけなのを思い出し、装備品の書類を忍野と一夏に渡してから作業に戻った。
「あれ本当に第三世代だと思うか?」ヒソヒソ
『どうじゃろうな。あの兎娘は何をしでかすかわからん』
「GNドライヴさえ搭載してないならなんでもいいさ」ヒソヒソ
束から受け取った資料に目を通しながら紅椿に対する率直な意見を言う一夏と忍野。一夏からすれば、あの束さんが第三世代なんて他の人も作ってる世代を作るとは考え難い。忍野はGNドライブみたいに襲撃の対象になるものがないなら気にしないらしい。
箒に紅椿を纏わせ、最適化と微調整をしていた束は、作業の手を止め空中投影の通信画面を開いて応援を呼んだ。
どうやら作業がはかどっていないらしい。
「くーちゃんも降りてきて手伝って~!」
『わかりました』
顔は分からなかったが女性の声が聞こえた。
・・・さっきの黒電話は何だったんだ?
すると停泊している潜水艦の船尾にあるドーム状の構造物が、ゆっくりと、まるで怪獣が口を開けるかのように上へと開いていき、一体のISが飛び出してきた。
その機影を見た瞬間、全員が驚いた。
通常のISよりも一周り以上も大きい
その額には黄色のV字アンテナ。そしてその背中から
「あの緑の光って・・・」
「もしかして織斑くんと忍野くんの専用機って・・・」
「きっとそうよ! 篠ノ之博士がーーー」
女子生徒たちは現れたISに驚嘆の声をあげている。機影こそ違うが、二人の男子が使用するISと
同型と思われる機体。一部の生徒は“新たな男性操縦士が乗ってるのでは?”っと騒いでる。
だが一夏と忍野だけは違う反応だった。
「・・・忍野、あのガンダムって?」ヒソヒソ
「俺も知らないよ。新型か?」ヒソヒソ
彼らの知るガンダムと呼ばれる機体は、自分達が持つ物を除いて一機だけ。しかし目の前に現れたガンダムは記憶にある機体とは全くの別物だった。
リメイクしたのか、新型機か、それとも・・・。
「束さん。あの機体はなんですか?」
「ふふふ、あれぞGNドライヴ搭載ISの4号機。『ガンダムヴァーチェ』だよ!!」
((1号機どこいった!?))
思い切ってガンダムタイプのISを訪ねる一夏。
返ってきたまさかの解答に、声に出さず忍野と二人で同じツッコミを入れた。
そうこうしてる内に、みんなが見守る中ヴァーチェと呼ばれたISは忍野の頭上(?)までゆっくり移動し、
「って、ちょっと待てよ!?」
全身装甲のISは忍野目掛けて降下した。
ズシン!
重低音を響かせながら砂浜に着地するIS。その重量ゆえか、脚部が足首辺りまで砂に埋没している。
その脚の横ですっ転んでる忍野。ギリギリで避けたようだ。
「危ないだろクロエ! 俺を潰す気か!!」
『ええ潰す気でしたのに、なぜ避けたのですか?』
「訊くなよ!? 寧ろこっちは理由を訊きたいよ!!」
『え? だって忍野さま、昨日ラウラがわさびを食べるのを止めず、泣かせたでしょ?』
「理不尽過ぎる!!」
『それに先日、私は“水鏡にいらして下さい”と申しましたのに、一向に現れないではありませんか。ですからその意趣返しです』
「俺にはあのメールから“ボコボコにしてやるからサッサと来い”って感じがしたんだが」
『なんと! 私の思いはあのメールでしっかりと伝わっていたのですね!』
「喜ぶな!! って、ちょっと待て。やっぱりボコボコにするつもりだったのか!?」
『ええそうです。人様の妹の唇を奪うようなアンチクショウにはお仕置きをしないと。では忍野さま、歯を食いしばらないで下さい』
「歯を食いしばらないで殴られると顎が逝っちまうだろ!! それより拳を下ろせ!!」
一同はフリーズしている。全身装甲のISから発せられたのは自分たちと同い年くらいの、若い女の声で、男かと期待していた生徒は落胆きている。
・・・みんな、丸太のような腕で人間を殴ろうとしているISを止めようよ?
「貴様! それ以上嫁を好き勝手にはさせんぞ!!」
やっとフリーズから回復したラウラ。忍野を襲うISに対してプラズマ手刀を突きつけ威嚇する。
それを見てゆっくり拳を下ろし、彼女に向き直るIS。
『“クロエ”になってからは、はじめましてですね、ラウラ』
「え?」
自分の名を呼ばれて呆けた顔するラウラ。
そんな彼女の目の前で巨大なISは展開解除の光を放ち、その中から現れた人物を見た瞬間、ラウラは目を疑った。
整った顔立ちに長い銀髪。自分に向けられたその微笑みは、もう二度と見ることがないと思っていたものだったのだから。
「ね、姉・・・さん、ですか?」
恐る恐る、そして希望に縋るように訊ねる。
「はい。久しぶりですね、ラウラ」
「あああ・・・姉さん!!」
走り出したラウラは一直線にクロエの胸に飛び込み、大粒の涙を流した。
「生きて、生きていたんですね!! 夢ではないのですね!?」
「ええそうですよ。私は生きてますよ」
姉妹の再会に、状況がわからない生徒たちも涙し、拍手が巻き起こした。
山田先生は号泣し、千冬も目を潤ませている。
「いや、くーちゃん。再会もいいけど手伝ってよ~」
「俺が変わりに手伝うよ」
ヴァーチェや紅椿の世代に関しては後の話で説明します。
評価や感想や感想をお待ちしております。
最近ダメ出しすらないので・・・。