暴物語   作:戦争中毒

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最近になってやっと多機能フォームの使い方を知った作者です。こんなんでこの先大丈夫なのだろうか・・・?

それでは本編、どうぞ


おしのショッピング 其ノ参

 

007

 

 

「いらっしゃいませ! ワグナリアへようこそ!」

「久しぶりだな種島」

 

「「「・・・・・・」」」

 

絶句。

入店して普通に店員と話している千冬を尻目に絶句している他七人。

 

それもそうだろう。出迎えくれたのはどう見ても小学生だからだ。

 

「なんで小学生が?」ヒソヒソ

「い、家のお手伝いでは?」ヒソヒソ

「ここ家族経営ではないですわよ」ヒソヒソ

「まさかあれで中学以上ッスか?」ヒソヒソ

「ということなんだろうな」ヒソヒソ

「胸、大きいじゃない」ボソッ

「・・・別に、悔しく、ない」ボソッ

 

二人ほど店員の胸のほうが気になるようだが。

 

「ごめんなさい千冬さん。今、杏子さん居ないんですよ」

「いや、今日は生徒たちと食事をしに来ただけだ」

「そうですか。ではお席にご案内します」

 

 

 

 

 

「それでは、ご注文がお決まりになりましたらボタンを押してお呼びください」

 

一礼をしてから店の奥に消えてく小さな店員さん。

千冬御一行が案内されたのは窓際の一角で、四人掛けの席と六人掛けの席に別れて座っている。

 

四人掛けの席に千冬と山田先生とケイシーと鈴、六人掛けの席にサファイアとセシリアと忍野と簪が座っている。

 

 

「「「織斑先生! あの子は!?」」」

 

みんながまず聞いたのは種島と呼ばれた小さな店員さんの事だ。

 

「ああ、あの子は種島ぽぷら。近くの高校の生徒で、確か二年生の筈だ」

「「ブホォ!!」」

「「「年上!?」」」

「あれでタメッスか!?」

「高校生だったんですね~」

 

まさか小学生にしか見えない店員が高校二年生だと聞き、驚愕していた。

水を飲んでいた忍野とケイシーは、思わず吹き出してしまい咳き込んでいる。

 

「ケホッケホッ、あれでフォルテと同い年なんですか!?」

「そうだ。私も初めて会った時は驚いたさ。どうだ? サファイアよりしっかりしていそうだろ?」

「はい!」

「ちょっと!? 先輩も織斑先生も酷くないッスか!?」

「「そう言われたくないなら最も落ち着いた行動をしろ」」

「あ、あはは・・・」

「山田先生!? 笑ってないでフォローしてくださいッスよ!」

 

先生と先輩から味方なしの攻撃に晒されているサファイア。

 

「なぁ、あの子、ラウラより小さいよな?」

「ええ、恐らく・・・いえ、間違いなく」

「・・・高校二年生だと絶望的だな」

「お可哀想に、あの方の背丈はもう・・・」

 

自分たちの知り合いで最も背の低いラウラを思い出してる忍野とセシリア。セシリアはハンカチを目にあてながら、この先の種島の成長に涙した。

 

「・・・年上」

「まだ、希望がある・・・」

 

さっきからずっと自分たちの胸に手をあてている簪と鈴。

・・・そんなに気にしてたのかい?

 

 

「そんことより、千冬。あれはなんだ?」

 

忍野が指差す先には、席の片付けをしている店員がいた。いたのだが、

 

その腰には日本刀を下げていた。

 

「せ、先輩! 私サムライソードって初めて見たッス!」

「私だって初めてだ! ということ彼女はサムライか?」

「日本のレストランはユニークですわね」

 

日本の文化に疎い三人は呑気な感想を述べるが、

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

正しい日本文化を知っている四人は絶句だった。

 

「これ、あたし達が異常?」

「凰さん、私たちは正常ですよ」

「・・・刀」

「千冬、説明してくんない?」

 

忍野が千冬に聞くが、

 

「お前ら、早く注文を決めろ」

 

((((あ、逃げた))))

 

答えてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

とりあえず注文を済ませ、注文した品がくるまでドリンクバーのドリンクを飲みながら談笑をしてる八人。

千冬と山田先生が席に置いてあるアルコールの広告をチラチラと見ているが、生徒の手前、酒を飲めないので炭酸飲料ばかり飲んでいる。

 

 

「ところで忍野」

 

話の途中で忍野に話かけるケイシー。

 

「ん? なんですか?」

「あれはお前の知り合いか?」

 

忍野の後ろのガラスを指差すケイシー。

振り向いた先にいたのは、ガラスに張り付くようにしてこちらを見ているラウラだった。

 

 

 

 

008

 

 

 

~セシリアサイド~

 

「嫁よ、なぜ私を置いて堂々と浮気か?」

「浮気以前に嫁じゃないって」

「あはは・・・」

 

あの後、お店に入って来られたらラウラさん。

先程は気づきませんでしたけれども、シャルロットさんもご一緒だったのですね。

 

「簪、そこをどいてもらおうか」

「断る、ここは譲れない」

 

ラウラさんは簪さんに席の交代を迫っている。

 

忍野さんは首を傾げていますが何故、お二人が睨み合っているのかはよく分かります。

 

あれは恋敵に対する牽制ですわね。忍野さんが端の椅子に座っているので隣の席は一つしかありませんからね。

 

 

「あれあれ~? 忍野は浮気者ッスか? いけないッスね~、最低ッスよ~?」

「ここぞとばかりに優位に立とうとすんな」

 

サファイア先輩は先ほどの仕返しでしょうか? 忍野さんをからかおうとしているようですわね。

 

「ハッハッハッ、もう何を言っても無駄ッスよ! 今までの恨み、ここで晴らーーー

「先輩?」ガシッ

「私の嫁に何をするつもりだ?」ガシッ

 

サファイア先輩がなにかおっしゃろうとしましたけれど、簪さんとラウラさんに口を塞がれてしまいましたわ。いえ本当、こう、口元をガシッ! と掴まれてます。気のせいかサファイア先輩の顔の輪郭が歪んでるように伺えます。

 

しかも簪さんとラウラさん、お二人は先輩の口を塞ぎながらも、睨み合っておりますわね。

お二方、先輩への敬意はいずこに。

 

「ラウラ、忍野は“あなたの”嫁じゃない」メキッ

「日本では気に入った相手を嫁と呼ぶが普通だと聞いたぞ?」メキッ

「それは間違い。正しい日本文化を覚えて・・・」メキメキ

「そんな事どうでもいい。“嫁”は私のだ」メキメキ

「・・・私は“彼と”専用機を組み立てた」ミシッ

「私は“嫁の”布団で寝てるぞ」ミシッ

 

・・・あー、サファイア先輩がもがいてらっしゃいますわ。痛いんでしょね、先程から変な音が聞こえてきますし、顔も真っ赤になってますわね。酸欠でしょうか?

 

「ね、ねーラウラと簪さん、そろそろ手を放さないと先輩が死んじゃうよ?」

 

あら、シャルロットさんが止めてくださいましたわ。

 

「「え?」」

 

二人して先輩の口を塞いでたことを忘れてたようですわね。シャルロットさんに言われて、自分たちの手の先で先輩が顔を青くしているのに気がつきましたわ。

 

二人の手から解放された先輩は、テーブルに突っ伏しながら息継ぎをされてます。本当に危なかったようですわね。

 

「ゲホッゲホッ、ハァハァ、死ぬかと思ったッスよ」

「ハッハー、お気の毒さま」

「ちょっとあんたら! 先輩は敬うものッスよ! それを輪郭が変わるかのような力で潰しにかかるなんて酷くないッスか!?」

「「す、すみません!」」

「まったく。顔が歪んで嫁の貰い手がなくなったらどうするつもりッスか?」

「大丈夫ですよ。もし貰い手がなかったら、」

「えっ/// お、忍野、もしかしてーーー」

 

先輩いけませんわよ、そんな期待をしても・・・、

 

「仕事に生きてください」

「リアルアドバイス!?」

「大丈夫、先輩のツイッターにフォローだけはしますから。ブログにも匿名でコメント書きますよ」

「“だけ”ってなんッスか!? 匿名はやめて欲しいッス! それにこういう場合の男の台詞は、普通“俺が嫁に貰ってやる”ッスよね!?」

「いえ、先輩は・・・ちょっと」

「断り方が生々しいッス!!」

 

・・・こうなりますから。

一夏さんもそうですけど、どうして女性に期待させるような物言いをなさるのでしょう?

男性がISを動かすには“鈍感”や“唐変木”が必須スキルなのでしょうか?

 

「そんな事より、お店の中で騒ぐのはどうかと思いますよ?」

「誰のせいだと思ってるッスか!!!」

「まあまあ、興奮しないで。ほら、この“特濃ハバネロジュース”、奢りますからこれでも飲んで落ち着いてください」

「いらないッス!! そんな物を飲んだら余計に興奮するッスよ!!」

「先輩、女性が白昼夢堂々と“興奮する”とか言っちゃダメでしょ。もしかして変態ですか?」

「誰が変態ッスか!! いい加減にして欲しいッスよー!!!」

 

「いい加減にするのはお前らだ!!」

 

ゴスンッ!!

 

鈍い打撃音と共に、忍野さんとサファイア先輩の頭に織斑先生の鉄槌がくだされ、二人は殴られたところから煙を出しながらテーブルに倒れました。

動かないところを見ると、気絶されたようですわね。

それにしても、一撃で人の意識を奪う拳、まったくもって織斑先生は恐ろしいですわね。

 

「オルコット、何か失礼なことを考えてないか?」

「いえ、そのような事は何も考えてませんわ」

 

・・・読心術まで習得なさってるのでしょうか?

 

 

「お待たせしました」

 

あら、注文していたメニューが届きましたわね。

それにしてもこの店員さん、サムライソードを持っているのになぜサムライの格好をしてないのでしょう?

 

そうして全ての品が揃った所で、

 

「か、簪! これはなんだ!?」

 

歓声にも似た声を上げるラウラさん。

ラウラさんの目の先には忍野さんが注文なさった特大パフェがありました。

 

「ワグナリア特製ジャンボパフェ。忍野くんの、でも起きない」

 

簪さんが頬を軽く叩いても、肩を揺すっても起きない忍野さん。白目が怖いですわ。

・・・頭蓋骨、割れてませんわよね?

 

「ふむ、では簪。溶ける前に一緒に食べようではないか」

「え、でもそれは、忍野くんの・・・」

「気絶しているのが悪い。それにあんな告白するかのような言い方をしたのだ、ゆえに私たちに食べられたとしても、それは当然の報いだ」

「! ・・・イチゴは譲れない」

「なら私は板チョコだ」

 

あらあら、お二人で仲良くパフェを食べてますわ。忍野さんが起きたらどんな顔をするか、楽しみですわね。

 

「ところでシャルロットさん、お二人はどうしてここに?」

「レゾナントに行った帰りで、ラウラが“嫁がいる!”っとか言って走り出しちゃて、ついて行ったらここに」

 

・・・第六感ですか?




あと一話の後、臨海学校編へと突入したいと思います。
感想や評価をよろしくお願いします。

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