暴物語   作:戦争中毒

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買い物と迷子
日曜日の朝


 

001

 

 

さて、本日は日曜日。

全国的に学校は休みになり、学生たちは一週間のストレスを発散して、翌日から始まる授業に備えて鋭気を養う日である。

 

IS学園もその例に漏れず、日曜日は学園に居る学生たちの人数が半数以下に減ってるように見える。

実際は惰眠を貪っていて、部屋から出てこないのが理由だが・・・。

 

 

 

 

「はぁ~、またか・・・」

 

目が覚めてからいきなりため息を吐き、布団に潜り込んでいる人物を掛け布団越しに確認する忍野。

潜り込んでいたのは、ラウラ・ボーデヴィッヒ、しかも一糸纏わぬ姿ーーーつまり全裸だ。

 

先日の“嫁”宣言をしてから毎日のように、布団に潜り込むようになり忍野、そして同室の一夏の悩みの種となっている。

一度、“なんで裸で、俺の布団に潜り込むんだ!?”っと問うと、

 

『夫婦とは包み隠さぬものだと聞いたぞ?』

 

っと、真顔で言われてしまい、思わず頭を壁に打ちつけていた。

 

ちなみに先日、注意と嫌がらせの意味を兼ねて寝ているラウラを、同じく寝ている一夏の布団に放り込んだのだがまったく効果なし。それどころか、目を覚ましたラウラは一夏を『私を嫁(忍野)から寝取ろうとした変態』として攻撃。さらに一夏の悲鳴を聞いて駆けつけた一夏love達の加勢により手が着けられない状況になってしまった事がある。

 

 

「やれやれ、日曜日くらいゆっくり寝ていたかったんだけどねぇ」

 

とりあえずいつものように、ラウラを掛け布団で簀巻きにして彼女の部屋の前に置きに行く忍野。これはすでに日課のようになってしまってる。

ラウラが布団に潜り込む→朝、忍野が起きてラウラに気づく→ラウラを布団で簀巻きにする→部屋の前に戻す→同室の者がラウラを回収→着替えの済んだラウラが布団を返しに来る。

・・・嫌な日課だ。

 

ぐっすりと幸せそうな顔で寝ているラウラを部屋の前に置いてきた忍野。

すっかり目が覚めてしまったので、二度寝する気分にもなれず、さらに一夏はすでに外出して居ない。何をしようかと考えていた時、

 

 

コンコン

 

『忍野さん? 起きてるかにゃ?』

 

来客があった。声の主は真宵のようだ。

 

 

「鍵はかけてないから入っていいよ」

 

部屋に入ってくる真宵。いつもどうり白衣だが、今日はさらに風邪の時に使うマスクまで装備している。この子が“マスクを着けてる”と言うとガスマスクを連想してしまうのは日頃の行いのせいだろう。

しかしこうして見ると、いよいよ危ない人に見えるな。

 

「今日はお願いがあって来たんじゃよ!」

「お願い?」

「今日は簪さんとお買い物に行く予定だったんだけど風邪をひいてしまって、そこで忍野さん! 代わりに行ってくれない?」

「中止にすればいいだろ? 簪なら病身のお前をせめたりしないと思うぞ?」

「それが、すでに簪さんは待ち合わせ場所に向かってしまわれて、私の携帯が壊れてるから連絡できないんじゃよ!」

 

都合が良すぎる上に、非常に元気がいい。

 

「・・・本当に風邪かい? その割には元気そうだが?」

「そそ、そんな事ないんじゃよ、ゴホゴホ、ほら、咳も出てるし」

 

なんともワザとらしいが、それに気づかない忍野。

バカなのかな?

 

「・・・まあ、予定もないしいいよ? それで待ち合わせ場所は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~簪サイド~

 

 

(真宵・・・遅いな・・・)

 

今わたしは、IS学園からほど近い大型ショッピングモール『レゾナンス』の前で本を読んでいる。今日は真宵と買い物をする予定なのに、待ち合わせ時間になっても現れない。

・・・誘った癖に、遅れてくるなんて、どうしてくれよう?

 

 

「ねぇそこの君、暇なら一緒に買い物に行かない?」

 

またナンパかな? こういうのは顔を合わせない方がいいよね。このまま本を読んでいよう。 

 

「人を待ってます、他を当たって下さい」

 

顔を見ない、合わせない。

 

「そんな事言わないでさぁ」

「行きません」

 

無視、無視。

 

「ハッハー、簪はつれないなぁ」

「え!? なんで名前をって・・・」

 

名前を呼ばれたので驚いて顔を上げるとそこにいたのは、

 

「よっ、簪」

 

想い人である忍野くんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

002

 

 

~一夏サイド~

 

 

今日は朝からミスタードーナツを食べている。もちろん忍の希望だけど

テナントとして入っているお店だと朝9時とか辺りから営業する。しかし忍が珍しく早起きしたので開店まで待てないと駄々をこねた。なのでわざわざ少し離れた所にある、朝7時から営業しているお店に来ている。

 

「しっかし朝食にドーナツって」

「何を言っておるお前様。ドーナツとはアメリカ軍では正式なレーション、つまり野戦食として採用されておるのじゃぞ。それにミスタードーナツには朝セットとして、朝からドーナツを食べるためのセットがあるんじゃ。それを否定するのはこの儂が許さぬぞ」

「いや、否定とかはしないけど・・・」

 

とは言うものの、朝はお米が食べたい。あとでコンビニに寄って、おにぎりでも買おうかな?

 

「それにしても・・・」

 

さっきから、他の客や店員がこっちをチラチラ見てくるんだよなあ。こっち、と言うか、忍をだけど。

ただでさえ金髪美少女ということで、注目を浴びてるのに、古風な言葉遣いがそれを加速させている。今はもう慣れたけど、初めの頃は胃が痛くなりそうだったのが懐かしい。

 

「お前様、おかわりのコーヒーを持ってまいれ」

 

飲み終わったコーヒーカップを渡してくる忍。確かにミスタードーナツの朝セットはコーヒーのおかわりが出来る。しかし幼女がコーヒーを嗜むという画は、見ていてなかなか壮絶だ。

でも、

 

「人を顎で使ってんじゃねーよ」

 

そういうのは自分で貰ってこい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミスタードーナツを出たあと、腹ごなしがてら散歩をしています。この辺りは普段来ない所だからなあ、目新しく感じる。

忍はお持ち帰りのドーナツを持って影の中に戻ったからそろそろコンビニにでもと思っていたら、

 

「彼処にいるのは箒か?」

 

箒が一人で歩いていた。

こんな所で何をしてるんだろう、って人の事言えないか。

 

「何してるんだ箒?」

 

 




あと2話くらいで八九寺を登場させます。

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