暴物語   作:戦争中毒

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逃走中?

 

001

 

 

「そ、それは本当ですの!?」

「う、ウソついてないでしょうね!?」

 

次の日、教室に向かっていた一夏とシャルルは廊下まで聞こえる声に首を傾げた。

 

「朝からなに騒いでるんだろう」

「さあ?」

 

因みにシャルロットはしばらくの間“シャルル”として学園に通うらしい。

 

「本当だってば! この噂、学園中で持ちきりなのよ? 月末の学園別トーナメントで優勝したら織斑君たちの誰かと交際でき・・・

 

「俺がなんだよ?」

 

「「「きゃあああっ!?」」」

 

一夏は教室に入って普通に声をかけたのだが、返ってきたのは取り乱した悲鳴だった。

 

「俺の名前が聞こえたが、何の話だ?」

「う、うん? そうだっけ?」

「さ、さあ、どうだったかしら?」

 

鈴とセシリアは愛想笑いをしながら、誤魔化す。

 

「じゃ、じゃああたし自分のクラスに戻るから!」

「そ、そうですわね!わたくしも自分の席につきませんと!」

 

二人が一夏の元から離れるのを期に、他の女子たちも離れていく。

 

忍野は面倒くさそうな顔してその様子を見ていた。

 

 

 

 

 

002

 

 

 

放課後、一夏とシャルルはアリーナへの廊下を歩いてる時

 

「ちょっと待ってくれるかな?」

 

誰かに呼び止められた。

声の主は忍野。しかし二人は辺りを見回したけど忍野の姿は何処にもない。

 

「こっちだよ」

「「わッ!!」」

 

やっと姿を見せたと思ったらなんと忍野は窓から現れたのだ。ちなみにここは二階、窓の外には足場はない。

落ちたら危ないよ~。

 

「なんでそんな所に居るんだよ!?」

「ちょっと訳ありかな? すくにお前も理解できるから」

「? 何のことだ?」

「何でもないよ。それよりデュノアさんに聞きたいことがあるんだ」

「え!? 僕に!?」

 

シャルルからしたら驚きしかない。今まで忍野が話かけてきたことは一度もなかったのだから動揺もしても仕方がない。

 

「そう気を張らなくてもいいよ。俺が聞きたいのは百々目鬼のことだ」

「ッ! なんでそのことを!?」

「だって一夏に解決法を教えたのは俺だぞ?」

「え、本当なの一夏!?」

「うん本当だぞ」

「あぁ~~」

 

シャルルは緊張したの馬鹿らしくなってしまった。

 

「それで、いつ頃から現れたんだい?」

「えっと・・・、日本に来る数日前、学園に入学の書類を提供した次の日だった」

「ならその日の前日、誰かと接触した?」

「殆ど軟禁状態だったから誰とも合ってないよ? ただ変なものは見たけど」

「変なもの?」

「うん。社長から届いた書類の中に一枚関係ないものが混じってたんだ。見たら異国の文字が円を描くように書かれてたんだ」

「異国の文字か・・・」

「それが百々目鬼と関係あるの?」

「さぁ、どうだろね」

 

はぐらかすようにする忍野。

一夏とシャルルは問い詰めようと思ったがそれは出来なかった。

 

 

003

 

 

突如、廊下に響き渡る轟音。その音の正体は三人のもとへと走ってくる女子生徒達の足音だった。

 

三人は逃げる間もなくあっという間に包囲されてしまった。そして全員が手にしてる紙を差し出してきた。

 

「「「「わたしと出場してください!!!」」」」

 

みんなが手にしてるのはタッグトーナメントのタッグ申込書である。

 

タッグトーナメントでは、生徒の実力がちゃんと発揮されるように、事前に出場するペアを申し込むことになっている。。なお、ペアが出来なかっ た者は抽選により選ぶことになるが発表されるのが、少し遅れるので連携プレーなどの練習期間が短くなってしまう。

 

 

さて、女子生徒達からの申し込まれた三人。

一夏は忍野が窓から登場した理由をなんとなく理解しつつ、

 

「わ、悪い! 俺はシャルルと組むから」

 

女子生徒達に戸惑いながらもそう答えた。

一夏が気にしたのはシャルルだ。もし自分か忍野以外の生徒と組んだらシャルルが女の子だとバレてしまう可能性があると考えたようだ。

優しいね~。

 

一夏がシャルルと組むと知り、落胆する女子生徒達。

だが一人の女子生徒があることに気がついた。

 

「あれ? ってことは忍野くんはフリー?」

 

その瞬間、その場に居た全員がまるで獲物に狙いを定めたかのように忍野を見た。

 

「・・・あ、用事思い出したから失礼するよ」

 

忍野はすぐさま窓から飛び下りた。

 

 

「「「「追えー! 逃がすなー!!」」」」

 

みんな飛び下りた忍野を追うために一階へと走っていった。再び轟音を響かせながら女子生徒の軍団は立ち去っていった。

 

一夏とシャルルが唖然としていると、

 

「やれやれ、騒々しいなぁ」

 

窓から這い上がってきた忍野。どうやら飛び下りた振りをして隠れてたようだ。

 

「で、誰とタッグを組むんだ?」

「ん? 特に決めてないよ。面倒くさいからねぇ~。それじゃ、あの子達に見つかる前に隠れるとしますかな」

 

そう言って忍野は立ち去ろうとするが、

 

「あ、あの、忍野くん」

「ん?」

 

誰かに呼び止められ、振り返るとそこには簪がいた。

どうやらさっきの集団について行けず、遅れてきたようだ。

今回はそれが吉とでたようだが。

 

「あれ? 簪、なんでここに?」

「あの、こ、これ!」

 

簪が差し出してきたのは先ほどの女子達と同じくタッグの申込書だ。

 

「い、一緒に、出場して」

「うん、いいよ?」

「「軽ッ!!」」

 

思わずツッコミを入れる一夏とシャルル。

 

「忍野!? なんでそんな簡単に決めるんだよ!?」

「そ、そうだよ! そんな簡単に決めるならさっきの子たちでも良かったんじゃないの!?」

 

「理由はあるさ。おっと、その前に紹介しよう。こちら、四組のクラス代表、更識簪さん」

「ど、ども」

「それで簪、こっちが三人目の男性操縦士(笑)、シャルル・デュノアさんと一組のクラス代表」

「何か余計なものがついてなかった!?」

「俺の紹介適当過ぎるだろ!?」

「え~と、それで簪と組む理由だけど」

「「スルーした!?」」

 

一夏とシャルルのツッコミを無視して説明をする忍野。

 

「理由は簪の専用機さ。公式戦での使用は初めてだから制作に協力した身としては気になるんだよ」

「へぇ~、そうなのか」

「うん、だから引き受けたのさ。本当は当日サボろうと思ってたんだけどねぇ~」

 

((絶対織斑先生(千冬姉)に怒られるって))

 

「んじゃ、他の子に見つかる前に受付を済ませるとするかな。行こ、簪」

「う、うん」

 

内心呆れてる二人をよそに、忍野は簪を連れて行ってしまった。

 

「俺たちも受付しに行くか?」

「そうだね、他の子たちが来る前に済ませよ」

 

 

 

 

 

 

このあと箒、セシリア、鈴が一夏にタッグの申込みをしてきたが、既に受付を済ませていたと知り落ち込んでいたと述べておこう。

 

 

 

 

 

 

004

 

 

 

 

何日か経過して、タッグトーナメント当日。

 

今回のイベントも各国からの来賓などで観客席は一杯だ。生徒達の間では、新聞部が元締めとなり観客席の販売と優勝ペアの賭が行われていたが、織斑先生に発覚して鎮圧された。

 

前回、忍野が侵入者をボコボコにしたためだろうか、今回は何もおきていない。どこの国も特殊部隊を素手で壊滅される奴を捕まえようとは思わないようだ。

 

 

 

試合開始まであと1時間。試合の組み合わせが発表された。

一夏とシャルルは後半の試合だが忍野と簪は、

 

 

トーナメント第1回戦 第1試合

忍野仁&更識簪  VS

ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ乃箒

 

 

 

いきなりの初っ端、一番手である。

 

 

発表された組み合わせを見た二人は、

 

(アメを貰ってたあの子?)

(面倒くさそうな試合になりそうだなぁ)

 

簪は先日の事を思い出し、忍野は試合の組み合わせに人為的悪意を感じていた。

 

 

 




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