001
練習を終えて部屋に戻ってきた一夏とシャルル。
だが、部屋の前に人影があった。そこに居たのは箒とセシリアだ。二人は一夏たちに気がつくと駆け寄って来て、
「「一夏(さん)、一緒に夕食などいかがですか?(に行くぞ!)」」
一夏を夕食に誘ってきた。
「ちょっと箒さん! わたくしが先に一夏さんをお誘いしたんですよ!?」
「いいや! 私が先に一夏を誘ったんだ!」
本人そっちのけで言い争いを始める二人。一夏もシャルルも止めようかどうしようか悩んでる。
「さあ一夏さん、参りましょう」
そう言うとセシリアは先手をとり一夏の腕を取る。それを見た箒は、
「なっ、何をやっている!?」
「今から夕食に行くんですのよ?」
「それと腕を組むのとどう関係がある!?」
「あら、殿方がレディをエスコートするのは当然のことです」
「な、ならば!」
反対の腕を取る。セシリアはそれをジト目で見る。
「・・・箒さん、何をしてらっしゃるのかしら?」
「男がレディをエスコートするのが当然なのだろう?」
二人に両腕をとられた一夏。
困った一夏はシャルルも誘うが、
「そ、そうだ! シャルルも一緒に!」
「僕、食欲ないから先に部屋に戻ってるね」
残念ながらシャルルは夕食に行かないらしい。それを聞いた二人は一夏を連れ食堂へ向かう。
「行くぞ一夏!」
「行きますわよ一夏さん!」
「え、ちょっと」
箒とセシリアに連れてかれる一夏。
両手に花だね、リア充爆発しな。
「一夏が戻ってくる前に潰しとこ・・・」
そんな一夏を見送ってから、シャルルは部屋に入った。
002
食事を終えて部屋に戻る一夏。
「それにしてもなんで鈴は怒ってたんだ?」
『それを儂に聞くのか?』
あの後二人と腕を組んだまま食堂に行った一夏だが、到着直後、先に食堂にいた鈴にものすごく怒られたのだ。それに対して箒とセシリアは満足げな態度でいたが、鈴が明日の夕食を誘うと慌てて止めに入ってきた。
一夏はそんな三人を置いて食事を済ましたのだ。
最低だね。
「夕食くらいみんなで食べればいいのに」
『もう儂は何も言わんぞ』
「? 何か知ってるのか忍?」
『知っておるが我が主様には言うだけ無駄じゃ』
「・・・なんか酷くない?」
そんな感じで部屋の前に戻ってきた一夏。その手にはサンドイッチの入った袋を持っている。
シャルルは食欲がないと言っていたが何も食べないのは身体に悪いと思って買ってきたのだ。
「シャルル、サンドイッチ持ってきた・・・けど、」
「い、一夏!?」
自分たちの部屋だからとノックもせず扉を開ける一夏。
だが目の前の光景を見て、サンドイッチを勧める言葉を発することが出来なくなった。
部屋のキッチンで右手に血の付いたはさみを持っているシャルル。だがそんなことよりも目を引いたのは包帯の解かれた左手。
その左手の甲には血を流している“目”があっのだ。
「え、えっと、あの、
「見せてみろ!!」
シャルルは何か言い訳をしようとしたが一夏はそれが怪異だと気づき、確認をしようと手を伸ばした。
自分の手にいる怪異をはさみで潰そうとしている姿は、“専門家”ではない一夏から見ても異様に映ったのだ。
だが、
「痛ッ!」
「!?」
一夏が左腕に触れるとシャルルは痛がった。腕を掴んだわけでもない、“目“に触れてもいない、本当に触れただけなのに傷口を触られたかのような反応をする。“目”は手の甲だけじゃ・・・。
一夏は悪い予感がした。
「もしかして・・・」
「・・・・・・」
シャルルは何も答えなかった。
一夏はシャルルの服の袖をゆっくりとまくった。そこには左腕全体におびただしい数の“目”が広がっていた。
「目? 何の怪異だ?」
「怪異?」
「・・・俺もとりたてて詳しいわけじゃないんだ。そういう経験をすることがあって、そういうのに詳しい奴がいるから・・・理解はできる」
確かに一夏は驚きはしたがそれだけ、わからないけど理解はできない訳ではない。
「そうなんだ・・・これ“怪異”って言うんだ」
俯いてしまったシャルル。しかし、それでもはっきりと、言った。
「僕、こんなの腕、嫌だ」
「・・・シャルル」
「嫌だよ・・・助けてよ、一夏」
シャルルは涙混じりの声で、そう言った。
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