001
「シャルル・デュノアです。フランスから 来ました。皆さんよろしくお願いします」
挨拶する“貴公子”といった感じをした転校生、その姿に皆のざわめきが無くなった。
「お、男?」
誰かが呟いた。 シャルルと名乗る転入生は一夏たちと同じ男子の制服に身を包んでいる。
中性的に整った顔立ちで華奢な体型。濃い金髪を後ろで束ねている。
「あ、はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いたので本国から転入を・・・」
「「「「「・・・きゃあああああああああ あッ!!」」」」」
途中で覚醒した皆が叫ぶ。 その音で窓にヒビが入りそうになるがギリギリ耐え切ったようだ。
「男子よ!! 男子!! 三人目の!! しかもうちのクラスに金髪って!!』
「三人ともウチのクラスに集まるなんて、ここ天国!? それとも夢!?」
「織斑君や忍野君とは違って明るいプリンス!! それも守ってあげたくなるタイプ!!」
「うるさい! 静かにしろ!!」
「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」
織斑先生と山田先生に言われて静かになった教室、皆の視線はもう一人の転入生に集まった。
女子の平均よりも低い背に腰近くまでのばした銀髪。そしてなにより目を引いたのは左目の黒眼帯。
いかにも“軍人”といった印象を放っている。
「・・・挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
ラウラと呼ばれた子は織斑先生に向けて敬礼をしている。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
軍人らしさを感じる、ピシッとした立ち方をしてみんなの方を向いた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「「「・・・・・・」」」
皆、続く言葉に期待したが、名前以外なにも言わないつもりのようだ。
「あ、あの、以上・・・ですか?」
「以上だ」
山田先生の質問に素っ気ない返事をして一夏と忍野を交互に見ている。そして一夏とラウラの目があった。
「お前が織斑一夏か?」
「そうだけどなにか?」
すると彼女は正座をし(?)、制服の上着を脱ぎ(??)、何処からかナイフを取り出し(!?)お腹に突き立てるようにして、
「覚悟はできてる、介錯を頼む」
「「「「待て待てちょっと待てー!」」」」
クラス全員でストップをかける。山田先生はオロオロとしてパニクってる・・・いや、一部を除いたクラス全員がパニクってる。だって今転入してきた子がいきなり切腹しようとしてるのだから仕方がない。
「いきなり何をしようとしてるのかな!?」
ラウラの持っているナイフを没収しながら忍野が尋ねると、
「? 日本では相手に誠心誠意謝罪する時、HARAKIRIをすると聞いたぞ」
「「「「誰がそんな事教えた!!?」」」」
さも当然のように切腹をすると答えた。
織斑先生が頭に手をやってる、どうやら間違った知識を教えた犯人に心当たりがあるようだ。
「・・・では、HRを終わる。今日はこの後ISの 稼働実習の日なので、各自はこの後着替えて第二グラウンドに集合だ。織斑はデュノアの面倒を見てやれ同じ男児同士だろう。ボーデヴィッヒと忍野は私のところに来い」
002
~忍野サイド~
千冬について行き、教室から離れた階段に来た。
もう少し場所を選べよ千冬・・・。
「ボーデヴィッヒ、何故あんな事をした?」
「は! 織斑一夏に対しドイツとして謝罪ため、HARAKIRIを!」
「残念ながら切腹は武士がするものなんだ、IS乗りの謝罪のしかたじゃないよ?」
「そうなのか!?」
「・・・いったい誰がそんな事教えたんだい?」
「私の部隊の副官だ」
「・・・クラリッサの奴」
千冬が誰かの名前を呟いた、やっぱり知り合いなのか?
「謝罪は言葉でしろ。わかったら行け、授業に遅れるなよ」
「は! それでは失礼します」
そう言うとボーデヴィッヒはグラウンドの方へと向かった。しゃべり方だけじゃなく動きまで堅苦しいね~。
「千冬、あの子が言ってた謝罪って?」
「織斑先生だ。あいつが言っていた謝罪とはドイツでの事だろう、ラウラは軍人だ」
やっぱり軍の人間だったんだ。
「ドイツでの大会中に一夏は誘拐されて、軍が捜索しても一夏を見つけれなかった事に何か思っていたんだろう」
さすがに切腹しようとするとは思わなかったが、と千冬は言った。
ドイツで開催された第二回モンド・グロッソ。その決勝戦で一夏は誘拐されて表向き、二週間の消息不明になっていたっけ?
「へぇ~、ドイツのねぇ」
「そうだ、お前と一夏が語ってくれない、ドイツでの二週間の出来事に対してだ。・・・いい加減話してはくれないか?」
千冬にしては随分と下手に出た頼み方だが、被害者面した言い方が気に入らないな。
無関係の第三者のくせに
「ハッハー、それは何度も言ってるが無理だ。一夏が語らない事を俺が言うわけにはいかないよ」
「一夏は・・・何も話してくれない」
「ならあんたは知らなくていいって事だ。知ったところで何かが変えれるわけじゃない、既に過去の出来事、余計な詮索はしない事だな」
俺はそれだけ言ってからボーデヴィッヒのあとを追うようにグラウンドへ向かった。
千冬、あんたは知らなくていいんだ。表で、舞台の上で輝かしく活躍してる奴が、舞台裏である俺達を見る必要は何処にもない、関わらなくていいんだよ。
003
「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」
「「「「はい!」」」」
一組と二組の合同実習が始まったが、
「人の頭を何だと思って・・・」
「一夏のせい一夏のせい・・・」
セシリアと鈴は頭をおさえて涙目になっていた。
授業が始まってるのにラウラの事を話してたのが原因だ、織斑先生の主席簿アタック発動。
さすがに“一夏が介錯を頼まれた”となれば気になって仕方がないが・・・。
「鈴~、背縮んでないか~?」ボソボソ
「うっさいわね忍野! 縮むわけないでしょ!」ボソボソ
「でも千冬だし」ボソボソ
「一夏のせい一夏のせい・・・」グスン
忍野の追い討ちで余計に涙目になった鈴。
背丈気にしてたんだね。
「今日は戦闘を実演してもらおう。―――凰!オルコット!」
「・・・チビのあたしになにか~?」グスン
「わたくしもですか・・・」
指名されたふたりだがモチベーションが低い。鈴は低いと言うより心が荒んでる。
「専用機持ちはすぐに始められるからな」
「はぁ・・・」
「そうですけど・・・」
そんな時、織斑先生が二人に耳打ちした。
「お前ら少しはやる気を出せ。・・・アイツにいいところを見せられるぞ?」
「「っ!?」」
「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわ ね!」
「まぁ、実力の違いを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」
織斑先生の一言でやる気全開だ。
恋する乙女、単純過ぎる。
「それで、相手はどちらに? わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」
「ふふん、こっちの台詞。返り討ちよ」
「慌てるなバカども。対戦相手は・・・」
キィィィン・・・
・・・上から何か聞こえてくるのでみんなで上を向いたらISが落下して来ていた・・・
「ああああーっ! ど、どいてください ~!」
「っ!?」
ものすごいスピードで一夏たちのところに突っ込んでくる山田先生が見えた。
「本日の天気はIS学園で山田先生が降るでしょ~。では、現場の織斑さ~ん」
「のんき過ぎるだろ!? ったく!」
一夏はすぐにケルディムを展開した。
《忍~、しゅくよろ~》
《我が主様も大概じゃの、あ~ぁ、なんでこんな事のために・・・》
忍はシールドビットを山田先生の進路上に展開した。
直後、
「ギャフン!」
山田先生は顔面からビットに衝突した。
「山田先生はドジだが元代表候補生だ、対戦相手には不足はないぞ」
「お、織斑先生~、トゲがあるんですけど・・・」
生徒の前に着地した山田先生。ぶつかったおかげでISの制御を取り戻したようだ。
だがみんなから若干呆れ気味の雰囲気が漂ってる。
「さて小娘どもいつまで呆れてる。さっさとはじめるぞ」
「え? あの2対1で・・・?」
「いや、さすがにそれは・・・」
「安心しろ。今のお前らならすぐに負け る」
「「なっ!?」」
織斑先生に負ける、と断言されて2人の闘志に火が付いたみたいだ。
ISの制御に失敗する人に負けると言われたら気に障るだろうな。
「では、始め!」
3人はゆっくりと飛翔し、構える。
「手加減はしませんわ!」
「先生だからって容赦しない!」
「い、行きます!」
3人の戦闘が開始された。
「さて、今の間に・・・デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」
「あっ、はい」
「山田先生の使用されているISは『ラファール・リヴァイブ』です。第二世代ですが、そのスペックは第三世代型にも劣らず安定した性能と高い汎用性、豊富な後付 武装が特徴の機体です。特筆すべきはその操縦の簡易性で、それによって操縦者を選ばないことと多様性役割切り替え(ロールチェンジ)を両立しています。装備によって格闘・射撃・防御といった全タイプに切り替えが可能で、参加サードパーティーが多いことでも知られて・・・」
「ああ、いったんそこまででいい。・・・終わるぞ」
「「きゃああああああ!!!」」
ドコーン!
大きな音をたてて二機のISが落下してきた。鈴とセシリアは呆気なくやられたみたいだ。
クレーターができてる。
そのあと実習が始まり訓練機への搭乗をやってるが一部のグループを除いて滞りなく進んだ。
問題の一部とは・・・
「・・・・・・」
「・・・あ、あの~、ボーデヴィッヒ、さん?」
鉄壁城塞、終始無言のラウラ・ボーデヴィッヒと・・・
「忍野くん、掘り出そうか?」
「ごめん、お願いするね」
いつものパターンで織斑先生に埋められた忍野のグループだった・・・。
そんな感じで実習は終了した。
はい、またやりましたタイトル詐欺
ごめんなさい。
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