暴物語   作:戦争中毒

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おしのエクスプレイン

001

 

 

クラス対抗戦から三時間ほど経過した。

 

専用機持ちは全員取り調べ室に集められ、それぞれ報告をしていた。

一通りの報告と事情聴取が終わった千冬は全員を部屋に帰そうとしたが楯無が挙手をした。

 

「織斑先生、ちょっと待ってもらえますか?」

「なんだ更識?」

 

そう言われた楯無は一夏と忍野の方を向いた。

 

「織斑くん、忍野くん。あなた達に聞きたい事があるのよ」

 

 

 

「忍野くん、あなたは襲撃時に“掃除”をしてたけど襲撃を知っていたからわざわざ引き受けたの?」

「知ってたら救助活動なんかしないさ」

「織斑くんは無人機のコアを破壊したけど、それは証拠隠滅のため?」

「違う!」

「犯人に心当たりは無いかしら?」

「特に思いつかないなぁ」

「今回の件、本当に関わってないのね?」

「なんでそんなに疑うんだよ!?」

 

 

 

「あなた達の機体のせいよ」

 

 

楯無はそう言った。

 

「あのISもあなた達と同じく、ビーム兵器を使っていたのよ? 疑って当然でしょ?」

「ちょっと! なんでそんな事で二人を疑うのよ!」

「そうですわ! いくら何でも酷すぎますわよ!」

 

楯無の言葉に鈴とセシリアが反論した。簪も口には出さないが楯無を睨んでいる。

しかし襲撃してきたISと同じく、未だ実装されてないビーム兵器を装備した機体を持つ二人を疑う余地がないかと聞かれれば答えはNOなのだ。

 

「更識、その辺に・・・」

 

千冬が楯無を咎めようとしたが、忍野がそれを手で制した。

 

「いいだろう、答えてやるよ。疑われたままってのもイヤだからね」

 

すると機体の事を喋ろうとする忍野に一夏が話し掛けた。

 

「いいのか忍野?」

「話さないと帰してくれないよ、会長さんは。あ、お前は黙ってな」

「ひどっ!?」

「機体の説明、できる?」

「黙ってます」

 

 

 

002

 

 

「さて、俺達の専用機だが・・・あの無人機とはまったく関係ない。そもそもビーム兵器の構造自体が違う。

 

「俺達の機体には“GNドライヴ”って動力炉を搭載してるんだ。俺達の使うビームはGNドライヴによって生成される“GN粒子”を圧縮して射出する、“粒子ビーム”って方式なんだ」

「「「じーえぬどらいう゛?」」」

 

「GNドライヴってのは莫大なエネルギーを得ることができる半永久機関なんだ」

「「「永久機関!?」」」

 

「そしてこの機関から生み出されるのがGN粒子。こいつは汎用性は非常に高くてな、攻撃、防御、航行と全てに使用できるんだ。射出すればビーム、噴射させればスラスター、放出して電波妨害、 装甲に流して硬化。他にも使い方は自由自在さ。

 

「今説明したGN粒子運用技術を俺達の機体は採用してるからシールドエネルギーが減らないんだ。鈴は覚えがあるだろ?」

 

その言葉に、鈴は先の試合を思い出した。

エネルギー消費が多い兵器を使い、それなりの威力をもつ攻撃を喰らってもまるでエネルギーが減らない一夏の専用機。正直、戦いたくないと思った。

 

 

「機体が赤く発光する、あれは何?」

「あれは単一仕様能力、“トランザムシステム”だ。発動すると機体内部に蓄積されていた高濃度に圧縮したGN粒子を全面開放するこで一定時間、機体性能を3倍以上に上げることができるんだ」

「換装も無しに3倍以上って凄いわね」

 

楯無が思わず関心した。今のISは装備を換装することによって機体の能力を上げるが、1,5倍くらいが限度である。しかしそれを大きく上回るほどの能力アップをするのだから驚くのも仕方がない。

 

「勿論リスクもあるさ。使用後はGNドライヴの一時的な出力低下が発生し、GN粒子の供給量が減るんだ。そうなると能力の全てをGN粒子に頼ってるから機体性能が大幅に低下、まさに諸刃の剣なのさ」

「それでも・・・凄い」

「なぜそれほどの物を世界に公表しないんですの?」

 

忍野の話を初めて聞いていた者全員が思った。半永久的にエネルギーを生み出す動力炉が普及すれば今あるエネルギー問題の大半が解決する、そんなものを公表しない理由がわからなかった。

 

「GNドライヴの量産は不可能なんだ。あれは特殊な鉱石を核に製造してるからね、その鉱石の採掘ができない以上作ることはできないさ」

 

それに、 と忍野は一旦言葉を句切り一拍おいてから再び話し始めた。

 

「今の世界に永久機関は早過ぎるんだよ。ISだって兵器としか利用されてないんだ、公表しても軍事利用されるのがオチさ」

 

この言葉に、みんな黙ってしまった。

ISも元は宇宙で作業するためのパワードスーツとして開発された。しかし、軍事兵器として利用され宇宙どころか人命救助にすら滅多に使われない有り様だ。

 

「それで、納得してくれたかい?」

「えぇ、疑ってごめんなさいね」

 

楯無はまだ何か思うところがあるような顔をしていたが今、この場で追求する気にもなれず結局謝ったあと黙ってしまった。

 

「それでは全員、部屋に戻りゆっくり休め」

 

千冬の労いを聞いてからそれぞれ、自分の部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

003

 

 

「一夏、頼みたい事があるんだ」

「どうしたんだよ忍野、頼みたい事って?」

 

部屋に戻った直後、忍野が一夏にそう話を切り出した。

 

「一夏・・・というより忍にかな?」

 

そう言って一夏の影を見る忍野、すると影の中から忍が出てきた。

 

「なんじゃい小僧、儂に頼みとは? 多量のドーナツを用意するなら聞いてやらんこともないぞ?」

「ドーナツ30個でどうだ?」

「よし、何でも言え」

 

 

「小さいのでいいからGN鉱石を作って欲しい」

 

「なにぃ?」

「忍野、一体何を考えてる?」

 

忍は明らかに疑いをもった返事をし一夏も警戒心を向けている。

“GN鉱石”は篠ノ之束が命名したGNドライヴの核となる特殊鉱石のことだ。それを、つい先程量産できないと言ったものを生み出せと言ってるのだ、疑うのは仕方ないことだ。

 

目をつむり、黙っている忍野。

何時間にも思える沈黙がながれた後、再び口を開いた。

 

「1号機を復活させる」

 

忍野の口から発せられた言葉に、一夏と忍は息をのんだ。

 

 

 

 

 




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