001
~一夏サイド~
その日の放課後、場所は第三アリーナ。
今日はセシリアとIS戦闘の訓練をする予定だったのだが、
「近接格闘戦の訓練が足りてないだろうと思ってな」
と言って箒が訓練機の『打鉄』を装着してやってきたのだ。
今日は射撃をメインにやりたかったんだけど・・・。
「では一夏、はじめるとしよう。刀を抜け」
「いや、刀なんて装備してないぞ」
「・・・。では一夏、はじめるとしよう。銃を抜け」
「何くわぬ顔でリテイクすんな!」
「そうですわ! それに一夏さんのお相手をするのはこのわたくし、セシリア・オルコットでしてよ!」
「ええい、邪魔な!」
「お邪魔なのはそちらでしょうに!」
・・・なんか、箒とセシリアの雰囲気が悪くなっていくんだけど。
忍野がこの場にいたら、なんかいい案を出してくれるんだろうけど今は居ない。誰かの手伝いに整備室に行っちゃったからなー。
本当にどうしよう?
《忍、なんかいい案ない?》
《あるぞ、後ろから狙い撃つのじゃ》
《撃ってどうするだよ!?》
《狙撃の的にするんじゃよ》
《それなら普通に訓練用の的を使おうよ》
とりあえず箒とセシリアの話し合いが終わるまで狙撃の練習をするために一度、ピットに戻ろうとした。
すると、二人して俺の方を向いた。
「あ、話終わった? 俺は向こうで
「どこへ逃げますの?」
「その根性、叩き直してやる」
ってあれ!? ちょっとまって!」
なぜか逃げようとしたと思われたらしく、二人掛かりで襲ってきた。ちょっと、危ないって!
《のぶえもん~! 助けてよ!》
《・・・ZZZ》
《寝るなよ!?》
「敵に背を向けるとは何事だ! そこに直れ、成敗してくれる!」
「騎士たる者、逃げることは許されませんわよ!」
結局、ビット戦に持ち込んでなんとか勝ちました。
忍は手伝ってくれませんでした。
その後、アリーナの使用時間がきたのでピットに戻るとそこには鈴がいた。
「おつかれ、一夏。はい、タオルとスポーツドリンク」
「サンキュ。あー、生き返るー」
「それにしても、アンタ凄いわね。二対一で勝つなんて」
「おかげでこっちはヘロヘロだよ」
「・・・なんか忍野に似てきてない?」
そう言いながら鈴は呆れ顔をみせる。
失礼なことを言うな。
「一夏さぁ、やっぱ私がいないと寂しかった?」
「まあ、遊び相手が減るのは大なり小なり寂しいだろ」
「そうじゃなくてさぁ」
なんだか凄くにこにこしている。
もしかして・・・
「鈴」
「ん? なになに?」
「何も買わないぞ」
ガクンと、鈴が姿勢を崩した。
あれ? いつもは何かを売りつけてくるから今回もてっきりそうだと思ったんだけどな?
「アンタねぇ・・・まぁいいわ。それより一夏、約束覚えてる」
「? どの約束だ?」
「え、えっと、り、料理の、約束」
料理の約束? 何だったかなぁ、小学校の頃にあったような・・・ってもしかしてあれの事か?
「あぁ、あれか。たしか、鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を・・・
「そ、そうっ。それ!」
・・・奢ってくれるってやつか?」
よく覚えてたな、俺。千冬姉にあれだけ殴られても忘れてないって凄いな。
「・・・今、なんて言ったの?」
鈴がそんな事を聞いてきた。
聞き逃したのかな?
「だから、鈴が料理出来るようになったら、俺にメシをご馳走してくれるって約束だろ?」
パアンッ!
「・・・へ?」
いきなり頬ひっぱたかれた。
見ると鈴は肩を小刻みに震わせ、怒りに満ちながら涙を浮かべた眼差しで俺を睨んでる。
「あ、あの、だな、鈴・・・」
「最っっっ低! 女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて、男の風上にも置けない奴! 犬に噛まれて死ね!」
それだけ言うと鈴は、ピットを飛び出して寮の方へ走って行った。
何を間違えたのか、俺は叩かれた頬に手をあててそんな事を考えていた。
002
ところと時間が変わって忍野の出来事。
放課後、一夏の誘いを断った忍野は本音と一緒に簪のもとに来ている。
目的は、簪の専用機の組み立ての手伝いだ。
蟹の件以降、簪は一人でやっていた組み立 てを本音と忍野に協力を頼み、姉に認められようと頑張っている。
「やっぱり今のペースじゃ対抗戦に間に合わないな」
「そんな~、かんちゃんどうする~?」
「どうしよう・・・」
簪の専用機『打鉄弐式』はこの間まで、ほぼ簪一人で作ってたためまだ組み立てが済んでおらず、武装は手付かずなのだ。稼働データどころか試験稼働すらおこなえない、実戦に出すにはほど遠い状態なのである。
「このままじゃ・・・」
「おっし~の、何とかならない~?」
「何とかって言われてもなぁ」
“マルチロックオンシステムによる高性能誘導ミサイルで敵を撃破”と言うのがこの機体のうりなのだが、問題のシステムが完成してない。
「こうなったら武装は諦めるか」
「「え?」」
忍野の発言に二人は驚いた。
特に簪は今にも泣きだしそうな顔をしている。
「とりあえず機体を実戦に出せる状態にして稼働データを取って、次のイベントの時には武装を完成させた姿で出場するんだよ。だから泣きそうな顔をしないでくれないか?」
「・・・そんな顔してない」
忍野に指摘された簪は顔を真っ赤にして否定した。
「いやいや、かんちゃ~ん。泣きそうな顔していモゲッ!?」
「本音・・・黙って」
簪をからかおうとした本音は、口を塞がれてしまった。忍野からは見えないが怖い顔をしている。
「それじゃ、とりあえず俺とのほほんさんで機体を組み立てて、簪はシステムのプログラム作成をやるってのでどうだ?」
「・・・わかった」
忍野の提案に簪は少し不機嫌そうな顔をしたがそんなこと気づきもしない忍野は早速作業を始めようとしてる。
すると本音が止めた。
「ちょ、ちょっとまってよ~、おっし~の~」
「ん? 早く始めようよ」
「三人より四人~。助っ人を呼ぶんだよ~」
「・・・助っ人?」
本音は携帯電話を取り出すと誰かに連絡をしている。そして電話をきって数分後、
「呼ばれてやって来たんじゃよ!」
現れたのは簪と同じくらいの背丈で白衣を着ており、 前髪は長いぱっつんで顔が半分隠れており、頭の左右に大きなボール型の髪飾りをつけている、イタズラ好きな雰囲気を感じる女子生徒だ。
「よく来てくれたね~、マヨちゃん~」
「本音さんの頼みなら、例え火の中水の中お菓子の中なんじゃよ」
現れた女子生徒は本音と手を組んでるが状況についていけない忍野と簪はポカンとしている。
「えーっと・・・」
「・・・誰?」
すると女子生徒とは二人の方を向いて名乗った。
「一年三組、片瀬真宵、整備科なんじゃよ!」
なんだか人の名前を噛みそうな名前でした。
キャラ紹介
片瀬 真宵
かたせ まよい
『あっちこっち』のメインキャラで、科学娘のトラブルメーカー
この話でのキャラ設定はまたいずれ
“真宵”違いのキャラを出しました。
八九寺真宵ファンの方々、ごめんなさい。
サブタイトルが思い付きませんでした。
ご意見、ご感想お待ちしおります。