001
さて、一夏くんがパーティーの最中の忍野くん。現在、首に高周波カッターを突きつけられてる。
「う、動かないで。」
場所は整備室、忍野と女子生徒の二人だけである。目の前にいる女の子、水色の髪、赤い瞳に掛けた眼鏡、雰囲気がか弱さを滲み出ている。しかしやってることは危険過ぎる。
002
話は少し戻って授業後、忍野が一夏からケルディムを預かって整備室に来たところからだ。
~忍野サイド~
今、俺はケルディムとアルケーを修理を行ってる。
それにしてもやっぱりケルディムのフロントアーマーが一番酷いなぁ。ミサイル発射機構を付けてるから取り替えるだけじゃダメだから面倒くさい。
そもそもGNドライヴ搭載機は装甲にGN粒子供給コードが付いてるから取り替えること自体が凄く大変だ。一夏にも修理の仕方、教えようかなぁ?
だがそんな事より、さっきからチラチラとこっちを見てくる子がいる。水色の髪の子だが後ろ姿しかわからない。俺が作業してると視線を感じるが何度振り返っても後ろを向いてる。
第二世代型量産機の『打鉄』の発展機を整備・・・いやあの様子だとまだ製作段階かな?とにかくISを弄ってる。最初は俺達の機体の情報を狙ってるかと思ったがどうも俺がここに居るのがお気に召さないようだ。さっさと終わらせて部屋に戻ろう。
修理が済んで最終チェックが終わった俺は部屋に戻ろうと思ったがついでに水色の髪の子の作業を見ることにした。彼女は出入口のそばで作業してるから部屋に入った時から気になってたし、後学の為に見学していこう。
どうも今はスラスターの調整をしてるようで踏み台に乗ってノズルの裏の配線を弄ってる。にしても道具が散らかってるなぁ、足の踏み場もない有り様だ。踏み台の上にまで部品置いてるよ。ケガしなきゃいいけど。
そんな事思っていたら、
「あっ!」
足下に転がっていた部品を踏んづけて足を滑らしこちらに倒れてきた。
目の前に女の子が倒れてきたのでとっさに受け止めてしまった。本来であれば避けるより正しい判断であったがこの場合は間違いだったのかも知れない。
何故ならその子には、およそ体重と呼べるものが全くと言っていいほどなかったのだから。
003
そこからの彼女は早かった。
俺に受け止められたことに気づくとすぐにおりて、机に置いてあった高周波カッターを首に突きつけてきたのだ。
「う、動いたら、き、危険よ」
そんな事言うならやめてくれ。
てかすぐやめろ! 手が震えてるのにそんなもの突きつけるな!・・・なんて言える状況じゃないから何も言わず改めて目の前の女の子を見た。
水色の髪が内側に跳ねていて赤い瞳で眼鏡を掛けている。
(なんだか会長さんに似ているなぁ)
そう考えてると彼女は少し落ち着いたのか手の震えが止まり、ぞっとするくらいに冷えた視線で俺を見つめてきた。
「・・・気付いているでしょ?」
目の前の子は剣呑な目つきのまま俺に問う。
「そう、私には・・・重さがない」
確かに、この子には体重がない。全くないわけではないようだったが、
「私くらいの身長の・・・平均体重は40キロ後半の筈・・・だけど私の体重は5キロ」
“5キロ”という重さが人間の体積に分散してると考えれば体重がないのも同然だ。
「“一匹の蟹に出会って”重さを・・・根こそぎ持っていかれた」
蟹? 蟹と言ったか?まさか・・・、
「別に理解しなくてもいい。かぎまわられたら・・・すごく迷惑だから喋った」
はぁ~、面倒だなぁ。“こっち側”の問題かぁ。
「わ、私は、あなたに私の秘密を黙っていてもらいたい。沈黙と無関心を・・・約束してほしい。約束してくれないなら・・・」
そう言うと手に力を籠めている。恐らく口封じのためなら殺すつもりなのだろうが、その覚悟がないのかまた手が震え始めてる。
こういうのは一夏の役割なんだけどなぁ、まぁ仕方がない。こんな子に殺しをさせるのは目覚めが悪いからねぇ。
「“おもし蟹”」
「? 何、言ってるの?」
彼女は怪訝そうな顔をしている。少なくとも話を聞くつもりくらいあるようだな。
「今の君の状態に関係してる“もの”の名前さ」
科学の最高峰であるIS学園に来てまで関わるとは思わなかったけど、まぁ久しぶりにお仕事をしますかな、
“専門家”として
「君が助かりたいなら力を貸すよ?」
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