暴物語   作:戦争中毒

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たてなしコンタクト

 

001

 

 

~セシリアサイド~

 

試合後、私は自室でシャワーを浴びながら今日の事を思い返していた。

 

男とは情けないモノだと幼い頃から思っていた、世界が女尊男卑に染まる前からの認識だった。

 

父がそういう人間だったから。

 

いつも母の顔色ばかり窺い威厳も何も無かった。だからこそ私はあの姿こそが男の本質だと認識していた、だから私は気に入らなかった。

女尊男卑の象徴であるISを学ぶ場所、女性の中でも優秀な人間が集まるIS学園に"男"が居る事が。

 

そして出会った。

 

織斑一夏

かのブリュンヒルデ、織斑千冬の弟。

 

最初の印象は父と同じ威厳の欠片も感じられない男だったが、今にして思えば最初の時から私に対する態度が変わっていなかった。

彼はへりくだる事は無く、私の愚かな発言を止めようとし対等な立場で話をしようとしてくれた。

そして彼と対峙した時、私は理解した。この人が私の思い描いた理想の男性だと・・・。

 

 

そしてもう一人。

忍野仁

彼の最初の印象はやる気のないふざけた態度の男だった。その姿は父以上に憎たらしく見えた。

だがクラスで男が女に勝てないとみんなが笑った時、それまでとは一変した雰囲気を纏っていた。事実のみを淡々と頭に響くような喋り方して反論しようがない、そして此方の警戒心をあおるような台詞。

 

私は知りたいと思った。

織斑一夏に対しては想い人として、忍野仁に対しては何者なのかと興味を持った。

 

 

 

 

002

 

 

 

忍野は試合後、屋上に来て電話をしていた。今は放課後、しかも試合を観に殆どの生徒がアリーナに居たため誰も居ない。

 

「それじゃ武装と修理部品の手配お願いしますね」

『いいよ~!その代わりちゃんとデータ送ってね』

「わかってるよ」

 

今日の試合で破損したケルディムとアルケーの部品を束に手配していたのだ。二機は特殊な機体のため他のIS部品では修理出来ず束に送ってもらうしかないのだ。

そして電話を切った忍野は植木の方を向きながら

 

「いい加減出てきたらどうだい?誰も居ないんだからお話をしよう」

 

と言うと植木の裏から一人の女子生徒がでてくる。水色の髪に真紅の瞳、口元に扇子をあてその扇子には『驚愕』と書かれている。

 

「どうして分かったのかしら?気配は完全に断っていたはずなんだけれど?」

「そこにいる生き物が気配を消すなんて無理だよ。本当に気配を消すなら生物としての条件を捨てないと」

 

そう言うと忍野はベンチに座り女子生徒と向き合った。彼女もそれを見て向かいのベンチに腰を下ろした。

 

「さて、君の名前は?名前が分からないと話づらいからね」

「私は更識楯無、この学園の生徒会長よ」

「おっと、会長さんでしたか。それでご用件は?」

「あら、冷たいわね~。まぁいいわ、本題に入りましょう」

 

すると楯無の纏う雰囲気が変わった。

 

「単刀直入に聞くわ、あなたは一体何者?」

「さて、何の事ですか?」

「あなたの事を調べたんだけど経歴が全く分からないのよ。戸籍も偽造みたいだし」

「・・・そんな事調べてどうするんだい?」

「わたしには学園を守る義務があるのよ、もしあなたがそれを脅かすというなら・・・最悪殺すわ」

 

楯無が殺気を放ちながら忍野を睨み、二人の間に静寂が満ちた。

 

「・・・ハハハハハッ!!」

 

静寂を破ったのは忍野だった。楯無は一瞬困惑した表情を浮かべたが再び問い詰めた。

 

「何が可笑しいのかしら?」

「ハハハッ、ごめんごめん。ただ君が勘違いをしてるから可笑しくてね」

「勘違い?」

「答えれる範囲内で言うなら俺がこの学園に来たのは本当に偶然さ。経歴が不詳で怪しいのはともかく、本来であればISと関わること事態なかった筈なんだ。だからこの学園に危害どころか思惑すら無いよ」

「あなたの経歴が無いのは?」

「それは答えられないけどヒントはあげよう。経歴は記録されるから残るんだ、記録してもらえないと経歴は存在しないんだよ」

「どういう意味かしら?」

「答えないよ、ヒントなんだから」

「あなた達の専用機、あれはなんなの?」

「それも答えれないけど悪の組織が作った新兵器とかじゃないよ、単に世界には早過ぎるってだけさ。機体に関してはいずれ教えるよ」

 

それだけ言うと忍野は部屋に戻るために立ち上がった。楯無は毒気を抜かれたのか特に何もない。

 

「あ、そうだ。のほほんさんの好きな物わかるかい?」

「のほほんさん? あぁ、ほんねのことね。なんでそんな事聞くのかしら? もしかして気があるの?」

 

階段を降りようとした忍野は立ち止まり楯無にそんな事を聞き、彼女はからかうつもりでそう返した。

 

「違うよ、君が指示したんだろ? 探りを入れるように。その件で彼女を怖がらせたみたいでね、謝罪をしたいからさ」

「それについては謝るわ、というよりしっかり仕返ししてるでしょ! むしろ謝ってよ! 凄く怖かったんだから!」

「いや、被害者は俺だよ?」

「そんな事は関係ない! 女の子を怖がらせて何がしたいの!?」

「そんな台詞を言うなら風呂場にカメラなんか仕掛けるなよ! そっちが怖いわ!」

 

くだらない文句の言い合いはしばらく続いた。

 

 

 

003

 

 

 

「それで、ほんねの好きな物ね? お菓子とか甘い物を持って行けば喜ぶわよ」

「ありがと。お菓子ねぇ、ドーナツでもいいかな?」

 

散々文句を言い合った後二人は比較的良好な間柄になっていた。相手をよく知るには喧嘩が一番とはよく言ったものだ。

 

「それじゃ、お礼にこれをあげよう」

 

忍野はそう言うとポケットからメモリーカードを取り出し手渡した。

 

「? これは?」

「俺と一夏の専用機の機体データだよ。細かい所は機密だから載ってないけど基本性能はわかるから上の人に報告できるでしょ? これで言い訳くらい出来るはずさ」

「!? ありがとう!! それじゃあね!」

 

楯無はメモリーカードを受け取ると大喜びで屋上を後にした。

 

 

「まったく・・・あれ?」

 

屋上に残された忍野は自分も戻ろうかとポケットに手を入れたところ何かが手に触れた。取り出して見ると先ほど渡したメモリーカードど同じ物があった。そこは問題ないが今自分の手の中にあるメモリーカードには『機体』と書いてあったのだ。そして渡したメモリーには、

 

「ヤベー、メモリー間違えた・・・」

 

『貞子耐久3時間』と書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、再び女子生徒の悲鳴が響きわたりその後寮監室の一室が襲撃される事件が起こった。

 




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