001
試合を終えてAピットの発進ゲートに戻ってきた一夏。
箒はISを解除した一夏に駆け寄り目をキラキラさせながらさっきの戦いを聞いている。
「よくやったぞ一夏」
一夏を褒める千冬。だが、
「織斑先生~、『一夏』って呼んでるよ。もしかして心配してたのかな~?」
それをからかう気満々の忍野がいた。
「お前は少しくらい真面目に出来んのか!!」
そう言う千冬は立てかけてあった訓練機用の刀の峰を忍野にフルスイングで叩き込んだ。勿論、忍野は吹き飛んで数メートルほど宙を舞った。
「ち、千冬さん!? そんな事したら忍野が死んじゃいますよ!」
「織斑先生だ、それにこの程度では死なん」
「この程度って!?」
「酷いなぁ、ちょっとからかっただけなのに」
「なんで無傷なんだ!?」
千冬の行動に思わず声を出した箒だがいつの間にか戻ってきた無傷の忍野に更に声を上げた。
「次は貴様の番だ、さっさと逝ってこい」
「え~、もうちょっと可愛く言ってもバチは当たらないのになぁ」
「殺されたいか?」
「それは勘弁願うかな?」
と軽口を叩いてから忍野は発進ゲートに向かった。
「頑張ってこいよ」
「分かってるよ、頑張るつもりは無いけどね。お前は次に備えて準備してな」
戻ってきた一夏とすれ違いざまそう言うと忍野はカタパルトの前に出た。
「行くぞ、アルケー」
首のチョーカーがひかり、赤い光が忍野を包んだ。
光から出て来たのは一夏と同じ全身装甲、しかし全く違うデザインの機体だった。
全身が深紅色一色の機体。手足の装甲が異様に長く、両脚は横から見るとかなり大きくみえる。足の横にはスカートアーマーが展開されてる。 右腕には片刃の身の丈ほどの大剣がマウントされていて左手には小さい盾。胸部と両脚にクリスタル状のパーツがあり怪しく光っている。フェイスマスクは細長いツインアイ、額か大きく突き出たセンサーアイがありその横にはツノのようなアンテナ。機体の至る所に安定翼のような物が見える。
ケルディムが人型なのに対しアルケーは魔物を彷彿とさせる姿だった。
そのまま忍野はカタパルトに載った。
「忍野仁、アルケーガンダム。出撃するぞ」
一夏とは違い赤色の光を放出しながらゲートを飛び出して行った。
002
忍野が発進するとセシリアがステージの中央で既に待機していた。
「先日のご無礼の数々、お許しください。本当に申し訳ありませんでした」
セシリアは開口一番、謝罪の言葉を言うと忍野に頭を下げる。一夏との戦いで何やら心境の変化があったのだろう。
(これはまたフラグを立てたね)
忍野は“残った理性”でそんな事を考えていた。
「別に怒ってないよ。でもね、俺は今ISに乗ってるから、」
言葉を区切り、そして、
試合開始のアナウンスが鳴り響き、
「とにかくテメーを切り刻みたいんだァよォ!」
荒々しく凶悪な、明らかにいつものふざけた様子ではない喋り方をした。殺意や悪意が観客席にも伝わったらしく悲鳴があがってる。
「ブ、ブルーティアーズ!!」
セシリアは今の忍野に恐怖しすぐにフィンアーマーを切り離し攻撃を開始した。先ほど一夏と戦った時よりも精度の高い動きをした、慢心せず本当の全力で飛ばしたのだ。
だが、
「いけよォファング!」
アルケーの両腰のスカートアーマーが開き三又のビットが赤い光の尾をひきながら3機ずつ射出された。
忍野の射出したビットはすぐさまセシリアのビットにビームを発射し破壊した。
「ブルーティアーズが!? くっ!」
ビットを破壊されたセシリアはすぐにスターライトmkⅢを構えて忍野を撃とうとしたが、
ガスンッ!
忍野のビットが“突き刺さって”ライフルを破壊されてしまった。
「そんな!?」
「そらそらァ!もっと俺を楽しませろよォ!」
忍野のビットが血に飢えた獣のようにセシリアに襲いかかりセシリアは必死に回避するが少しずつダメージを受けてる。それどころか決定打をあえて与えられず遊ばれてるようにも見えた。
「忍野のやつ、遊んでるなありゃ」
『まったくじゃ。さっさと終わらせれば良かろうものを』
ピットのモニターで試合を見ていた一夏は呑気な感想を述べていた。千冬も若干呆れ顔で見ていた。
「一夏!忍野はいったいどうしたのだ!? いつもとはまるで別人ではないか! それに何故ビットが刺さる!?」
箒は荒々しい喋り方をする忍野に戸惑い、一夏に質問していた。
「忍野は戦闘狂とかバトルジャンキーって言われるやつなんだ」
「バ、バトルジャンキー!?」
「あいつは戦いになると凶暴化して言動と行動が乱暴なものになる。私か入試で見た時もそうだった」
「刺さるのはあれが刺撃武器として作られた『ファング』って特殊なビットだからだ」
箒の問いに一夏と千冬が答えた。
「でも忍野のやつ、性格悪過ぎだろ。ファングだけで倒すつもりか?」
『ビットを使う相手に・・・悪意の塊じゃの』
試合開始から10分が経過し、
「きゃあぁぁぁ!」
セシリアの必死の回避行動虚しく遂にファングが刺さった。一機が刺さると他のファングも次々と突き刺さりスラスター、非固定装備、ミサイルビット発射管と破壊され空中で張り付け同然のようになってしまった。
「そォら、逝っちまいなァ!」
ゆっくりと近づいた忍野は右腕のバスターソードを手に持ち動けないセシリアに振り下ろした。
『試合終了。勝者、忍野仁』
試合が終わったが、一夏の時の半分も歓声は上がらなかった。
次はやっと一夏対忍野、ケルディム対アルケー戦になります。
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