ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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絆も恋もステップアップ!

 転入生活10日目、朝。

 遂に俺の女子高潜入生活も二桁日に到達した。1週間半と言ってしまえば短く聞こえるが、ここに来てから毎日が騒がしくて濃密な日々だったのでそうは思わない。むしろ1か月くらい生活して馴染む感覚をここ1週間半で凝縮して体験しているため、もはや自分が元々大人だってことを忘れるくらいには今の日常にどっぷり浸かっている。早く元に戻りたいのに今の生活も悪くないと思ってしまうあたり、もう自分の感覚が狂っていることが分かるな。

 

 この日常が楽しいと思えるようになったのも、この学校で新しい女の子たちと絆を育むことができているからだろう。

 蓮ノ空女学院。そこのスクールアイドルである6人とは俺が転入して来てから色々あった。最初は花帆以外からは大なり小なり警戒されてたけど、ずっと一緒にいたことで自然と打ち解け合い、そして昨晩の幽霊騒動でその関係は一気に深まったと思う。自惚れかもしれないが、お互いに名前呼びになったから全く進歩がないことはないはずだ。これで調査も捗るはず。

 

 そう、調査。俺が女子高に唯一の男子生徒として転入させられたのにはもちろん理由がある。

 スクールアイドル病の治療。この学校のスクールアイドルが患うとされている病気で、女の子の身体のどこかに小さな傷が入る。それは痛みもなければ本人や周りの人間からも見えず、それを目視できるのは限られた人間、つまり俺のみ。その傷を放っておくとやがて全身にまで傷口が広がり、やがてその子の身体は――――という曰く難病らしい。

 その傷は俺が触れば塞がるらしいので、その治療のために秋葉が俺をここに転入させたんだ。もちろん大人のままでは生徒に接近しづらいので、より密接な距離に近づける生徒として女子高に紛れ込むことになった。薬で身体を中学生、いやほぼ小学生に近い体型にさせられて……。

 

 

「ほい、できたよ」

 

 

 今朝は珍しく秋葉が朝食を作ってくれた。

 いつもは寮の食堂で済ませているのだが、どういう風の吹き回しかモーニングコールから朝の世話まで身の回りのことを全部やってくれている。普段はこんなことしないので逆に不気味だ。

 

 

「なんか企んでるだろ、って顔してるね」

「あたりめぇだろ。今朝に限って何してんだよ」

「ご褒美だよ。昨晩は頑張ったで賞」

「ガキじゃねぇんだから、んなのいらねぇよ」

「今は子供だけどね、見た目が」

「うぜぇな……」

 

 

 この見た目のせいで何度苦労したことやら。体力やパワーが落ちていたり、背が低くて手が届かないとか身体的なハンディキャップはもちろん、生徒の女の子たちに弟感覚で可愛がられる、今みたいにガキ扱いされてイジられる等々、大人の時の威厳はどこへやらだ。しかも子供の姿のせいで尊大に振舞っても微笑ましく見えるんだよな……。

 

 

「そんな煽りは置いておいて、私は今後の作戦を立てに来たんだけどね」

「作戦?」

「そう。みんなとも結構仲良くなったでしょ? だからそろそろスクールアイドル病の調査を本格的に進めようと思ってね」

「仲良く……か。そうだな」

 

 

 スクールアイドル病による身体の傷は俺の目にしか見えないが、都合がいいのか悪いのか、手の甲など外見で目視できる範囲には傷ができないらしい。

 つまり、普段は衣服で包み隠されているその奥を見る必要があるということ。アイツらと親睦を深める理由がそれにあり、裸を見るのにはまず自分のことを信頼してもらわなければ話にならない。しかもただの親友関係では裸体なんて見せてもらえるわけがないので、治療のためにも今以上にアイツらに信頼をしてもらう必要がある。

 スクールアイドル病になっているのが誰なのかすらも検討がついていないので、その対象を見つけるまで交流を続けるのも6人同時並行。ギャルゲーだったら間違いなく爆弾ルートだけどやるしかない。

 

 ちなみに寝ているところをこっそり襲って服を脱がせば手っ取り早いかもしれないが、俺の信念でそれは無理。裸を見るのなら女の子が俺のことを信頼し、見てもいいと許可が取れてからだ。

 

 

「昨晩カッコいいところをここぞとばかりに見せ付けたから、もうみんな零君にメロメロになってるかもよ?」

「昨日の今日でどうだかな。それより夜はあれだけ頑張ったんだから、頑張ったで賞をくれるなら今日くらい休みにしてくれ。いつも通り授業って、全然休めてねぇんだけど」

「それは無理だね。あの事件は学校にも非公開にするって沙知ちゃん言ってたから。でないとお偉いさんの意向で地下施設なんて埋められちゃうし、そうなるとあのお墓もなくなっちゃうでしょ」

 

 

 結局昨晩の出来事は事情を知る者の中で秘匿されることになった。

 悲しい過去だったけど、最後には()()()の反目も解けて成仏したのであの結末で良かったんだろうな。加えて大賀美が『当時のスリーズブーケの残された1人を探して真実を伝える』ことを生徒会の新たなミッションとして掲げると言っていたので、その相方さんが見つかってアイツの真意を伝えれば、それこそ真の意味で大団円を迎えるだろう。

 

 

 顔を洗って着替えて朝食が並べられた席に着く。

 俺も他の生徒と同じく寮の部屋暮らしだが、秋葉の権力によって俺の部屋だけホテルのスイートルームかの如く広くて豪華に改装された。それ故にこうして複数人でテーブルを囲うことも容易。とは言ってもここに人が集まるのはこうして秋葉が来る時と、以前にみんなで夜食を食った時くらいだけどな。

 

 秋葉の作ったパンやスクランブルエッグやウィンナーと言ったゴリゴリの洋食を食いながら、今後の方針について話す。

 

 

「これからもアイツらと交流を続けるしかないだろうな。ここからどう親密になるのか具体的な策はねぇけどさ」

「大丈夫、イベント作りなら私に任せて。得意だから」

「おい、また余計なこと考えてんじゃねぇだろうな……? ストレスが溜まるようなことだけはやめろよ」

「心配し過ぎだって。そんなに信用できない?」

「できるわけねぇだろ。過去の所業を思い返せ」

「ひどいねぇ。昨日はあんなに助けてあげたし、なんなら珍しくお礼まで言ってくれたのに」

「社交辞令だよ。大人として当然の建前だ」

「キミも成長したねぇ~」

 

 

 ガキの姿に戻されたけどな。

 なんにせよ、ここからが本番だ。スクールアイドル病の治療のためには俺とアイツらの絆や信頼が欠かせない。ただ時間にどれだけの猶予があるかも分からないので、昨日の今日だけど早速動き出した方が良さそうだな。

 

 

「そういや、既に1つ目の手は打ってあるから。明日くらいかな? 楽しみにしててね♪」

 

 

 もう嫌な予感しかしないんだけど、コイツ本当に味方なんだよな……? いつもみたいに自分が愉しむためだけの行動にしか思えないけど……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 同日の放課後。

 俺は早足でスクールアイドルクラブの部室へ続く廊下を歩いていた。

 

 

「やべぇ遅刻だ。また梢にどやされる……」

 

 

 またしても遅刻。とは言っても故意に遅れたわけではなく、演劇部の女の子たちに頼まれて舞台衣装の感想を伝えていただけだ。ただ思った以上に向こうがヒートアップし、いつの間にかファッションショーになってしまったために時間を食ってしまった。

 まだこの学校に来て10日なのにそうやって女の子たちから頼りにされることが多く、嬉しいものの遅刻が多くなるのは困りものだ。中身は大人なのに年下の女子に遅刻で怒られるって情けねぇ話だが、まだ正式な部員ではないので許してくれよとは思う。そう、今はまだアイツらが俺を見極める期間であって俺もただのアルバイト感覚だ。ま、アルバイトだからって遅刻していい理由にはならないけど……。

 

 

 そんなこんなでようやく部室に到着する。

 いつも通りノックもせずにドアを開けると、既に中にいた6人の目線が一斉にこちらへ向く。全員がテーブルを囲んで着席しており、ホワイトボードに練習計画が書かれているところを見ると絶賛会議中だったようだ。

 

 

「あっ、零クンやっと来た!」

「零くんおそーいっ!」

「零さんの重役出勤っぷりはもう恒例ですね」

 

 

 1年生組に文句を言われる。同じクラスだから俺が演劇部に誘われて遅れてる理由も知ってるだろうに、その許容すら乗り越えて責められるのかよ。束縛厳しいねぇ。

 

 

「ちょっと他の部活の奴らに捕まってたんだよ。いつものことだ」

「相変わらず主人公だね、れい」

「私のクラスでも零の話で持ち切りだよ。同じ部活の仲間として鼻が高くなっちゃった」

「零君だのもの、当然の評価ね」

「あ、あぁ……」

 

 

 なんかすげー優しくなってねぇか?? 綴理はともかく、慈や梢が素直に褒めてくるなんて昨日までとは態度に天と地ほどの差がある。この2人はこの中でも特に俺を警戒してたけど、今見る感じだとかなり緩くなっているようだ。その変化に若干気味が悪いとは思いつつも、何かと心を通わせあった昨晩の出来事のおかげだと受け取っておくか。

 

 俺も席に着くと、すぐに花帆がティーカップを差し出してきた。見た目だけは良い色をしたアールグレイっぽい何かが注がれている。

 

 

「なんだよ急に」

「今日は梢センパイの代わりにあたしが淹れたよ! 胃袋を掴むために!」

「飲み物で胃を掴むとか聞いたことねぇぞ……」

「いいから飲んでみて! 毎日梢センパイのを見て練習してたから自信はたっぷりだよ!」

 

 

 コイツってこういう洒落たことはあまり得意じゃなさそうなイメージだ。大丈夫なのか本当に……?

 恐る恐るティーカップに口を付けて見ると――――

 

 

「どうどう??」

「不味くはない。けど美味くもない。そこらで買っても同じ味だ」

「ガーーーーーーーン!!」

「いつも通りズバズバ言っちゃう零くん、容赦ねぇ~」

「それに今はコーヒーが飲みたい気分だ」

「零クンの好みを読み取れてなかった! これからは零クン検定を合格できるように精進するよ! 何も言わずとも好みの飲み物を差し出せるように!」

「なんか零と花帆ちゃん、変な主従関係生まれてない?」

「零さんは王様気質なところありますし……」

 

 

 俺がどうこうって言うより、花帆の方が俺にベッタリしてくる方を疑問に思えよな。出会った時から割とその毛はあったけど、名前呼びになった今日は特にスキンシップが激しかった。登校中に会って昨晩は良く寝られたって報告をしながら抱き着いてきたし、授業の間の休み時間も毎回俺の席に来て話しかけてくるし、飯の時も常に隣にいたし、もはやその気があるんじゃないかと勘繰ってしまう。まぁあるんだろうけど、コイツだけ出会った時からこの調子だからどうしてそこまで俺に拘るのかは自分も分からない。

 

 

「とりあえず、あなたが来たらこれを渡そうと思っていたの」

「これは――――入部届?」

「いい機会だし、そろそろ正式な部員として届け出を出そうと思ってね」

「てことは、俺の見極め期間はもう終わったってことでいいのか?」

「えぇ、文句なしの合格よ。そもそも(わたくし)が測れるほどの人じゃないわ、あなたは」

「めぐちゃんのお目にかかる人なんて早々いないから、誇っていいよ」

「なんで上から目線なんだよ……」

「こずもめぐも今日はずっとれいを確保する気満々だったよ。絶対に余所の部活には渡したくないって」

「「綴理!?」」

「へぇ……」

 

 

 わっかりやすいツンデレだこと。ただ警戒心が強かった梢も慈も有能な人材をそう簡単に切り捨てることができず、信頼も低かった時代でもなんやかや俺のことを受け入れざるを得なかった。そして昨晩で真に俺を信じることができたのだろう。

 まあ地下に落とされてからは俺もかなり必死だったから、好感度を稼ぐ云々なんて考えてる暇はなかったけどな。逆に俺の自然な部分を見せられたからコイツらも忖度のない評価を下せたんだと思う。今思えば、ここに入った当初の俺って少し計算された素振りを見せてたような気もする。それはさやかや綴理にも見抜かれていたので俺としては浅はかだったかも。

 

 

「でも零くんを囲っておくのも大変だったんだよ。ルリたち、他の部の人たちに威嚇して回ってたからね。奪いに来るな~来るな~。零くんはルリたちのモノだぞぉ~って」

「俺ってそんなに狙われてたのか……」

「だから花帆さんと瑠璃乃さんがなるべく零さんと一緒にいるようにして、この人はもうスクールアイドルクラブのものだってアピールしてたんですよ。本人に言わないのはどうかと思いましたけど……」

「だからお前ら今日近かったのか。そして入部届を正式に出す理由もそれかよ」

「さやかちゃんは外から見てるだけで協力してくれなかったんだよ~」

「だ、だってそんなに零さんの近くにいたら変な噂をされて困るかもしれないですし……って、困るのは私の方じゃなくて零さんが、という意味ですけど!」

「変な……ってどういうこと?」

「分からないのであればいいです! ほら、早く入部届を書きましょう!」

 

 

 さやかの奴、誤魔化したが顔がほんのり赤くなっているあたり意識はしてくれているのだろう。同じく終日俺に纏わりついていた花帆と瑠璃乃もそうだ。俺たちの関係性は確実にステップアップしている。もしかしたらスクールアイドル病の解決も意外と早いかもしれないぞ。あまりに楽観的だけどさ。

 

 

「これからはれいとたくさん一緒に居られるから嬉しい」

「これからって、今までずっと一緒にいただろ」

「そうじゃなくて、なんかこう……心が躍るみたいな感じ」

「彼が正式な部員になれば、それだけ繋がりが強くなるものね。そう感じるのは当然よ」

「じゃあこずも同じ気持ち? れいのこと、そう思ってるんだ」

「えっ!? そ、それは一般論を言っただけで、だからと言って誰にも当てはまるわけでは……」

「梢ぇ~。もしかして気になってるのぉ~? 何かとは言わないけど」

「慈……。あなただって今日になって話題が増えてるわよ。何の話題かとは言わないけれど」

「ぐっ……」

 

 

 2年生組とも関係は進展しているみたいだ。これまで俺のことは有能だけどどこか裏があって完全に信頼しきれないガキ程度の扱いだったと思うが、ようやくコイツらの中で仲間の1人、更に男として昇格されたらしい。まだ気になる奴程度の感じだろうが、各々の心に歩み寄れたのは大きな前進だ。

 

 俺が今朝日常を謳歌していると言ったのは、ただ単に潜入生活に慣れただけではなくてコイツらとの日常が楽しくなってきているから、というのもあるかもしれない。

 コイツらとの親睦を深めているのもスクールアイドル病の治療をしたいからだけではなく、単純に仲良くなりたいという俺の意志もある。花帆たちは俺と一緒にいて楽しいと言ってくれたけど、それは俺もそうだ。だから自分の正体を隠しつつもできる限り自分の素を出してコイツらとコミュニケーションを取ろうとしているのかもな。

 それに、スクールアイドル病の治療のためだけっていう計略的な打算だけではコイツらとここまで仲良くはなれなかっただろう。なによりそんな打算だけで乙女心を操るなんて本人たちに申し訳ねぇし、そもそも俺の信念に背く。女の子の自然な笑顔を見るにはこっちも自然でないといけないからな。

 

 

「じゃああたしが代わりに入部届を書いてあげるね!」

「どういう流れの『じゃあ』なんだよ……」

「細かいことはいいの! 名前は『神崎零』、学年は『1年生』、志望動機は……なんだっけ?」

「企業へのエントリーシートかよ。たかが入部届なのにハードルたけぇな」

 

 

 格式高い学校だから部1つ入るだけでも関門があるのか? 逆に入部を躊躇しそうだが、この学校は芸術に長けた学校で生徒も志が高い奴が多いから、志望動機を書けと言われたらスラスラ書ける奴の方が多そうだ。

 

 

「志望動機は『スクールアイドルクラブのお手伝い』のため、でしょうか?」

「それだと雑用係みてぇだな。地位が低く見えるのは却下だ」

「じゃあ『下々のお世話のため』でいいじゃん! 零くん俺様系だから! それか『ルリに充電を注入するため』でもいいよ!」

「なんか女の子にイケないことするみたいだろそれ」

「『めぐちゃんのマネージャー』とか? 私のお付きができるのは地位高いよ!」

「『マスコット担当』。れいを抱き枕にして寝てみたい」

「俺にやらせたいことを書く場所じゃねぇからな」

「『マネージャー』でいいのではないかしら。これを受け取るのは沙知先輩だし、彼のことを知っているあの人ならそれだけでも申請は通ると思うわ」

 

 

 どうして無難なのが最初に出てこないかねぇ……。たださっき各々が提案した内容でそれぞれの性格が分かるのも面白いな。ほとんど自分の都合のいいように俺を使ってるだけだけど……。

 そんな感じで花帆が勝手に俺の入部届の記載欄を埋めていき、遂に――――

 

 

「よしっ、完成! これで正式に部員だね、零クン!」

「とは言っても既にどっぷり浸かってるから、今更心機一転することもねぇけどな」

「だとしても改めて歓迎するわ。よろしくね、零君」

「あぁ」

 

 

 正式にスクールアイドルクラブに迎えられたことで、これで合法的にコイツらに近づくことも可能になったわけだ。

 とは言っても淫らに手を出すとかそういったことはせず、適切な距離を見極めながら絆を深めていければと思っている。それに芽吹きつつある恋の苗にも水をやりたい。女の子の心は隅から隅まで知りたい(たち)なものでね。

 

 

 今日は事件もなくて平和に終わる。

 そう思っていた矢先、ホワイトボードに書かれている内容の一部が目に入った。

 

 

「『外部コーチ』? これなんだ?」

「あぁ、それは秋葉先生が勝手にスクールアイドルクラブで応募したらしいの。スクールアイドル公式の会社からコーチを1人派遣してもらって、一定期間だけ練習を見てもらえる制度にね」

「そういえばそんなのあったな」

「人気のコーチはとても倍率が高くて、まず抽選に当たることが大前提だそうです。抽選に当たっても希望した期間ではなくて別の期間に来てもらうことが多いらしく日程調整が大変と聞きました。なのでコーチに見てもらえるだけでもこの界隈では自慢になるそうですよ」

「へぇ~。でもそんなの申し込んでこんな僻地に来てくれんのかよ」

「それがなんとね! 秋葉先生のコネで大人気コーチが特別に来てくれるんだって! しかも明日! もう秋葉先生に足を向けて寝られないよ~」

「はは、アイツがねぇ……」

 

 

 まぁアイツならこんなの余裕でコネクションあるわな。しかも明日という急ごしらえ、どれだけ裏取引に精通してるんだよ……。

 でもコーチ制度はいい刺激になるんじゃねぇか。顧問を立てようにもスクールアイドルの知識がない先生は未だに多いみたいだし、現にこのクラブにも顧問はいない。芸楽部という名で昔からアイドルの真似事をやっていた歴史があるのにも関わらずだ。そう言った意味で実力のあるコーチに指導してもらう機会はコイツらにとってプラスにしかならないだろう。俺も楽できるしな。

 

 

 …………ん? そういやアイツ朝言ってたな。既に1つ目の手は打ってあるから、って。

 まさか余計な事件が待ち構えていたりする?? ただのコーチ制度だし、まさか、ねぇ……?

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 都内某所。とある家の個室。

 1人の女性がスマホで蓮ノ空スクールアイドルクラブのライブ映像を見ていた。

 

 

「わぁ~っ! この子たちのライブすっごく素敵! そうだ、今度あの人にも教えてあげよう。どうせ自分の関わっているスクールアイドル以外には全く興味ないと思うからね。私が叩き込んであげないと。そうですよねー―――」

 

 

 その表情はまさに――――()()()()を感じていた。

 

 

()()()()♪」

 




 しばらく名前呼びじゃなかった影響からか、初めて名前呼びで話を描いた今回の執筆が割と新章っぽく感じて新鮮でした!(笑)
 アプリの方も昨日新入部員のお披露目生放送がありましたが、この小説でもここから新展開を迎えて彼と彼女たちの距離も更に縮まる予定です。


 そして次回はゲスト回。話の最後にちょろっと出てきた通り、()()()が登場。にじよん2期も始まったので……ね?
 花帆たちとの絡みも期待して欲しいですが、一番は果たして零君は子供の姿になっている自分の正体をバレずにやり過ごせるのか!? という部分ですかね。幽霊騒動を解決したばかりなのにまたピンチになるとか、彼の人生はいつも波乱万丈で……(笑)




【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100で50が普通)
・日野下花帆 → 零クン  (95)※今回変化なし
・村野さやか → 零さん  (80)※今回変化なし
・乙宗梢   → 零君   (75)※今回変化なし
・夕霧綴理  → れい   (81)※今回変化なし
・大沢瑠璃乃 → 零くん  (83)※今回変化なし
・藤島慈   → 零    (74)※今回変化なし

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