ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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瑠璃乃のモバイルバッテリー

「あぁ~クソ。秋葉の奴、ガキ扱いしやがって……」

 

 

 転入生活8日目の放課後。

 廊下を歩きながら、品行方正な淑女の学校の生徒とは思えない不似合いな汚い言葉を漏らす。

 遅くなったが、家で待たせている妹がこっちに荷物を送ってきてくれた。ここへは寝ている間に薬を盛られて連れて来られたので自分の荷物はほとんどなかったのだが、遂にそれが届いたのがさっきのこと。これで今まで備え付けのアメニティだけで生活している非日常感から解放され、自分愛用の日用品を使えることでようやくいつもの日常が戻って来る。身体が小さくなったのも女子高に唯一の男子生徒として潜り込むのも慣れ、更に日常まである程度取り戻せたとなると、いよいよ元の自分を忘れるくらいにここの生活に馴染んでしまいそうだ。

 

 ただ、1つだけ厄介なことがある。

 それは秋葉が俺のことをやたらとガキ扱いしてくることだ。そりゃ姉だから弟はいつになっても可愛いものかもしれないが、今のアイツは明らかに俺で遊んでいる。まあ遊ばれるのはいつものことだけど、俺がガキだった頃の服を送ってもらってそれを俺に着せようだとか、自分まで若返った気分とか言ってやたらとスキンシップしてきたりだとか、小さくなったこの身体が良い被検体なのか調査のために脱がすだとか、もうやりたい放題だ。

 しかも以前の乙宗との腕相撲で思い知らされたように、今の俺は軟弱で筋肉なんて微塵もないのでザ・リケジョのアイツにすら敵わない。そのため抵抗できずにむざむざ捕まってしまう。

 

 毎日でないにしろ、そんなことを定期的にされたらそりゃイラ立つだろって話だ。

 誰も周りにいないんだ、愚痴を言うくらい許して欲しい。

 

 そんなローテンションのままスクールアイドルクラブの部室に入る。

 ノックもなしに入ったが、特にみんなは驚く様子を見せない。もう俺の性格をそれなりに知っているからだろう。

 

 

「神崎君、今日は結構な遅刻よ」

「仕方ねぇだろ、秋葉が中々解放してくれねぇんだから」

「零クン、また保健室に行ってたの? 蓮ノ空(ここ)に来てから結構行ってるみたいだけど大丈夫?」

「体調不良とかじゃないから心配すんな。アイツが気にしてるだけだ、俺が唯一の男子生徒で学校に馴染めてるかってな」

 

 

 嘘だけど、コイツらに『身体が小さくなった影響で定期的に健康診断している』とは言えねぇよな。まあどっちかって言うとさっき話したみたいに別のことで拘束されてる時間の方が大半だけどさ……。

 

 

「でも神崎さんって、心配するまでもなくここに相当馴染んでますよね……?」

「あんた顔だけはいいからね。小学生の頃に女子に相当モテて、だから女子慣れしてるんじゃないの?」

「れい、意外とヤり手?」

「つ、綴理先輩! 失礼ですよ!」

「はは……」

 

 

 乾いた笑いしか出ないが、概ね合っているので何も言えない。

 小中高大、なんなら幼稚園時代も含めいずれも周りに女の子が多い環境で育ったので、そもそも女子高に身を置くことに対しては緊張なんてゼロ。アニメやゲームの世界線のような男子生徒1人で女子高に転入シチュは実際に経験して流石に最初はやや戸惑ったが、それも何の前触れもなくいきなり年齢を戻されてぶち込まれたからであり、女子高で生活自体には特に違和感はなかった。

 

 ま、家族からして父さん以外はヤベぇ奴らしかいない環境だから、異常な環境の中で生き抜くのは慣れてんだよ。一番厄介なのは実は身内でしたってな。

 

 そんなことを考えていると、またさっきの秋葉の笑顔が浮かんできて腹が立ってきた。明らかに遊んでやるという、自分の愉悦を満たすことしか考えてないあの顔。思わず殴って顔面を凹ませるところだった。

 

 イラ立つから座って落ち着こうと思ったのだが、ソファには大きい荷物が置いてあり、テーブルの周りの椅子も最近いくつか壊れて補充待ちなので、仕方なく近くにあった落書きされたダンボールに腰を下ろす。見た目的に中身が詰まってそうだから、座った瞬間に潰れてヒップドロップにはならないだろう。

 

 ……と、思ったのだが――――

 

 

「ふにゅっ!?」

「えっ、なに?」

「あっ、零クンそのダンボール!!」

 

 

 立ち上がってダンボールを見てみると、どんな仕掛けかぷるぷると震えていた。

 てかこれ、どこかで見たことあるような……?

 

 

「それ瑠璃乃ちゃんだよ! 今絶賛充電中!」

「充電? あぁ、これが例の……」

「そういえば神崎さんは見たことありませんでしたね。瑠璃乃さん、精神力を使い切るとそうやって1人で充電が完了するまで動けなくなってしまうんです」

「るりちゃんも周りに色々合わせ過ぎたり、過剰に様子を窺ったりしてるからね、そのせいだよ」

「また難儀な性格だな……」

 

 

 見た目も性格も表向きではパリピに見えるが、意外と陰キャっぽいところもあるのが大沢瑠璃乃。同じコミュニティの中で仲間外れは作りたくないって考えで、それ故に常に神経を尖らせないといけないからそりゃ精神もゴリゴリ削れるわな。

 

 

「タイミングを限定せずにこうなるんだろ? 日常生活ならまだしも、ライブとかイベントがある日にこうなったらどうすんだよ?」

「祈る。それしかないわね」

「私がいれば電池の消耗もかなり抑えられるんだけどね。ただイベントの規模が大きくなればなるほど私でも抑えられないくらい消耗が早いから、こればっかりは対策を考え中」

「るりの高速充電が必要。へなへな~ってなっても、すぐに元気ビンビンになるようなことをしてあげたい」

「どうしてちょっと官能的なんですか……」

「かん、のう?」

「い、いえ、分からなければいいです……」

 

 

 村野は少し頬を赤くしながら会話から離脱する。コイツ、もしかして意外とムッツリなのか? まあ今の本題はそこじゃないからスルーしてやるか。

 

 大沢のダウナー化現象はそれなりに深刻な問題のようだ。特に自分が主役となるライブイベントでは如何に精神力を保つかがポイントになっているらしく、なんならその維持に精神力を使ってしまうという負のスパイラルに陥ってそうな気もする。引きこもるための専用のダンボールまで用意してるっつうことは、有事の際にいつでも使えるようにしておけるためだろうしな。

 

 

「これを機に、瑠璃乃さんの充電切れを防ぐ方法を考えた方がいいかもしれないわね。慈がずっと付きっ切りでいるのは現実的ではないでしょうから」

「私がいても消耗は抑えられるだけで回復はできないからね」

「るりが気を遣わないようにみんなでわぁ~って、盛り上げる?」

「瑠璃乃ちゃんが誰にも気を遣わず、自分も一緒になって遊んで騒げる方法を考えるってことですね!」

「そんなこと可能なんですか……?」

「考えていることなら一応あるよ。めぐちゃん式るりちゃんの楽しませ方ってやつ。ちょうど最近誰かさんが入ったおかげでレパートリーも増えたしね」

 

 

 なんかまた厄介事に巻き込まれそうな気がしてきた。面倒事にならないといいけど、藤島がこっちを見てウインクしてきたからそうも言ってられねぇんだろうな。

 

 

「まず、るりちゃんは1人の時間も好きだけど家族でいる時間も好きなんだよ。だから家族の安らぎを与えてあげれば摩耗した精神も復活するはず」

「根拠あるんですかそれ……? それにわたしたち、瑠璃乃さんの家族ではないですよ?」

「だから幸せな家庭を演じてるりちゃんに家族を思い出させてあげるんだよ。私が母親役で父親が梢、息子役は――――神崎ね」

「はぁ? 俺??」

「どうして(わたくし)が父親なのかしら……?」

「この中で腕っぷしが強いから」

「あなたねぇ……」

「とにかく、台本はメッセージで送るからそれに合わせて演技よろ~!」

 

 

 どうして俺がこんなことを……。

 でもこれで大沢がダウナー症を克服すれば好感度を上げやすくなるかもしれないし、形だけでも参加しておくか。この作戦にあまり効果があるとは思えねぇけど……。

 

 藤島から送られた来た台本を基に、俺たちは幸せな家庭の演技を始める。

 しかし、それには深刻な問題が――――

 

 

「ふぅ、今日も仕事疲れたわね……」

「おかえりなさい、あなた」

「おかえり、お父さん」

「え、えぇ、ただいま……」

「ちょっと神崎。台本通りにやってよ。『息子が帰宅した父親に抱き着く』っていう、幸せな家庭の代名詞とも言えるシーンを!」

「いやそれはハードル高いだろ。俺がじゃなくてコイツが……」

「そうなの? 男とは言ってもまだ中学に上がりたてのガキんちょなんだから、それくらいで恥ずかしがる必要ないって」

「あなた、自分がやらないからって……」

 

 

 早速ハードルが高い問題が来た。

 確かに帰宅してきた夫を出迎える妻と息子ってのは仲良しをアピールできるかもしれないが、それはやはり本当の家族だから成り立つこと。演技でやっても気恥ずかしいだけだ。増してスキンシップなんてもってのほかで、俺は女の子に抱き着くくらい余裕だが、そんな経験のない乙宗からしてみれば抵抗だらけだろう。

 

 

「できないの? もしかして梢、神崎を男として見ちゃってる?」

「ッ……!? できるわ」

「梢センパイ!?」

「もう幸せな家族のシチュエーションとか、全く関係なくなってきてませんか!?」

 

 

 村野の言う通り。仕事帰りのお父さんが待ち遠しく、玄関先まで走って『パパ~』とか言って抱き着く可愛い息子ってのが本来のシチュエーションだったんだろうが、どこの家庭に夫を挑発して息子を抱き着かせようとする妻がいるんだよ……。

 

 

「ほら、来なさい神崎君」

「いいのかよ?」

「相手はただの中学生、相手はただの中学生、相手はただの中学生……。しかも見た目は小学生、見た目は小学生、見た目は小学生……」

 

「こず、念仏みたい」

「それだと梢先輩が仏になっちゃいますけど……」

 

 

 乙宗は腕を広げて俺の受け入れ態勢を取る。

 まさかこんな形で女の子と触れ合うことができるなんて、小さい身体も捨てたものじゃないと汚い思考がよぎる。『やめてもいいぞ』と声をかけようとしたが、挑発された影響でコイツも後に引けなくなっているのが分かるので言い出せない。ムキになるなんて意外と子供っぽいところあるんだな。

 

 俺を異性と思わないように自己暗示しながら腕を広げる乙宗。覚悟はもうできているようなので、俺は正面から彼女に抱き着いた。

 

 

「あっ……」

 

 

 小さな声を漏らした乙宗だが、それ以上は何も言わずに俺を受け入れた。何故か向こうからも俺の腰に腕を回してくる。

 この体勢は俺にも来るものがある。身長差があるせいで俺の頭が乙宗の胸に当たっており、そのせいでコイツを女と意識せざるを得なくなっている。本人も胸を枕にされていることは分かっているだろうが、突き飛ばさず腕を回して離さないのはやはり俺を男としては見てないからだろうか。少なくとも胸に触れてることは恥ずかしく思ってないらしい。

 

 つうかこれ、見た目は子供だけど成人男性が女子高生の胸を枕にしてるって構図なんだよな。すげぇ犯罪臭がするどころか、俺が教師だってバレたら懲戒モノだなこのシチュ……。

 

 

「零クン、梢センパイ……。見てるこっちもドキドキしちゃう……」

 

「梢ぇ~意外とノリ気になってるんじゃないのぉ~? もしかして、神崎を意識しちゃってるとかぁ~?」

「な゛っ!? だったら、あなたもやってみたらどうかしら?」

「えっ、なんだ?? うわっ!?」

 

 

 藤島がまたしても挑発し、乙宗の眉が動く。

 その瞬間、乙宗は俺の首根っこを掴むと、自慢の馬鹿力で俺を藤島に放り投げた。そのコントロールの良さと俺が軽いのも相まって、俺の身体が藤島の身体に――――綺麗に収まった。

 藤島も反射的に俺を抱きしめる。

 

 

「痛く……はない――――あっ」

「あっ……」

 

 

 またしても身長差が故に胸に頭が当たってしまう。

 コイツ、意外とあるんだな。練習着の上から見ていて知ってはいたし、ワガママボディと言われるスタイルであることは女の子を腐るほど見てきた俺の目からすればすぐ分かる。でも実際にこうして触れてみると、その大きさや柔らかさがより実感できる。

 そんな穢れた思考になってしまうくらいには思春期の性欲が戻ってきそうだった。

 それに体温も高くて抱きしめられて母性に包まれている感じたするのも……なんかいい。

 今の俺、相当気持ちわりぃな……。

 

 

「あら慈、顔が赤いわよ」

「ち、ちがっ!! 男がいきなり飛び込んで来たら誰でもこうなるでしょ!!」

「ふふっ、男と意識しているのね」

「だからこれは突然だったから驚いてるだけで!!」

 

 

 必死に弁解する藤島だが、それでも俺を離さないのは何故だろうか。ただ単に言い訳に集中して忘れてるだけだと思うけど……。

 乙宗もそうだが、藤島も別に俺をすぐに跳ね除けないあたり、そこまで悪い印象は抱かれていないらしい。挑発されたり突然押し付けられたので仕方なく対応しているだけ、とも捉えられる。

 

 ただ乙女心ってのは複雑なもの、もしかしたら……いや、流石にまだそれはねぇか。

 

 

「そういえば瑠璃乃ちゃん、元気になったかな?」

 

 

 日野下が大沢の心配をするが、ぶっちゃけここまでの展開が怒濤すぎてアイツの存在を忘れていた。

 みんなが大沢が入っているダンボールに目を向ける。

 

 

「あぁ、典型的なハーレムラブコメだぁ……。選ばれなかったヒロインのメンタルケアしなきゃ……。また精神削がれる、つらたん……」

 

「るり、全然元に戻ってないね……」

「あんな脚本で戻るわけねぇだろ」

「元々は幸せな家庭を模したシチュエーションだったの! 男女のラブコメは想定してない!」

 

 

 そういいながら最初に煽ったのはお前じゃねぇか……。

 まあ仮に家族シチュエーションが上手く行っていたとしても、こんな演技ごときで大沢の心を動かせるとは思えないけどな。

 

 

「じゃあとっておきのをもう1個。いつも通り神崎が息子役で、その双子の妹がさやかちゃん、2人の妹に花帆ちゃん、その下の妹に綴理。今度は仲睦まじい兄妹愛を披露してもらうよ。るりちゃんに兄妹はいないけど、これも家族愛ってことで」

「また俺かよ」

「わたしも参加するんですか!?」

「零クンの妹かぁ……。ちょっといいかも」

「どうしてボクが一番下なの……?」

「それはまぁ、精神的……雰囲気的に?」

「一瞬バカにされた……?」

 

 

 年長者の1人で一番背が高いのにこの扱いなんて中々に不憫だな。まあ普段の言動を見ていればコイツが先輩だなんて思う後輩はいないだろうけどさ。

 

 そんなこんなで今度は兄妹ネタをすることになった。姉も妹もいる身としては弟しても兄としても演技は余裕だけど、さっきみたいにまともに終わる未来が見えないんだが……。

 

 

「零お兄ちゃ~ん、今日は花帆と遊んで~!」

「宿題はやったのか? どうせやってねぇだろ、それを片付けてからな」

「むぅ~……」

「わたしは片付けたので、その……遊んでください」

「あっ、さやかちゃんズルい。いつもそうやってお兄ちゃんを取るんだから! 抜け駆け禁止だよ!」

「取ってはないんですけど……。花帆さん、ちょっと怖いような……」

 

 

 確かに日野下はかなり演技が上手い。ただ雰囲気派な性格なのでレールに沿った台本通りの演技なんてできないような気がするんだけど、今のコイツはマジで妹に見える。甘え上手で妹属性があるのは間違いないが、聞いたところによると2人の妹を持つお姉ちゃんだって聞くし、だとするとなおさら妹っぽく見えるのが謎だ。

 

 もしかして、本当に俺を取られたくないとか思ってたり? まさかな……。

 

 

「ボクは宿題ないから、何もしなくてもお兄ちゃんに遊んでもらえる~」

「くっつくな。台本にねぇだろ」

「綴理センパイだけズルいです! あたしだってまだ抱き着いたことないのに!」

「えっ、抱き着きたいの!?」

「い、今は妹だから……。ね、さやかちゃん!」

「えっ、わたしですか!? わたしは別に……」

「さやはやりたいことを素直に言えない性格」

「ふぇっ!? 違いますよ神崎さん! だからと言って抱き着きたいとかそういうことではないですから!!」

 

 

 ほらやっぱり台本破綻した。

 そもそもの話、妹が3人いるシチュエーションで幸せな家庭を描くってどうやりゃいいんだよ。これだけ仲がいいと身体の関係になりかねないから無理――――ってのは俺の兄妹での話か。どうも自分の兄妹関係が異質過ぎて、仲の良い兄妹=肉体関係を想像してしまう。俺の倫理観が破綻しているのは認めるが、それにしたって今回のシチュエーションはドロドロする気配しかないが……。

 

 ちなみに大沢の様子はどうだ?

 

 

「ヤンデレになって近親相姦する展開だ……。血が流れないようにルリがみんなを守らないと……。でもこんなウジムシゴミムシなルリにできるのかな……。無理だ……」

 

「るりちゃん、漫画の主人公が悲劇的展開を止められず挫折した時みたいになってる……」

「『自分がやらないと』という使命感が強すぎるのが原因の1つのようね……」

 

 

 案の定ダウナー状態から抜け出せていないようだ。

 もはや何をしてもマイナス思考に陥るのでこれ以上は無駄なような気もするが、この状態では練習もままならないので問題解決屋としては何とかしてやりたい気持ちはある。単純に女の子のこんな姿は見てられねぇしな。

 ただ、どうにかするにしても本人とまともに話せなければ意味はない。

 

 仕方ねぇな。

 

 

「おい大沢、そろそろ出てこい。お前も治してぇんだろそれ」

「…………」

「じれったい。これ取るぞ」

「えっ、あっ!?」

 

 

 俺は大沢が被っていたダンボールを引っぺがす。

 大沢は驚いた様子で顔を上げた。

 確かに気分が悪いのか顔色は良くないが、そんなの俺が知ったことではない。

 

 俺は大沢を壁際に追い込むと、頬を両手で軽く抑え、顔を近づけた。

 

 

「にゃっ、にゃにするの!?」

「ちゃんと声でるじゃねぇか。元気出たか?」

「ぷはっ!? いきなりそんなことされたら誰でも驚くよ!! てか顔ちけぇし!!」

「いつもの芝居がかった喋り方が抜けてるぞ」

「うぐっ……!!」

「…………」

「な、なに急に黙って!?」

「思ったより可愛いなって思って」

「は、はぁ!? 何をいきなり!! ばっかじゃねぇの!?」

「俺はいつでも素直だ」

「ぐぅうううううううううううううう!! あぁ~もうっ分かった! 分かったから、ハイもう元気!!」

 

 

「凄い、瑠璃乃ちゃんがあっという間に元に戻った……」

「神崎さんが近づいただけなのに……?」

「るりちゃん、やっぱり……」

 

 

 下手な小細工なんて必要なかったってことだよ。こういうのは真っすぐ向き合えばいいんだ。

 ま、そんなカッコいいことを言いつつも、大沢がどうして今ので元気になったのかは俺も不明だけどさ。ただ顔を真っ赤にしてたってことは割とこっちを意識してくれてたのかな……?

 

 

「とりあえず、一件落着ということでいいのかしら? 対策は見つからなかったけれど……」

「るりがへなへな状態になったら、れいを呼んでこればいい。さっきみたいに顔をぎゅ~ってされたら元気になるから」

「えっ、さっきみたいなのを毎回!? ムリムリ! あんなこと毎回されたらもう……」

「るりがれいを持ち歩けば完璧。うん、これで解決だ」

「俺はモバイルバッテリーかよ……」

 

 

 まさかの対策が俺を携帯充電器化させることだった。

 でも大沢は恥ずかしがっているみたいで、それで気を紛らわせてダウナー状態を解除できるのだとしたら……あり、というか仕方ないのかもしれない。ただ本人の羞恥心に火がついて、それはそれで精神力がそがれそうな気もするけどな……。

 

 つうかこの対策って、結局はダウナー状態になってからの話だから根本対策になってなくね? どうやったら精神力を保てるのか、まだ一行の余地はありそうだ。

 




 ダウナー状態から元気にはなりましたが、別の意味でまた疲れてしまいそうになる瑠璃乃でした(笑)
 瑠璃乃以外の子も、零君のことをどう思っているのかその一端が垣間見えるようにしてみました。少しずつ彼への見方も変わってきているようです。



 次回からは4~5話程度の長編がスタートします。前のLiella編で言うと、文化祭編のように一気に展開が進むあの感じです。是非ご期待ください!




【キャラ設定集】※変化なし
零から蓮ノ空キャラへの呼称(そのキャラへの印象)
・日野下花帆 → 日野下 (妹キャラが似合う)
・村野さやか → 村野  (意外とムッツリ?)
・乙宗梢   → 乙宗  (色々柔らかかった)
・夕霧綴理  → 夕霧  (先輩には見えない)
・大沢瑠璃乃 → 大沢  (可愛いな)
・藤島慈   → 藤島  (いい身体をしている)

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100で50が普通)
・日野下花帆 → 零クン  (?)※変化なし
・村野さやか → 神崎さん (55)※変化なし
・乙宗梢   → 神崎君  (49→50)
・夕霧綴理  → れい   (61)※変化なし
・大沢瑠璃乃 → 神崎くん (55→58)
・藤島慈   → 神崎   (39→40)

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