ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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強制混浴大パニック!(前編)

「マジで銭湯造ったのかよ……」

 

 

 結ヶ丘に突如として銭湯が設立された。

 前々から校舎に併設する形で何かを増築しているのは知っていたが、まさか銭湯が作られているとは思ってもいなかった。どうやら秋葉が金に物を言わせて作ったようで、去年まで資金がなくて運営困難になっていた学校とは思えないくらい豪華な施設だ。

 最初からアイツが資金援助してやれば学校の問題も解決し、恋が学校存続に病むこともなかったと思うのだが、アイツは気まぐれだからただ人を助けることはしない。今回もいつも勉学や部活に励んでいる生徒を支援したいからって銭湯を設立したらしいのだが、真の目的は何なのやら……。

 

 そして今回、オープン記念として俺とLiellaの面々が呼ばれ、新たに併設された銭湯への道を歩いている。

 まず先頭で銭湯(ダジャレじゃない)を見上げる1年生たちが感想を述べる。

 

 

「まさか銭湯が造られるなんて、都会の学校は凄いっす!」

「いやいや、こんなの普通の学校にはまず存在しませんの……」

「でもこれで家に帰らずとも汗水を流せるようになるのはいい」

「あぁ。なんならもう泊まり込みで練習できるくらいだな」

 

 

 確かに学校に銭湯があるとなれば、部活の後に一服する楽しみができてやる気は上がるかもしれない。教師としては夜を跨いで泊まり込みってのは勧められたものじゃないが、学校で合宿なんてこともできるし、生徒の活動の活発化という面ではいいのかもな。

 

 1年生たちが盛り上がっている中、俺を挟んで後ろにいる2年生たちも同じくテンションが上がっていた。

 

 

「凄く立派な建物デスね! クラス1つの生徒が丸々入れるくらいには大きい湯舟があると聞きマス!」

「それなら部活終わりに混むことも少なくなるから心配ないね!」

「えっ、毎回入りに行くのですか? これだけ豪華な施設なら夢中になってしまいそうですが……」

「健康や美容にもいい天然温泉らしいし、毎日入りに来てもいいんじゃないかしら?」

「それだと毎日が合宿みたいになっちゃうね……。それはそれで楽しいかもしれないけど」

 

 

 それが日常になったら絶対に飽きるだろ。部活終わりの疲れた身体であそこへ行くことすら面倒になってそうだ。

 

 みんなの期待が膨れ上がる中、遂に銭湯の入り口に足を踏み入れる。

 秋葉が持つ無尽蔵の金から造られたこの銭湯は入り口からしてホテルのようで、もはやエントランスと呼ぶにふさわしい豪華さがある。風呂上りでアイスキャンディーやコーヒーミルクなども食べ放題飲み放題という大盤振る舞いっぷり。学校関係者専用とは言えどもこれが無料で使い放題なんだから太っ腹だ。まぁアイツのことだから警戒は怠らない方がいいが……。

 

 エントランスから男湯と女湯で通路が分かれていて、どうやらここで別れる必要があるみたいだ。

 だが、ここで気になることがあった。

 

 

「どうして男湯があるんだよ。俺が連れてこられた時点であるとは思ってたけど、この学校って教師生徒含めても男って俺しかいないのに……」

「つまりアンタのためだけに施設の半分を使ったってこと? 身内贔屓が過ぎるわね……」

「でもこれでもし合宿をすることになったとしても、先生と一緒にいることができマス!」

「その気持ちは嬉しいけど、あまり拘束するのはやめてくれ……」

 

 

 ただ合宿するとなったらどのみち大人がいないといけないし、そうなったら必然的に顧問の俺が同行する羽目になる。

 それに一晩を自宅以外で過ごすと妹の追及が怖く、『誰と』『どこで』『何を』『いつまで』を正確に答えないと家から出してもらえなくなる。そしてその伝えた情報から少しでも逸脱したことすると、帰宅した際に尋問と拷問が待っているんだ。たくさんの女の子と付き合うことは容認してくれてんのに、夜遊びはダメってどういうことだよ……。

 

 設備や内装の豪華さに見惚れて呆気にとられていたみんなだが、順々に我に返る。

 そして男女の分岐まで辿り着くと、隣にいたかのんが声をかけてきた。

 

 

「それじゃあ先生、また後で」

「あぁ、ゆっくりしてけよ」

 

 

 流石に一緒に入りましょうとか言う奴はいねぇか。これが虹ヶ先だったら間違いなく誘ってくるし、断っても俺しかいない男湯だったら躊躇もなしに乱入してくるだろう。なんなら普通に温泉旅行に行って混浴したことあるしな。1人を除いて誰も混浴に反対しなかったのが倫理観のぶっ壊れを感じちまうよ……。

 

 通路を進むと下へ降りる階段があり、その先のドアを開けると脱衣所が広がっていた。可可が言っていた通りクラス1つ分の生徒くらいなら余裕で一緒に入浴できるくらいなので、もちろん脱衣所も広い。もちろんタオルも使い放題、ドライヤーも高級モノでもはや銭湯というレベルを逸脱していた。ただここは男湯で、この学校には俺しか男性がいないため無駄なスペースだと言わざるを得ないが……。

 逆に言えば俺がいなければここを女子風呂として使ってもいいわけで、だとするとこの大きさでも無駄になることはないのか。果たして男湯を使うことになるくらい人数が押し寄せるのかは別として……。

 

 適当に脱ぎ、いざ中へ。入ってみると出迎えるかのように湯気がこちらに迫り、脱衣所へと吹き抜けていく。

 肝心の湯舟はと言うと、やはり広い。銭湯というのはやっぱり名ばかりで、豪華な内装であったエントランス部分に負けず劣らず。血液濃度を高めない良質な水分の温泉と、内風呂と岩盤浴、サウナに露天風呂までもが完備された高級な大浴場だ。

 

 とりあえず身体を洗うことにする。1人しかいないのでマナーとか気にせずいきなり湯舟に飛び込んでもいいのだが、こういったお高いところに来るとどうも萎縮してしまうもの。誰も見てないけど人間としてのマナーは守らせてもらう。

 

 そんなことを考え、身体を洗おうと湯舟から離れたその瞬間、やたら鈍い機械音が聞こえた。

 音のする上を見渡してみると、なんと天井からお湯が漏れ出していた。

 

 なんという欠陥銭湯。流れてくるお湯は少量だが、このままだと大量に流入してくる可能性がある。秋葉を呼んだ方がいいのかと思いつつも、同時にアイツらの方は大丈夫なのかと不安にもなってきた。

 ――――なんて心配がどれだけ小さいことだったのかすぐに思い知る。なんとお湯が漏れ出している天井の一部が開き、そこからお湯が滝のように流れ出してきた。同時に――――裸の女の子も落下してくる。

 

 

「ひゃあぁっ!?」

「おっと――――って、可可!?」

「えっ、先生!?」

 

 

 上から可可が落ちてきた……のか!? 反射的に受け止めることには成功したが、一体何が起きている……!?

 だがその前に――――

 

 

「とりあえずタオル巻いとけ」

「ぴぎゃっ!? み、見ないでくだサイ!!」

「真っ裸で落ちてきて良く言うよ。タオルも一緒に落ちてきて命拾いしたな」

 

 

 俺の腕の中で顔を真っ赤にして縮みこむ可可。タオルが被さるように落ちてこなかったら、今頃俺の目はコイツの全裸を隅々まで録画していただろう。

 それでも銭湯に持ち込むタオルはバスタオルみたいに大きくないので、いくら小柄な可可でも全身を隠すのは難しい。今もそれなりの巨乳がタオルの横からはみ出してるし、目のやり場に困るどころかそんなもの存在しない。こうして受け止めてやっているだけでも身体の柔らかさを感じられ、全裸の女子を抱いているんだという実感しか沸いてこなかった。

 

 とりあえずここで煩悩に支配されるわけにはいかないので、コイツが落ちてきた原因を探るフリをして気を散らそう。

 

 

「可可~? 大丈夫~?」

「先輩大丈夫っすか~?」

 

 

 上から声が聞こえたので見上げてみると、すみれやきな子、他のみんながこちらを見下ろしていた。

 アイツらがあそこにいるってことは、もしかしてこの上が女子風呂なのか? そういや男湯に行くときに階段を下ったから、だとすると女子風呂があるのは階段を上がった先の可能性がある。おかしいと思ったんだよ、どうして風呂場へ行くのに地下への階段を降りなきゃいけなかったのか。

 

 そしてここで理解する。やっぱり秋葉に関わるとロクなことがないと。まーーーーーーーーーーーーーーーーーーーた変なことに巻き込まれたのか俺たち……。

 

 ――――って、あっ、み、見え……!!

 

 

「……。お前ら、そんなに身を乗り出してると見えるぞ」

「な゛っ!? ちょっと!! まじまじ見るんじゃないわよ!!」

「こちとら天井の穴から話しかけられてんだ、見る以外にどうすんだよ」

 

 

 俺がいるとは思わなかったのか、みんなが一斉に天井の穴から引っ込む。ぶっちゃけギリギリ見えそうで見えなかった奴もいるのだが、本人の名誉のために誰の何が見えたとは言わないでおこう。

 

 可可を床へ下ろし(少し残念そうにしていた)、例の天井の穴を再び見上げてみる。水流で穴が開いてしまったというよりかは、開閉式でいつでも空けられる構造になっているみたいだ。つまりこの状況は明らかに仕組まれたもの。最初からこれが目的の施設構造だってことだ。金の無駄もここまで来ると極まってんな……。

 

 その時、またその穴からお湯が流れ込んできていることに気が付く。

 

 そういやアイツら、まだ穴の近くに――――!!

 

 

「おいお前ら! 今すぐそこから離れろ!!」

 

 

 叫んだ時にはもう遅かった。既に大量のお湯が天井から流れ込んできている。

 つまり、その流れに乗って女の子が――――!!

 

 

「ひゃあっ!?」

「きな子!?」

 

 

 きな子が天井から流されてきたのですかさず受け止める。

 だが連鎖は終わらず――――

 

 

「うわぁあああっ!?」

「メイ!?」

 

 

 今度はメイが落ちてきたのでそれも受け止める。

 しかし――――

 

 

「ににゃああっ!?」

「夏美!?」

 

 

「ひゃあああんっ!?」

「恋!? って、そんなに受け止め切れるかぁああああああああああああっ!!」

 

 

 結局全員が男湯に流されてきてしまい、精々コイツらがケガしないよう下敷きになることしかできなかった。

 

 

「いつつ……。落ちてくるならもっと時間を空けて1人ずつ来てくれよ――――んっ、な゛っ!?」

 

 

 目を開けた瞬間、そこは肌色しか存在していなかった。どこを見渡しても思春期10代女子の瑞々しい肌が視界に入る。当たり前だがここは銭湯で、当然何も着ているはずがない。俺はたくさんの裸の女の子たちに押し潰されていた。

 

 手のひらに誰かの柔らかい部分が乗っており、少しでも指を動かせば余裕で食い込みそうなくらいの柔軟さ。誰かが俺の脚を柔らかいモノで挟んでおり、こちらも少しでも動かせばぷるぷる震えるだろう。それ以外にも全身のありとあらゆる部位で女の子特有の肌質の良さを感じられ、今現在裸同士で絡み合っているのだと強制的に実感させられた。

 

 みんなはすぐに俺から離れようとしなかった。くらくらしていたり身体を摩ったりと、落ちた衝撃で現状を理解するのに時間がかかっているのだろう。ぶっちゃけて言えば時間がかかってくれた方がコイツら的にはいいかもしれない。だってほら、我に帰ったら俺に見られている事実を知ってしまうわけだし……。

 

 

「あっ、先生が助けてくれたんですね。ありがとうございます」

「かのんか。お礼はいいから早く下りてくれ。隠すものがあるんだったらだけど……」

「へ……? ひっ……!! ちょっとタイム!!!」

「うぶっ!!」

 

 

 かのんが反応してくれたと思ったら、自分の裸が見られていることを察したのか一瞬で顔を赤くし、持っていたタオルを俺の目元に押し付けてきた。正直背中しか見えていなかった(それでも綺麗で十分に艶やかだった)のだが、好きな男の前で覚悟もなしに突然肌を晒すのはそりゃ女子として羞恥に晒されるだろう。

 

 このまま目元のタオルを剥がせば桃源郷が拝めるのだろう。だが今の俺は教師、そんなことはしない。虹ヶ先の奴らであれば容赦なく裸を見る、というかあっちから見せてくるような奴らばかりだけど、コイツらは純情だから下手に騒ぎを起こさないためにも穏便に事を対処した方がいい。高校生時代だったらこんなタオルなんて速攻で取っていたんだろうな……。

 

 しばらくしてみんなも状況が理解できたのか、でもどうすることもできないので裸のままわなわなしているみたいだ。

 そして俺の上に乗っかっている奴らは申し訳ない気持ちでいっぱいなものの、離れると俺に裸を見られる恐れがあるので下手に動くことができないジレンマも抱えているようだ。目の前にいるかのんもそうだし、ぱっと見だと四季やすみれと言った肉付きの良い奴らばかりが俺の腕や脚に覆い被さっている。そのせいで変に意識をせざるを得なくなっていて……。

 

 

「っ……! 先生、変なところ触り過ぎ……」

「アンタねぇ、こんな状況で発情してんじゃないわよ!」

「するか!! どこもかしこもお前らに潰されてるから、指でも動かさないと身体が痺れんだよ!!」

 

 

 わざわざ下敷きになって助けてやったのに、人にのしかかっておいて動くなってのもヒドい話だ。俺は女の子の尻に敷かれるような人間じゃないんだけども。まあ指が肌に触れて柔らかさを感じていたのは事実だけどさ……。

 

 そんなこんなでいつまでもこの状態でいるわけにもいかないとコイツらも悟ったのか、渋々ながら離れてくれた。

 ただ、そうなるとさっき言った問題で裸を見られる事故が起こってしまう。女湯ではタオルを持っていたのだろうが、不幸なことに全員分が男湯に流れ落ちてきているわけでもない。そのため大切なところを隠すものがなく、座り込んで腕を回して胸を隠すという凄まじく淫猥な格好になってしまっていた。

 

 

「先生に見られてるとずっとここから動けませんの……」

「わりぃ。あっち向いてるからお前らは先に出ろ」

 

 

 見るなと言う方が男にとっては毒になる。教師だから女子生徒の裸を見ないと決めていたのにも関わらず、どうしても人間の性的欲求に従順になり過ぎてしまった。夏美は早くあっち向いてろと言わんばかりに顔を壁の方へと振る。腕は胸を隠して使えないからな……。

 

 ともかく、このままここに居続けるとまた上の女湯からお湯がこっちに流れ込みかねない。広いのでお湯で溺れることはないだろうが、こんな危険な施設は早めに脱出するに限るだろう。

 

 そして、俺が壁を向いている間にみんなは男湯の入口へ向かった。

 

 しかし、そこで驚きの声が上がる。

 

 

「えっ、開かないのですが……」

「なに!?」

「ちょっ、こっち見んなよ!!」

「うぶっ!!」

 

 

 恋の言葉に思わず振り向いてしまい、その気付いたメイが丸めたタオルを俺の顔面にぶつけてくる。

 見えちゃったよ色々と。みんなの後ろ姿だけど、俺がそっぽを向いていることに気が緩んでいるのか身体のガードも緩くなっていて――――いやまぁ、本人たちの尊厳のためにこれ以上は言わないけどさ……。

 

 とりあえず、再び壁際を向きながら現状を探ってみることにする。

 

 

「開かないってどういうことだよ? 鍵でもかけられたか?」

「いくらスライドさせても開かずで……」

「みんなで体当たりしてぶち破るとか?」

「でもこのスライドドア、すっごく丈夫そうできな子たちだけではどうにもならなそうっす……」

「先生でも無理なんじゃないかな、この分厚そうなドア……」

 

 

 千砂都が指の関節で軽く叩くが、確かに鈍い音が響いている。これは男の俺でも突破するのは難しそうだ。秋葉のことだから、簡単にモルモットたちを逃がすようには造られていないのは当たり前か。だとすると最初から逃げ道なんてあったものじゃないが、もうこの銭湯はさながらモルモットを収容した実験場のようなものだろう。

 

 

「先生、どうしますか……?」

「秋葉は悪魔だけど鬼じゃない。脱出の方法を提示しているはずだ。どこかに何か書いてないか?」

 

 

 アイツのお遊びは毎回度を越してるけど、それを乗り越える方法を用意しているのも事実。優しさがあるとは一切思っていないが、ミリ、いやナノ単位くらいの温情は感じられる。まあアイツからしてみればどうすることもできず絶望に打ちひしがれている姿を見るよりも、奇跡の一手を信じて足掻く俺たちの姿を見る方が楽しめるのだろう。ホントに性格終わってんなアイツ……。

 

 

「あっ、あった」

「本当っすか四季ちゃん!」

「なんて書いてあるんですの!?」

 

 

「『ここは”混浴”温泉。温泉はもちろん、一緒に身体を洗ったりサウナに入ったり、男女の時間を心行くまでご堪能ください。むしろ堪能するまでここから出られません』……だって」

 

 

 それってつまり、みんなと一緒にこの温泉を楽しめと?? みんなの身体を隠すものが少ないこの状況で!?

 

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 Liella編では珍しく肌見せ回。
 純愛をテーマとしているLiella編では恋愛話を中心としていましたが、ネタ思いついてしまったのでカンフル剤として投入してみました(笑)

 本来は1話で完結予定だったけど、見ていただいた通りどう足掻いても1話で収まるボリュームではなかったので前後編です。最後の展開の通り、お楽しみは次回かもしれません(笑)

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