是非最後までご覧ください!
「もうっ、ダメですよ零さん。あまり無理をしたら……」
「だから大丈夫っつってるだろ」
「ほら、動かないでください」
「ったく……」
歩夢は保健室のベッドに腰を掛ける俺のおでこに冷えピタを張った。
頬を膨らませてあからさまに怒ってますよアピールをしている。いつもはどちらかと言えば引っ込み思案な性格だけど、人の心配をする時は人一倍に世話を焼いて絡んでくるのがコイツのいいところ。だけど今回は体調不良の原因が原因だけにあまりバレたくなかったんだよな……。
さっき少しぼぉ~っとしながら廊下を歩いていたら、たまたま出くわした歩夢と薫子に見つかってしまった。
「歩夢ちゃん、はいこれ体温計。零君の熱を測ってあげて」
「ありがとうございます。じゃあ零さん、脱いでください」
「なんで!? 普通に脇の下に挟めばいいだろ!」
「あっ、ゴメンなさい! いつものクセで……」
「キミたちいつもこんなプレイしてるの……?」
「んなわけねぇだろ。コイツが淫乱なだけだ……」
「~~~~ッ!?」
歩夢の頭から湯気が出る。ナチュラルに男を脱がそうとしたんだから、そりゃ脳内ピンクと言われても仕方ないだろう。髪色もイメージカラーもピンクっぽいしな、もともとそういう素質があったのかもしれない。
かすみたちとは違い、虹ヶ咲チルドレン9人の中ではせつ菜と並んで性に対する羞恥心には弱かったりする。それは今の反応を見てもらえれば分かる通りだ。他の奴らは俺との情事に一切の抵抗がないからな。ただ羞恥に悶えつつも性には貪欲なのが歩夢の特徴であり、カラダを重ね合わせてからは割と積極的だったりする。
「それにしても、零さんが体調を崩すなんて珍しい気がします。どこか具合悪いんですか……?」
歩夢が心配そうに俺を見つめる。
薫子に目配せするとウィンクで返事をしてきた。どうやら体調不良の原因は歩夢に伝えていないようで、そこは大丈夫だと言いたいのだろう。まさか俺の身体が女の子たちからの愛を受け止めきれず、そのキャパシティが限界を迎えて爆発しそうになっているとは言えねぇよな。しかもその解決方法が同好会の奴らとキスをすることなんて、傍から聞いたら馬鹿げた話だ。
でもキスをすることで確かに効果はあるようで、女の子とキスをするたびに身体が燃え上がるような熱気を発し、俺の中で何かが変わっているように思える。医学的根拠なんて全くなく、秋葉が言ってるだけなのでそもそも本当にこれで治るのかも分からねぇけどな。ただ最近は特に熱っぽいことが多く、今もまさにその状態なので本当に治ってるのやら……。
ちなみに例の病状が宣告されてからまだキスをしていないのは歩夢だけだ。他の11人とは既に事を済ませており、その際に伝えられた愛の大きさにより俺の身体にかかる負担も大きくなっていると思われる。
ただコイツらに心配をかけたくないから、事情を知っている薫子と侑には歩夢たちに何も話さないよう釘を刺してある。話したらコイツらのことだ、無理矢理にでもキスを迫るに決まってる。そんな愛のない義務のようなキスをコイツらにさせたくないんだよ。愛を伝えあうのに余計な雑念は必要ない。
「4月から教師になるから色々勉強とか実習とかしてんだよ。それで疲れてるのかもな」
「そうですか……。でももし疲れて動くのも億劫であれば私に何でも言ってください! 家だと楓さんがいますけど、学校だったら食事を食べさせてあげたり、飲み物を飲ませてあげたり、上着を着させてあげたり、お昼寝するなら膝枕もしますし、お風呂も入れてあげますし、トイレのサポートだって何でもですっ!!」
「介護か!! 気持ちは嬉しいけどさ……」
「でも私、零さんのお世話をしないと生きていけないと言いますか、そのためにここまで生きてきたので……」
「噂には聞いてたけど、歩夢ちゃんの愛の重さって相当だね……」
薫子はこんな歩夢を見るのは初めてのようで唖然としている。
惚れ込んだ相手へヤンデレ気味の多大なる愛情を抱いてしまうのは歩夢の悪いクセだ。まあ愛が重くて依存してくれる女の子が好きな男もいるので、一概にこの性格が悪いとは言わないけどさ。実際に身の回りの世話をしてくれるのは助かってるしな。
「じゃ、私は仕事があるからそろそろ戻ろうかな。零君の気持ちも分かるけど、歩夢ちゃんの心配を無下にしたらダメだよ?」
「あぁ、分かってる」
「だろうね。それじゃあ歩夢ちゃん、後はよろしく~♪」
「はいっ」
薫子ははにかみながら保健室を去った。アイツもアイツなりに俺のことを心配しつつ、俺の意図を汲み取って歩夢たちに何も話せないジレンマも抱えさせてしまっている。侑もそうだけど結構な板挟みだから、この身体が戻ったら何か奢ってやるか。これでも恩義ってのはあるんでね、一応。
そしてそんなこんなしている間に脇に入れていた体温計が鳴る。取り出して映し出された体温を見てみると――――
「37度ピッタリか」
「微熱じゃないですか! やっぱり安静にしてないとダメです!」
「いや37度なんて平熱でも普通に行くことあるだろ。そこまで騒がなくても……」
「心配なんです。疲労が溜まって倒れられたりでもしたら、私もショックで寝込んじゃうかも……」
「依存症が過ぎるだろ……」
別に俺が倒れても自分のせいじゃねぇのに難儀な奴だ……。
しかし、俺のことを心配しているという事実は変わらない。薫子の言った通りそれを無下はできないし、身体が熱っぽくてダルいのは確かなので、ここは甘えてやってもいいのかもしれないな。
「分かったよ。何かあったらお前に頼むから」
「何からあったらじゃダメです! 今から零さんの身の回りの世話は私がやります!」
愛する者への押しの強さは誰よりも一級品なことは知ってたけど、ここまでグイグイ来る気概は久しぶりに見たかもしれない。普段の一歩引いたポジションとは違い、今は道行く邪魔な奴らを押しのけるかのような勢いで俺に執着している。これも俺の身体を労わってのことだろうが、若干、いや結構自分の欲も入ってるよなこれ? いつも温和な雰囲気のコイツから邪念に満ちたオーラを感じるから、そのギャップのせいで漏れ出した私利私欲が余計に大きく見えた。
「それじゃあまずは着替えましょうか」
「えっ、脱ぐの??」
「汗をかいたままだと服が濡れて冷えちゃいますし、幸いにもこの学校の保健室は寝間着も診察着も揃ってるので」
「流石は最先端学校、準備いいな……。じゃなくて、もしかして寝てろってことなのか?」
「熱が出ているんですから当たり前ですよ! 心配せずとも、体調不良が完治するまで私という私をこき使ってください! 零さんの手となり足となるので! このカラダ、好きに使ってください!」
「そんな奴隷宣言みたいな……」
「そ、そういうのがご所望なのであればやぶさかではないと言いますか……。せ、性欲の処理も頑張ります!! むしろさせてください!!」
「今日は一段と暴走度高いなお前!? いったん落ち着け……」
AVじゃねぇんだから、そこまで面倒を見る必要は……と言いたいが、コイツだったら本気でやりかねない。自己犠牲も厭わない献身さだが、ぶっちゃけたところ俺はそういう尽くしてくれる女の子が好きだったりする。だってそういった子が隣にいると、この子は自分のモノって感じがして支配欲が増すじゃん? ご主人様気質を持つ俺にとって実は上原歩夢はドストライクの女の子だったりする。押しが強いから引いているだけで、実際には俺自身も興奮で血の流れが滾りに滾っていた。
そんな中、ベッドの上で歩夢に服を脱がされる。しかもボタンを1つ1つゆっくりと外され、まるで脱衣行為を愉しんでいるかのようだ。俺の素肌が徐々に見えていくたびにコイツは小さく声を漏らす。自分で男を脱がせて自分で興奮してるってどういうことだよ……。
「零さんって、意外とイイカラダしてますよね……」
「そうか? 普通の男だったらこんなものだろ」
「ちょっと、触ってもいいですか?」
「えっ、なんだよいきなり……。はぁ……好きにしろ」
「ありがとうございます。失礼します」
「えっ……!?」
歩夢は俺の胸に頬を擦り付けてきた。普通に手で触って来るだけかと思ったので何も考えずにお触りを許可したのだが、まさかここまでベッタリとくっ付いてくるとは思わなくて驚いてしまう。
「胸板が厚い、逞しい、温かい。居心地が良すぎて私、零さんの胸に住みたいです……」
「何を訳の分からないことを……」
「零さんの胸に住めば、いつでもどこでも身の回りのお世話をしてあげられます。おはようからおやすみまで、朝はお目覚めのキスで起こしてあげられますし、夜は子守唄で快適な睡眠を取れるのでオススメです。なんなら零さんが眠っている最中は私がお布団としてずっと抱き着いたりもできます」
「通販の謳い文句か。てかこっちが寝てる間までサポートして、お前はいつ寝るんだよ」
「零さんのお世話ができるのなら寝なくてもいい……かな。でも零さんが命令してくれればちゃんと寝ますから!」
「全自動のロボット掃除機でも自分で充電できるのに、それ以下に成り下がってるぞ……」
そこまで行くともう上原歩夢というアイデンティティを失ってる気がする。人の指示でお世話をするロボットじゃなくて、人間としての温もりくらいは最低限残しておいてくれ。ただ性欲の処理は人間でないとサポートできないか。やらせるかどうかは別として……。
それから歩夢はしばらく俺の胸の中で恍惚とした表情でぼぉーっとしていた。どうやら物思いに耽っているようだが、本人が幸せそうなので何もせず、何も言わずに放っておくことにした。
そしてまた少し時間が経ち、満足したのか俺から離れ、寝間着に着替えさせてもらった。自分で着替えられると言っても今の押しの強い歩夢には到底聴き入れてもらえなかったのはお察しの通りだ。
「零さんの服、汗びっしょりですね……」
「…………匂い嗅ぐなよ」
「ふぇっ!? そ、そんなことするわけないじゃないですか変態じゃあるまいし……」
「お前の今日の言動を100人に見せたら100人がどう答えるか想像に容易いんだが……?」
「と、とにかく! これは持ち帰って洗濯しておきますので心配しなくても大丈夫ですっ!」
「いや持ち帰るな。洗うならせめて校内で洗え。確か無料のコインランドリーみたいなところあっただろ」
「う゛っ……」
「『コイツそのこと知ってやがったのか』みたいな反応すんなよ……」
愛が重いってのもそうだけど、愛がドロドロって言葉もコイツに似合い過ぎるほど似合うな。好きな人には歪んでいる最上を向けるこの性格、もし俺がいない世界線だったらどうなってんだろう。侑とかにその想いが向けられて、アイツが誰かにトキメキでもしたらコイツ嫉妬してそうだな。そしてその嫉妬が爆発して、2人きりになった途端に押し倒すとか普通にありそうな気がする。ヤンデレが想像しやすいって相当だぞ……。
盗みの犯行がバレそうになって持ち去りを諦めたのか、脱がせた俺の服を綺麗に畳んで近くの机に置く。
そして俺のいるベッドに腰を掛けた。若干申し訳なさそうな顔をしてるけど、一体どうした……?
「もしかして私、ご迷惑をおかけしてますか……? 零さん体調不良なのに暴走しちゃって……」
「自覚はあったのか……。確かに今のお前は肉食系と言っても過言じゃないな。でも迷惑はしてねぇよ。それだけ心配してくれてるってことだし、尽くしてくれることに関しては感謝してるから。俺、そういうの好きだから惚れちゃうんだよ」
「零さん……。ありがとうございます。もしかしたらご迷惑かもって思っていたので安心しました」
「お前なら俺の性格は熟知してるだろ。性癖に刺さる女の子、それがまさにお前だ。生まれながらにして俺に尽くす運命だったんだよ、お前はな」
改めて上原歩夢という存在を見つめ直してみる。男の欲と言う欲にぶっ刺さりの女の子像がまさに歩夢であり、まさに理想のヒロインであることが分かる。その要素を上げてみると――――
・女子力が高い
・お淑やか
・柔らかな言動と雰囲気
・謙虚で控えめの引っ込み思案だが、諦めることや投げ出すことはしない
・何ごともコツコツ真面目に取り組む努力家
・料理など家事万能
・愛が重くなるほど献身的
・ゲーム好きでオタクへの理解あり
・肉付きが良く、カラダ付きがエロい
・胸がデカい
・子供をたくさん作れそうなワガママなボディ
こんな感じで挙げるとキリがない。つまりコイツは顔良し、性格良し、カラダ良し、愛情良しの正当派にして最強のヒロインだったりする。
だからこんな子にお世話されるほどに尽くされるのは全世界の男が羨むことであり、そして俺こそがその心尽くしを受けられる唯一の存在だ。そんなの自尊心が高まるに決まってる。この美少女が自分のためだけに存在していると思うと、さっきまで滾っていた血がドロドロになるくらいに沸騰してしまいそうだ。
歩夢のこの性格がいつ形成されたものかは分からない。俺のことが好きになったのは幼少期に俺に命を助けてもらったからだろうが、そこから俺の性癖に突き刺さる女になるために今の性格となったのか、それとも生まれつきこうなる運命だったのか。ただ幼少期に虹ヶ咲チルドレンと呼ばれる9人を集めたのは秋葉だったので、もしかしたらその時から『俺を好きになる素質』と『俺に献身的になる素質』の両方を兼ね備えていたのかもしれない。だったら俺と歩夢はこういう関係になる運命だったのだろう。
「零さん……? そんなに熱く見つめられると恥ずかしいです……」
「あぁ、悪い。尽くしてくれる女の子っていいよなって思ってさ」
「そんなの当たり前のことですよ。零さんが誰かを助けることを当たり前と言っているのと一緒です」
「俺のは本当に自分だけのためなんだけどな」
「だったら私も自己満足のためです」
歩夢は優しく微笑む。小さい頃からずっと俺の全てを叩きこまれてきたコイツなら、俺と同じ考えを抱くのも当然のことかもしれない。片や異常な支配欲、片や異様な献身欲を持っているが、俺たちの周りには同じくらい歪な恋愛観を持っている奴がたくさんいるので、これくらいの特殊性癖はもはや普通のことだ。むしろ侑のような一般常識に捉われている奴が異常者に見えてくる。
「零さんって、なんだか尽くしてあげたいオーラが出ている気がします。割とズボラ寄りの侑ちゃんがあそこまでお世話を焼くだなんて、これまでだと考えられませんでした」
「そうなのか。最近はお世話ってより小姑になってるけどなアイツ。ゴミを置きっぱなしにするなだの、身体を痛めるから昼寝する時は腕枕じゃなくてしっかりとした枕を使えだの、他にもいろいろ」
「ふふっ、それだけ零さんのことを見ているってことですよ。興味もない男性だったらそんなこと言いませんから。それに最近料理も本格的に覚え始めているので、本当に誰のためなんですかね♪」
「嬉しそうだなお前」
「侑ちゃんが楽しそうにしていると私も楽しいので♪」
しっかりしてそうで意外とどこか危なっかしいところがあるのが侑の特徴だ。テストの点数もさほど言いわけでもなく、宿題も提出期限ギリギリでやっていたり、他人の魅力的な部分を見るとトキメキすぎて暴走しかけたりと、アイツはアイツで子供っぽさがある。俺の前では結構なヤレヤレ系でツッコミ役でもありトゲもあるが、あれはツンデレの一種だと思っているので別に迷惑はしていない。結局お世話してくれる女の子はありがたい存在ってことだな。
「侑にもその重い愛を向けたりしないのか? アイツの世話も色々してるって聞いたぞ」
「もちろん侑ちゃんのことも大好きですよ、幼馴染ですから。でも女の子に向ける気持ちと男性に向ける気持ちは違います。恋する気持ちは男性、それも零さんにだけです。零さんの顔も身体も匂いも、性格も言動も性癖も何もかもが好きです。あなたがいないと耐えられない。満たされたい、ずっと。一生お側にいたい、ずっと尽くしたい。変態さんとか、愛が重いとか言われてもいいです。それで零さんの隣にいられるのなら、私にとってそれ以上の幸せはないんですから」
歩夢はゆっくりと俺に抱き着いてくる。俺はそれに応えて反射的に彼女を抱きしめ返した。
歩夢の人生も生きる理由も俺の存在によって成り立っているらしい。それはもはや献身や依存を遥かに超えたその先のような気もするが、女の子が求めてくるのであれば俺は全力で受け止めるだけだ。そして更により深く自分の色に染めたくもなってくる。ここまで惚れ込んでくれるのであればこっちからも徹底的に惚れ込んで、俺という存在を心の奥底まで刻み込んでやりたいとも思ってしまう。
歩夢は頬を朱色に染めて夢心地となっていた。俺もその表情を見て段々と彼女が愛おしくなってくる。もうお互いに相手しか見えていない、そんな感じだ。
徐々に、徐々に歩夢の顔がこちらに近づいてくる。目を瞑り、唇を少し突き出す。そして遂に俺と歩夢の唇が接触した。
「んっ……」
歩夢は声を漏らす。
ゆったりとした甘い口づけ。お互いに相手を求めながらもソフトであり、僅かに声や息が漏れながらも唇同士の接合部は緩い。それでも相手の愛を受け止め合って熱くなっており、歩夢は俺の首に腕を回し、自分の胸を俺の胸板に押し付けて唇に吸い付いている。上半身が密着している状態で、歩夢は俺に自分の『好き』を伝えてくる。キスの淫靡な音が保健室に鳴り響くたびに彼女の想いがこちらに流れ込んできて、受け止める。夢中になっているのか次第にキスと抱き着く強さが増してく歩夢だが、俺も俺で彼女の漏れ出した淫猥な息遣いで鼻や耳がくすぐられ、より一層の興奮を煽られていた。
しばらくお互いを堪能した後、唇を離す。その際も歩夢は吐息を漏らしていたのでよほど集中していたようだが、逐一その息遣いが艶っぽいため気になって仕方がない。上原歩夢という存在が容姿もカラダも何もかも男を誘うのに適してるな……。
「やっぱり気持ちいいです。零さんのキス……」
「あぁ、俺もだ……ッ!?」
「零さん……? また汗びっしょりですよ?」
「大丈夫。興奮し過ぎただけだ」
歩夢とキスしたことで、これにて当初から掲げられていた同好会12人全員とキスするミッションは達成した。
ただその影響からか、今までに感じたことのない熱が俺を襲っている。いつもの副作用だが、最後だからかその威力がとてつもない。臓器と言う臓器が焼け焦げてしまうかってくらいの熱さであり、こうして平静を保っていられるのはこれまでの段階的にこの熱量に耐えてきた経験が故だろう。いきなりこの熱量を味わったら確実に悶え苦しんでいたに違いない。それくらいの熱さだ。
秋葉が言うにはキスした女の子たちの愛が累積して熱に代わっているらしく、これを耐えることで俺の中の愛を受け止めるキャパシティが広がるらしいのだが、科学的なことは一切分からない。とりあえず目の前の彼女を心配させぬようこれまで耐えてきたのだが……。
「もう少しお側にいてもいいですか? やっぱり心配で……」
「ご自由に」
「ありがとうございます。手、握りますね」
「あぁ」
「好きです。今も、これからもずっと……」
「あぁ、俺も……」
とてつもない熱量と共に襲ってくる疲労感、そして眠気。この熱さからして本格的に体温が上がって来ているのは間違いない。
優しく微笑みかけてくれる歩夢に手を握られ、そこに彼女の想いを感じながら、俺はそっと眠りに落ちた。
今回は個人回のラストで歩夢編でした!
零君と歩夢の関係は主様とその侍女みたいな関係ですが、決して上下があるわけではなく、お互いに対等に愛し合っているという何とも不思議な関係です。でも私がこういうお世話好きの献身的な女の子キャラが大好きなので、上原歩夢という子がそのキャラにピッタリなのでこの小説ではこんなキャラになっています(笑)
あと自分で描いておきながら、今回のラストで零君死んじゃったみたいになってしまった……
次回は侑のメイン回となります。この小説特有の終盤だけちょい真面目っぽくなる展開。
零君もどうなってしまうのか……
以下、にじよん短編です。
~第8話:妹~
「お兄さんって、同好会の中で妹にするのであれば誰がいいとかありますか?」
「誰と言われたら……。お前らと俺ってそれなりに歳が離れてるから、全員妹と見ることはできるんだよな」
「確かに私たちは高校生で、お兄さんは大学4年生ですもんね……」
「だから妹にするならお前ら13人全員で」
「そういうアニメ、どこかであった気がする……」
~第9話:妹王決定戦~
「璃奈ちゃんの妹力、半端なく可愛かったですね!」
「あぁ、義妹としての素質は十分満たしてるだろうな」
「義妹って、妹に区分けを求めるタイプなんですね……」
「そりゃ実妹がいるからな。それにアイツからしてみればお前らの妹力なんてまだまだ未熟だ。素質が足りない」
「なんですか、素質って……」
「まず血が繋がっていること」
「それあの自分を除いて全員アウトっていいたいだけですよねあの人!!」