ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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女の子を自覚する日

「お兄さん。次の練習メニューを考えたんですけど、添削をお願いします」

 

 

「零さぁ~ん♪ 愛しのかすみんに勉強を指導する権利をあげちゃいます!」

 

 

「零さ~ん。彼方ちゃんの次のライブの衣装の候補、ちょっとアイデアをくれないかなぁ~?」

 

 

「零さん! 愛さん今からテニス部の助っ人に行くんだけど、少しだけでいいから練習相手になってくれない?」

 

 

「零さん、演劇の練習のお付き合いをしていただきたいのですが――――はいっ、ありがとうございます!」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「零って何でもできるのね! 凄いわ!」

「なんだよいきなり」

 

 

 いつも通りスクールアイドル同好会のソファで寝ころんでいると、ランジュが俺の顔を覗き込むようにして詰め寄って来た。

 つうか毎回思うけど、コイツ距離感が近すぎるんだよな。誰にでも激しいスキンシップを取るし、それは男の俺であっても変わらない。天真爛漫で恋愛の『れ』の字も知らない天然脳筋少女なので仕方ないか。でもこうして詰め寄られるたびに女の子のいい匂いを強制的に嗅がされる俺の気持ちにもなってくれよ。

 

 そんなことはさて置き、俺が何でもできるという至極当然のことを口走るランジュ。俺を知る者からすれば普通のことなのだが、コイツとはまだ付き合いが短い方ではないが長い方でもないのでこちらの全容を知るには至っていないのだろう。歩夢たちが俺のことを知り過ぎている説もあるが……。

 

 

「侑と一緒に練習計画を考えられるほどマネジメントができて、かすみに勉強を教えられるほど頭が良くて、彼方のライブ衣装を検討できるくらいには衣服のセンスがあって、愛と一緒にスポーツできるほどの運動神経。それにしずくとの演劇練習も見たけど、演技の才能もあるのね」

「普通だよ普通。別に努力したわけでもねぇし」

「ということは天性の才能ってことかしら? そういえば歩夢たちから聞いたんだけど、あなたの両親って海外の大学教授と女優なのよね?」

「あぁ。それがどうかしたか?」

「だったらあなたのその才能は両親からの遺伝ってことかしら?」

「かもしれねぇな」

 

 

 頭の良さは某有名大学教授の父さん譲り、演技力の高さや様々なセンスの良さは女優の母さん譲りだ。ちなみに父さんの頭の良さを強烈に遺伝したのが姉の秋葉で、母さんの女優の才を最も受け継いだのが妹の楓だ。秋葉はご存じの通りこの世ならざるモノを次々と発明しているし、楓はスクールアイドルをやっていたのはもちろん、その美貌とパフォーマンスで世界中の人間の注目を浴びるくらいだからな。そう考えると俺って才能を中途半端にしか受け継いでないような気がする……。

 

 

「なるほど、だったらまたデートをするしかないわね!」

「えっ? どういう経緯でそうなった??」

「アタシ、あなたのことをもっと知りたいの。デートをすればあなたの凄いところをたくさん見られるでしょ?」

「随分と軽々しくデートを使うんだな」

「そう? 男性と女性が一緒に出かければ、それはデートになるって聞いたわよ」

 

 

 それ言ったの俺だよ。そういやこの前ミアとハンバーガー祭に行ったときにアイツに同じことを言った気がする。まさかコイツから同じ言葉をそっくりそのまま返されるとは……。

 

 

「ねぇいいでしょう? 一緒にデートしましょ。ね?」

「分かった分かった、空いてる時間を連絡しておくから。あとその日に何をするかは言い出しっぺのお前が決めておけよ」

「ありがとう! デートプランは任せておいてちょうだい!」

 

 

 そんな悲しそうない顔で手を合わせてお願いされたら承諾するしかねぇだろうが……。ただデートが決まった瞬間に満面の笑顔になったため、相変わらず喜怒哀楽が激しい奴だ。それだけ表情豊かで見ていても飽きないと言ってもいいか。こういう様子を見ると子供っぽいのに、スクールアイドルに対する信念っつうか考え方は非常に大人びている。人は見かけによらないっていういい例だな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「って、またゲームセンターかよ……」

「仕方ないじゃない。この前みんなで行った時に楽しすぎて好きになっちゃったんだから」

 

 

 デート当日。どこへ行くのかと思ったら、以前に2年生組と出かけた際に行ったゲーセンだった。ゲーセンって男女のデートらしい人気のブティックとかカフェとか、そういうシャレオツなところに行ってから時間が余ったら遊ぶ場所かと思っていた。まあ俺は女の子と一緒にいられればどこでもいいから、コイツの行きたいところに合わせるだけだ。

 

 それにしてもコイツ、本当にどこへ行っても何をしていても楽しそうにするよな。スクールアイドル活動をしている時はもちろん、こうしてどこかへ出かけている時、飯を食う時、誰かと話している時、いつもこいつは笑顔で楽しそうだ。かすみの後輩感や愛の活発さとはまた違うベクトルのムードメーカーであり、コイツがいると周りが自然と明るくなる。人を率いる力は少々強引なところはあるものの、そういったパワフルな面がコイツの魅力なのだろう。

 

 

「ほらほら、早く行きましょう!」

 

 

 そう言ってナチュラルに手を繋いでくるランジュ。平気な顔でデートに誘ってくる度胸といい、こうしてすぐボディタッチをしてくる鈍感さといい、やっぱりコイツ男ってものがどれだけ野蛮な奴か知らねぇな? 俺だからまだいいものの、他の男にこんな無防備さを見せたら一瞬で惚れられるぞ。特に今の思春期男子ってのは性欲がお盛んだから気を付けた方がいい。なるほど、この危なっかしさに栞子もミアも苦しめられてるんだろうな……。

 

 恋人のように手を繋ぎながら色々とゲームを見て回る。どうやら俺が本当に何でもできるのかを勝負という名目で調査したいらしい。ただコイツもコイツで才能の塊であり、スクールアイドルはもちろん、やることなすことが天才的である。幼馴染の栞子に劣等感のトラウマを植え付けるくらいには天性の才能を持っているのが彼女なのだ。そんな奴がたかがゲームであっても他人を叩き潰すそうとするなんて、雑魚狩りもいいところだよな。

 

 

「まずはこのレースゲームで勝負しましょ!」

 

 

 意気揚々と初戦を提案して来るランジュ。

 ただ―――――

 

 

「負けた……。零、あなた運転上手くない!? 車の免許持ってないのよね!?」

「二輪しか持ってねぇな。まあ運転は子供の頃にアメリカで父さんに――――あっ」

「えっ、無免許?」

「いいから次行くぞ!」

「誤魔化された気もするけど……じゃあ次はこのゾンビシューティングで勝負よ!」

 

 

 隣のシューティングゲームの銃を持ち、くるくると回して銃裁きの良さをアピールするランジュ。

 だけど――――

 

 

「得点がダブルスコアで……負けた!? 零って銃の使い方も上手いのね」

「これもガキの頃に親父とアメリカの射撃場で……って、この話もやめるか」

「あなた、無免許運転に銃刀法違反って相当野蛮だったのね……」

「言っておくけど教えてもらったのは合法での範囲内だからな」

「だったら次はアレよ!」

 

 

 次はよくある太鼓を叩くリズムゲームか。しれっと自分の得意な領域にこちらを引きずり込み始めたな。これは流石に日頃から音楽と触れ合っているコイツが有利だろう。

 しかし――――

 

 

「これもアタシの負け!? 零、あなたの反射神経とリズム感覚プロ並みよ!?」

「母さんがこういうお祭り系のゲームが好きで、ガキの頃によく付き合わせられたからな……」

「じゃあ何なら苦手なのよぅ……。もうなりふり構っていられないわ、次はアレよ!」

「あれって――――ダンスゲームかよ正気か!?」

 

 

 本格的に自分の分野に土俵を移しやがった。ダンスと言えばスクールアイドルの十八番。しかもコイツのダンス技術は虹ヶ咲、いや全てのスクールアイドルの中でも群を抜いている。ただでさえ天才的なセンスを持っているのに、自分の得意分野で勝負するとかプライドねぇのかよ。それすら捨てたからなりふり構ってられないのか……。

 

 そんなフラグを立てつつ――――

 

 

「負けた……?? スクールアイドルのアタシが……!?」

「なんかまぁ……悪かったよ」

「慰めはいらない! 余計に惨めになるから!!」

 

 

 普通に得点で勝ってしまった。しかも接戦とかでもなく割と余裕に。ちなみにランジュのレベルが低いとかではなく、むしろランキングに乗るくらいの得点を見せていた。だが相手が悪かったようだ。

 ちなみに俺のこういったスキルも母さんからの遺伝だと思う。演劇にダンスといったパフォーマンスは天才的だからな母さんは。

 

 

「でもこれで分かったわ。零、あなたは凄い! 同好会のみんなもアタシにはない魅力をたくさん持っていて憧れるけど、アナタはそれ以上よ! だってここまで人に感動したのは初めてだもの!」

 

 

 すげぇ目を輝かせながらこっちに詰め寄ってきやがった。確かにコイツなら今の俺に興味津々になる理由も分かる。コイツは誰かが自分にはない長所を持っていて、その能力を発揮することに対して興味が湧くらしい。歩夢の手芸能力とか、かすみのカワイイの追及だったりとか、自分にはない相手の長所を褒めちぎるんだ。ただ自分も同じことができる場合、今日のゲーム対決みたいに対抗しようとしてくるんだけどな。

 

 

「それはありがとな。ま、ゲームの勝敗は別としてお前が楽しそうで良かったよ」

「えぇ、本気で向かってきてくれて嬉しかったわ。そこまでの実力があるのなら、手を抜いて私を勝たせて立たせることもできたと思うから」

「んなことしねぇよ。俺は何事も全力投球なんだ。女の子相手にも容赦はしねぇから」

「あなたのそういうイケイケなところ、アタシは大好きよ♪」

 

 

 おい、いきなりとびきりの笑顔を向けるな不意打ち過ぎるだろ。しかも何の裏もない『大好き』をここまでダイレクトに伝えて来るとか、やっぱ無自覚に男を勘違いさせる悪い奴だよコイツは。まあ今のコイツの言う『大好き』に恋愛的な意味は一切ないんだろうけどさ。

 

 

「もっともっとあなたのことを知りたくなってきたわ! 次はどのゲームで勝負しようかしら?」

「まだやんのかよ……。まさか自分が勝つまでやるとか無謀なことをしようとしてんじゃねぇだろうな?」

「自分への挑戦が無謀だということを自覚しているのがまた凄いわね……。ちなみにそんなつもりはないわ。さっきも言ったけど、アタシはもっとあなたのことを知りたいの」

「なんで?」

「えっ? えぇっと……ん? どうしてあなたのことをこんなにも知りたいと思ってるのかしら?」

「俺に聞くなよ……」

 

 

 悩むってことは、ただ単に俺に興味が湧いたからってことではなさそうだ。天真爛漫で破天荒な性格だから何も考えてない雑な奴だと思われがちだが、意外と自分の中での芯は通っており、今日の勝負も意味もなく仕掛けてきたわけではないのだろう。その意味を自分で理解していないのはワケわかんねぇけど……。

 

 

「次は直接あなたを感じたいわね」

「言い方がアレだな……」

「ほら、ここに肘をついて」

「はぁ?」

 

 

 ランジュは近くにあったテーブルに肘をつき、手のひらを広げて自分の身体に対して垂直に向けた。そして俺にも同じことをさせようとしてくる上に、まるで手を握れと言わんばかりに5本の指を開いたり閉じたりしている。

 

 

「まさか――――腕相撲か?」

「えぇ。これでもスクールアイドルで鍛えてるからいい勝負ができると思うけど」

「俺は普段ストレッチとか筋トレとかしないんだけど……」

「そこが狙いよ。瞬発的なチカラならあなたに勝てるかもしれないわ」

 

 

 得意顔になるランジュ。そりゃ何も鍛えていない男よりもアスリート女性の方が筋力は高い。しかもそれが腕相撲のような一瞬で決まるような力比べならなおさら鍛えてる奴の方が有利だ。力の入れ方もそれを発揮するスピードも、鍛えてる奴の方が圧倒的に早いからな。

 

 つまり、今回もまたコイツの得意分野ってこった。雑魚狩りも大概にしろよな……。

 しかしやめてくれと言われてやめてくれそうにもないため、渋々テーブルに肘をついてランジュの手を握る。

 

 

「それじゃあスリーカウントで始めるわよ」

「へいへい」

「行くわよ。スリー、ツー、ワン、ゼロ―――――ッ!?!?」

「ん?」

 

 

 今まさに決戦の火ぶたが切られようとしたその時、いきなりランジュが固まった。何かに打ちのめされたような驚愕の表情をしている。いつもポジティブ思考で前向き向上心のコイツだが、それ故に『絶望』の二文字がここまで顔と雰囲気に現れてるのは非常に珍しい、いや今まで見たことがなかった。

 

 

「おい、どうした?」

「えっ、い、いや、ゴ、ゴメンなさい!」

「なんで謝るんだよ。つうかどうして手を放す?」

 

 

 何故だか知らないけど、ちょっと怯えてる? 逃げるように手を俺の手から離しやがった。声もたどたどしくなっている。

 そして深呼吸をして考え事をしたかと思えば、今度は何かを悟ったような顔をしている。さっきから表情がコロコロと変わり過ぎて、どんな心境の変化があったのか分かんねぇな……。

 

 

「なるほどね。やっぱりあなたは凄いわ」

「さっきからそのセリフばっかだな。賞賛し過ぎると逆に効果が薄くなるぞ」

「そうね。でも気づいちゃったの。あなたは男の子、私は女の子なんだって。さっきあなたと手を組んでグッと力を入れられた時にね。あぁ、これは絶対に勝てないって」

 

 

 些細なことだけど男女の力の差を身に染みて理解したってことか。確かにコイツはボディタッチは多いものの、こうして俺から力を入れて組み伏せようとしたのはこれが初めてだ。だからその力量差を悟ったのだろう。ランジュはパワフル系と称した通り、そんじゃそこらの軟弱男子には負けないほど鍛えている。いや、多少鍛えていたとしてもコイツには敵わないだろう。だからこそ普段鍛えていない俺に負けないと信じていたんだと思う。その自信がぽっきりと折られたから驚いたって感じかな。

 

 ただ今のコイツは俺との差に絶望しているというか、物凄く()()()()()をしている。いつもは元気ハツラツ少女でテンションも高く、他の女の子たちと比べて存在感が大きく見える彼女。だが今はこじんまりとしたか弱い乙女のオーラを醸し出している。抱きしめたらすぐに折れてしまいそうなくらいに弱弱しく見え、その可憐さに愛おしく感じてしまうくらいだ。言うなればそう、男を知った、そういう雰囲気だ。

 

 

「思い出した。この感情は初めてじゃないって思ってたけど、一度だけあなたに手をギュッと掴まれたことがあったわね」

「んなことあったっけ」

「あったわよ。アタシが帰国するために搭乗口へ行こうとした時に引き留めてくれたじゃない。それはもう私の全身全霊の力を込めても振りほどけないくらいの力でね。あの時は今まで味わったことのない心の高鳴りを感じたけど、そういうことだったのね」

 

 

 そういやコイツの帰国騒動なんてあったなぁ。それがコイツが同好会に加入するきっかけになった事件だった。

 

 コイツが日本でスクールアイドルをやりに来たのは自分のパフォーマンスを披露するため。ただ誰かとグループを作ろうとは思わず、ソロアイドルを貫いていた。それは孤高がカッコいいとか中二病な理由ではなく、自分の魅力ってのは仲間やファンから与えられるものではなく、自分の力で発揮するものと信念を抱いていたからだ。そこに間違いはないし、俺も否定はしなかった。

 

 だけど、実際には強がっていたことが判明する。本当は仲間が欲しかったんだ。

 理由は昔からコイツは周りの子と仲良くなろうとしても何故かみんなが段々と離れて行き、友達になってくれる人がいなかったから。何が悪いか何故避けられるか、他人の気持ちを理解できないのがコイツの欠点だ。それはコイツが何でもできる天才的なスキルを持っているがゆえに、できない奴に対して無意識な溝を作っていたからだろう。そしてそんな溝ができていることも知らず、更には自分と異なる考えを持っている奴を見るとやたら突っかかる攻撃的な性格も相まって、お互いを理解し合える仲間というものができなかった。

 

 ただ唯一、人の適性を深く意識する栞子だけは友達になってくれた。しかし、結局コイツの方はただ一人の友達である栞子がスクールアイドルになりたい願望を持っていたことすら知らなかった。だからソロアイドルになった。ソロアイドルなら相手の気持ちが分からなくても相手を認めさせることは出来る筈だった。それなのに同好会はソロアイドルでも他者と信頼し合う絆があり、ユニットを組んでそれ以上のチカラを発揮できる。それがスクールアイドルというものなら自分には出来ない。と結論付けてしまっていた。

 

 自分の中で答えが出たのなら日本にいる意味はなく、栞子に別れだけ告げて帰国しようとしていた。

 そこでいつの間にか手を握っちまってたんだよな。侑たちが来るまで逃がさないようにするために。言ってしまえば俺がやったことってそれだけなんだけども。

 

 

「思い返せばあなたはアタシが同好会に入っていない時から気をかけてくれていたわよね。みんなにひどいことを言ったりもしてたこのアタシを……」

「俺は別にどっちの味方ってわけでもねぇからな。俺が守りたいのは女の子の笑顔だけなんだから」

「その範囲にアタシも入っているのかしら?」

「当たり前だろ。もし逃げようと思っても逃げられねぇよ。ま、俺が捕まえておかなくても、女の子側から逃げようなんて思わなくなるだろうけどな」

「離れるつもりなんてないわ。あなたの隣って心地いいもの。ここまでアタシのことを理解してくれる人はこれまでいなかったし、男性は特に私から離れようとしていたから嬉しいの。このアタシを圧倒的なチカラで捕まえてくれて、包み込んでくれる。あなたのこと……本当に好きよ」

 

 

 またしても女の子の顔になるランジュ。

 結局のところコイツは誰かを理解したくて、誰かから自分を理解して欲しいと願っていた。つまり一種の承認欲求モンスターだったってことだ。それを俺という一度目を付けられたら抵抗できないような存在に見つかってしまい、そのせいで強制的に理解をさせられた。同じ天才肌同士、歩夢たちとは違った惹かれ方をお互いにしたんだと思う。傍から見たら変な愛の感じ方だと思うかもしれないけど、彼女にとってはこれが相手を理解するのに最適な方法だったんだ。

 

 それでいいんじゃないか? 心は人それぞれで、心が揺れ動く動機も心の支えもみんな違うんだからさ。コイツは自分以上のチカラを持つ人に支えられるのが好きってことだ。コイツを真の意味で理解するにはコイツと同じ天才的才能を持ってる奴しかできねぇことだろうしな。

 

 

「よしっ、これからもあなたに挑ませてもらうわ! あなたのことをもっともっと理解したいもの!」

「負けると分かっていて挑むとかマゾか? お前がいいならそれでいいけどさ」

 

 

 これがコイツの愛情表現なのだろう。歩夢たちにも対抗心を抱いたりしてるしな。俺も他の女の子とは違う押せ押せ雰囲気の女の子は新鮮であり一緒にいて楽しいから、また勝負を吹っ掛けられても断る気は更々ない。それにまた完膚なきまでに叩きのめしてコイツの女の子の顔を見たいしな。いつも自信満々な女の子がメスになった表情、意外と好きなんだよ。こういうことを考えてるからサディストって言われるんだろうか……。

 

 ただ、お互いの心の距離はこれでも確実に縮まっているとは思う。そりゃこれだけ相手のことを理解できてりゃそうなるか。

 

 

「つうか腹減ったから飯食いに行かねぇか?」

「待って、ペットボトルだけごみ箱に捨てて来るから」

 

 

 ランジュは休憩スペースの奥にあるごみ箱へ向かう。

 そして俺の聞こえていないところで手を自分の胸に当てる。

 

 

「ドキドキする。初めて分かった。これが恋、なのね……」

 

 

 心の距離は、俺の想像以上に縮まっているようだった。

 




 今回はランジュ回でした!
 恋そのものを知らない女の子が女の子を自覚した瞬間、というシチュエーションが好きで、ランジュのキャラを見たときにそのシチュにピッタリだとずっと思っていました! なので小説で登場させることがあったら絶対にこのシチュで描こうとしていたので、自分の中では結構待望な展開だったりします(笑)



 そういえば先日にじよんのアニメも始まり、早速1話目を視聴しました。
 推しポイントはEDで侑が各キャラと交流するシーンがあるのですが、そこの侑がやたら運動神経が悪かったのが可愛かったことですね(笑) 歩夢とのランニングで疲労が見え、愛とチアリーダーをやっている時は足が上がっておらず、ミアからのボールもキャッチできないなど、皆さんも今度注意して見てみてください!



 小説に評価をくださった方、ありがとうございました! 実は久しぶりにランキングに載っていたみたいです!



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