ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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ハーレムデート大作戦!

「デートっていうのを体験してみたいの!」

「はぁ?」

 

 

 スクールアイドル同好会の部室。そこでいつも通りソファに寝転がっていると、ランジュが枕元に詰め寄ってきて意味不明な提案をしてきた。いや意味は分かっているんだけど、あまりにも突拍子と脈絡がなさ過ぎて話が見えないってことだ。まあコイツは思い付きでトンデモないことを言い出すことも多いので、この期に及んで驚くことではないけどな。それに穂乃果や千歌が同じような感じだからもう慣れた。

 

 ちなみに近くにいた侑は飲んでいた水を吐き出すくらいには驚いているようだ。

 

 

「ちょっ、ランジュちゃんデートの意味分かってる!?」

「えっ、男性と女性が一緒にお出かけすることでしょ?」

「まぁそうなんだけど、もっとその、深い意味があるって言うか……」

「ん? ともかく、ランジュは零とデートがしたいの! 次の土曜日でいいかしら?」

「おい何故もう行く流れになってんだ……」

「だって零とお出かけしたことないんだもの。男女の仲を深めるのがデートなんだったら、これはもう行くしかないでしょ? 零ともっともっと仲良くなりたいもの!」

 

 

 自分の都合のいい方向に話を無理矢理引っ張る能力も遺憾なく発揮されている。その能力は決断力の高さという意味ではカリスマ性があっていいかもしれないが、日常会話では逐一ツッコミを入れざるを得ないのが面倒だからデメリット。栞子とミアもコイツのこの性格にはかなり苦労している。だが咎めてきた侑のことを持ち前の猪突猛進さで跳ね除け、俺の意見すら無視するその自己肯定感の高さ、呆れるを通り越して感心しちまうよ。

 

 そんな豪快な面があるかと思いきや、年頃の男女が一緒にデートをする意味について全く知らない天然さも兼ね備えている。そのギャップが可愛いところだから、さっきのデメリットがあったとしても憎みづらいんだよな……。

 

 

「なになに? 零さんとランジュがデートするの!? 愛さんも混ぜてよ!」 

「混ぜてよって、愛ちゃんもデートの意味を間違えてるよ……」

「えっ? だって零さんとのデートって女の子複数人がデフォでしょ? それに零さんって、たくさんの女の子に囲まれて優越感に浸ってないと欲求不満になっちゃうもんね♪」

「どんな禁断症状だよ危なすぎるだろ俺……」

「お出かけはたくさんいた方が楽しいものね。いいわ、愛も一緒に行きましょう!」

「えっ、ランジュちゃんはそれでいいの!?」

「いいのって、どうせならみんな一緒で楽しい方がいいじゃない」

「自分がいいのならそれでいいけどさぁ……」

 

 

 俺のデートは1vs複数になるのも当然だからこれも今更驚くことではない。ただ俺の世界に染まり切っていない侑はデートを恋人同士でやるものと決めつけているのか、自然な流れで二股デートになることに抵抗感を抱いている。そしてランジュは恐らく恋人同士とかそんなことは考えてなくて、ただ単に俺やみんなと遊べればそれでいいと思っているのだろう。まあデートなんて恋人同士であるべきか、それとも男女で一緒にお出かけするだけだったらどうなのか等々、定義なんて曖昧だからどっちでもいい。

 

 

「どうせだったらもっと誘ってみようよ! おーいっ、歩夢ぅ~せっつぅ~!」

「歩夢たちも誘うの!?」

 

 

 離れたところで次のライブの段取りを決めていた歩夢とせつ菜だったが、愛の呼びかけによりこちらに合流した。これだけ人数が膨れ上がるともう放課後にみんなでスイーツを食いに行く感覚とそんな変わらねぇだろ。甘酸っぱい恋のデート感はもう一切なくなったな、最初から分かってたけど。

 

 

「ランジュが零さんとデートしたいらしいから、歩夢とせっつーも来るでしょ? 来週の土曜日!」

「行く!」

「行きます!!」

「そ、即答……」

「だって零さんとデートだなんて、断る方がおかしいよ」

「零さんと一緒にいられることが私にとって一番大好きなことですから、行かない選択肢なんて最初からありません」

「ここだけ切り取ってみると凄く純情そうな話なのに、実際は女の子をたくさん侍らせるだけだからなぁ……」

 

 

 歩夢とせつ菜はどうして自分たちが呼ばれたのか最初は不思議そうにしていたが、愛の誘い文句を聞いた瞬間に目の色が変わった。まるで欲しいおもちゃを買ってもらった純粋な子供の目のように、そして所々ちょっと欲望に満ちた目も……。2人は見た目は幼気だけど俺への欲望の深さは底知れない。だからそんな2人をデートに誘おうものならこうなるわけだ。

 

 

「決まりね。じゃあ次の休日にこの6人で一緒にデートをしましょう!」

「んん?? ろ、6人?? お兄さん、ランジュちゃん、愛ちゃん、せつ菜ちゃん、歩夢……ともう1人は?」

「なに言ってるの、アナタでしょう。侑」

「え゛ぇっ!? どうして頭数に入ってるの!?」

「私は侑とも交流を深めたいの。ダメ……?」

「そ、そんな目で見られると……わ、分かった! 行くから!!」

「ありがとう、侑!」

「な゛っ、いきなり抱き着かないで!!」

 

 

 チョロいな侑の奴。ランジュは豪快さ、天然さの他に純粋さも持ち合わせている。その純粋さを武器に使われたら流石に断れないようで、あっさりと敗北を認めてデートに同行することになった。そしてありがとうのハグでまたしてもその純粋さを、今度は全身に受けて恥ずかしがっている。俺も侑に願い事をする時は同じことをやってみようかと思ったが、心が汚れに汚れている俺では意味がなかったな。それに自分が純粋さの皮を被って媚びてる様子なんて想像ですら気持ち悪い。うん、変な妄想はやめよう。

 

 そんなこんなで2年生組と一緒にデートをすることになった。

 つうか今気づいたけど俺、行くなんて一切言ってねぇんだよな……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 デート当日。俺たちはショッピングモールに集合していた。

 ここは飲食店、ブティック、アクセサリーなどの小物店、カラオケ、ゲームセンター等々、女子高生であれば1日暇潰しできるくらいの施設が揃っている。女子高生が5人もいるこの集団であればこれだけ回るところがあるんだから話題は尽きないだろう。俺が楽しめるかと言われたら、まあ女の子たちの楽しんでいる姿を見られればそれでいいかな。いつもそのスタンスだし。

 

 

「結構人いるな。たくさん女の子を引き連れていても目立たずに済みそうだ」

「お兄さんも気にするんですね、そういうこと。てっきり優越感に浸って堂々とするものかと」

「流石に5人は多すぎる……」

 

 

 侑の言う通り確かに優越感はある。だけど人前で堂々とこの楽園を晒すような真似はしたくない。俺のモノだから俺だけが楽しめればいいんだ。だからこそ閉鎖空間、学校内や家でデートする方が俺には合っていたりする。もちろん女の子が外に連れ出してくれることは悪く思っておらず、むしろ普段自分では行かないところに連れて行ってくれるからいい刺激になるからありがたく思っている。

 

 そんな中、他の4人の会話が聞こえてきた。

 

 

「何をするのか聞いていないのですが、どこへ行くのかは決まっているのでしょうか?」

「もち! 最初はカラオケに行くよ!」

「カラオケって、確かみんなで歌を歌うところよね? だったらいつもやってるじゃない」

「ライブの歌の練習とはちょっと違うかな。普段歌わないような曲をみんなで歌って盛り上がれるから。練習していない曲でも即興で歌ったり、ペアで歌ったりもして楽しいよ」

「なるほど、お祭り感があっていいわね!」

「それにそれに、零さんの歌が聞けるのはここだけだから! 零さん歌上手いから、愛さんたちいつも痺れまくって興奮しまくりだよ!」

 

 

 4人の目が一斉にこちらを向く。物凄い期待の籠った熱い目線は今にも俺を焼き殺しそうだ。

 つうか愛の奴、余計なこと言いやがって……。そもそも俺の歌が上手いから興奮しているのではなく、俺の歌っている姿に興奮しているんだろうと言いたくなってくる。歩夢とかせつ菜とかよく俺の姿にうっとりして、歌い終わっても硬直したままのことが多いからな……。

 

 しかもだ、大体は俺が枯れ果てるまで歌わされる。もはやカラオケっつうより俺の歌っている姿を見たいだけの会場になるからなコイツらとのカラオケデート。できれば避けたいが、もう話の流れを変えることもできないので諦めるしかねぇか……。

 

 

「じゃあ早速カラオケにレッツゴー!」

「おい愛、勝手に腕を絡めるな」

「いいじゃんいいじゃんデートなんだし! ほら、反対側がまだ空いてるよ?」

「じゃあランジュもデートの気分を味わってみようかしら! えいっ!」

「うおっ、デカい……」

「お兄さん……」

「いやなんだその目は仕方ないだろ、この状況なんだから……」

 

 

 侑にジト目で睨まれるが、巨乳女子高生が腕に絡みついてきたら反応せざるを得ないだろ、その胸に。言ってしまえば愛もランジュも女子高生としては胸の大きさが規格外で、更にスタイルの良さも相まって出ているところは出ている、引っ込んでいるところは引っ込んでいる理想のスタイルだ。そのせいで胸が一際強調され、こうして腕に抱き着かれるとその感触が良く伝わってくる。愛は狙ってやっているのだろうが、ランジュは天然なので特に気にせずこの行為をやっているのが恐ろしいところだ。

 

 

「むぅ、後から変わってね愛ちゃん」

「そうですよ。私たちだって零さんとデートしている恋人なのですから」

「はいはい、もちろんもちろん!」

「恋人なのかよ重いな……」

 

 

 しかも俺は遊園地のマスコットキャラクターか何かか? 隣に並んで写真を撮る待ちされている着ぐるみみたいになってるぞ……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「まさか……まさかの満室!!」

「あはは、仕方ないよ休日だもん。人が多いのは当然だから……」

「ランジュも零とデュエットしたかったから残念だわ……」

「そりゃドンマイ」

「なんでちょっと嬉しそうなんですかお兄さん……」

「いやそんなことねぇよ……」

 

 

 俺とカラオケしたがっていたランジュたちには悪いが、デート始まって早々喉を枯れ果てさせずに済んだのは僥倖だ。俺は自分で歌うよりも女の子が歌っている姿を見る方が好きで、ただコイツらはその逆で俺の歌う姿が好き。そうなれば多数決でどちらが負けるのかは明白であり、その負け確定の未来を回避できたのは相当大きい。下手をしたら喉を潰しすぎてここでデート終了の可能性まであったからな……。

 

 

「皆さん。それでしたらそこのゲームセンターに行きませんか? 今だと人が少ないみたいですから、ゆっくり回れるかと」

「ゲームセンター? そういえば行ったことないわ」

「ランジュちゃんは初めてなことばかりだね。だったらちょうどいいからここにしようよ。侑ちゃんは?」

「えっ、私はみんなが行きたいところでいいよ。お兄さんとみんながハメを外しすぎないようについてきただけだからね」

「どうして俺まで騒ぐ前提なんだ……」

「よ~しっ! じゃあ気を取り直してゲーセンにレッツゴー!」

 

 

 ゲームセンターか。今だと自宅でできる趣味や娯楽の多様化で外出する必要もなくそのせいで閉店ラッシュになるほどだが、デートスポットしてはうってつけの場所だろう。しかもゲーセン初見のランジュまでいるし、何よりこれだけたくさんの女の子がいれば否が応でも盛り上がる。

 

 ちなみに愛とランジュには腕に絡みつかれたままだ。もう胸がクッションになっていて、歩いてるだけでその柔軟な感触を味わいリラックスできる謎の現象に苛まれている。女性耐性のない男だったらここで性欲が枯れ果てデートどころじゃないだろうな……。

 

 そんなわけでゲームセンターにやってきた俺たち。相変わらず音楽が大音量で響いているが、その騒がしさが如何にもゲーセンに来たって感じがする。初めて来たランジュは予想通り目を輝かせており、まるで遊園地に来た子供のようにあちこちのゲームを見回っていた。

 

 

「これはレースゲーム? まさか免許がなくても車の運転を体験できるの!? そしてこれは……シューティングゲーム? 実際に銃を扱えるのカッコいいわね! それにこれはダンスゲーム? スコアランキングがあるけど、ランジュだったら余裕で1位になれるんだから! そしてそして――――」

「ランジュちゃん、プレイもしていないのに既に楽しそうだね……」

「あれだけ楽しそうであればここを提案した甲斐がありました。でも確かに久しぶりに来るとどれも楽しそうで目移りしてしまいますね」

 

 

 現代の若者であればサブカルチャー系を少なからず触れたことは多いだろうから、こうしてゲームが立ち並んでいる様を見るとテンションが上がってしまうのだろう。俺はあまり騒がしいのは好きではないが、音楽を派手に鳴らして画面にゲームのデモを流されると少しワクワクしてしまう。それがゲーセンの魅力なのかもしれない。

 

 

「あっ、このクマのぬいぐるみ可愛い~♪」

「どうしたのランジュ? あっ、UFOキャッチャーか」

「UFOキャッチャー?」

「上にアームの付いたUFOがいるでしょ。それをこの矢印ボタンで操作して、ここに置いてあるぬいぐるみを取るんだよ」

「へぇ~面白そうね。じゃあこれをやってみるわ!」

 

 

 ランジュのゲーセン初プレイのゲームはUFOキャッチャーだ。

 ただこのゲーム、簡単そうに見えてそう甘くはない。基本的にアームが弱いのでコツを覚えないと永遠と沼にハマり続けることになる。悪質な場合は店側で景品を取れなくなる設定をしているとかどうとか。

 そしてその洗礼をランジュも受けたようで、5回プレイしてもぬいぐるみを僅かに動かすだけで終わってしまった。

 

 

「う~ん、上手く行かないわね……」

「天才肌を持つランジュちゃんでもダメなんて、結構難しいんだね……」

「零さん、ランジュちゃんのために取ってあげてください」

「どうした歩夢いきなり……」

「零さんなら絶対に取れます! だって零さんですから!」

「俺を持ち上げたいだけじゃねぇのかお前……。理由にも根拠にもなってねぇぞ」

「お願い零! もう零だけが頼りなの!!」

「ったく……。取れなくても文句言うなよ」

 

 

 やったことないゲームの一発クリアを賭け、5人の女の子から期待の眼差しを受けるこのプレッシャー。さっきも言ったけどこのゲームはコツが必要で、もちろんゲーセンに来ない俺はそんなものを一切持ち合わせていない。知識があるとすればさっきのランジュの5回のプレイでアームの動きを確認できたくらいだ。ただそんな付け焼刃の知識でぬいぐるみが取れるはずが――――

 

 

「取れた……??」

「どうしてお兄さんが驚いているんですか。ていうか上手すぎですよ!」

「まさかワンプレーで取れるなんて、これこそ愛さんたちの零さんだよ!」

「アームの動きからボタン入力の遅延まで綿密に考慮されたプレイ、流石です零さん!」

「凄いわ零! いつも凄いけど今日はもっと凄いわ!」

「うん、やっぱり私の言った通りだったね♪」

 

 

 歩夢の得意気な笑顔は置いておくとして、まさか取れるとは思ってなかった。せつ菜の言う通り計算は多少していたが、まさか付け焼刃の知識で取れるとは……。

 

 

「ほら、これが欲しかったんだろ。クマのぬいぐるみ」

「えっ、いいの? 零が取ったのに?」

「俺には必要ない。その代わり、これは貸しってことにしてくれ」

「謝謝! 大事にするわね!」

 

 

 ランジュはぬいぐるみを抱きしめながら屈託のない笑顔を向ける。その表情に柄にもなくドキッとしてしまいそうになった。そうだよ、俺は女の子のこの笑顔を見るために生きてるんだ。ただここまで何にも染まっていない純情で真っ白な笑顔を見たのは久しぶりで少し心が高鳴ってしまった。最近は歩夢たちと一緒にいることが多いが、コイツらは良くも悪くも俺への欲望で染まってるからここまで真っ白な笑顔を見られるのは珍しいんだ。もちろん歩夢たちの笑顔も好きだぞ?

 

 そしてまたゲーセン内を見て回っていると、ランジュが次なるゲームに興味を示した。とは言ってもプリクラなのでゲームではないのだが、どうやら大人数で写真を撮れるところに惹かれたらしい。

 プリクラももはや今では古代のお遊びみたいになっており、写真を撮るのも加工するのも手持ちのスマホ1つで簡単にできる時代だ。そのため今やプリクラに需要と言った需要はないのだが、こういうのは雰囲気だろう。ゲーセンに来てみんなで盛り上がってプリクラを撮る。まあお祭りの屋台でかき氷なり焼きそばなりを買うのと同じだ。原価を気にせず盛り上がってる雰囲気で食う飯が美味いんだよな。

 

 

「というわけでみんなでプリクラを撮るよ! ほら入った入った!」

「ちょっ、押すなって! つうか流石に6人は多いだろ」

「確かにこれだけの人数だとかなり狭いですね。密着し合わないと画面に収まりきらないかも……」

「だったらもっと密着すればいいじゃない!」

「ちょっと待って! 今まで愛ちゃんとランジュちゃんが零さんに抱き着いてたから、今度は私とせつ菜ちゃんの番だよ!」

「そうですっ! 零さん、お隣失礼します」

「そういう約束だったもんね。だとしたら愛さんとランジュは零さんの後ろから抱き着いちゃお!」

「分かったわ!」

「お、おいっ!」

 

 

 歩夢とせつ菜が両側から、愛とランジュがそれぞれ後ろから俺に密着する。まさに女の子のおしくらまんじゅうで一切の身動きが取れない。でもそのおかげでプリクラの撮影範囲になんとか収まりそうになっているで結果オーライか……?

 

 プリクラの機内ブースは狭く、これだけ女の子がいたら女の子特有の甘い香りがブース内を支配してしまう。しかも2年生組は一般の高校2年生と比べて身体的に成長している奴らばかりなので、こうして密着しているだけで女の子のカラダのありとあらゆる部分を感じられる。頬、二の腕、胸、太もも、ふくらはぎetc……女の子の柔らかい部分のオンパレード。いくら女の子慣れしている俺でも、ここまでたくさんの女の子のデリケートな部分に触れていると平静を保つだけで精一杯だ。

 

 

「ほら、侑ちゃんも入って!」

「い、いや私はいいよ、今日はただの付き添いだし。みんなで撮って」

「そんな水臭いことを言わずに! 侑さんこっちです!」

「ちょっとせつ菜ちゃん!? って、お兄さん!?」

「悪い勢いで抱きしめて――――!?」

「はい撮るよーっ!」

「愛ちゃんちょっと待って!!」

 

 

 怒涛の出来事だった。まずブース内の人数がいっぱいでもう入りきらないためか、それとも恥ずかしくて俺たちに混ざらなかったのかは分からないが、侑だけこの場を離脱しようとした。だが歩夢とせつ菜は彼女を逃がさずに腕を掴んで俺たちのもとへ引き寄せ、こちらに勢いで突っ込んでくる彼女を俺が抱きしめてしまった。生憎と背中から突っ込んで来たので正面からのハグにはならなかったものの、俺たちが慌てている隙に後ろから抱き着いている愛がスマホから遠隔で機体を操作し、この状況を撮影してしまった。

 

 つまり、さっきまでは俺の前は空いていたが、侑を抱きしめてしまったことで俺の周りには四方八方から女の子に囲まれている状況となった。侑の耳が真っ赤になっているのを後ろからでも確認できる。それに腕が胸に当たっていたような気もするし……。怒られそうだから黙っておくけども。

 

 

「撮った写真を色々加工するから、みんなは外で待ってて。ここ暑いからね」

 

 

 密室であれだけ人数が密着し、更に騒いでいたとなればそりゃ暑くもなる。写真の加工は愛に任せて俺たちは機体の外で待機することにした。

 そしてしばらくして、愛が機体から出てきて印刷されたプリクラを俺たちに渡す。何故かにっこにこの笑顔で――――

 

 

「え゛っ!? あ、愛ちゃんこれ……!!」

「やりやがったなお前……」

 

 

 俺と侑の目が丸くなる。その写真にはいくつか文字列が追加されており、そこには『JKハーレムデート♡』『零さんの恋人大集合♡』『これがスクールアイドルハーレム!』の文字が……。

 つうかこれ誰にも見せられねぇだろ!! なんてこと書いてんだコイツ……!!

 

 

「なにこれ!? ハ、ハーレムって……!! しかも私はスクールアイドルでもなければお兄さんの恋人でもないから!!」

「まあまあこういうのは女子会のノリだから♪」

「悪ノリがすぎるよ!! みんなもそう思うよね!?」

 

 

 動揺している侑は歩夢たちを味方に引き入れようとする。

 だが――――

 

 

「零さんと一緒にプリクラが撮れるなんて、また夢が1つ叶っちゃったよ♪」

「みんなで零さんと一緒にいられるのを、こうして記録として残せるのは嬉しいことですね! 大切にします!」

「書いてある文字の意味はよく分からないけど、ランジュは楽しいから無問題ラ!」

 

「み、みんな!? えっ、おかしいのは私の方なの!? お兄さん!!」

「諦めろ。これが同調圧力ってやつだ」

 

 

 残念ながら侑の味方は誰1人としていなかったようだ。そりゃ歩夢とせつ菜は愛と同じ思考回路だろうし、ランジュの純粋さを考えるとこの状況を変に思うのはコイツしかいないだろう。

 ちなみに俺は動揺していないのかと聞かれたら、それなりにヤバいとは思っている。別に女の子に囲まれているのはいつものことだが、この威力の高さは未だかつて見たことがない。このプリクラ、あまり人には見られないようにしよう。特に妹の楓には……。

 

 

「零、デートって楽しいわね! これからも楽しみだわ!」

「これがデートと呼べるかって言われると……いや、お前が楽しいならそれでいいよ」

 

 

 デートを提案した当の本人が楽しめているのならそれに越したことはない。その代わり侑の憂鬱が溜まっていきそうだけど……。

 ちなみにまだデートは始まったばかり。結局ランジュたちは最後まで全力で楽しんでおり、監視役の侑がげっそりしていたのは言うまでもない。

 




 今回は2年生編でした!
 2年生って1年生や3年生と比べるとあまり統一感がないと言うか、学年であまり絡んでいるところを見たことがないので、今回の話を執筆している時は結構新鮮でした。ただ2年生には侑もいるのでキャラが多く、誰が喋っているのか分からなくなって読者様に伝わっているのかどうか怖いところ。もし分かりづらければ教えてください!

 そして前回も今回もガッツリとハーレムを描けてとても楽しく執筆できています! Liella編のゆったりとした恋模様も好きなのですが、本職が虹ヶ咲編のような雰囲気を描くことなのでついつい全力を出してしまいます(笑) 次回もこんな感じの話を予定しています。



 次回のお話ですが、1年生、2年生と来たら……?



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