ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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愛しの先生大追跡!

「ライブ会場に使えそうなところ、大体見て回ったね」

「はいっ! どれもこれも素敵な会場ばかりで、可可迷ってしまいマス!」

「だったらもうお昼にしない? ずっと歩き回ってたからそろそろ休憩したいわ」

「そうですね。午後は衣装合わせがあるので、早めに昼食にしましょう」

 

 

 澁谷かのんです。今日はLiellaのみんなと一緒にお出かけをしています。と言ってもショッピングやスイーツ巡りといったザ・女子高生みたいな目的ではなく、ただ単に次のライブに向けての会場選びをしているだけ。それでも休日に5人で一緒にお出かけするなんて珍しいから、それだけでも楽しくなっちゃいます。

 

 時間は午後に差し掛かった頃。すみれちゃんの言ったとおり、今日は午前からずっとあちこち歩き回って会場候補を探してたから私ももうヘトヘト。ただちーちゃんや可可ちゃんはとても元気そうで、まだまだ体力は有り余っている感じだ。可可ちゃんってこの中の誰よりも体力がないのにまだあれだけの活力を残してるなんて、やっぱりスクールアイドルが大好きなんだね。好きなものだから疲れ知らずで楽しめる。うん、可可ちゃんらしいよ。

 

 そんな感じで昼食を取るお店を探しながら街中を練り歩く私たち。だけどお昼もいい時間だからかどこもお客さんでいっぱいで、中々すぐ入れそうなお店はない。これはもうお腹を満たすのはもう少し先になりそう……。

 

 

「もうっ、どこもかもまともに入れる店がないじゃない!!」

「仕方ないですよ。休日のお昼の飲食店街というだけで混雑しますから……」

「この時間は混んでるから、先に衣装合わせを済ませてお昼のピークを過ぎるのを待った方がいいかもね」

「えぇ~私もお腹ペコペコなんだけど!? ねぇかのんはどうなのよ?」

「私!? 私は別にどっちでも――――ん? 可可ちゃんどうしたの? さっきから遠くをぼぉ~っと見つめてるけど」

 

 

 どの飲食店もいっぱいで入れず苛立つすみれちゃんを他所に、口を小さく開けたままぽか~んと別のところを眺める可可ちゃん。可可ちゃんのことだからワガママを言うすみれちゃんに対して悪態をつくものとばかり思ってたけど、どうやらそんなことも忘れ何かに没頭しているみたいだ。

 

 

「あそこにいるのって先生……でショウか?」

「「「「先生?」」」」

 

 

 可可ちゃんが指を差した方向に他のみんなが目を向ける。

 確かに先生っぽい男性が見える。少し遠いから確実に視認はできないけど、先生は男性でも特に容姿レベルが高いので離れていても私たちの目に留まるくらいのオーラがあった。でも先生は騒がしい場所はそれほど好きではないと聞いているので、人の往来が激しいお昼真っ盛りの飲食店街にいるとはあまり思えない。

 

 あれが先生なのか真実を確かめるためにも、私たちは特に何も相談していないのに歩き始めていた。私もそうだから人のことは言えないけど、やっぱり先生のことが気になっちゃうんだねみんな……。

 

 

「あっ、やっぱりあれは先生だったみたいデス!」

「だったらさ、一緒にお昼できないか誘ってみようよ! もしかしたら奢ってくれるかもしれないよ?」

「ちーちゃん……」

「冗談だって♪」

「でもご迷惑ではないでしょうか。どなたかと一緒に来ているかもしれませんし」

「アイツに彼女なんていないんだし、それはないんじゃない? いい歳の男が寂しくランチするくらいなら、私たちがアイツの華になってあげようじゃない」

「すみれちゃんも大概ヒドい……」

「じゃあ声をかけてみまショウ! お~い、せんせ――――――ん?」

 

 

 可可ちゃんは呼び止めるのを途中でやめてしまった。それもそのはず、先生のもとに誰かが駆け寄って来たからだ。そしてその駆け寄って来た人は――――

 

 

「「「「「女の子!?!?」」」」」

 

 

 私たちに衝撃が走る。クレープを手にした女の子が先生と仲睦まじくしているからだ。お互いに同じクレープを食べており、まるでデートみたいなお熱いシチュエーション。だからこそ私たちは雷に打たれたようなショックを受けていた。

 

 それもそのはず、先生は恋人もその候補すらもいないと言っていたからだ。その公言のせいで結ヶ丘の学校中から独り身で寂しい男性のレッテルを張られていた。だけどそれは汚名ではない。なぜなら人も良くカッコいい男性を女の子たちが放っておくはずがなく、独り身だからこそ狙っている子たちもたくさんいる。そのせいで先生は学校内では密かにモテ男となっており、生徒への面倒見の良さや分かりやすい授業など頼りになる一面も相まって人気者なんだ。

 

 だからこそ、結ヶ丘の生徒ではない女の子と仲良くしている様子に衝撃を走らざるを得なかった。あの女性の匂いすら付いていない純白の先生にまさか親しい女の子がいたなんて……。

 って言ってしまうとヤンデレっぽいけど、単純に聞いていた事実と違っていたから驚いてるだけだからね。少なくとも私はそうだけどみんなは……。

 

 ちなみに先生の隣にいる子は私たちと同じ高校生くらいの女の子。私たちと同じ学年か、上か下か、ぱっと見では判断できない。髪をツインテールにしており、毛先が緑色で容姿レベルも非常に高く可愛い。それに会話は聞こえないけど、遠目から見ている限りはとても仲が良さそうで友達以上の関係に見えた。

 

 

「そ、そんな、先生に彼女がいたなんて……ッ!!」

「お、落ち着いてください! まだそうと決まったわけではないと思います!」

「そ、そうデスそうデス! ただの友達付き合いという可能性も大いにありマス!」

 

 

 ちーちゃんも恋ちゃんも可可ちゃんも、みんな焦っているのが目に見えて分かる。もう先生のことを力強い眼力で凝視してるし、そんな圧力で見つめられたら身体に穴が開いちゃいそうだよ……。

 対してすみれちゃんは騒いでいないっぽい。まあ恋愛系に関しては強そうだし、流石はショウビジネスの世界で生きていただけのことはあるね。

 

 

「みんな動揺し過ぎだって……。ねぇすみれちゃん――――ん?」

「アイツに彼女? アイツに恋人? ありえないありえないありえない、そんな気配なんて今までなかったはず……」

「……なんか一番ダメージ受けてない?」

「は、はぁ!? そんなことないわよ!?」

「図星……」

「か~~の~~ん~~ッ!!」

「ゴ、ゴメンって!!」

 

 

 騒いでいなかったのは目の前の現状を受け入れるか受け入れまいか葛藤しているからだったらしい。気持ちは分からなくはないけど、いつも先生のことを彼女いない歴=年齢と馬鹿にしていたすみれちゃんがここまで慌てるなんて……。

 

 

「よしっ、ちょっと様子を見てくるよ」

「であれば私も行きます」

「可可もお供します!」

「し、仕方ないわねぇ~私も行ってあげるわよ」

「えっ、行くってなに!? もしかして尾行する気なの!?」

「あっ、早くしないと先生たち見失っちゃうよ! 行こう!」

「えぇええっ!? いいのかなぁ……」

 

 

 先生に親しい女の子がいて慌てふためくならまだしも、ちーちゃんたちはなんと先生の後をつけ始めた。しかも生徒会長で堅物な恋ちゃんまでそんな非行に走るなんて、もうみんな我を忘れてちゃってるみたいだ。午前中に歩き回って疲れてるとか、お腹がペコペコだとかもう忘れてるよね絶対に……。

 

 流石に多数決1対4で勝てるはずもなく尾行をするはめになってしまった。クレープを食べながら飲食店街を練り歩く先生と女の子。そのあとをこっそり追う私たち。周りに人が多いからか木の葉を隠すなら森の中状態となっており、幸いにも誰にも怪しまれることはない。でも非人道的なことをやっているのを一番分かっているのは私自身だから、さっきからもう心苦しいのなんのって……。

 

 さっきよりも先生たちに近づいたからか、戦線と女の子の会話がこちらに聞こえてきた。

 

 

「やっぱりここお店のクレープが一番美味しいなぁ~」

「それは俺との初めてのデートで食った思い出のクレープだからってことか?」

「な゛っ!? 相変わらずの自惚れマンですねお兄さんは! ただただこのお店のクレープが好きなだけです!」

「そっか。あの日はお前との関係が前進した特別な日だと思ってるから、そう考えるとクレープが美味く感じるぞ。お前にとってはただの日常生活だったかぁ~残念だなぁ~」

「そ、それは……。私もあの日は思い出ではありますけど……」

「やっとデレたか」

「だから! 自惚れが過ぎますって!! 全く、教師がこんなのだと生徒さんたちが苦労してそうですね……」

「こんなのって言い草だなオイ……」

 

 

「なんだかとっても仲がいいデスね……。遠目から見ていた時もそう思っていマシたが、会話を聞くとより実感させられマシた……」

「あの女性の方。年上の先生を相手にして敬語は崩していませんが、会話に遠慮も容赦もないので想像以上に親しい間柄なのかもしれませんね……」

「でもあまり恋人同士っぽくはないね。学校の先輩後輩とか、そういったイメージだよ」

「それにあの子、アイツのことをお兄さんって、あまり聞き慣れない呼び方よね……」

 

 

 みんなの言う通り、先生とあの女の子の仲の良さがひしひしと伝わって来た。でもその関係には疑問点が多く、恋人同士でイチャイチャラブラブといった雰囲気ではなく、お互いにお互いが何の遠慮もなく容赦なく突き刺しているみたいな感じだ。言わば心を許した友達といった印象が強い。だけど容赦ない会話ができるということはそれだけ相手のことを心の底から信頼しているってことだから、あの2人の間に強い結びつきがあるのは間違いないと思う。

 

 それにすみれちゃんも言っていた『お兄さん』呼び。最初は兄妹かと思っていたけど妹が兄のことをそう呼ぶのは他人行儀すぎるし、もしかしたらあの女の子は先生の妹の友達とか、そういった関係なのかな? だったら『お兄さん』呼びをするのも頷ける。確か先生には妹さんがいたはずだから、その線はありそうだ。

 

 私たちは更に尾行を続けて先生とあの子の関係を探ろうとする。もはや尾行が悪いことなんて誰も気にすることはなく(そもそも私以外は最初から気にしてもいなかったけど)、ただ先生のことをもっと知りたい好奇心だけで行動していた。

 

 

「それにしてもどこのお店も人気で人がいっぱいですよね。これだけ人気店が並んでるとどの店にするか迷っちゃいます」

「別にどこでもいいんじゃねぇの?」

「ダメですよ! 選ぶ店次第で私たちの将来が関わって来るんですから!」

「そんな大げさな……。ただ夜にやるだけだろ?」

「私は1回1回を大事にしたいんですよ。お兄さんに付き合ってもらっているのはそれが理由です。男性の意見も取り入れて、いいお店を選びたいですから」

 

 

「付き合ってる!? 付き合っている男女が夜に行くレストランを選んでいる……ロマンティックだね……」

「夜のレストランでお食事とか、もう告白に十分なシチュエーションではないデスか!? やっぱり先生、可可たちに内緒であの方と添い遂げようと……」

「信じたくはないですけど、私たちの将来と言っていたのでそう考えた方が自然ですね。ここには手頃な飲食店から高級なレストランまで並んでいますから、夜に2人で優雅なお食事をするのにもピッタリの場所です」

「なによ私たちには恋人なんていないとか言ってたくせに、ちゃんとやることやってんじゃない……」

 

 

 なんか凄い拡大解釈で話が進んでるような気が……。でも仲が良い男女が将来のために食事をする場所を探し、夜景が見えるレストランでお互いの想いを告白する。うん、結ばれるシチュエーションの前触れとしか思えない。

 あぁ~そのシチュエーションを想像したら私が恥ずかしくなってきちゃったよ! 先生はイケメンでカッコいいし、あの女の子も可愛くてお似合いのカップルだと思う。その2人がそんなロマンティックな場所で結ばれるなんて、テンプレだけどそういった展開は憧れちゃうなぁ……。

 

 でもなんかやっぱりモヤモヤするぅ~!! 先生に騙されていたとは思わないけど、彼女とかいないって言ってたことを目の前の現実を知ってもなおまだ引きずっている私がいる。それはみんなも同じようで、さっきからずっとウズウズしていた。

 

 

「私、ちょっと行ってくる!」

「えっ、すみれちゃん!? 行ってくるってまさか先生たちのところへ!?」

「いいでショウ。可可が許可します。むしろ可可も一緒に行きマス」

「可可ちゃん!? いや気持ちは分からなくはないけど流石に迷惑だって! 恋ちゃんも止めてよ!」

「ここは学校ではないので生徒会長として厳粛にならなくても良いでしょう。時には気を張らずに砕けることが重要だと、先生も仰っていました」

「いや多分それ空気を壊していいって意味じゃないからね!? ち、ち~ちゃぁ~ん……」

「全軍突撃準備ヨシ!」

「ちーちゃん!?!?」

 

 

 ダメだ、もうみんな暴走していて誰も私の話を聞こうとしてくれない! 先生たちのところへ乗り込む気満々だ!

 でも乗り込んだところで一体何をするっていうか、何かできるのかな……。みんなからしてみれば何ができるとかそんなのは関係なく、ただただ湧き上がってくるモヤモヤの感情を抑えきれないから暴走させて発散したいだけだと思っている。そうでなきゃあの恋ちゃんまで巻き込んで暴走なんてしないから……。

 

 このままみんなを行かせてしまうと先生たちのデートを邪魔してしまうことになる。私は今にも出陣しそうなみんなの前に立ち何とか場を宥めようとした。

 

 

「とりあえずみんな落ち着いて……ね? ん……? え゛っ……!?」

 

 

 みんなが静まる。私の思いが通じたと思ったんだけど、みんなの目はまた先生たちの方に向けられていた。私も振り返って先生たちの様子を確かめてみると、そこには衝撃的な展開が……!!

 なんと先生が女の子を自分の身体に抱き寄せていた。

 

 

「お、お兄さん!! やっぱり恥ずかしいですってこれ!?」

「今だけだ。我慢しろ」

「こ、こんな恋人みたいなこと……ッ!! うぅ……」

 

 

「な、なにやってんのをアイツら!! 見せつけてくるとはいい度胸じゃない!!」

「もう我慢できないデス! 今すぐ乗り込みまショウ!」

「見ていられません。例え教師であっても不純異性交遊は生徒会長として認められませんから」

「いやさっき生徒会長は学校の中だけとか言ってなかったっけ!?」

「かのんちゃん、度胸がないならここで待ってて。ここからは激しい戦いになりそうだよ」

「なにが始まるの!? って、みんな!?」

 

 

 もう暴走が暴走の頂点に達したみんなは、遂に先生たちへもとへと飛び出そうとしていた。みんなを抑えられなかったことを申し訳なく思いつつも、さっきの先生たちの行動が気になっている私もいる。どうすればいいのか私自身も分からない中、私たちと太陽の間を遮るように誰かが背後に立った。

 

 

「お前らなぁ、さっきから騒ぎすぎだっつうの……」

「「「「「先生!?!?」」」」」

 

 

 いつの間にか私たちのもとに来ていた先生。突然の登場に私たちは目を丸くして驚くことしかできなかった。

 

 

「尾行してたのかは知らねぇけど、うるせぇしバレバレだ」

「えっ、私たちが後をつけていることを知っていたんですか?」

「途中からだけどな。最初は無視しようと思ったんだけど、あまりにもお前らが騒ぐもんだからコイツに協力してもらっておびき寄せたってわけだ」

「コイツって……」

「全く、いきなり俺に抱きつけって言われた時は何事かと思いましたよ……」

 

 

 先生の後ろから現れたのは、さっきまで先生と一緒にいた女の子だった。呆れ顔で先生のことをジト目で見つめている。

 

 

「えぇっと、この方は……?」

「実際に会うのは初めましてだね。高咲侑です。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のマネージャーをやってます、よろしくね。ちなみにみんなことはお兄さんから聞いてるから知ってるよ」

「に、虹ヶ咲!? 虹ヶ咲ってあの虹ヶ咲デスか!?」

「そ、そうだけど……」

「虹ヶ咲と言えば数々の大会でも優勝し、メディアへの出演も引っ張りだこな超有名グループなのデス! 可可もブロマイドとかグッズをたくさん持っていマスし、ライブも行ったことがありマス!!」

「スクールアイドルになるとホントにテンション高いわね、アンタ……」

「あはは、ありがとね。みんなに伝えておくよ」

 

 

 私ももちろん虹ヶ咲さんのことはよく知っている。スクールアイドルを始めてからそのコンテンツ自体を勉強するために色々調べたからね。ライブ映像も見た、というか可可ちゃんに穴が開くほど見せられたからよく覚えている。いつか私たちも虹ヶ咲さんたちにようなライブができたらと、密かに憧れの存在だ。他に目を引いたスクールアイドルはμ'sさんとかAqoursさんとかだけど、実際に会ったら私もだけど、可可ちゃんは気絶して昇天しちゃうんじゃないかな。まぁ有名人だしそんな簡単に会えないけどね。

 

 

「そ、それで高咲さんにお聞きしたいのですが、先生とはどのようなご関係で……?」

「あぁそれね。言っておくけど、私とお兄さんはみんなが思ってるような関係じゃないから。多分恋人か何かと勘違いしてると思うけど、同じ虹ヶ咲のマネージャーポジションとして何かと一緒に関わることが多いだけだよ」

「じゃ、じゃあ告白のためにレストランを選んでいたこととか、それはどういうことなんですか!?」

「告白? よく分からないけど、みんながこの飲食店街でライブをするから、その後の打ち上げでどのお店にお邪魔しようか選んでただけだよ」

「だったら将来云々とか言ってたのは?」

「あぁ~それか。ほら、今の虹ヶ咲って結構有名になっちゃったでしょ? だからみんなが食事をしたお店ってだけでその場所が聖地になっちゃったりするんだよ。そうすると取材とかですぐ話題にされちゃうからね、お店選びも割と慎重になるんだ。だから変な意味は全然ないから安心して」

「お前ら、何かもの凄い勘違いをしてたな……」

 

 

 脱力、って言葉をここまで身にしみて感じたことはないよ。みんなも同じ気持ちのようで、暴走していたテンションもようやく元に戻ったみたい。この壮大な勘違いは後々思い返して恥ずかしくなるやつだよね……。

 

 これは後で聞いた話だけど、先生は1年前に虹ヶ咲学園へアドバイザーとしてスクールアイドルの指導をしていたらしい。これで先生がどうして私たちの指導ができるのか分かった。経験があったからだ。そのことを私たちに話していなかった理由は、変に話題になって学校中に広まり、みんなから質問攻めされるのが嫌だったかららしい。ということは、まだ喋っていないことがたくさんありそうだね……。

 

 

「そうだ、せっかくなら一緒にランチしない? Liellaのみんなのお話もたくさん聞きたいからね!」

「いいんデスか!? だったら可可は虹ヶ咲さんのお話を聞きたいデス!」

「決まりだね。お兄さんもいいですか?」

「あぁ。だったら早く行くぞ。大所帯になったら入れる店も少ないだろうしな」

 

 

 というわけで先生と高咲さんと一緒にランチをすることになった。

 先生が先導して人混みを書き分け歩いてくれている中、高咲さんが私たちの方を振り返り先生に聞こえないような声で話しかけてくる。

 

 

「私から1つ忠告」

「「「「「えっ?」」」」」

「お兄さんには気を付けた方がいいよ。すぐに惚れさせられちゃうからね」

「「「「「ほ、惚れ……!?」」」」」

「その反応……ははぁ~ん、なるほどね。全くお兄さんは手が早いんだから……。じゃあ私から言うことは1つ」

 

 

 高咲さんは一呼吸置く。

 

 

「頑張ってね♪」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、私たちの顔は茹だこに負けないくらい赤く沸騰した。

 そしてその反応を見た高咲さんは――――

 

 

「いやぁ可愛いなぁ~♪」

 

 

 そして今日、このことをネタに散々弄られた私たちでした……。

 




 Liella編に入って初めてゲストキャラ登場ということで、虹ヶ咲編から侑に来てもらいました! 
 本来Liella編ではメインの5人+零君で話を進行させる予定でしたが、侑はもう1人の主人公的な立ち位置でしたし、なにせ私がまた会いたいからという理由で登場してもらいました。
 そもそもLiellaのキャラって虹ヶ咲のキャラの半分以下ということもあり、話のマンネリを打開するためにもゲストは時たま登場するかもしれません。

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