ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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迫りくる『あ〜ん』

「先生、遅いですよ!」

「いや時間ちょうどだろ……」

「5分前集合は社会人どころか人間としての基本ですよ。しっかりしてくださいよ全く」

「休日に呼び出される社会人の心境も考えてくれ……」

 

 

 今日は千沙都に呼び出され、とある喫茶店の前に来ていた。ちなみに千沙都だけではなくLiella全員大集合であり、何気に休日にコイツらと全員と会うことも、大した目的もなく遊ぶのも初めてである。まあ教師と生徒がプライベートにまで関わりを持つのはどうかと思うけど、俺から呼び出したんじゃねぇからノーカンだよな……。

 

 

「女性を待たせるなんて男の風上にも置けないわね。これだから年齢=彼女いない歴は……」

「そーデスそーデス。顧問として可可たちを待たせるなんて責任能力が疑われマス」

「言いたいこと言いやがって。てか顧問じゃねぇし……」

 

 

 すみれと可可を含め、辛辣組の舌回りは休日であっても絶好調のようだ。年下に、しかも自分の生徒にここまで言われるのは教師の威厳としてどうかと思うが、それだけ距離が近くフレンドリーという意味で肯定的に捉えておこう。コイツらも俺のことを教師としてでなく年上のお兄さんポジションとしてしか見てねぇだろうしな。

 

 

「すみません先生。休日にまでご足労いただき、ありがとうございます」

「昨日は夜まで勉強を見てもらったのに、今日も呼び出しちゃってゴメンなさい。でも、来てくれて嬉しいです」

「お前らだけだよ。俺を気遣ってくれるのは……」

 

 

 対して恋とかのんは他の奴らとは違って大人を休日に呼び出す申し訳なさを理解しているようだ。何気ない気遣いだけど、教師をぞんざいに扱うアイツらいるからこそコイツらに癒やされるよ。恐らく俺を呼ぶのか呼ばないかみんなで議論していたんだろうけど、よりにもよって押しの弱いこの2人が呼び出し否定派となってしまい、多数決を取るまでもなく押し強い派閥の千沙都たちにあっさり敗北したのだろう。なんか2人の苦労が用意に想像できるな……。

 

 

「で? 今日はどんな風にこき使うんだ?」

「やだなぁ〜それだと普段私たちが先生に敬意を払ってないみたいじゃないですか〜」

「いや払ってねぇだろ。特にお前なんて俺の予定も聞かず、自分のたこ焼き屋に無理矢理誘ったりしてくるじゃねぇか」

「そ、それは仕方ないと言いますか普通に誘うと恥ずかしいって言いますか……。とにかく! 今日の目的はこれです!」

 

 

 千沙都は喫茶店の前にある立て看板を指差した。そこにはイチゴのショートケーキ、チョコケーキ、チーズケーキと言った数々のケーキが合体した特別なホールケーキが描かれており、実物を見ていないのにジャンボサイズだってことが分かる。どうやら期間限定のキャンペーンスイーツらしく、完食できたら様々な特典がもらえるらしい。

 

 

「おぉ〜っ! 今まで画面越しでしか見られなかった特製ジャンボホールケーキを、本日ついに食べることができるのデスね!」

「女の子ってこういう甘いの好きだよな。しかもこんなでけぇの、食ったら食っただけ苦しくなって終わりじゃねぇのか?」

「それに見合った報酬があるのよ。ほらこれ、スクールアイドル応援特別キャンペーンって書いてあるでしょ?」

「ホントだ。なにが貰えるんだ?」

「グループのメンバー全員でこのホールケーキを食べきると、このお店直々にそのグループの宣伝をしてくれるんです。だから何か貰えるというよりかは宣伝がご褒美、みたいな感じですかね」

「可可さんたちに聞いたところ、このお店は学生の間で非常に有名なお店で、全国にその名が知れ渡っているとのことです。このお店にLiellaを宣伝してもらうこと、それすなわち全国に名を売ることと同義なのです」

「なるほど、スクールアイドル側からすればスイーツを食えて自分たちの宣伝もしてくれるし、店側もバズって更に人が来てくれるしでwin-winってわけか」

 

 

 Liellaはまだ結成したばかりであり、スクールアイドル界隈でも新参も新参だ。スクールアイドルが流行しているこのご時世、そのグループ数はμ'sが活躍していた頃と比べると格段に多い。だから自分たちの名を売ることもスクールアイドルとして重要な活動の1つとなっている。歌やダンスだけではく自分たちのプロデュースもしなきゃいけない世の中とは、中々混沌とした界隈になったもんだな。

 

 コイツらがこのジャンボケーキに挑戦する理由は分かった。分かった上で気になることが1つある。

 

 

「これ、俺って必要なくないか? 必要ないって言うよりスクールアイドルではない奴は一緒に挑戦できねぇだろ」

「問題ないデス! ほら、ここを見てくだサイ!」

「ん? 顧問の方も一緒に挑戦できます……か。確かにこれなら挑戦できるな――――って、んなわけあるか! 顧問じゃねぇっていつも言ってんだろ!?」

「あれ? 違いマシタっけ?」

「先生っていつも一緒にいるからもう顧問になったんだと思い込んでました。ま、似たようなものですよ!」

「何が!? つうか俺が顧問だって証明は何もねぇだろ。ほら、この看板にも顧問としての証明が必要って書いてあるし、俺は挑戦できねぇから」

「あぁ、その件だったらこの店の予約をするときに、アンタの名前を勝手に借りて顧問として予約させてもらったわ。理事長が根回ししてくれて、今日だけ1日顧問って扱いになってるからよろしく〜」

「あのクソババア覚えとけよ……」

 

 

 勝手に人の名前を使って予約して、勝手に1日顧問に就任させるとかやりたい放題だなコイツら……。てかあのババア、理事長のくせにコイツらにだけそんな贔屓していいのかよ……。まあ自分の学校を救ってくれそうなスクールアイドルだから期待してるってのは分かるけど、あまりにもやんちゃが過ぎる。ここまで堂々と不正を連打されたらいっそのこと清々しくなるな。

 

 

「すみません。止めたのですが、私の力及ばずで押し切られてしまいました……」

「お前が謝る必要はない。まともな奴がいてくれるだけでもありがたいから。かのんも恋と一緒に止めてくれたんだろ?」

「ふえっ!? えぇっと……」

「かのんちゃん、なんだかんだ先生とお出かけすることができるってワクワクしてたでしょ? 頬赤くしながら期待してたのバレバレだったもん!」

「な゛っ!? それはちーちゃんもでしょ!? 先生の話になるといつもノリノリだけど、この話をしてた時はいつも以上だったもん!」

「えっ!? そ、そうかな……あはは」

 

 

 お互いに煽り合って最終的にはどちらも羞恥で自爆するとか何やってんだコイツら……。前の催眠の件でもそうだけど、コイツらやたら自分の行動に対して自爆することが多いよな。それだけ異性とのコミュニケーションが下手ということか。俺は今までたくさんの女の子と出会ってきたけど、ここまで純粋な連中を見るのは初めてレベルだ。ここまで初心だと逆にやりにくいよ……。

 

 

「何してるのよ、もう予約時間だから店に入るわよ」

「早くしてくだサイ! ジャンボケーキが可可たちを待ってます!」

 

 

 すみれたちに煽られ入店する俺たち。店内を見渡すと学生たちに人気な店なだけあってか若い子が多く、壁にはスクールアイドルたちのサインが飾られている。スクールアイドルに力を入れているだけあってかレジでグッズを販売していたり、注目のグループのライブをテレビで流していたりと、聖地と言われている理由が目に見ただけですぐに分かった。

 

 店員の女性にLiellaとその顧問の団体様として席に案内される。『顧問の方ですね?』と聞かれた時、隣で笑っていた可可たち、いつか覚えてろよ……。もちろんここで顧問を否定して帰るような大人げないことはしない。社会人だからな。

 

 そんなこんなで席につき、早速例のジャンボホールケーキを注文する。

 しばらくした後、そのケーキが俺たちのテーブルに運ばれてきた。

 

 運ばれてきたのだが――――

 

 

「こ、これは想像以上にでけぇな……。小さいケーキをホール状に並べてあるとは言えこの大きさか……」

「見てるだけで胸焼けしそうですね……」

 

 

 やはりジャンボサイズってのは実物を見た時の破壊力が凄まじい。最近ではネットの発達もあってこういった規格外の料理やスイーツは画像によって容易に拡散され、動画サイトでは大食いの人たちがそれに挑戦する動画も多く投稿されている。そのためジャンボサイズの料理を目にする機会は多いのだが、やっぱり画面越しで見るより実際に見たときの衝撃は半端ないな。かのんも息を呑んで目の前の特大ケーキに戦慄していた。

 

 対して他の奴らは期待に胸を躍らせているようだ。千沙都、可可、すみれはここに来たがっていたから分かるとしても、恋が目を輝かせているのは意外だった。彼女は没落貴族の家系とは言えども一応名家の娘、こういった一般女子高生が嗜む常識外れのスイーツに物珍しさを感じているのかもしれない。だから意外とこの店に来ることを楽しみにしていたのかもな。

 

 

「うんっ、噂に聞いてた通り美味しいよこのケーキ!」

「はい。これだけ大きくて値段が控えめだったので味の方を心配していたのですが、有名店のケーキ以上の美味しさです」

「これデスこれデス! 可可が食べたかったのは! あぁ〜こんな幸せあっていいのでしょうか……」

「ショウビジネスの世界で生きてきたこの私を満足させることができるなんて、褒めてあげてもいいわね」

「ホントだ。最初は大きさに驚いちゃったけど、これならたくさん食べられるかも」

 

 

 早速みんなでケーキを突っつき始めたのだが、可可たちからは大絶賛のようだ。美味い飯を食う、つまり人間の三大欲求の1つを満足行くまで満たされ、彼女たちの楽しそうな顔は止むことはない。その表情を見られただけでもここに来た甲斐は一応あったかな。まあこのジャンボサイズにコイツらの腹がどこまで耐えられるか。限界を超えそうになったときにその表情がどうなるか見ものではあるがな。

 

 デザートは別腹という言葉の通りか、手を止めることなくどんどん食べ進めるかのんたち。しかしチョコやチーズ、ブルーベリーといった様々な味のケーキが存在しているせいか、同然人気の味のものは真っ先に皿から消える運命にある。そして最初にその運命を辿ったのはケーキの王道たるショートケーキであった。

 

 俺が最後の1切れを食べようとフォークを伸ばした瞬間、ほぼ同じタイミングでかのんもフォークを伸ばしていた。ただ俺のほうが僅かに先で、かのんのフォークに気付いたときにももう遅い。俺のフォークがラスト1切れにぶっ刺さる。

 

 

「悪い、これ食いたかったか?」

「い、いえっ! 先に取ったのは先生ですからどうぞ!」

「生徒にそんな大人げないことするかよ。ほら、食えよ」

「えっ?」

「「「「えぇっっ!??」」」」

 

 

 かのんは目を見開いて驚き、他の4人は声を上げてこちらを凝視する。俺はただフォークの先端に刺さったケーキをかのんに突き出しているだけだが……って、なるほど、この行動が問題なのか。もうこんな感じの食べさせ合いを何度も経験してるから気にならなかったけど、普通に考えれば恥ずかしい行動だったか。

 

 

「せ、先生が私に向かって『あ〜ん』って、えっ、えぇっ!?」

「悪い、配慮できてなかった。フォークから外してお前の皿に置いてやるから、ちょっと待ってろ」

「は、外したところで先生と間接キ……うぅ……」

「なんだよ食うのか? 食わないのか?」

「た、食べます!! そのまま食べます!! いただきます!!」

「えっ、おいっ!?」

 

 

 かのんは俺のフォークの先端に刺さっているケーキをぱくっと食べた。何故か目を瞑りながら、恋人と初めてのキスをするかのような一世一代の覚悟を決めているみたいだ。てかコイツ、恥ずかしがってはいるが今日一番の幸せそうな顔してやがる……。

 

 

「私が先生のケーキを……先生のフォークで私がケーキを……」

「おい気絶しそうになってるけど大丈夫か?」

「せ、先生! 私はこれ! このチョコケーキが欲しいなぁ〜なんて」

「千沙都……? いや自分で食えばいいだろ」

「あぁああああああああフォーク落としちゃいました!! 早く食べないと新しいフォークが来る前にチョコケーキなくなっちゃうなぁ〜フォークがある人が食べさせてくれればなぁ〜」

「俺たちしか食う奴いないんだから待っててもいいだろ……。ったく、分かったよ」

 

 

 普段はあの手この手で俺と2人きりになる口実を作っている千沙都だが、今回の作戦はあまりにも稚拙すぎる。わざとらしいし棒読みだし、そこまで必死になられると応えざるを得なくなるだろ……。

 

 俺はチョコケーキを1切れ自分のフォークに刺すと、それを千沙都に向ける。

 

 

「い、いただきます――――美味しい。先生が私に……ふふ♪」

「千沙都?」

「こんなに美味しくなるんだ……食べさせてもらえるのって……」

 

 

 なんか妄想の世界に入り浸ってないか?? コイツも頬を染めて謎の余韻に浸ってやがる。ただケーキを1切れ食べただけのにこの満足感。そんなにいいのか『あ〜ん』ってやつは。

 

 

「可可も! 可可もお願いしマス! このチーズケーキがいいデス!」

「別に食べさせ合いをしてるわけじゃねぇんだけど……」

「ふ、普段顧問に誘ってあげている恩をここで返すべきデス!」

「恩の押し売りが過ぎる!! 分かった分かった、やればいいんだろ」

 

 

 今度は可可の順番。チーズケーキを1切れ取って彼女の目の前に持っていく。

 すると待ってましたかと言わんばかりに即座に飛びついてきた。なんかコイツの愛嬌の良さもあってペットに餌付けしてるみたいな感覚だな……。

 

 

「美味しい……幸せデス……」

「それはケーキが美味しいのであって、俺は関係ないだろ」

「美味しいデスよ、先生のケーキ……」

「いや俺のではないが……って、もう聞いてねぇなコイツ」

 

 

 愛情の込められた料理が美味いってのはよく聞く話だが、食べさせてもらっただけでトリップするほど味に変化があるか普通……? まあ人それぞれの想いがあるから否定はできないが、一口食べただけで妄想の世界に浸るくらいだから相当嬉しかったのだろう。それだけ喜んでくれるのなら本望だよ。

 

 

「あ、あの、差し支えなければ私もお願いしたいかと……」

「お前が? 珍しいこともあったもんだな」

「か、勘違いしないでください! 私はあのキャンペーンで料金を少しでも安くしようと……」

「『男女でスイーツを食べさせ合った場合、そのスイーツの料金を500円引きします』か」

「だからこれは食べさせてもらいたいとかではなく、ただ単にお金の効率を考えて出した結論で―――――」

「はいはい言い訳はいいから。別に変な理由をつけなくてもやってやるよ」

 

 

 生徒会長として俗物に染まらないプライドなのか分からないが、適当な言い訳を並べて自分の真意を悟らせまいとする恋。だが恋愛下手の女の子が恋愛強者の俺に叶うはずがない。他の奴らを見て自分も興味津々なのが丸分かり。それを悟られぬよう必死になる様子は可愛いけどな。だからその可愛さに免じてやってやりますかね。

 

 

「この抹茶ケーキでいいか? お前こればかり食べてたから好きなんだろ?」

「そ、そこまで私のことを見ていらっしゃったのですね……私のことを……」

「教師として生徒を見守るのは当然ことだ。ほら、食べろ」

「は、はい、いただきます――――ん、こ、これは想像以上に……美味しい……クセになる可能性が……でも恥ずかしい、うぅ……」

 

 

 名家の令嬢には似合わぬ口に物を含みながらの呟き。なんて言っているのかは聞き取れなかったが、コイツもコイツで自分の世界に入り込んでこちらに帰ってこないようだ。彼女がここまで分かりやすくおねだりをしてくるのは初めてだったので俺も応えてやったのだが、どうやら相当なダメージを与えてしまったみたいだ。

 

 

「全く、みんな子供ね。そんなことで動揺するなんて」

「すみれ……。お前はいいのか?」

「はぁ? 私がそんな子供騙しで恥ずかしがるとでも思ってんの? 残念ね、私の無様な姿を見られなくて。で、でも、アンタがどぉ〜〜〜〜してもって言うのであれば『あ~ん』させてあげなくもないわよ? 本気でどぉ〜~~~しても言っていうのならね」

「ならどぉ〜してもやりたいからやらせてもらおう」

「えっ?」

「聞こえなかったのか? やらせてもらおうって言ったんだよ」

「そ、そう? そこまで頼まれたのなら仕方ないわねぇ〜」

 

 

 相変わらず分かりやすいツンデレご苦労さん。煽りに煽ればプライドから俺が敗走するとでも思っていたんだろうが、そんな安っぽい煽りに乗るほど俺の心はヤワじゃない。むしろ他の奴らとは違って自分から頼み込まず、わざわざこちらから食べさせるよう仕向けるその浅はかな考え、俺が打ち砕いてやろう。いや、どちらかといえば『あ~ん』させられてるからコイツの勝ちなのか。ま、どっちでもいいか。

 

 

「ほら、このシャルロット・ポワールってケーキ。洋梨のムースが美味かったから俺のイチオシだ。食ってみろ」

「ちょっ、フォークをこっちに向けないで……。食べたくなっちゃう……だ、ダメよ、負けたら……」

「何と戦ってんだよ……。いいのか? やめちまうぞ?」

「くっ……あぁもう食べればいいんでしょ食べれば! あむっ!!」

 

 

 抵抗していたが、ようやく観念して俺のフォークに刺さっているケーキを口にした。すみれの顔は既に真っ赤であり、さっきまでの抵抗も全て照れ隠しだったのだろう。自分の意志は反抗してるけど、本心は素直になりたがっていたことが丸分かり。ツンデレキャラが使い潰されたこのご時世、ここまで分かりやすい反応をする子は非常に珍しい。もしかしたら歴史的遺物として守っていく必要があるかもしれないぞ。

 

 

「ま、まぁまぁね」

「そんなに顔を赤くしてよく言うよ」

「な゛っ!? これはこのケーキが美味しかったから興奮したのであってアンタのせいじゃ……ま、まぁちょびっとくらいアンタのおかげで美味しくなったかもしれないけど……」

「ん? おいすみれ? あぁ、お前もか……」

 

 

 すみれはぶつぶつ言ったまま俯き、俺の声はもう届かなくなっているようだった。

 ノリではあったものの5人全員にケーキを食べさせてしまった俺。そういや1年前にも虹ヶ咲の奴らに同じことをやった気がするが、あの時は俺も周りの目を気にして恥ずかしがっていた記憶がある。でも今回はもう慣れたのか、逆に女の子を手玉に取る余裕まであった。こんな女の子を誑かす技術ばかり身に付けるから侑に女垂らしって言われるんだろうな……。

 

 そんな余韻に浸っていると、俺たちのテーブルに店員がやって来た。

 

 

「お客様。そろそろお席のお時間が迫ってきておりますが、そのケーキ、食べきれますでしょうか?」

「そっか、席の時間っていう時間制限があったのか。おいお前ら、早く食べ――――って、え゛っ!?」

 

 

 かのんたちを見てみると、気絶しそうになっていたり自分の世界に入り込んでいる奴らばかりで誰1人目の前にまだケーキが残されている現実を向き合っていない。だがもうすぐでタイムリミット。このままだとただケーキを食うためだけに金を払って当初の目的であるLiellaの宣伝を果たせなくなってしまう。残るは1人。そう、ここにいる唯一動ける男が頑張れば話は別だが……。

 

 

「あぁくそっ! 食ってやるよ!!」

 

 

 そしてかのんたちが現実に戻ってきた時、テーブルに青い顔をして突っ伏している男が目撃されたという。

 




 それぞれの個人回でもそうですが、謎の積極性を見せるくせに自爆したり気絶しそうになったりと、あまりにも初心すぎてこんな純粋なこっているのかって話に……(笑)
まあこの小説はキャラが可愛く見えれば何でもOKみたいなところがあります。なので多少のキャラ崩壊も何もかもフリーダムです(笑)

 今回は初めて零君+Liella5人が一堂に会しましたが、文字だけだと誰が喋っているのか分かりづらくなる現象がいつまでも憑いて回ります。特にかのんと千砂都って同じような喋り方なので書き分けが難しい……
もし分かりづらいところがあればコメントください!

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