ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 虹ヶ咲編の最終話の中編です。
 こうして見ると虹ヶ咲編の連載前と後で印象が変わった子がちらほらいるような……


【最終話】恋色passions!(中編)

 歩夢たちと別れ、今度はスクールアイドル同好会の部室で休憩することにした俺。女の子たちに囲まれるのはそれだけ自分が求められている、好かれているという証明になるので優越感を満たせる。だけど虹ヶ咲の奴らはみんな押しが強いから、ああやって四方八方から抱き着かれると肩凝るんだよな。まあアイツらにベタベタされるのは最近では日常と化してるからもう慣れたけどさ。

 

 そんな感じで抱き着かれまくってガチガチになったこの身体。適当に伸びをしてストレッチをしていると――――

 

 

「零さん」

「えっ、璃奈の声? どこにいるんだ?」

「ここだよ、ここ」

「うおっ!? てかどうしてテーブルの下にいるんだ!?」

 

 

 誰もいなかったはずの部室に璃奈がいたことにも驚きだが、まさかテーブルの下からひょっこり顔を覗かせてきたことに一番驚いた。つうか見ようによってはホラー番組みたいでこえぇよ。コイツ自身声に覇気がなくてトーンも低いし、しばらくずっと黙って俺を見てたってことだもんな……。

 

 そんな訳でいつの間にか部室にいていつの間にかテーブルの下、俺の股の間から現れた璃奈。俺に見つかるとすぐさま膝に飛び乗ってきて俺の胸に背を預けてくる。コイツ自身の背丈が小柄なためか、それほど背の高くない俺であってもその身体がすっぽりと収まった。

 

 

「はふぅ……」

「なんだその気持ちよさそうな声は……。てかお前このポジション好きだよな」

「他のみんなだと背が高すぎて零さんのここには収まらない。ジャストフィットするのは私だけの特権。それが優越感」

「俺と考え方同じだな……」

「それにこうしていると零さんに守ってもらえてるようで安心する。しかも頭を撫でたりして甘やかしてもらえるから」

「そうか」

「ふにゃ……」

 

 

 ご所望通り頭を撫でてやるといつもの無表情が少しだけ、ほんの少しだけ緩んだ気がする。表情変化が乏し過ぎて気のせいかもしれないけど……。

 こうして妹のように可愛がれるのは後輩組の特権だが、コイツは特に妹色が強い。かすみよりも低い背丈でマスコット的な愛くるしさがあるからだろうか。本人も甘え上手で積極的な性格であり、こうして俺を兄のように慕ってくるのがこれまた可愛らしい。みんなは俺に抱き着いて来るがコイツは俺に抱き着かれに来るといった感覚で、他の奴らが俺に向ける愛情とはまた少し違う。常に無表情で何を考えているのか分からないところもあるが、実は他者とコミュニケーションが取るのが大好きという性格も相まって、こちらとしても甘やかしたくなる要素満載だ。

 

 

「零さん、ぎゅってして」

「はいはい」

「これこれ。まるで効能たっぷりの温泉に浸かってる気分。滋養強壮、疲労回復、健康増進、この世の穢れが全て浄化されていくみたい」

「歳よりくせぇなオイ。てかいつも思ってるけど、お前らって俺をパワースポットか何かと勘違いしてるよな……」

「零さんは私たちにとっての光。零さんが私たちの全て。だからパワースポットというより、生きる意味……みたいな感じ」

「余計に俺の存在が重くなってる……。まあそれだけ尊敬してくれるのは嬉しいけどさ」

 

 

 俺に触られただけで身体が清められるだの、声を聞いただけで聴力が良くなるだの、もはやこじ付けレベルで心酔してるところあるからなコイツら……。それだけ俺のことを求めてくれているって証拠だから嬉しくはあるんだけど、ここまで崇められると背中が痒くなってしまう。ま、これもコイツらと交流を続けていく間にもう慣れちゃったことだけどな。

 

 つうか璃奈の奴、やっぱ抱き心地がいい。以前に妹キャラ(淫乱属性持ち)として俺に迫ってきたことがあったけど、本当の妹として迎え入れたいくらいだ。俺のことをパワースポット扱いしているが、こちらからしてみればいい癒しになるからコイツもコイツで俺にとってのパワースポットなのかもしれない。

 

 

「おや? 零さんと璃奈ちゃん見せつけちゃってくれますな~」

「か、彼方!? いつの間に後ろに……」

「ふっふっふっ、零さんのお疲れモードを察知してただいま馳せ参じました~。ずっといたけど気付かれなかったってことは、彼方ちゃんもしかして忍者の素質あるかも?」

「いやお前みたいな所構わず寝るようなノロマでは無理だろ……」

「え~でも彼方ちゃんの眠気で敵を眠らせる……みたいな特技があるかもよ~」

 

 

 アニメや漫画の見過ぎだと思ったけど、あながち間違いじゃないか。彼方と話していると眠気ゼロでも睡魔に襲われることは往々にしてあった。かすみや愛のハイペースとは逆でコイツはスローペースだから、どうも心も気分もふんわりしちゃうんだよ。もう何も考えずとりあえず寝ちゃうか……みたいな? コイツと一緒にいるだけでストレスフリーになりそうだ。

 

 そんなわけで俺の背後に突然現れたのは彼方だ。後ろから密着してくるせいで彼女のゆる~い声が安眠ボイスとして俺の耳をくすぐる。抱きしめている璃奈が暖かいのも相まってこのまま寝ちまってもおかしくねぇな……。

 

 

「およ? 零さん肩凝ってる?」

「あぁ、さっきまで歩夢たちに揉みくちゃにされてたからさ。抱き着いて来るのはいいんだけど動けないから身体がガチガチになるんだよな」

「なるほど、だったら彼方ちゃんがマッサージしてあげるね~」

「えっ……うおおぉっ!?」

「零さんも私と同じで気持ちよさそうな声上げてる」

「いやホントに気持ちいいからさ。どうしてこんなに手慣れてるんだ?」

「いつも遥ちゃんにやってあげてるからね~。スクールアイドルの練習をたくさん頑張ってお疲れ様~って」

 

 

 スクールアイドルとして頑張ってるのはお前もだろってツッコミは野暮なのか……?

 なんにせよ、彼方のマッサージ技術がすこぶる高い。多少痛いのは効いている証拠なのだが、程よい痛みと同時に気持ちよさを感じられるマッサージは質が高いと思っている。しかも耳元で逐一『気持ちいいですか~お客様』とか『お疲れなのは頑張ってる証拠ですよ~偉い偉い』と囁いてくるので中毒性が半端ない。コイツ、完全に俺の癒し方を理解してやがるな……。

 

 彼方は眠り姫の異名を持つのんびり屋さんだが、スクールアイドルとして活動している傍らプライベートではスーパーでバイト、学園の特待生のため夜な夜な勉強も欠かさないなど、ふんわりぽわぽわしてそうで意外と努力家な子だ。家庭的で家事能力もあり、今のようにすぐさま相手の体調を察知して気遣うこともできる。虹ヶ咲でハイスペックと言えば愛だけど、コイツも相当なマルチタイプだ。それでいて美少女でスタイルも良く胸も大きいといった男を悦ばせる要素が満載。膝枕やマッサージで俺を癒したり、逆に俺を抱き枕にして甘えてきたりと攻めと受けどちらもできる性格であり、この1ヵ月くらいでコイツの魅力をたっぷりと味わった気がするな。

 

 

「零さん気持ちよさそう。今にも寝ちゃいそうなくらい」

「璃奈ちゃんにもあとでやってあげるね~」

「ありがとう。零さんにぎゅってされて、彼方さんのマッサージと膝枕で気持ちよくなる。ここが天国か」

「随分と充実してんなお前……」

「零さんももっと気持ちよくなりたい? 今度は私が抱きしめてあげようか? 下のおクチで」

「流れるような下ネタ止めろ……」

「わぁ~零さんってばお盛んだね~。もしかして彼方ちゃんも出番かなぁ~?」

 

 

 そういや性に対するハードルが低いんだったコイツら。最近はずっと一緒にいるからこれが普通だと思い込んでたけど、常識的に考えて他の女子高生よりも淫乱度が高すぎるよな……。それもこれも俺と1つになりたいという切実な願望が故であり、俺が信頼できる男だからこそ攻めた押しができるのだろう。コイツら素のスペックも高いし性に対して興味津々なので普通の女子高生ってどんな生き物なのか忘れてしまいそうだ。

 

 

「璃奈さんと彼方さんだけズルいです! 私もご奉仕させてください!」

「やってくれるのはいいけどあまり激しいのは――――って、しずく!? いたのかよ!?」

「はい、さっきからずっと零さんのことを見ていましたよ」

「いやこえぇよ!? いるんだったら声かけろよな……」

「そうしたかったのは山々だったのですが、零さんの凛々しいお顔に惚れ惚れとしてしまい、思わず抱き着きたくなる焦燥を抑制するだけで精一杯でした。逸る想いを我武者羅に押し出しては醜いだけです。なのでただ眺めているだけでしたが、我慢できずについ躍り出てしまったことはお詫びします……。ただ零さんは私にとっての太陽。人間は太陽の光を浴びることで活力を得るように、零さんがいなければ私は生きられません。つまり、私が零さんを求めてしまうことは必然なのです!」

「おぉ~流石はしずくちゃん、詩人だねぇ~」

「いや長ぇよ!? 愛は伝わってくるけど長い!!」

 

 

 もう俺への想いを文章にするだけでエッセイ1冊くらいは執筆できるんじゃねぇのかコイツ。怪文書にならないかだけが心配だけど……。

 またしても俺の気付かぬ間に現れた虹ヶ咲メンバーの1人、しずく。もはやいつも通りとなった長文での告白は彼女の物語好きの性格が如実に反映されているが、たまに愛が拗れすぎてやや怪奇的な文章になるのが怖いんだよ。俺と身体を重ね合わせた以降は(たが)が外れたように積極的になり、普段の日常でも自分の想いを一滴残らず暴露している。俺への押しの強さランキングでは余裕の上位クラスだろう。

 

 

「つうかどうして俺を奉仕する話になってるわけ?」

「えっ? だって彼方さんがマッサージ、璃奈さんがエッチなことをして零さんを気持ちよくする会……ですよね?」

「んなわけあるか!? どんなヤリサーかよ!?」

「私はそれでもいい。気持ちよくなれるなら」

「彼方ちゃんもおっけ~♪」

「いや聞いてねぇよ……」

「私、零さんが健やかに過ごせるためであれば何でもしてあげたいです! 毎晩零さんが就寝される時は側で控えさせていただいて、朝に起床のお手伝い、お着替えのお手伝い、料理の配膳、生理現象の沈静化などなど、朝だけでもやって差し上げたいことがたくさんあります。そして夜は逆に私が零さんに甘えさせていただいて、思う存分可愛がってくださればと……♪」

「完全に欲望丸出しじゃねぇか……」

 

 

 でもこの愛の強さがしずくのいいところ……なのかな?

 スクールアイドルと演劇の二足の草鞋を両立しているコイツは一途な頑張り屋さんである。もちろんそのどちらも練習を欠かすことはなく、舞台の主演に抜擢されるほどと言ったら演劇の方の実力も分かってもらえるだろう。また演劇好き、映画好き、小説好きなどの文芸趣味から物語で物事を考えることが多く、そのためさっきのような妄想癖に陥ってしまうのはポンコツな部分であったり可愛い部分でもある。二足の草鞋を両立させるほどの努力とお得意の妄想癖から好きな相手にのめり込もうとする意識が強く、その故に愛が強く、たまに重くもなる。でもその徹底的に尽くしてくれるタイプは俺の大好物だから、俺もまたコイツを強く重く求めちゃってるのかもな。

 

 

「ここまで尽くしてくれる女の子がいるなんて、いやぁ羨ましいねぇ~」

「ちょっと重すぎる気もするけど……」

「零さんがこう教えてくれたのです。『好きであれば遠慮はいらない。自分にどんどん甘えてくれても構わない。でもその代わり、俺の身体が火照った時はお前で慰めさせろ』って」

「しずくちゃん顔真っ赤。それに零さんが堂々としずくちゃんのカラダを使う発言をするとは驚き。まさにドS」

「いやそこまで言ってねぇよ!?」

 

 

 物語を妄想するのはいいけど過去改変を起こすのはやめてくれ……。自分の欲望すらも物語にしてしまうせいか、その欲が爆発すると話の道筋を大きく逸らそうとしてくるからな……。

 

 

「あら? エッチなことをするのに私を混ぜないというのはどういうことかしら?」

「……もう驚かねぇぞ。いつからいた?」

「う~ん、肩凝りで辛そうにしてるところ?」

「それ最初だろ!! てかずっと俺らを観察してたのかよ趣味わりぃな!?」

「どんな濃厚な展開が待ってるかってワクワクしてたんだけど、まさかここでヤっちゃうとは思ってなかったわ」

「いややらねぇから!! ったく、余計な期待し過ぎなんだよ……」

 

 

 もうどこに潜んでいたのか怖いレベルなのだが、今度は果林がどこからともなく現れた。セクシー系スクールアイドルの異名があるためか、俺たちの話題がエロ方面に進んでいると知ってここぞとばかりに顔を出したのだろう。都合がいいっつうか、性に貪欲っつうか……。

 

 

「とか何とか言ってるけど、零さん好きよね? 私のカラダ」

「ぐっ……。そりゃお前ほどのいいカラダの女、早々いねぇからな」

「璃奈ちゃんボード、大敗北……」

「私ももっと胸が大きくなれば……」

「彼方ちゃんも果林ちゃんほどじゃないけど結構いい大きさしてると思うけどなぁ~」

「私はモデルをやってるから自分の身体を磨き上げることには自信があるのよ。そしてそんなアダルティなカラダを、数々のファンや読者が食い入るように見ている私のカラダを、零さんは独り占めできる。そう考えると興奮してこない? お前たちが羨まむコイツのカラダは俺のモノなんだ~ってね♪」

「やっぱり心得てるな、俺の誘い方を」

「えぇ、あなたの性癖と興奮増幅のスイッチも全部ね」

 

 

 相変わらず俺への誘惑が上手く、たったこれだけの会話でも襲いたくなる気持ちが湧いて来るくらいには言葉巧みだ。こういう風に俺がどうすれば悦ぶのか、どうしたら性欲を滾らせられるかなど、男を自分の手で誘導するのが得意なのが果林だ。そして極めつけはこの極上ボディ。モデルによって磨き上げられたスタイルはどこを見ても蠱惑的である。服の上からでもそう感じられるのだから脱いだ時のインパクトは凄まじく、俺自身柄にもなく性の虜になってしまったのはホテルで同じ部屋に泊ったのあの一件の話。こちらの性欲をギリギリまで滾らせて、それを爆発させたときの快楽を最大限にしてくれる誘惑も俺の好みのやり方だ。コイツと一緒にいると性の奴隷になっちまいそうで怖いから、ある程度自制の心を鍛えておかないとな……。

 

 そうやって俺の性癖を隅から隅まで知り尽くし、それに応えてくれる女子高生離れしたセクシー系女子。それが果林である。淫乱系のお姉さんキャラっていいよな……。

 

 

「おい、身体を押し付けてくるな……」

「璃奈ちゃんを抱きしめて、彼方にマッサージしてもらって、しずくちゃんから誘惑されて、そして私のカラダを堪能できる。こんな貴族の中の王みたいな生活はあなたしかできないのよ? 据え膳食わぬは男の恥だわ」

「時と場所を選ぶ権利くらいはあるだろ……。それに女の子に囲まれて誘惑されるくらいいつでもできる、今でなくともな」

「他の男からは絶対に飛び出さないような発言ね……。まぁ、そういった俺様系は私も大好きよ。だからこそみんなこうして愛を真っ向から伝えようとするのよね」

「我ながらいい身分だと思ってるよ。自分の力で上り詰めた地位だから、こういった状況は思いっきり堪能させてもらうけどな」

 

 

 まさかコイツらがここまで押しの強い女の子になっているとは思っていなかったけど、女の子たちに囲まれる生活ってのは俺自身が望んで進んだ道だ。だからこそ四方八方から抱き着かれようとも、揉みくちゃにされようとも、所構わず誘惑されようともそれを楽しめる度量はある。美女美少女たちに囲まれて愛を感じられる日常、とてもいいじゃないか。こういった日常こそ自分が生きてるって感じがするんだよ。

 

 

 ここでふと時計を見てみると意外と放課後もいい時間になっていることに気が付く。そして俺には1つやるべきことがあった。

 

 

「あっ、こんな時間か。悪い、そろそろ行かないと」

「どこに?」

「呼ばれてるんだ、侑に。来て欲しいところがあるってな」

 

 

 俺がこの学園に来た理由、それは侑から事前に連絡を貰っていたからである。どんな用事なのかはその時に話すと言われたので呼ばれた理由は不明だが、なんか雰囲気的に深刻な話のように思える。俺にそんな話をするなんてアイツらしくもないが、行けば分かることだろう。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「零さん?」

「栞子か」

 

 

 侑に呼び出された場所へ行く途中、廊下で栞子と出会った。

 生徒会日誌を持っているところを見るとまだ生徒会活動の途中だろうか。もう放課後も放課後でいい時間なのにご苦労なことだ。

 

 

「そちらは特別教室や屋上に行く道ですけど、何か御用ですか?」

「侑に呼ばれてるんだ。屋上に来てくれってな」

「侑さんが? わざわざそんなところに呼び出すなんて珍しいですね」

「だろ? この俺を用件も言わずに呼び出すなんていい度胸してるよ」

「それだけ失礼をしてもいいと思えるくらい、零さんと侑さんの関係が深まったということでは?」

「かもな」

 

 

 アイツとの出会いは俺がやらかしたせいでこちらの第一印象が悪くなってしまった。そのせいでしばらくは俺のことを信頼してもらえなかったりもしたのだが、今はそれなりの関係を築けていると思っている。歩夢の計らいで2人でデートした時からアイツの俺を見る目が変わった気がするな。どんな心境の変化があったのかは知らないが、それも屋上に行けば明らかになるだろう。

 

 

「そういった関係、ちょっと羨ましいです。私は皆さんとは違って零さんと深い思い出がないので……」

 

 

 曇った顔をする栞子。歩夢たちが俺に群がる姿を見て、愛を交えて信頼し合っている光景を羨ましく思っていたのか。まあアイツらはいつも全力投球で真っ向から恋愛を仕掛けてくるタイプだから、アイツらと一緒にいたらそういった光景は否が応でも目の当たりにするか。そして俺たちの柵のない関係を見て疎外感を覚えてしまうのも無理はない。歩夢たちと同じスクールアイドルの一員、仲間になったからこそ自分だけが違う関係であることを自覚してしまうのは当然だ。

 

 だけど――――

 

 

「関係なんて、これからいくらでも作っていけばいいだろ。確かに俺とアイツらは昔からの仲だけど、時間なんて関係ない。俺はお前のことが好きだ。馬鹿正直なところも、目的達成のために己を付き通す勇気があるところも、その歳で生徒会長を務められるカリスマ性も、ちょっと不器用なところもな」

「零さん……」

「それに可愛いところも……かな」

「か、かわっ!? もうまたいきなりそんなことを……」

「そういうウブなところがだよ。深い関係でないなら深くなっていけばいい。お前の魅力はさっき言った通りだけど、もしかしたらそれ以外にもあるかもしれない。相手の新たな魅力を見つけていくことが関係を深めるってことだと思うんだよ。だからお前ももっと俺の魅力を見つけてくれ。ま、俺を知れば知るほど惚れちゃうと思うけどさ」

「そ、そう……ですか」

 

 

 合うたびにベタベタと密着してくるアイツらだけど、あれはアイツらなりの愛情表現であって普通ではない。そして今まで社会の常識通りに生きてきたウブな栞子だからこそ、恋愛というのは歩夢たちのやってるようなことと思い込んでしまうのは仕方のないことだ。だから自分だけ仲間外れになっていると感じていてもおかしくない。まぁ過剰な愛情表現を人の目のあるところでも構わずぶっ放すアイツらのせいでもあるけど……。

 

 

「ありがとうございます。スッキリしました」

「悪いな、場当たり的な言葉で」

「いえいえ! こうして咄嗟に相手を気遣えるところが歩夢さんたちが惹かれる要因の1つなのかもしれませんね。それに、私も……」

「俺とお前の関係はまだ始まったばかりだから気にすんな。むしろここからいくらでも関係を掘っていけると思うとワクワクしないか? そうだ、せっかくだしまた2人でどこかに出かけでもするか。いわゆるデートってやつ」

「えっ、よろしいのですか?」

「当たり前だろ。精々即堕ちしないように気を付けることだな」

「が、頑張ります!!」

 

 

 って言ってももう遅いか。顔真っ赤だし……。

 そんな感じで栞子とはまだ付き合いも長くないし、むしろまだスタート地点だ。だからこそこれからどんな関係になっているのか、どう関係を築いていくのかその未来が楽しみでもある。ドが付くほどの真面目ちゃんで世間知らずないいところのお嬢。うん、いいキャラじゃないか。真っ白なキャンパスのような彼女がどう染まっていくのか、今から期待せざるを得ないな。

 

 

 そういや意図せずで今日はたった数十分で虹ヶ咲の女の子たち全員と交流したな。相変わらずの押しの強さで1人1人のキャラが濃く、相手にするだけでも大変だがそれ故に楽しい。自分の日常の色が濃くなっている感じがして充実感がある。だからこそこうして再会できてよかったよ。俺の人生にまた新しい女の子たちで彩られたからな。

 

 そして、次が最後の1人。唯一俺の色に染まっていない女の子がこの先で待っている。

 果たして俺を呼び出した理由とは? 何か俺たちの関係が大きく動きそう、そんな予感がする。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 一応公式のキャラ設定を見て性格はアニメに寄せようとはしているのですが、この小説自体が結構アウトローなので性格が着色されてしまう子は多いですね(笑) 今回登場した中だと璃奈やしずくは私好みのキャラになってしまっていたり……
 例えそうだとしてもキャラ1人1人の魅力はしっかり読者さんにお伝えできているとは思うので、あとは皆さんがこのキャラを受け入れてくれるかですね(笑)



 そんな感じで1年にも渡り連載してきた虹ヶ咲編ですが、次回で最終回の後編で本当のラストとなります!
以前の回で何かの決意をした侑は零君を呼び出して何を語るのか、零君と歩夢たちのこれからはどうなるのか、最後の最後まで是非お楽しみください!

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