ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回は栞子回です。
 1年前に投稿された398話『即堕ち栞子』で、デート中に何があったのかが詳しく語られつつ、即堕ちした理由が明かされます。


堕ちるまでのプロセス

「会場の手配、搬入の確認、費用の算出に申請書の提出、それから……」

 

 

 スクールアイドル同好会の部室に来てみると、栞子が慌ただしくパソコンのキーボードを叩いていた。

 発していた言葉から察するに、次のライブに向けた事務作業をしているのだろう。流石は現生徒会長と言ったところか、やるべきタスクを明確に洗い出しており、1つ1つそつなく片付けている。まだ1年生なのにこの効率の良さ、俺も来年教師になる上で見習いたいって思うよ。

 

 それは俺と一緒に部室に入った侑も同じことを思ったようで、申し訳なさそうな顔をして栞子のもとへ駆け寄った。

 

 

「栞子ちゃんそれ!」

「えっ、侑さん? 零さんも、こんにちは」

「うん、こんにちは。じゃなくて! それって私がやる予定だった作業だよね?」

「そ、そうですけど……。もしかして、やってはいけませんでしたか……?」

「いやいや、むしろやってくれたのはありがたいよ。でもみんなのマネージャーとしては私がやるべきことだから、栞子ちゃんにやってもらうのは悪い気がして……。ほら、生徒会の仕事も忙しいでしょ?」

「これくらいなら大丈夫です。むしろ侑さんの方が音楽科へ転科して間もないので、勉強など色々お忙しいのではないですか?」

「だから私の作業までやってくれてたんだ……。凄く頑張り屋さんだね、栞子ちゃん!」

「そ、そんな大したことはないですよ……。侑さんの方が手際がいいですから」

 

 

 栞子は恥ずかしそうに顔を赤らめる。お互いにお互いを気遣って褒め称えるの、いいじゃないか。

 さっきの会話で気付いたけど、侑の奴そういえば音楽科に転科したんだっけ。マネージャー業務だけではなく作詞作曲も手伝いたいということでピアノを弾き始め、そして音楽科に入ったという経緯だったと思う。なんとまぁ勤勉なことか。侑は誰かを輝かせることに生き甲斐を感じているというか、それを夢に掲げているすげぇ奴だ。他人のためにそこまで頑張れるなんて俺には真似できねぇな。

 

 

「1人で何もかもやるのは構わないけど、無理が祟って戦闘不能になるのだけは勘弁してくれよ。そこまで面倒は見切れねぇぞ」

「はい、もちろんです。零さんのお手を煩わせることは一切ありません。零さんには何の柵もなくのびのびと私たちにご指導いただければと」

「そうしてくれると助かるよ」

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

「なんだ急に?」

 

 

 突然侑が会話に割り込んでくる。まさか俺が面倒を見切れないと栞子を突っぱねた発言をしたと思ったのか? 別に意地悪でその発言をしたわけではなく、コイツらがスクールアイドルとして自分たちだけでライブの設定や準備ができるように成長を促してやっているだけだ。それはコイツらも了承済みで、俺がやるのは練習の指導だけ。そういう取り決めをしているんだ。

 

 

「気になっていたんですけど、栞子ちゃんってお兄さんを崇拝しているというか、心酔してるかってくらいの接し方なんですけどどうしてなんですか?」

「私は皆さんのことを等しく尊敬していますが?」

「それはそうかもしれないけど、お兄さんにだけは尊敬の大きさが異常じゃない? 最初はお兄さんのことを警戒してたよね? お兄さんが歩夢たちを誑かしてるんじゃないかって」

「その後に俺に凸してきたんだよな。帰る頃には尖ってた性格も随分丸くなってたけど」

「それですよそれ! そのとき一体何があったんですか!?」

 

 

 スクールアイドルフェスティバル終了から間もなく、歩夢を通じて俺を呼び出してきた栞子。俺が歩夢たちと二股どころか九股していると思い込み(実際合ってるが)、それを追求するために俺のもとに乗り込んで来たんだ。しかも俺が歩夢たちに向ける下劣な目(誤解だが)を自分に向けさせる、つまり自分が犠牲になることでみんなを救おうとする勇敢っぷり。当時はとんだ新人が歩夢たちの仲間入りしたもんだと驚いたね。

 

 

「な、何があったと言われましても、そ、それは……」

「ちょっ、顔赤くなってるよ!? 本当に何があったの!?」

「教えてやっただけだよ。色々とな……」

「ま、まさか変なことしてないですよね!? 栞子ちゃん1年生なんですよ!?」

「じゃあ2年生のお前になら何をしてもいいのか?」

「まだ高校生になりたてだって意味です!! いつもはぐらかされてきましたけど、今日という今日は何があったのか全部教えてもらいますからね!!」

 

 

 今まで侑に栞子との出会いの話を聞かれても適当な理由で流してたけど、そのせいで俺が栞子に何かしでかしたのかと思い込んでご立腹気味のようだ。まあ最初は俺を社会の腫物にして干してやる勢いで会いに行った彼女がここまで従順になってるんだから、そりゃ気になりもするか。

 

 

「別にはぐらかすつもりはなかったんだけどな。分かった、話してやるよ」

 

 

 

 

~~~~~

~~~~~

 

 

 

 

 栞子と初対面し、喫茶店で初会話をしている途中から始まる。

 

 

「まぁお前の言い分も一理あるし、俺の頼みを1つ聞いてくれたらアイツらに会うのはやめてやる」

「本当ですか? 一応聞いておきます……」

「今日1日だけでいい、俺と付き合え」

「え……? つ、付き合うって……」

「堅物生徒会長で箱入り娘じゃ話の流れで分からないか? 今日1日は俺のものになれって言ってんだ」

「は、はぁ!?」

 

 

 俺を糾弾するために意気揚々と乗り込んで来た栞子。超ド級の真面目ちゃんが故か俺を不埒な野郎と認識し、社会的に抹殺しようと企てる恐ろしい奴だった。まあ俺としてはそんなものは子供のおままごと同等なので、特に気に欠けることもなかったけどな。逆にコイツを分からせてやろうという俺の中のドS心が高鳴っていたので、敢えてデートに誘って『遊び』と『余裕』ってやつを教えてあげることにしたんだ。

 

 

「いいですよ。私の犠牲で皆さんを守れるのであればお付き合いします」

「いい友情だな。その気概が保てるかどうかも見ものだ」

「私は皆さんとは違い、あなたに靡くことはありません。あなたのような軽薄な男性、一番嫌いな人種ですから」

「なんというフラグ……。そんな大見得を切って後で堕ちても知らないぞ?」

「そんなことは断じてあり得ません。むしろあなたに社会の秩序というものを教えて差し上げます!」

 

 

 もはやヤラセを疑うような壮絶な前フリだけど、この頃の栞子はツンツンもツンツンだったからな。俺を見る目に怒りが籠っており、そのツリ目がちな視線で俺を貫こうとしてくるくらいだった。まだ高校1年生なのに大学生の男に対してここまで啖呵を切れるなんてと感心してしまうくらいだ。

 

 だが俺からしてみれば可愛いもので、ムキになる子供をあやす大人のようなほっこりとした顔で彼女を見つめていた。それが癪に障ったのか、彼女はより険しい表情で睨み返してきたけど……。ま、俺のことを浮気野郎としか思ってないんだから仕方ないよな。

 

 

「そうと決まればほら、行くぞ」

「い、行くってどこへ……?」

「どこって、遊びにだよ遊びに」

 

 

 未だに俺に対する警戒心MAXの栞子を無理矢理を引き連れ、とくにアテもないデートに繰り出した。

 繰り出したのはいいのだが――――――

 

 

「お前、買い食いしたことないのか?」

「はい。だらしのないことですから」

 

 

「お前、自分で服選べないのか?」

「はい。親が買ってくれたもの、姉のおさがり。それで充分ですから」

 

 

「お、お前、もしかして休みの日に友達とお出かけとか、そういう経験ないのか……?」

「休日は家で勉強、華道の稽古、たまにボランティアに出ているのでそんな浮ついたことはしていません。最近はスクールアイドルの事務作業で忙しいですし。あなたの素性を調べ上げることも……」

「想像以上にクソ真面目だな……」

「やらなくてもいい娯楽に身を投じる時間はありませんので」

 

 

 デートに誘ってみたまではいいものの、ここまで自分に厳しい子だとは思ってなかったので驚きだ。知り合った女の子の中でもこういう子は初めてで、似たような性格であるあの海未でさえ穂乃果やことりに連れられて遊びに行くくらいはしていたぞ。まあ誰かに縛られているのではなく自分で自分を厳しくしてるのならこちらからどうこう言う気はないけどさ、華の高校生なんだからもっと砕けても良いと思ったんだよな。

 

 

「歩夢たちと遊びに行ったりはしないのか? 女子高生だったら部活終わりに美味しいスイーツ巡りとか、一緒にショッピングとかやってそうなものだけど」

「そ、それは……。今まで上原さんたちに失礼なことをしてきましたし、皆さんの輪の中に入るのも空気を乱すような感じがして気が引けてしまいまして……」

「いやアイツらはそんなことを気にするようなタマじゃねぇだろ」

「それに私はスクールアイドルとしても新参者なので、できるだけ早く皆さんに貢献できるよう練習をしたり、事務作業を代行して皆さんの手を煩わせないようにしたりと、余計なことに時間を割いている暇はないのです」

 

 

 当時の俺は歩夢たちとコイツの間で何があったのかは知らなかった。だが無駄な詮索は1人で責任を背負い過ぎているコイツに更なる刺激を与えてしまうような気がしたので、この時は敢えて口を出さずに様子だけを窺っていた。あとから聞いた話ではどうやら歩夢たちと対立していたらしく、スクールアイドル同好会を潰そうと考えていたらしい。そのあとは紆余曲折あって和解し、彼女も同好会に入ったってのが経緯だ。クソ真面目な性格と対立していた負い目もあって、自分を律することでしか反省ができないと思っていたのだろう。

 

 ちなみに同好会を目の敵にしていた理由は、姉の薫子が関係している。薫子は自分の適性に見合った生き方をしていれば三船家の跡取りになれたが、スクールアイドル活動とスクールアイドルフェスティバルに入れ込み過ぎた挙句、結局結果が振るわず何もかも失った。だから栞子はもうそんな人を見たくないから人間の適性を何より大事にし、皆を笑顔にしたかった。特に薫子が入れ込んでいたスクールアイドルは『遊び』だと勝手に定義して執拗に対立していたんだ。

 

 

「他のみんなは許してるけど、自分が自分を許せないってやつか?」

「そう、ですね……。自分のけじめは自分で付けて、上原さんたちのサポートをするのが私の役目ですから。そのために不穏因子は除去する必要があります」

「おいおい、まさかそれって俺のことか……? でも残念だけどお前では俺を排除することはできねぇな」

「な、何故ですか!?」

「余裕がないからだよ。余裕が」

「そ、それがどうしたと言うのです……。第一私は無理なんてしていません! 私は私のやりたいようにやっているだけですから!」

「そうやって声を荒げて反論してる時点で余裕がないんだよ」

「ぐっ……」

 

 

 図星だったのか狼狽える栞子。自分でも相当煮詰めていることは自覚しているっぽいが、それを認めてしまうとただ我武者羅であることが露呈するため否定せざるを得ないのだろう。もちろん焦っているのは目に見えて明らかなので隠しきれてないが……。

 

 

「張り詰めた糸は切れやすい。頑張るのはいいことだけど、もっと心を軽くした方がいいんじゃないか? 緊張感を持ちすぎると視野も狭くなるぞ」

「ですが私には今まで皆さんにたくさんご迷惑をかけてきました! だからこそ私は――――」

「名誉挽回したい? 罪滅ぼしがしたい? 罪悪感を忘れたい?」

「そ、それは……」

「お前すぐ表情に出るよな。ま、そんな自分をも見えてない奴が俺を糾弾しようなんて無理な話だ。俺という自分が完成された人間に対抗できるはずがない」

「きゅ、急に自画自賛なんて痛々しい人ですね……」

「自分の心を削ってまで無理してる奴よりかは真っ当に生きてるとは思うけどな」

 

 

 栞子は箱入り娘だから世間の流行りや一般女子高校生の遊びには疎いとは思うが、それでも『自分はこうしなきゃらなない』という抱かなくてもいい信念に囚われ過ぎだ。だから言動にも余裕がなくなっている。自分を追い込むのが楽しいと思うマゾ属性持ちであれば文句は言わないけど、今のコイツは苦しそうだ。全然楽しそうじゃない。

 

 

「たくさんの女性と浮気している下劣なあなたには言われたくありません。社会常識だけは私の方があると思います」

「そんなしょぼいことでマウントを取るなって。お前が何て言おうと俺はアイツらから離れる気はねぇし」

「な゛っ!? あなたとのお出かけに付き合ったら上原さんたちには会わないと、さっき約束したではありませんか!?」

「俺は会わなくてもアイツらが会いに来てくれるからな。アイツら、俺のこと大好きだから。そうなることくらいお前も分かるだろ?」

「そ、そんな……」

「騙すようなことをして悪かったな。揚げ足を取ったみたいでさ」

「いえ、私の考えが足りていませんでした……」

 

 

 少しは冷静になったらしい。頑張るのはいいことだけど、自分を見ず、周りだけを見て頑張るのはただの我武者羅だ。周りを見ているとは言っても、周りが自分のことをどう見ているかは意識していない。多分歩夢たちも分かっていたのだろう。栞子が無理をしていることに。もしかしたらそれを知っていて、それを俺に何とかして欲しくてコイツを俺のもとに送り込んだのかもしれない。もしそうだとしたら初対面の女の子の無茶を更生させろだなんてあまりにも無理難題過ぎるだろ……。まぁ俺ならやってくれると信じているからこそだろうが。

 

 

「だったら、どうすれば良かったのですか……」

「だから今から遊ぶんだよ。教えてやるよ、お前が経験してこなかった色んなことを。それともこんな浮気野郎と遊ぶのはイヤか?」

「イヤ……ですね」

「おぅ、意外と直球だな……」

「ですが、何かを掴めそうな気がします。自分が変われるような何かを……」

「そっか。じゃあ行くぞ」

 

 

 栞子はレスバトルで俺に打ちのめされたせいか、多少なりとも自分で自分を見つめるようになった。俺に対してツンツンしていることには変わりないが、俺の意見を受け止め自分なりに納得に落とし込むくらいの余裕はできたらしい。頑固だけど話が分からない奴ってことはなさそうだ、というのが当時の俺の感想である。

 

 そしてまた俺たちは遊びに出た。今度は栞子がデートを楽しむことを念頭に置いて。

 

 

「アイスクリームを2段、えっ、3段……よ、4段も!? こんなに贅沢していいのですか!?」

「いいリアクションだな……」

「私、不良になってしまっていいのでしょうか……?」

「お前の中の不良イメージ可愛いなオイ……」

 

 

「こ、こんな可愛らしい服、似合うのでしょうか……。恥ずかしいです……」

「いやお前は普通に可愛いから似合うって」

「か、かわっ!? そんなことは……」

「言っておくけど、俺は美人な子、可愛い子としかデートはしない。俺に並び立つに相応しい奴としかな」

「それって私も……!? うぅ……」

「顔真っ赤だぞ。大丈夫……ではなさそうだな」

 

 

「ラーメンだなんて、高カロリーで何の栄養もない料理がこんなにも美味しいだなんて! なるほど、これが身体に悪いけど食べてしまうという背徳感ですね!」

「言いたいことは分かるけど、声は抑えような? 店の中だから……」

 

 

「うぅ、またやられてしまいました! もう1度やりましょう! この館のゾンビを全て打ち抜くまで引き下がれません! まずは玄関、二時の方向と九時の方向に1体ずつ出てくるので――――」

「もうやりすぎて出現パターン覚えちゃってるし。何分このゲームの前でたむろしてんだよ……」

「今どの角度で銃を撃てばいいか計算中なので少々お待ちを。効率よく、手際よく片付けましょう」

「いやそういうゲームじゃねぇから! もっとキャーキャー言いながら楽しむゲームだから!」

 

 

 こんな感じで、もうすっかり堅物少女から垢抜けた感じになっていた。それでも世間一般の女子高校生とは考え方にズレがあるが、そういうところがコイツの魅力で可愛いところだったりする。もう目に映る全てが初めてであり、おもちゃを与えられた子供の用だ。てか精神年齢だけは子供に成り下がってただろこれ……。

 

 そしてしばらく遊んだ後、俺たちは大きい広場のベンチに座って休憩していた。

 

 

「すみません。1人ではしゃいでしまって……」

「いやそれでいいんだ。楽しかっただろ?」

「はい、柄にもないとか言われてしまいそうですが……」

「そんなことないよ。遊んでる時のお前の笑顔、可愛かったしな」

「か、かわっ!? またそのようなことを……」

 

 

 出会った時は俺に恨みでもあるかのような形相だったのに、今は表情がコロコロ変わって年相応の女の子のように無邪気で可愛くなっている。そしてこのデレ具合。声色も最初はドスが効いて怖かったのに、この時は何オクターブか声が高くなっている。それだけでも俺に心を開いてくれているのが分かって嬉しかったよ。

 

 

「なんだか身体が軽くなったような気がします。自分でも知らない間に肩ひじを張っていたのかもしれませんね」

「あと心もな。頑張るのはいいことだけど、周りもしっかりと見ろ。お前はもう1人じゃない、心配してくれている人がいるからさ。アイツらもお前ともっともっと話したいと思うぞ? なのにお前がずっと1人で頑張ってるから、話すに話しかけられなかったんだろうな」

「そうですね。上原さんたちと話し合って、もっともっと交流を深めていきたいと思います」

「あぁ、そうしてくれ」

 

 

 過去に迷惑をかけてしまったという罪悪感、迷惑をかけた分だけ自分が同好会に貢献しなければという使命感。その重圧を背負って気負い過ぎてしまっていたのだろう。堅物で真面目ちゃんが故に責任感も強く、そうやって背負い込んでしまうのは仕方がなかったのかもしれない。

 

 でももう背中の荷物を降ろしたから大丈夫そうだ。今もいい笑顔してるしな。

 

 

「よし、もう夕方だから帰るか。今日は付き合ってくれてありがとな」

「そ、そんな! お礼を言うのは私の方です! ありがとうございました!」

「いいのか? こんな浮気野郎にお礼なんか言っちゃって」

「上原さんたちがどうしてあなたに、零さんに惹かれているのか分かった気がします。零さんといると楽しいです」

「そりゃどうも。ま、俺はただ可愛い子と遊びたいってだけで何かしてやったつもりはないけどな」

 

 

 俺は女の子の笑顔が好きだから、無意識の間にデート相手を楽しませてしまうらしい。今回はそれがたまたま栞子の問題を解決しただけで、俺からは特別何かを働きかけた気がしないんだ。結果オーライという言葉があるように、それで可愛い子の笑顔が見られるのであればそれでいいけどさ。

 

 

「じゃあ俺はそろそろ帰るよ。あまり遅くなると妹がうるせぇからな」

「ま、待ってください!!」

 

 

 俺が背を向けると、栞子は俺の服の袖を掴んで来た。

 それからは、以前語った通りだ。

 

 

 

 

~~~~~

~~~~~

 

 

 

「なるほど、そんなことがあったんですね」

「あぁ、これで満足か?」

「まぁ聞きたいことは聞けましたけど……」

「けど? あぁなるほど、俺の魅力がアップして惚れたか?」

「本当に女垂らしですね、お兄さん……」

「そっちかよ!?」

 

 

 話を聞いた感想がそれって、侑の奴は相変わらず素直に褒めることをしない。それだけ俺のことを理解して、褒めたら調子に乗ると分かっているからだろう。もう神崎零マイスターじゃねぇかコイツ。

 ちなみに栞子はというと、さっきの話の出来事を思い出して恥ずかしくなったのか、終始顔を赤くして俯いていた。

 

 

「栞子ちゃんがお兄さんを慕ってる理由も分かったよ。そんなことがあったのなら……分からなくもないけどさ」

「今の私があるのは零さんのおかげですから、恩人としても救世主として慕うのは当然です。そ、それに……」

「それに?」

「こ、こんな素敵な男性に可愛いって言ってもらえて、そ、その……もっと言ってもらいたいと思って……えっと、だからもっとお傍にいたいなぁ~って……」

「…………やっぱり女垂らしでスクールアイドルキラーで、浮気野郎だお兄さんは」

「だから罵倒やめな??」

 

 

 あまりにも即堕ちした栞子を見て、俺を見る侑の目がますます呆れかえるのであった。

 だからコイツに話したくなかったんだよ!!

 




 栞子は虹ヶ咲編のメインキャラ……とは言い難いですが、登場させたからには個人回をしっかり作ってあげないとと思い、今回は珍しく過去の話から引用した回となりました。
 彼女はこの小説的にはメインキャラ~サブキャラの間くらいの立ち位置なので、また機会があれば零君と彼女の話を掘り下げたいですね。

 巷ではラブライブに追加キャラはどうなの?? って声もありますが、私は彼女の性格やキャラは大好きですよ!



 小説が面白いと思った方、是非ご感想や評価をよろしくお願いします!

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