ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

449 / 589
 前回の続きで、今回も侑視点です。


強制ノーパン de サバイバル

 ここまでのあらすじを簡潔に説明すると――――

 

・秋葉さんの作成した健康管理アプリによって私たちは強制的にノーパンに

・そのアプリの効果で私たちが手に取る衣類が氷のように固まって着替えることが不可能に

・ノーパン状態でライブ用品の置かれている部屋の引っ越し作業をすることに

・その作業をラッキースケベ能力を持っているお兄さんと一緒にすることに

 

 私たち、お兄さんの目を上手く掻い潜れるのかな……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「やっと来たか。遅いぞ」

「ゴメンなさい! 部室で話し込んじゃってて……」

 

 

 お兄さんとの待ち合わせ場所である学園のロビーに向かうと、案の定と言うべきか既にお兄さんが到着していた。こうして実際にお兄さんと相まみえると自分が今ノーパンであるという事実がより一層気になってならない。さっきは歩夢たちだけだったからまだ恥ずかしいと思うだけで済んだものの、異性であるお兄さんを目の前にすると股が変にウズウズしてくる(変な意味ではない)。それは歩夢たちも同じようで、もう既に頬を赤くしたり脚をもじもじさせていた。

 

 

「ったく、お前らから誘ってきたくせに……。まぁいいや。で? ライブの小物が置いてある部屋の引っ越しだっけ? その部屋はどこにあるんだ?」

「こっちです。行きましょう」

 

 

 なんとか体裁を取り繕って平静を保っているようには見せてるけど、内心では心臓が激しく鼓動している。いつ何かの拍子でスカートが捲れ上がらないか、お兄さんや愛ちゃんが悪ノリした際に中が見えちゃわないか、お兄さんのラッキースケベが発動しないかなど、想定しうる事故に身構えているだけで精いっぱいだ。

 

 

「おい」

「は、はいっ!?」

「どうしてさっきから俺をチラチラ見てるんだ? やけに挙動不審だけど……」

「そ、そうですか? いやお兄さんが面倒事に付き合ってくれることが珍しいなぁと思っただけで……」

「まあ自分から面倒事には首を突っ込まないけど、頼まれたとあれば別の話だ。女の子だけに力仕事をやらせるわけにはいかねぇしな」

「さ、さすが零さんです!! そういうところがカッコいいし頼りになります!」

「おぉう、どうしたせつ菜? そんな異世界転生モノで無双する主人公を讃えるような褒め方は……。いや褒めてくれること自体は嬉しいけどさ」

「ホ、ホントにそう思ってますから!! えぇ!!」

 

 

 せつ菜ちゃん、ノーパンが恥ずかし過ぎて空回りしてるなぁ……。お兄さんを褒めることで自分がノーパン状態でいるという事実を忘れようとしているのだろう。顔も赤いし目もぐるぐるしていて焦っているのが丸わかりだ。そりゃ大好きな人が目の前にいるのにスカートの中が丸裸状態だなんてまともな精神状態でいられないよね……。

 

 お兄さんと会って数分も立っていないのに極度の緊張に襲われる。もちろんお兄さんは私たちの身に起きていることなんて知らないだろうけど、むしろ知られたら困るので何とか隠し通さなければならない。

 そんな中、歩夢が小声で話しかけてきた。

 

 

「侑ちゃん侑ちゃん……ッ!!」

「どうしたの歩夢そんな迫真の顔して……」

「こ、この廊下……」

「廊下って別に気にすることでは――――って、え゛っ!?」

 

 

 廊下なんかで何を騒いでいるのかと思って見てみたら、掃除された後なのかピッカピカの鏡面仕上げになっていた。どれだけ磨いたらこんなに綺麗になるのか、アニメや漫画で良くあるキラキラマークが目に見えそうなくらいだ。

 廊下が鏡面になっていればもちろんスカートの中がその鏡面越しで丸見えとなってしまう。つまりお兄さんが少しでも廊下に目線を降ろせば一緒に歩く私たちのノーパン姿が全て曝け出されて――――って、そんなの絶対にダメだから!! そもそも学校の廊下がこんな仕様なのも、この学校を設立した秋葉さんの仕業なのでは……??

 

 なんだかんだ言っても目的の部屋に行くには他にルートはなくここを通るしかない。スカートで股の下を隠そうにも、そんな不自然な格好で歩いていたら察しのいいお兄さんにバレてしまうかもしれない。走って通り抜けようにもご丁寧に側の掲示板に「廊下で走らない!」と注意書きが張られている手前やりにくい。ただでさえ八方塞がりだったのにまだ私たちに蓋をするのか……。

 

 

「いや~まさか引っ越し作業の前に私たちが痴女だってことがバレちゃうかもね~♪」

「愛ちゃんなんでちょっと嬉しそうなの!? ていうか痴女じゃないし! それにまだ私は諦めてないからね!」

「とりあえず零さんの後ろについていく形で歩きましょうか。そうすれば見られないはずですから……」

 

 

 私たちはお兄さんの背後に身を隠しながら鏡面仕上げの廊下を進むことにした。

 したんだけど……。

 

 み、見えてる!! 何がとは口に出して言わないけど廊下にうっすらと!!

 幸いにも本当の鏡ではないのでモザイクが掛かっている感じにはなっているが、肌色なのはバッチリ確認できるのでスカートの下に何も履いていないことは容易にバレる。つまりお兄さんに足元を見られたら何もかもが終わる……!!

 

 

「れ、零さん!!」

「えっ? おい歩夢どうした急にくっついてきて!?」

 

 

 歩夢が突然お兄さんの元へ走り出したと思ったら、なんとその勢いでお兄さんの腕に抱き着いた。あまりに唐突なことだったので驚いたけど、歩夢もさっきのせつ菜ちゃんと一緒で冷や汗をかきながら頬を赤らめているので焦っているのが目に見えて明らかだ。でもどうしていきなりそんなことを……?

 

 

「実は零さんに会えたことが嬉しくてつい……」

「いや昨日も会っただろ……」

「ま、毎日会いたいんです! それくらい零さんのことが大好きなので!!」

「何故ここで告白!?」

 

 

「歩夢ってば、もしかして零さんがうっかり足元を見ちゃわないように自分に集中させようとしてる?」

「そうみたいだね……」

 

 

 歩夢も完全に暴走しちゃってるなぁ……。愛ちゃんの言う通り、歩夢はお兄さんの気が他に散ってしまないよう大胆に告白してまでノーパン状態がバレることを阻止している。お兄さんは夢にも思わないだろうなぁ。ストレートに告白してくる女の子が、実は下着を履いていないなんて……。

 

 

「わ、私も零さんのこと、毎日ずっと心待ちにしているんですよ……?」

「ちょっ、せつ菜お前まで!?」

「せつ菜ちゃん!?」

「私だってその……好き、ですから……」

 

 

 歩夢に続いてなんとせつ菜ちゃんまでお兄さんの腕に抱き着いた。歩夢とは反対方向から抱き着き、これまたドが付くほどのストレートな告白でお兄さんを、そして私たちに衝撃を与える。いくらいつも女の子を侍らせているお兄さんとは言えども、思いがけない展開で両手に花となっては戸惑いを見せるしかないようで、2人の猛アタックに珍しく押されているようだった。

 

 そういえばせつ菜ちゃんは私たちの中で誰よりもノーパンであることを恥ずかしがってたから、羞恥心を我慢できずに暴走しちゃうのも無理はないか……。ノーパンがバレる危険性と常に隣り合わせで緊張を張り巡らすよりも、こうしてお兄さんに告白してでも注意を逸らす方がまだ我慢できる。そう言った判断だと思う。いや私からしてみればそんな勇気はないから本当に勇者だよ、2人共……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 なんとか鏡面仕上げの廊下を無事に渡り抜け、ライブ用品が置いてある部屋に辿り着いた私たち。歩夢とせつ菜ちゃんの健闘もありなんとかノーパンであることをバレずに切り抜けられた。

 だけどあれは前座で本番はここから。部屋の引っ越し作業なので物を持ったり運んだりと、必然的に身体を動かすことが多くなる。そうなれば当然スカートが捲れ上がることも多くなるわけで……。せめて着替えることができたらこんなことで悩まなくても良かったのに……!!

 

 

「そういやお前ら、どうして制服のままなんだ? 動くんだからジャージに着替えた方がいいだろ」

「「「う゛っ……!?」」」

「いや~それがさ、かすかすが私たちのジャージや練習着を全部洗濯に出しちゃって! 本人は善意でやってるとは思うけど、今日私たちが引っ越し作業するの知ってるのにおっちょこちょいだよね♪ ま、そういうところが可愛いんだけど」

「あ~アイツならやりかねないな。制服のままで作業をさせる新手のイタズラかもしれねぇけど」

 

 

 ナイス愛ちゃん! 流石はコミュ力お化け、返答も早く誤魔化し方も自然でお兄さんに怪しまれる気配は全然ない。その代わりにかすみちゃんが犠牲になったけど、今の私たちは背水の陣だからここは我慢して欲しい。

 

 

「まぁお前らがその恰好でもいいってのならそれでいいや。とりあえず早く片付けるぞ」

 

 

 遂に始まってしまった引っ越し作業。予想通り動き回ることからスカートがひらひらしてしまい、中が見えてしまわないか心配になって作業に集中できない。歩夢とせつ菜ちゃんも同じようで、常にスカートを抑えながら物を持ったり運んだりしているので作業に身が入っていないようだ。逆に愛ちゃんはもう見られていいやの精神だからか、スカートが捲れ上がることに何の抵抗もなくテキパキ作業をこなしている。時折本当にギリギリ見えるか見えないかのラインまで捲れ上がっているのでこっちまでヒヤヒヤしてくるよ……。

 

 しかもこの部屋、日当たりが悪いためかかなり寒い。秋口に入って涼しくなってきた影響をモロに受けており、ノーパンにこの寒さはかなり効く。そのせいで今まで以上に股がムズムズして仕方がないんだけど……。

 

 

「おい歩夢。高いところにあるのは俺に任せとけ。そんな背伸びをしてたらバランスを崩してケガするぞ」

「は、はいっ、ありがとうございます――――ふぇぇっ!?」

「お、お兄さん……!?」

 

 

 お兄さんは高いところの荷物を取ろうとしている歩夢の背後に立ち、そのまま荷物を降ろそうとする。それだけ見れば気遣いのできる優しい人にしか見えないんだけど、その体勢が問題だった。

 お兄さんは歩夢の背中にピッタリと引っ付く形で立っているため、歩夢は壁とお兄さんに挟まれる形となっている。そしてお兄さんの脚が歩夢の股の間に入ってしまった。

 

 

「意外と大きい荷物だな。よっと!」

「ひゃぁっ!?」

「えっ、なんだこの感触……」

 

 

 お兄さんが高いところにある荷物を取るために背伸びをしたことで、膝が歩夢の股を押し上げた。幸いにもスカート越しだったから良かったけど、それでもパンツがないから実質布1枚越しにお兄さんの膝と歩夢の下半身が触れ合っていることになる。歩夢は刺激を与えられたため声を上げ、お兄さんは謎の柔らかい感触がして驚いていることだろう。現に荷物を取る手を止めて歩夢を不思議そうに見てるし……。

 

 

「今すげぇ変な感触がしたんだけど……。なんかこう、割れ目を感じられるよう――――って、いや、なんでもない」

「そ、そうですか? わ、私は別に何とも……」

 

 

 いや動揺してるのバレバレだから……。瞬きも早くなってるし、元々嘘を付こうとしても顔に出ちゃう性格だから逆に怪しいんだよね……。ていうかお兄さん、さっき直接的なことを言いそうになったよね? 咄嗟に止めたけど普通にアウトのところまで言っちゃってた気がする。

 

 とりあえず微妙に怪しまれたけど無事に荷物を降ろし、この場は切り抜けた歩夢。

 だけどこれで終わるとは到底思えない。とにかく早く作業を終わらせるしかなさそうだ。

 

 そんな感じで荷物を部屋の外に出す作業は続く。

 

 

「せつ菜、どうした?」

「えっ、えっと、この大きな荷物を運びたいんですけど奥から引き抜かなくてはならなくて……。でも1人だと力が足りないせいかビクともしないんです……」

「じゃあ一緒に引き出そう。手握るぞ?」

「へっ? ひゃっ!?」

 

 

 今度はせつ菜ちゃんがターゲットになった。まあお兄さんは善意だからそんなことを言うのは失礼極まりないけど、今の私たちにとってお兄さんと触れ合うことがどれだけの危険を伴うのか想像するだけでも恐ろしい。いつノーパン状態がバレてもおかしくないからね……。

 

 お兄さんはさり気なくせつ菜ちゃんの手を握って一緒に荷物を取り出そうとする。さっきの歩夢の時もそうだけど、そういったさり気なく優しいところがモテるんだなぁって思うよ。せつ菜ちゃんさっきまでノーパンがバレるか否かで緊張していたはずなのに、今はお兄さんにいきなり手を握られてそっちでドキドキしちゃってるじゃん……。

 

 

「もうちょっとで引き抜けそうだ。せつ菜、力を入れて引っ張れよ」

「は、はいっ! えいっ!」

「よしっ、引き抜けたぞ――――うぉっ!?」

「きゃぁっ!?」

「お兄さん!?」

「せっつー!? 大丈夫!?」

 

 

 お兄さんとせつ菜ちゃんは荷物を引き抜いた勢いでそのまま後ろに倒れ込んでしまう。お兄さんの体勢はさっきの歩夢の時と同様にせつ菜ちゃんの背後から手を沿わせていたので、必然的にせつ菜ちゃんはお兄さんの身体の上に倒れちゃったんだけど……触れ合ってる!! どことは詳しく言えないけど下と下が!! せつ菜ちゃんのスカートで丁度その部分は見えないのが救いか。でもこれも歩夢の時と同じで履いていないせいで下の感触がモロに……!?

 

 

「ひゃぅ!? い、色々当たって……ッ!?」

「なんか傍から見たら挿ってると勘違いされそうだな……」

「なにを冷静に解説してるんですか!! ほら、せつ菜ちゃんも早く離れて!! そうしないとお兄さんに――――」

「俺に?」

「な、なんでもないです……」

「つうかさ、歩夢の時もそうだったけど違和感があるんだよな。俺の考えてることが正しければ――――」

「とりあえずこの荷物をパッパと運んじゃおうよ! ただでさえ始めるのが遅かったのに、これ以上ゆっくりしてたら下校時間になっちゃうよ?」

「そ、そうだな……..。う~ん……」

 

 

 またしてもナイス愛ちゃん! もうお兄さん9割くらい勘付いてる感じだったけど上手く話題を逸らしてくれた。このまま流して有耶無耶になってくれれば私たちの勝利だ。ここさえ切り抜けさえすればあとは家に帰ってパンツが戻るまで自室に引き籠っているだけで済む。もう少しの辛抱だよみんな!

 

 

 ――――と思ったんだけど……。

 

 

「零さ~ん! 愛さんの方も手伝ってよ~」

「分かって今行く――――って、お前スカートの中!?」

「あっ、あぁそういえば。エッチだねぇもう♪」

「振り向いたら目の前におしりが見えて、それで驚かねぇ奴はいねぇだろ!? てか履いてないのか……? ギリギリ全部は見えなかったけどさ」

 

 

 なにやってるの愛ちゃん!?

 棚の下の方の荷物を引き出すために四つん這いになっていたせいでスカートが捲れ、おしりが少し見えてしまっていた。この部屋に来る前からずっとそうだけど、自分がノーパンであることになんら抵抗感がないのが凄い。お兄さんに見られてもいいと思っているのか、それとも日常的にノーパンで生活していて慣れていたりするのかな……? 精神が図太いのか羞恥に無頓着なのか。どちらにせよお兄さんが抱いていたノーパン疑惑を確信に変えちゃダメだって!!

 

 

「履いてるよ。Tバックってやつ?」

「そ、そうなのか。てかスカートの下にそんなモノを履くとか正気かよ……」

「零さんを誘ってるって言ったら?」

「ふん、学校でそんなヤる気になるかよ」

「だったら家で2人きりだったらその気になっちゃうんだ~♪」

「ったく、手伝ってやるから口より手を動かせ」

「りょーかーい!」

 

 

 ヒヤヒヤするなぁもうっ! Tバックを履いているって嘘で誤魔化せたけど、もしノーパンだってことがバレたら芋づる式に私たちまで火の粉が降りかかるから心臓に悪い。誤魔化すためにいつ会話に割って入ろうかと機会を窺っていたけど、相変わらずの機転の良さでこの場は乗り越えた。それでももう愛ちゃんの下はかなり見られちゃったけどね……。

 

 

「侑、お前も何か手伝って欲しいことはあるか?」

「えっ、私ですか? 私はここの小物を運ぶので、お兄さんはみんなの方を手伝ってあげてください」

「そうか。じゃあ余裕があるだろ? ついでにコイツも運んでおいてくれ。そんなに重くないからお前1人でもいけるだろ」

「はい。分かりました――――ん??」

 

 

 その時、私は気付いた。荷物をこちらに持ってくるお兄さんの足元に空き瓶が転がっていることに。どうしてこんなモノがここにとか考えている暇はない。私の脳裏にはこの後の展開が未来予知の如く想像される。

 

『お兄さんがビンを踏んで転ぶ』

『私に倒れ込んでくる』

『ラッキースケベ発動』

『スカートを捲られて中を見られる』

 

 

 

 それはダメ!! 絶対にダメ!! なんとしてでもこの未来を変えないと!!

 

 

「お兄さんストップ! 私が受け取りに行きます!」

「なんだよ急に。俺から持っていくから別にいいって」

「お兄さんはそこにいてください! いいですね?」

「はぁ? 何をそんなにムキになってんだ?」

「い・い・で・す・ね?」

「わ、分かったって……」

 

 

 やり投げな威圧でお兄さんをその場に止まらせ、私から向かうようにする。お兄さんを動かしてしまうとどこでラッキースケベを発動されるか分からないからね。でもこれで安心。転んで女の子のスカートの中に顔を突っ込む展開とか平気で起こりえる人だから、私も最大限の注意を払ってしまう。

 

 しかし、私は気付かなかった。なんと自分の足元にも空き瓶が転がっていることに。お兄さんの足元しか見ていなかった私はまさに灯台下暗しで、自分の足元には全く目もくれていなかった。

 そうなればもちろん私の足はその空き瓶を踏んでしまい――――――

 

 

「きゃっ!?」

「ちょっ、あぶねぇ!?」

「侑ちゃん!?」

「侑さん!?」

「零さんも!?」

 

 

 一瞬でお兄さんがこっちに駆け寄ってくれた光景を最期に、私は目を瞑ってしまい視界が真っ暗になった。おしりに衝撃が走ったことからどうやら尻もちをついてしまったらしい。幸いにも痛みは少なかったけど、もしかして助けてくれようとしたお兄さんを巻き込んじゃったり……?

 

 私は恐る恐る目を開けてみる。すると自分がM字開脚をしていることに気が付く。この体勢は知っての通りスカートの中が丸見えになる危険な格好。つまりスカートの中がお兄さんに……!?

 

 

「ったく、気を付けろよな」

「えっ、あれ……?」

 

 

 自分の下半身を見てみると、お兄さんが裾を手で押さえてくれたおかげで中身を晒す事態は避けられていた。いつもならお兄さんのラッキースケベが発動してスカートどころかパンツまで脱がされる勢い(今は履いてないけど)なので、この展開は正直ビックリしている。お兄さんが転んだのではなく私が転んだから未来が変わった……とか?

 

 

「言っておくけど、スカートを捲ろうとしてるんじゃないからな? いつもだったら転んだ拍子に捲っちまうけど、今回は守り抜いてやったんだ」

「あ、ありがとうございます……」

「侑ちゃん大丈夫?」

「う、うん……」

「ケガしたらすぐ保健室に行けよ。あとは俺たちでやっておくから」

「はい。ありがとうございます……」

 

 

 あぁ~なんかズルい。こうしてたまにカッコいいところを見せるのはズルい。さっきまでお兄さんの目を何とか避けようとしていたのに、なんだかそれが申し訳なくなってくる。もちろんノーパンを見られるのはイヤだけど、愛ちゃんが零さんに対して恥ずかしがらず大胆になれる図太さが少しだけ、ほんの少しだけ理解できた……ような気がする。なんだかんだ女の子を大切にしてくれるから、守ってくれるから安心できるんだなぁって。それでもやっぱり直接見られるのは恥ずかしいけどね。

 

 ちなみにその後は滞りなく作業は終了し、特にノーパンがバレることもなかった。それから間もなくパンツが復活したので、事態は無事に終息した。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 ちなみに少しの間、外で1人で作業していたお兄さんは――――

 

 

「履いてないなら履いてないって素直に言えばいいのに……って、流石に恥ずかしいか。秋葉の奴が悪いことをしたって謝っておくか? いやいや、本人たちが必死に隠してるんだから掘り返す必要はないな、うん。でもそれはそれで逆に俺がモヤモヤするっつうか、目の前にノーパンの女の子がいるなんてドキドキするじゃねぇか!!」

 

 

 私たちの知らないところで葛藤していた。

 




 いつもは変態だったりする男キャラが時折ちょっとイケメンムーヴをする展開、私は好きだったりします(笑)


 小説が面白いと思った方、是非ご感想や評価をよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。