ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 6周年記念の後半戦です。
 Saint Snow → 近江遥、綾小路姫乃 → 高崎侑

 サブキャラとかいいながら侑ちゃんはメインですが、まあ書きたかったので許してください(笑)


【特別編】サブキャラたちのバレンタイン(後編)

 矢澤のロリ姉妹と別れた後、また別の女の子たちと会ってたくさんのチョコを貰った。

 まずμ's。いつも通り集まって練習をしている最中にみんなからチョコを貰い、既に貰っていた楓の分を除いて一気に11個プラスされた。そしてその後は東京に遠征に来ていたAqoursの練習にも付き合い、そこで更に9個を貰ったことで現在の総数は28個だ。普通の男であればこれだけの量を貰えば歓喜に満ち溢れるんだけど、残念ながら俺は普通ではない。女の子たちに好かれ過ぎてバレンタインチョコを1000個受け取らなければならない謎のミッションが掲げられている身。これ、相当贅沢な悩みだよな……。

 

 次なるチョコレートを求め、μ'sがよく練習に使っている神社へとやって来た。幸いにも今日はたくさんの女の子と会う(恐らくバレンタインチョコを渡すためだろうが)から、俺が必死をこかなくても自然とチョコは集まるだろう。それでも1000個の大台に乗せるためには普段から連絡を取り合っている子たちじゃ足りないわけだが、それ対策でしっかりと作戦がある。とりあえず今は久々に会う()()()()との再会を喜ぶか。

 

 そう思って神社への石段を登り切った時、突然誰かが俺の胸に飛び込んで来た。危うくのけ反りそうになるが、勢いに反して抱き着いてきた子が小柄だったので意外と楽に持ちこたえる。つうかこのバイオレットのツインテールは――――

 

 

「理亞?」

「うん。こんにちは、兄様。ずっと会いたかった」

「もうっ、理亞ったら危ないよ。大丈夫でしたかコーチ」

「あぁ、女の子を受け止めるのは慣れてるからな。それに理亞の元気な姿を見られて良かったよ。お前も変わりなさそうだな、聖良」

「はい、ご無沙汰しています。私も理亞もコーチに会えるのをずっと楽しみにしていました」

 

 

 北海道出身のスクールアイドルであるSaint Snowの2人。鹿角聖良と理亞の姉妹。今日は東京に来るってことで久しぶりに会うことになった。ここに来た理由は近々行われるスクールアイドルの選手権に参加する目的だと聞いているが、コイツらの最優先目的は絶対に俺だろう。いつも連絡自体は取っているのだが、理亞は『会いたい会いたい』と念仏のように唱えていたし、聖良も普段通り凛とした様子だが時折寂しそうな声を出すなど、もはや姉妹の会いたいオーラが電話口からでも伝わって来ていた。だから理亞が俺に飛び込んできたのも無理はないってことだ。

 

 

「兄様、いい匂いがする。すぅ~~はぁ~~」

「人の胸に顔を埋めて匂いを嗅ぐなよ……」

「今日だけは許してあげてください。理亞、これを楽しみに東京に来たようなものなので……」

「これをやるためって、なんか再会を喜びづらくなったのは俺だけか……?」

「素直に喜んでいいと思います。理亞がここまで人に懐くなんて普通ではあり得ないことですから。私にすらこんなことをしないので」

「普段は素っ気ないからこそ、欲望を解放した時の鬱憤晴らしが凄いってことか……」

 

 

 女の子から好意を向けられることには慣れているが、こうして斜め上からのアプローチは未だに慣れねぇな。自分の妹や淫乱鳥、虹ヶ咲連中の大胆アプローチで普通ではない女の子たちに囲まれてはいるけど、これが俗に言う同族嫌悪の一種なのかも……。変態度で言えば俺も負けてはないどころかアイツらを優に上回っているだろうからな、そういうことにしておこう。

 

 理亞に抱き着かれ未だに動けずにいると、聖良がカバンから包み紙を取り出して俺に差し出してきた。

 

 

「コーチ、ハッピーバレンタインです。こうした洋物のお菓子を作るのは初めてだったのですが、愛をたっぷり込めて作ったので召し上がってくださると嬉しいです」

「あっ、姉様だけズルい。兄様、私も作ってきたからあげる」

「おぉ、ありがとな」

 

 

 2人の実家が和風の喫茶店だからか、チョコレートの包み紙がかなり古風だ。俺はコイツらの実家に行ったことはないのだが、実際に現地へ出向いたことのあるAqours連中の話によると、コイツらの和風メイド姿は超絶に可愛いらしい。そりゃ美人因子抜群のこの姉妹だったら何を着ても似合うだろう。だから俺もこの目で直々に拝んでみたいもんだ。コイツらのことだ、俺が見たいって言ったら写真くらいすぐに送ってくれるはず。女の子の衣装を好きに指定できるなんて贅沢だよな、我ながら。

 

 

「せっかくだし、お前らのライブでも見ながらこのチョコをいただこうかな。ほら、お前らが参加するスクール選手権だよ」

「兄様はふんぞり返って私たちのライブを見ていていいよ。どうせ優勝するのは私たちなんだから。兄様と心と心が繋がっている私たちが勝つのは自明の理。兄様の加護があれば負ける気はしない」

「余裕だなオイ。精々足元をすくわれないように気を付けるんだな。ま、その余裕こそがSaint Snowって感じだけど」

「問題ないです。コーチは()()()の愛がたっぷり詰まったチョコを召し上がりながら、()()()のステージをのんびりとご覧いただければと思います。そして、優勝して観客から注目を浴びているあの女たちは俺のモノで、俺のためにチョコを作ってくれたんだぞと是非優越感を満たしてください。こちら、ステージが良く見える特別席のチケットもご用意しましたので」

「なるほど、それはチョコがより一層美味くなりそうだな」

 

 

 今や死語となりつつある言葉に『メシウマ』ってのがあるが、まさにその使い時だろう。コイツらレベルになればファンも多く注目度も高い。そんな子たちを有象無象は観客席から眺めることしかできないのに、俺はコイツらの真心が籠ったチョコを特等席で頬張りながらそのステージを眺める。金持ちの道楽みたいなシチュエーションだが、これは紛うことなき現実だ。スクールアイドルの子と知り合っておくとこうやって満足を感じられる機会が多いから楽しくて仕方がねぇよ。

 

 そうやって打算的な考えを張り巡らせているが、それもコイツらの従順な想いがあってこそだ。ぶっちゃけ俺に心酔していると言っても過言ではない。ま、たまにはそんな子たちと一緒に背徳的な刺激を感じてもいいだろう。

 

 

 

 

【現在のチョコ数】

 30個(残り970個)

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 鹿角姉妹と別れた後、俺は自身の通っている大学へと向かった。4年生の秋なので授業という授業はないのだが、俺の目的はたった1つ。もちろんバレンタインチョコだ。同じ大学で4年間も過ごしていれば必然的にたくさんの女の子と出会うことになり、それなりに親密になっている子たちも多い。いわゆる友達以上恋人未満の関係だが、ミッション達成のために1つでもチョコが欲しいこちらとしてはそんな関係性だろうが関係ない。女の子から貰えればそれが本命であれ義理であれバレンタインチョコには変わりないのだから、貰えるものは貰うに決まってる。

 

 そうやって期待した結果、なんとか68個の収集に成功した。チョコを渡してくれた女の子は他の奴らにも配っていて明らかに義理だと分かるモノ、ばったりと出会った際についでに渡されたモノ、俺のことを待ち伏せして渡されたモノ、頬を赤くして本命っぽい感じで渡されたモノなど、女の子の様子は千差万別であった。関係性の浅い深いはあるにせよ、ここまで女の子の人脈を広げていたことを便利だと思ったことはない。もちろんただミッション達成のために貰ったと言うのは流石に申し訳ないので、あとで1つ1つしっかりといただくとしよう。本命はもちろん義理でも俺のために買うか作ってくれたものだしな。

 

 ちなみに毎年チョコを貰い過ぎて食い切るのに軽く1週間はかかっていたのだが、今回はそれどころの話じゃない。この冬どころか春、いや夏、最悪1年かかってもおかしくはない。そしてまた次のバレンタインが来ると。あれ、これって無限ループ……??

 

 そんなこんなで大学を後にして、ミッション達成の立役者となるだろう虹ヶ咲学園へと向かう。

 その道中で見知った顔にばったりと出くわした。

 

 

「遥? それと……姫乃?」

「えっ、零さん! 姫乃さん、零さんですよ! 虹ヶ咲へ行く手間が省けましたね!」

「零さん!? えっ、あっ、まだ心の準備が……」

「ん?」

 

 

 エンカウントしたのは虹ヶ咲の近江彼方の妹であり、東雲学院スクールアイドルの遥と、藤黄学園のスクールアイドルである綾小路姫乃だ。どうやらコイツらも虹ヶ咲へ向かう予定だったらしく、手間が省けたってことはもしかして俺に会う目的だったとか? もしそうだったとしたら出会えたことには僥倖だ。それにしても姫乃がそわそわしているのが気になるが……。

 

 

「今日はバレンタインデーですから、私たち、零さんにチョコをお渡ししたくて虹ヶ咲へ向かっていたんです!」

「えっ、俺のために? 姫乃もか?」

「そ、そうです! 悪いですか?」

「いや悪くはねぇけど、お前が俺にチョコを渡すなんてどういう風の吹き回しかと思ってな。お前、俺のこと嫌ってなかったっけ?」

「別に嫌ってなどいません。でも遥さんから一緒にチョコケーキを作ろうとお誘いを受けたので……」

「でも引き受けたってことはそのつもりだったんだろ? 心の底から嫌ってる奴に対してチョコを送ろうなんて思わねぇからな」

「実際姫乃さんとてもやる気でしたよ! 何度も何度も生地を作り直したりして、チョコケーキの見た目にも拘ってましたから」

「な゛ぁ!? は、遥さん!? それは作るのであれば手を抜きたくないという自分の性で、決して零さんのためでは……」

 

 

 大和撫子が似合いいつも凛然としている姫乃だが、今はまさに恋する乙女のようだ。実際に恋をしているのかは知らないけど、出会った頃の噛み付き具合に比べれば態度に天と地ほどの差を感じられる。遥には最初から慕われていたからチョコを貰えるだろうという自慢に近い確信があったが、コイツからも貰えるなんて今日最大の驚きだ。

 

 

「今日のために一生懸命作りました。是非受け取ってください!」

「ありがとう。あとで食った感想を送るから楽しみにしておけ」

「はいっ、ありがとうございます! 大好きな零さんに喜んでもらえて私嬉しいです!」

「遥さん凄く直球……。羨ましい……」

「俺からしたら、お前がそこまでデレてくれているだけでも嬉しいけどな。どうしてそうなったかは知らねぇけど」

「い、意外と朴念仁なんですね……」

「そうだな。だから想いを直球で伝えてくれないと分かんねぇんだよな~」

「し、白々しい……!!」

 

 

 別に嘘ではないぞ。女の子と交流を深めていたら何だかんだ惚れられていた経験は今まで無数に存在した。だからこそさっき大学に行った時も本命っぽいチョコをたくさん貰った訳だしな。俺からしたら自分の想いを押し殺している女の子の方が珍しく、それ故に奥手の子の想いに気付かないこともあるから、その気持ちを直球で伝えてくれないと分からないってのは特段嘘じゃないんだよ。これでも女心はある程度察することはできるようになったけど、それでもデリカシーがないだのなんだの未だに言われるからな。女の子と付き合うって難しい……って、どの口が言ってるんだと思われるかこれ。

 

 

「これまで色々助けていただきましたから、今日はそのお礼です。義理ですから」

「なるほど。義理でも俺にこのチョコケーキを贈ろうとしてくれた気持ちは本物ってことか」

「ち、ちなみに私は本命ですよ……? きゃっ、言っちゃった……」

「お前も遥みたいに素直になってくれるのを待ってるぞ、姫乃」

「うっ!? うぅううううううううううううううううう!!」

「姫乃さん顔真っ赤ですよ!? 姫乃さーーーーんっ!!」

 

 

 初心っ子をイジメすぎるのはよくねぇな。俺の周りには純粋な心を持つ奴が少ないからこそその清らかな心を大切にしなければならない。そうでないと脳内ラブホテルを建設する奴ばかり出てくるから……。

 とにかく、意外な子たちに会ったおかげでチョコの受け取り数を増やすことができた。全体の必要数から見れば到達までまだまだだが、そんなミッションよりもコイツらから貰えたことは素直に嬉しいよ。

 

 

 

 

【現在のチョコ数】

 100個(残り900個)

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 遥と姫乃と別れ虹ヶ咲へ向かった俺。そこでは案の定というべきか、栞子を含めた歩夢たち虹ヶ咲のスクールアイドル10人からバレンタインチョコを貰った。これは予定調和でありがたくいただいたわけだが、これだけではまだミッションの達成には程遠い。

 だがここは虹ヶ咲学園。秋葉によって俺を好きになる素質を持つ女の子ばかりが集められた、いわば楽園なのだ。つまりバレンタインに俺がこの学校に出向けばどうなるかはもうお察しのこと。一歩歩けば女の子たちからチョコを貰えるほどであり、これまでとは比にならないスピードでチョコの総数が加算されていった。もはや何個貰ったのか途中から数えることができなくなったが、秋葉が作ってくれた四次元ポケットの格納庫に現在の収納数が記されており、その数値がボタン連打の回数を数えているかのように増加していた。これだけ勢いがあれば目標達成は余裕だろう――――そう思っていたのだが……。

 

 

「やべぇ。あと1個足りねぇ……」

 

 

 現在のチョコ数は999個。そこまで搔き集めただけでも上出来なのだが、残念ながらあと一歩届かなかった。

 現在は日も落ちもう夕方。部活も終わり校内に人はほぼ残っていない絶望的な状況。それに俺への想いが強い子たちであればこんな遅い時間にチョコを渡しに来るはずもなく、実際ほとんどの子が俺がここにやって来てすぐに駆けつけてくれた。だから貰うべき子からは貰えているはずだ。だからこそアテがなくて困っているわけだが……。

 

 いや、全く心当たりがないと言ったらそうではない。俺の知る限り1人いる。この学校出身で俺にチョコを渡していない女の子が。そしてソイツはこの学校で唯一俺を好きになる素質がない子であり、秋葉によって意図的に投入された異端分子である。それ故に歩夢たちを含めこの学校の生徒はみんな俺を好意を抱いているのに対し、ソイツだけは俺の扱いが雑というか、恋愛の波動を感じたことがない。それこそただの悪友みたいな関係なので、ソイツからチョコを貰うのはかなり厳しいと見ている。

 

 そうなると別の子に頼りたいが、流石にこの夕暮れの時間帯からチョコを作らせるのも図々しいし、俺に渡す予定がありこれだけ時間が遅くなるのであれば事前に連絡くらいは入れるだろう。もちろんそんな連絡なんて来ていない。こうなるとミッションの制覇は絶望的であり、特にペナルティがあるわけではないが普通に悔しい。もはやここまでかと思っていたのだが――――

 

 

「あれ? お兄さん?」

「侑……」

 

 

 夕日を見つめながら目標達成を諦めようとしていたところ、帰り道でばったり侑と出くわした。今日は用事で練習には参加していなかったようだが、ここで出会えたのは運命のイタズラか。どうせ何も貰えないのに出会っちまうなんて運命も残酷なことをしやがる。こうして巡り合わせるなんて俺への当てつけかよ……。

 

 

「お兄さん何だかやつれてません? チョコを持ったみんなに押しかけられて疲れちゃったとか?」

「いや、嬉しいことだよそれは」

「ですよね。女の子好きのお兄さんのことですから、どうせ楽しんでいたに決まってます」

「チョコを貰うこと自体は嬉しいんだけどな……」

「それにしては元気がないですね。もっとほくほく顔になっていると思っていたので、意外です」

「チョコ自体は毎年たくさん貰ってるから。それでも気持ちの籠ったプレゼントはありがたいよ」

「ふ~ん……。あの、ちょっとだけ一緒に帰りますか? ちょっとだけ」

 

 

 なんだそのエッチの時の『先っちょだけ』みたいな言い方はとツッコミを入れそうになったが、絶対に機嫌が悪くなるので言い止まった。よく分からないが珍しく俺のことを心配してくれているようなので、その好意を踏みにじりたくはない。

 

 そしてしばらくお互い無言で歩き続けた。隣同士で足音だけが聞こえる状況だったが、最初にその空気を侑がぶち破る。

 

 

「女の子からチョコを貰うのって、そんなにも嬉しいことなんですか?」

「当たり前だ。本命であれ義理であれ、俺のために時間を割いてチョコを作ってくれたり買ったりしてくれているわけだしな。例えちっぽけでも俺への想いがあるのなら、俺だって全力で応えるよ。だから毎年みんなにチョコの感想を送り、ホワイトデーにお返ししてるんだ」

「えっ、1人1人にですか? 意外とマメというか律儀なんですね」

「俺の女の子に対する愛が強いのはお前もよく知ってるだろ? 何をいまさら」

「ふ~ん……」

 

 

 この会話の意図は何だ? ただの世間話だとは思うのだが、さっきから俺の方をチラチラと見てくるし一体どうしたんだ? 少々顔が赤くなっているのはこの夕暮れに照らされているから……だろうか。

 

 

「あっ、そういえば今日の放課後は音楽関係の資格試験に行っていたんですよ」

「なんだ藪から棒に……」

「やっぱり勉強って頭に糖分が必要じゃないですか。だからコンビニでいくつかチロルチョコを買って試験前に食べていたんですけど……あっ、たまたま1個残ってました。そういえば私ビター苦手なんですよね。適当に選んだので種類を見ていませんでした。そうだ、捨てるのも勿体ないのでお兄さんにあげますよ」

「えっ、あっ、あぁ……」

 

 

 これまで幾多のチョコレートを受け取ってきたが、今回以上に不自然な流れで渡されたことはない。最初からこう言おうと決めていたかのような台本セリフであり、淡々と語っていたエピソードに俺が割り込む隙もなかった。それにかなり棒読みだったし演技には向いてねぇなコイツ……。

 

 それでもチョコを渡してくれた事実は変わらない。どんな形にせよ贈り物は贈り物だ。手作りではなく、それでいて店に売っているようなバレンタイン用のチョコを買ったわけでもない。指で摘まめるだけの小さなチョコだけど、俺に渡そうと思ってくれていただけでも何だか嬉しいな。俺のことを嫌っていたコイツだからこそだ。

 

 

「ありがとな。助かったよ」

「今日がバレンタインだからとか、そんなのは全く関係ないですから。間違えて苦手な味を買ってしまって、捨てるのが勿体ないからお兄さんにあげただけです。そこにお兄さんに対する想いとか、そういうのはありませんから」

 

 

 侑から貰ったチョコを四次元ポケットに入れたら、チョコ総数が1カウント増えて1000個となった。ちなみに女の子から貰った心の籠ったバレンタインチョコ以外のチョコはカウントされないことを確認しているので、コイツから貰ったのは紛れもなくバレンタイン向けのものだ。なんだかんだ言いながらも最初から俺に渡そうとしてくれていたんだな。それが例え自分の試験のためにチョコを買うついでだったとしても、その気持ちを微量ながら込めてくれたらしい。コイツも素直じゃねぇな。

 

 何にせよ、これで目標の1000個は無事に達成された。最後に受け取ったのは誰よりも小さなチョコレートだったけど、俺の救世主であることも相まって忘れることはないだろう。

 

 

「あぁ、でもバレンタインチョコってことにしておけば、ホワイトデーにお返しを貰えたのか……。お兄さんに服とか買ってもらうチャンスだったかも」

「おいせっかくいい雰囲気で終われそうだったのにぶち壊すな……」

「ふふっ、冗談ですよ♪ お兄さん、いい顔になりましたね。良かったです」

「おかげさまでな」

「お兄さん」

「なんだ?」

 

 

 侑は夕日をバックにこちらに顔を向ける。

 

 

「ハッピーバレンタインです♪」

 

 

 それは、今日俺にチョコを渡してきた女の子の誰にも負けないくらいの笑顔だった。

 

 

 

 

【現在のチョコ数】

 1000個(クリア!)

 




 この特別編で普段はあまり描くことのできないサブキャラを割としっかり描写できたので私は満足でした! ラブライブのサブキャラは魅力的な子が多いので、皆さんのお気に入りが1人は出演できていたと思います。

 ちなみに公式では雪穂と亜里沙はサブキャラですが、この小説ではメインキャラなので省略されてしまいました。私はこの2人が特にお気に入りなので泣く泣くカットしましたが、また登場させてあげたいキャラの有力候補だったりします。



 小説が面白いと思った方、是非ご感想や評価をよろしくお願いします!

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