ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 ついに侑の個人回! あのハーレム王に真っ向から挑むとはなんて無謀な……

 そして今回は1話通して侑視点でお送りします。


侑とハーレムの王

 歓迎会の買出しから帰ってきた私たちは早速部室の飾り付けや料理に取り掛かった。とは言っても歓迎される側のお兄さん――――神崎零さんにそこまでさせるわけにはいかないため、今は私と2人で休憩所で休憩中。私も準備の手伝いをしようと思ったんだけど、お客さんであるお兄さんを校内で1人はしておけないため私が付き添いで一緒にいることになった。

 これまで歩夢やお兄さんと一緒にみんなと交流したり学校案内をしてきたけど、こうして2人きりになったのは初めてなんだよね。年頃の男性と2人きりになるなんて経験はしたことないから何を話せばいいのか迷っちゃうな。歩夢たちがお兄さんに緊張しまくっていたのも今なら分かる気がする。

 

 そんなことを考えていると、自動販売機で飲み物を買う音が聞こえてきた。そしてお兄さんは私に向かって缶ジュースを投げる。

 

 

「ほらよ、お兄さんからの奢りだ」

「わっ、とっと! 危ない落としそうだった……。ていうか悪いですよ! 仮にもお客様なのに奢ってもらうなんて……」

「気にすんな。年上からの慈悲だと思って素直に受け取っとけ」

「は、はい、ありがとうございます。炭酸――――じゃないみたいですね」

「俺がそんなイタズラをすると思うか?」

「痴漢ってイタズラの究極系だと思うんですよ」

「まだそのことを引き摺ってんのか、みみっちい奴め。俺と一緒にいるとそんなこと日常茶飯事だぞ」

「お兄さんって普段どんな生活を送ってるんですか……」

 

 

 お兄さんの周りにはたくさんの女の子がいて、その全てを侍らせていると歩夢たちからの噂がある。何がどうなったらそんな状況になるのか分からないけど、それが本当なら私の想像も付かないような毎日を送っているのだろう。想像したくもないけど……。

 

 受け取ったジュースを飲んでいると、お兄さんがずっとこっちを見つめていることに気が付く。

 出会ってからずっと視線が気になってはいた。ただ私のことを舐め回すような怖気の走る目線ではなく、チラチラと様子を窺われているようなそんな感じの目線だ。それは今もそうだった。

 

 

「お兄さん、また私のことジロジロ見てる……」

「そりゃ話し相手がお前しかいないんだから必然的にそうなるだろ」

「もしかして私、今とっても身が危険だったりする……? 通報した方がいいの……?」

「仮に通報したとしても助けが来る前にお前の純潔は失われてるだろうな。ここの休憩所、周りに人もいなければ往来も少ない。行為に及ぶなら絶好の場所だ」

「そんなところまで目が行き届くなんて、まさか常習犯だったりします……?」

「これが男の生き様ってやつだよ」

「いやカッコよく決めようとしてるみたいですけど全然カッコよくないですから!!」

 

 

 女の子に対して真顔でそんなことを言えるのがもう凄い。本来なら嫌悪感しか湧かないところだけど、不思議なことに呆れるくらいで済んでいる自分がいる。むしろ負の感情を抱かない自分自身がお兄さんよりよっぽど怖いかも……。もうお兄さんがいる環境に慣れちゃったのかな? とてつもなくイヤなんだけどそんなの!!

 

 

「お兄さんってこんなに変態さんなのに今までよく捕まりませんでしたね……」

「こんなに天才で顔も良くてコミュ力も高い俺が通報されると思うか? それに俺と関わった女の子たちはみんな自分から俺を求めてきてくれるぞ。今日散々間近でそれを見てきただろ?」

「歩夢たちのことですよね? 確かにみんなお兄さんのことしか頭にないような感じでした。お兄さんに会えて嬉しかったのが一目で分かるくらいに……」

「だろ? 俺はアイツらを幸せにしてやってるんだ。だから文句を言われる筋合いも、誰かに横槍を入れられる道理もない。それが例え歩夢たちに最も近しいお前であってもな。誰も俺たちの邪魔をする権利はない」

 

 

 ちょっと悔しい気もしたけど、お兄さんの圧力に押されて言い返すことができなかった。確かにお兄さんが来てからの歩夢たちはいつもと違う。自然と女の子の一面を見せているし、みんなスクールアイドルをやっている時と同じくらい、いやそれ以上に積極的に自分をアピールしている。普段とはまた違うみんなの別の顔。みんな本当に好きなんだ、お兄さんのことが。それはここ数時間でみんなの様子を見てきた私が断言できる。お兄さんに同調するようだからあまり断定したくないけど、目の当たりにした事実がそう語っているんだから仕方ない。

 

 

「私、最初はお兄さんのことを警戒していました。そりゃ電車内で痴漢されたらそうもなりますけど」

「まぁ普通はそうなるよな。でもお前、そのあと普通に俺と会話してたじゃねぇか」

「それはお兄さんに怪しまれないように観察するためです。歩夢たちが恋焦がれる相手がどんな人なのか、歩夢たちに相応しいのか、私が見極めてあげようと思いましたから」

「それは御苦労なことで。で、俺の評価は?」

「逆に聞きますけど、私の中でお兄さんの評価が上がることあったと思いますか?」

「ないな。でも認めるしかない。そうだろ?」

 

 

 当たりだ。やっぱりお兄さんには私の考えなんて全部お見通しらしい。

 お兄さんは歩夢たちのことが好き。そして歩夢たちもお兄さんのことが好き。その関係に私が入り込む隙間も評価する余地もない。つまり、私が認める認めないではなくみんなに認めさせられているんだ。

 

 

「今日の歩夢たち、すごく楽しそうでした。普段以上に生き生きとしていて、お兄さんこそがみんなの原動力になっているんだって実感しましたよ。そんなのを見たら認めるしかないじゃないですか」

「だろうな。誰かに止められるような中途半端な恋愛なんてしねぇってことだよ。文句を言ってくる奴はみんな黙らせてやる。誰も俺とアイツらの関係を邪魔させたりしない」

「お兄さんが言うと貫禄がありそうなセリフに聞こえますね……」

「あるんだよなこれが。俺を誰だと思っている?」

「痴漢魔」

「お前それ以外に俺の印象ないわけ? いつまでも古臭い肩書を背負わされる俺の身にもなってくれ」

「いやいやサラッと水に流そうとしても無駄ですからね!? 一生覚えていてやりますから!!」

「一生俺のことを覚えていてくれるのか、嬉しい限りだな」

「とことんポジティブですよねホント……」

 

 

 もはや許して当然みたいな雰囲気になってるけど、お兄さんの世界ではこれが普通なの……? 歩夢にこのことを話しても『零さんなら仕方ない』みたいなニュアンスだったし、なんなら小さい声で『羨ましい』とか言い出す始末。歩夢たちまでこうだったらもう私ってお兄さんの世界からのが逃れることができないかもしれないなぁ……。ていうか私の逃げ場を奪ってるのもお兄さんの作戦の内だったりするのかな……? さ、流石に違うよねぇ……うっ、き、気になる……。

 

 

「もしかしてお兄さん、私のことも狙ってます」

「あぁ」

「ぶっぅうううううう!!」

「うぉっ、汚ねぇなお前!? いきなりジュース噴き出すな!!」

「いきなりはこっちのセリフですよ!? なにさも当然かのごとく肯定しちゃってるんですか!?」

「だって可愛い女の子に惹かれるのはオスとして普通の本能だろ?」

「か、可愛いって……」

 

 

 ちょっと待って、さっき少し胸が高鳴ったのは一体……? いやこんな変態お兄さんに容姿を褒められたところで鋼のメンタルである私の心が響くはずない!! でもさっき魔法少女コスをした時に同じことを言われたけど、その時もほんの少し、本当にちょびっとだけドキッとしちゃったんだよね。歩夢やみんなに『可愛い』と言われるのとは違う。カッコいい男の人に褒められるってこういうことか。だから慣れてないだけだよね、うん。

 

 

「俺は誰とも構わず『可愛い』を安売りする人間じゃない。これと見定めた奴にしか言わないし、それにお前のことを何とも思ってないなら魔法少女のコスなんて着させねぇって」

「えっ、あれは歩夢1人じゃ心細いからって……」

「それもある。だけどあの時言っただろ? 俺が見たいからだって。つまりお前のコスプレ姿も見たかったってことだ。お前はあんな衣装を着るのは初めてだろうから緊張しまくっていい表情が見られると思ったけど、まぁ俺の期待に応えてくれることくれること」

「それだとお兄さんのために着たみたいじゃないですか……」

「それでいいんだよ。俺はな、自分の女の色んな姿を見たいんだ。スクールアイドルとして輝いているところも、羞恥心に駆られて恥ずかしがっている姿も、俺への愛にどっぷりと浸かって俺を求める様も全部な」

 

 

 なんとも形容し難い欲望に私は言葉を詰まらせる。歩夢たちがお兄さんに尋常じゃない愛を抱いているのは知ってたけど、まさかお兄さんまで同じだったなんて……。お兄さんの欲望は理解できないくらいに深いけど、歩夢たちはそれに応えている。そしてその逆も然り。だから一般常識からかけ離れた世界でもお兄さんとみんなの関係が保たれているんだ。そしてそれは同好会メンバー以外の女の人たちとも同じだろう。お互いが相手に対して果てしない愛と欲を抱いているから世界は壊れない。異常だ、と思うのと同時にこんな絆の強い関係が築けるなんて凄いとも思った。

 

 そして、私もその世界に引き摺り込まれようとしている……。

 

 

「残念ながら、私がお兄さんを好きになる理由もきっかけもありません」

「だろうな。俺も同じだ」

「はぁ!? 好きでもないのに『可愛い』とか『コスプレしろ』とか言ってたんですか!?」

「そりゃお前の外見は知っていても中身はまだあまり知らないからな。でもそれとお前の可愛い姿が見たいって思うのは別の話だろ。俺の欲望が満足させろと言ってきたんだよ、あのとき自然にな」

「自然と……へぇ……」

「おっ、まさかときめいちゃったか?」

「自惚れ過ぎですよ痴漢魔!!」

「お前それしか罵倒のレパートリーねぇのかよ……」

 

 

 いやだってお兄さんの欠点らしい欠点ってそれしかないし……。あとは自意識過剰、唯我独尊、傍若無人、利己主義者、自尊心の塊――――ダメだ、何を言ってもお兄さんはそれを誇りにしてそうだからダメージを与えられそうにない。そもそも痴漢だってもう遠い過去のことにされてるもんね……。

 悔しいけど容姿はイケメンでカッコいいし、頭も海外の大学に推薦されるくらいにはいいらしく、女性に対するコミュニケーション力も高い。認めたくはないけどこんな男性と付き合えた女性はそれだけで勝ち組だと思う。だからこそ歩夢たちが惹かれるのも分かる。えっ、なにチートってやつ? アニメや漫画の主人公か何か?? それでももっとマシな設定にしない普通??

 

 

「女の子を言い包めてしまった。また勝っちゃったな俺」

「いやいやどうして勝負事になってるんですか……。まさか常に自分が他人より上にいないと満足できない人ですか?」

「う~ん、まぁ女の子を導く側に立ちたいって意味ではそうかな。あとSかMかで言えばSだから」

「そんなこと聞いてないです!! お兄さんってつくづく一言多いですよね。周りの女性にデリカシーがないって言われません?」

「あぁ~よくあるよくある。妹からも言われてるよ。もう何年も前からだもんなぁ懐かしい」

「そんな昔から言われてる上に家族にまで咎められているんだったら治しましょうよ……」

「おいおい、それが俺の唯一の欠点なんだぞ? それを治したら世界で一番完璧な男が出来上がっちまう。そうなったらお前も一瞬で惚れちゃうだろうな」

「いやないです、絶対に」

 

 

 もしお兄さんに惚れることがあったらスカートのまま逆立ちをして校内を1周してもいいくらい。こんな欲が深くて変態さんで顔がいいだけの人にときめくはずがない。可愛いって言ってもらえてちょっと、ほんのちょっとだけ嬉しいかったけどそれだけ。本当にそれだけだから……。

 

 

 あぁ……お兄さんと出会ってから変な世界に引き摺り込まれるし、男の人と初めて親しくなって『可愛い』とか平気で言われちゃうしで調子狂う~~!! こんなことに悩んでいるのも全部お兄さんのせいだ……。

 

 

「なんか怒ってる?」

「怒ってないです」

「出た出た。女の『怒ってない』は『怒ってる』ってことだし、その理由を聞いたら『それくらい自分で考えてよ』って逆ギレされるんだよな。そして『言ってくれなきゃ分かんないだろ』って返したら『察してよ』って言うんだぞ、酷くないか?」

「それはもう腹を割って話し合うしかないとは思いますけど……。なるほど、恋愛関係が拗れたことが過去にあるんですね……」

「あぁ、高校生の時にそんなこともあったなぁ……」

「遠い目をしてる!? 冗談で言ったつもりですけど本当にあったんですね……」

 

 

 お兄さんがここまで物思いに耽るのは珍しい。過去なんて振り返らずに猪突猛進で未来を進んでいく人かと勝手に思い込んでいたから尚更だ。もしかしてお兄さんがさっきのように達観してたのもその過去の出来事が原因なのかな? よく考えてみれば何も経験せずにあんなに達観できてたらそれこそ痛い人だから、お兄さんもそれなりの苦労を乗り越えてきたってことだよね。どんな過去があったのかは知らないけど、ここまで感傷に浸るってことはそういうことなのだろう。

 

 

「そういやお前はどうしてスクールアイドルをやってないんだ? お前の容姿ならアイツらと並んでステージに出ても全然通用すると思うんだけど」

「それは私の大好きはステージの上だけじゃないからですよ。私は歩夢たちがスクールアイドルとして輝いているのを見たい。他のスクールアイドルを見てときめきたい。スクールアイドルを見て笑顔になっているお客さんたちを見たい。沸き立つ興奮の中で、みんなが一体となって楽しんでいる景色を見たい。だから私の夢はステージの上だけじゃなくて、全てのスクールアイドルとお客さんたち、そしてそれを見ているまた別の誰かが笑顔になれる世界なんです。そういった世界を作るために同好会のお手伝いをしているんですよ」

「なるほど。俺のことを散々欲深いとか言っておきながらお前も相当じゃねぇか。スクールアイドルだけじゃなくて観客も、たまたまそれを見た赤の他人ですら笑顔にさせたいなんて無茶言いやがって」

「あはは、そうかもしれませんね。でもお兄さんには負けますよ」

「別に夢に勝ち負けなんかないだろ。いい夢じゃないか。俺と似たところもあるからそう思っちゃうのかもしれないけど」

「お兄さんと一緒……? なんかヤダ……」

「おいおいもっと誇っていいんだぞ? 俺と並び立てるほど欲がある夢を持ってることにな」

 

 

 お兄さんと同類になったら私まで冷ややかな目で見られそうだけど、逆にお兄さんと一緒だからこそ自信が持てるという見方もある。あのμ'sやA-RISE、AqoursやSaint Snowをあそこまで輝かせたのはお兄さんらしいから、同じ夢を持つ者としては尊敬する部分もあるんだよね。それに自分の欲望を自信満々に語るお兄さんはスクールアイドルに負けないくらい輝いている。その欲望は中々一般受けするものじゃないけど、なんかカッコよく見えちゃうのはお兄さんだからかな……? せっかくだし、今度ゆっくりお話しながらアドバイスを貰お――――――ッ!?

 

 私、今お兄さんと2人きりになるところを想像してた!? 喫茶店とか自宅とかでまるでデートのように2人きり―――――あぁダメダメ、余計な感情に苛まれる前に私の話はここで終わらせよう。

 

 

 私は雑念を払うために勢いよく立ち上がり、缶ジュースを一気飲みしようとする。だがその勢いに負けて身体がバランスを崩し、後ろに倒れそうになってしまう。

 ダメだ、頭が床に――――――!!

 

 

「えっ……?」

 

 

 身体は後ろに倒れた。でも頭に衝撃は走らなかった。

 優しく、それでいて暖かい。これは人の……手? あっ……!?

 

 

「意外とどんくさいんだなお前」

「お、お兄さん……?」

 

 

 えっ、えぇええええええええええええええええええええええっ!?!?

 私はお兄さんに押し倒されていた。いや、お兄さんが助けてくれたんだ。お兄さんは私の後頭部と身体を守るように手と腕を下敷きにしてくれており、それにより全身に全く痛みを感じなかった。だけどそれ以上にお兄さんの顔がち、ち……近いッ!!

 

 そしてお兄さんの髪からオレンジ色の液体が滴り落ちている。近くには転がったジュースの缶。つまりあの缶の中身がお兄さんに……!?

 

 

「お、お兄さんすみません! ジュースが――――」

「大丈夫か? 足を捻ったようにも見えたけど」

「お、おかげさまで大丈夫です! ありがとうございます。でもお兄さんの髪に――――」

「ったく、俺の歓迎会があるってのに歓迎する側がケガしてどうする。そんなので俺をもてなせんのか?」

「そ、それはそうですけど……」

「お前と2人きりの時にケガをされたら、歩夢たちに『襲ったんですか?』とか言われそうで怖いな。ま、何ともないなら良かったよ」

 

 

 この人、自分のことより私のことを心配してくれている。私を抱きかかえる形で倒れたってことは、私よりお兄さんの方が身体への衝撃が大きかったはずなのに……。それなのにも関わらず私の身体の心配ばかり……。

 

 ていうか顔近い!! こうして見るとやっぱりお兄さんって顔が整っていてるな……。瞳も綺麗だし、そんな眼で見つめられると――――ってお兄さんは真面目なのに何考えてるの変態か私!! なんか顔も熱くなってきたし!! 私こんなにチョロかったっけ!?

 

 

「そういやお前の欲望と俺の欲望では1つ違うところがある」

「ふぇ?」

 

 

 な、なにいきなり!? 抱きかかえられて押し倒されているこの状況でまさかの別の話題!? しかも今まで以上に真剣な眼差しで見つめてくる!! 恥ずかしいから目を逸らそうとしてもお兄さんの力強い眼に捕捉されて目が離せない。

 

 

「お前はみんなが幸せになることで自分も幸せになれる。俺はその逆で、自分の幸せを高めることで相手の幸せも高めるってことだ。言わば幸せの主体がどっちかってことだな。つまりお前が俺の世界に踏み込んだ以上、お前も俺に幸せにされるべき対象ってことだ。よく覚えとけ」

「ふぇっ!? わ、私もってそんな……」

「俺もお前と一緒で相当欲深いからな。二兎追う者は二兎とも取れって言葉があるように、俺はみんなを幸せにする。俺にはその力がある。みんなが笑顔みんなでハッピーになれる、それ以上のことってあると思うか?」

「な、ないです!」

「だろ? だから俺は欲しい。歩夢たちも、そして……」

「そして……?」

 

 

 思考回路がショート寸前の私はお兄さんの言葉をそのまま肯定し、そのまま返事をすることしかできなかった。

 そしてこの後。この後に来るだろう言葉、名前に私の胸は高鳴り――――――

 

 

「侑ちゃん、零さん、な、何をやってるの……?」

 

 

「歩夢?」

「あ、歩夢!?」

 

 

 休憩室の入口で歩夢が驚きと絶望の目で私たちを見つめていた。今まで見たことのない表情に思わず背筋が凍りそうになる。

 そして今の私とお兄さんの体勢、お兄さんが私を抱きかかえながら押し倒しているこの状態。もちろん経緯があってのこの体勢なんだけど、そんなことを知らない人が見たらどう思われるかはもちろん明白で――――――

 

 

「零さんと侑ちゃんってまさかそんな関係だったの!? 今日会ったばかりだよね!? もしかして侑ちゃんが零さんに付き添ったのってこれが目的だったの!?」

「お、落ち着いて歩夢違うから!! お兄さん、歩夢の暴走を止めてあげてください!!」

「ただ同じ夢を持つ者として意見交換していただけだ。なぁ、侑?」

「そうだよ歩夢、私はお兄さんと――――って、えっ? い、今私のこと名前で……??」

「いつの間にそんな親密な関係に!? 侑ちゃんやっぱり零さんのことを!?」

「どうしてそうなるの!? 違う! 違うから!!」

 

 

 あぁもうどうしてお兄さんはこんなに冷静なの!? ていうか歩夢が暴走している今でもずっと私のことを抱きかかえたままだ。しかも唐突に名前呼びされたしもう訳分からない!! でも不思議と嬉しくなっちゃったのはきっと気のせいだよね? 歩夢の暴走で私までおかしくなってるだけだよね? きっとそうに違いない。同じような夢を持ちそれを激励してもらい、人生で初めて1人の女の子として見られ、年上のカッコいい男性から下の名前を呼ばれたくらいで嬉しくなるはずがない。

 

 とりあえず今は歩夢を何とかしないと。今日だけで何回歩夢の暴走を止めればいいんだろう……。

 

 

「零さんと侑ちゃんが隠れてイチャイチャするなら――――私も混ざるぅうううううううううううう!!」

「今は来ない方がいい。侑にぶっかけられて濡れてるから」

「ぶ、ぶっかけ……。そ、そそそそそんな破廉恥なこと……!! 侑ちゃんは穢れとは無縁の清楚な人だと思ってたのに!!」

「ちょっと何誤解してるの!? すぐに意味を察せる歩夢の脳内の方が破廉恥だよ!!」

「とにかくシャワー浴びてぇな早く。ジュースで髪がベトベトしてきた」

「まずは私は解放してください!! いつまで抱きかかえてるんですか!?」

 

 

 今お兄さんの苦労が分かった。今日はずっとお兄さんを中心に騒動が起きてたけど、その中心にいるのってかなり疲れるんだね……。その騒動を毎回収めているお兄さん、やっぱり凄いよ……。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 スクールアイドルではないとかアニメのオリジナル主人公だとか、そんなことは零君の前では関係なく女の子なら等しくヒロインです。私はハーレム大好きなのでこんな展開になっちゃいましたが、この小説を読んでくださっていると言うことは皆さんもハーレム大好きだと思うのでいいんじゃないですかね(笑) むしろ侑が零君に惹かれることを望んでいた人も多そう……

 侑って公式グッズからもハブられているので、もしかしたらアニメが終わったら急激に出番が減るかもしれませんね。しかしこの小説で永遠のメインヒロインに昇格したので休む暇ないです(笑)


 この小説の投稿ペースですが、今まではアニメの個人回を見てからネタを考えていたので週1投稿でしたが、それももう終わったので最新話が完成次第投稿していきます。なので週2投稿になる可能性もあるので頻繁にチェックしてくださると嬉しいです!

 これからのネタとしてはこの小説で個人回を残している歩夢や栞子回、全員集合回や遥ちゃんも登場させようと思っています。順番は未定で別のネタが挟まるかもですが……




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 今後の小説執筆の糧となります!

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