ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 なんだかんだ400話に到達です!
 そして今回は久々にA-RISE回ですが、ぶっちゃけ記念回と呼べるほど特別なネタではないです。
 その代わりアニメでもあまり描写されなかった彼女たちの女の子としてのキャラを見ていただければと思います。


【特別編】A-RISE恋のクライシス

 スクフェスが終わって数日後、UTXにて打ち上げパーティが行われていた。後夜祭自体はスクフェス最終日の夜にあったのだが、その頃にはみんな疲れ切っていて満足に楽しめなかった現状があったのだ。だからUTXは独自で打ち上げを主催し、自分のところのスクールアイドルたちを労わろうとしているのである。

 ちなみにUTX所属はマジモノのアイドルを養成しているため、スクールアイドルはA-RISE以外にもたくさんいる。そのことは知っていたのだが、こうして一堂に会しているところを見るとそれなりに数も多く圧巻だ。

 

 しかし、何故かスクールアイドルでも何でもなくUTXの関係者でもない俺まで呼ばれている。当初は面倒だから行く気はなかったのだが、ツバサたちに無理矢理連れ出され渋々足を運ぶことにした。関係者以外の人間は俺しかいないためかなり場違いでなので、今はホールの端っこで細々と飯を頬張っている。なんかこれ、スクフェスの前夜祭でも同じことをしていた気がするぞ……。

 

 

「零君まーたこんなところに隠れてる。せっかくみんなで集まってるんだし、もっとお話すればいいのに。初めて見る子たちもいっぱいいるでしょ?」

「ツバサ……。別に隠れてるつもりはねぇよ。騒がしいのは好きじゃないだけだ。それに誰とでもすぐ打ち解けられるほどのコミュ力はない」

「そんなこと言っちゃって、いつもみんなの中心にいるのはあなたの方なのに」

「なりたくてそうなってるわけじゃねぇ。アイツらが勝手に俺を巻き込むだけだ」

「みんなそれだけ零君のことが好きなんだよ」

「そうだといいけどな」

 

 

 ツバサは俺の隣に座り、皿に乗せた料理を食べながら俺を諭す。せっかく端っこで細々と飯を食ってたのに、誰よりも目立つコイツが来たら注目されちまうだろ……。正直UTXのスクールアイドルはそこまで知り合いがいないから、中々みんなの輪に入って行きづらい。豪華な打ち上げ会場だからなおさら萎縮してしまうんだよな……。

 

 

「そういや今回の打ち上げって金はどこから来てるんだ? あとから参加費を請求されないだろうな?」

「しないしない! UTXの本社に打ち上げをしたいって相談してみたら快くOKしてくれて、しかも費用も全部工面してくれたんだよ。太っ腹だよね」

「流石は天下のUTX、金あるな。どこぞの音ノ木坂や浦の星とは大違いだ」

「それみんなに言わないようにね……」

 

 

 UTX内の大きなホールを貸し切っての打ち上げ。しかも30人以上のスクールアイドル+余計な男1人の料理まで手配。やはりスクールアイドルからガチのアイドルを育成しているような大企業は違うな。UTXの主戦力でもあるA-RISEの頼みだから断れなかったってのもあるだろうが、それはそれでツバサたちの人望と権力に感服してしまう。

 

 

「実はUTXだけじゃなくて、スクフェスの本社も打ち上げに協力してくれてるんだよ。お菓子や飲み物もたくさん提供してくれたからね」

「お前らどれだけスクールアイドル界隈に力があるわけ? カリスマを通り越して独裁者になれるんじゃね?」

「零君は私たちのことを何だと思ってるのかな……」

 

 

 何気に俺とよく絡むスクールアイドルって、世間的に見たらかなりの有名人なんだよな。普段から脳内がお花畑だったり思考回路ラブホだったりする連中が多いから忘れてたよ。全国の女子高生からは羨望の目、メディアからは注目の的。俺はそんな子たちと毎日を過ごしている。そう思うと独占欲が満たされてちょっぴり気持ちいい。

 

 

「あれ~? ツバサちゃんってば零くんと密会中? いつもは奥手なのに今日は積極的だねぇ~♪」

「あ、あんじゅ!? これは零君が1人ぼっちだったから付き合ってあげているだけで……」

「その割に打ち上げの最初から彼の様子を窺い、1人になったタイミングを見計らっていたようだが?」

「英玲奈まで!? そ、そんなことは……」

「なんだお前、そんなに俺と飯を食いたかったのか?」

「そ、それは……」

 

 

 あんじゅと英玲奈にからかわれ、ツバサの顔が一気に赤くなる。羞恥を紛らわそうと自然と飯を食うペースを早くしているが、もはやその動作だけでも動揺していることが分かる。素直になれない恋する乙女は大変だねぇ。

 

 

「そういえば、どうして俺を呼んだんだ? UTXには何も協力してない気がするんだけど……」

「もう鈍いね零くんは。そんなのツバサちゃんが呼びたかったからに決まってるでしょ」

「あ゛っ、あぁああああああああっ!!」

「自分で誘うのは中々勇気が出ないから、打ち上げという後ろ盾を借りて君を誘ったんだ。それだけの苦労があってのことだから彼女をよろしく頼むよ」

「ちょっ、あ゛っ、ひゃっ……!!」

「ツバサの精神的ダメージが半端ないんだけど……」

「ツバサちゃんったら、零くんのことになると本当に可愛いんだから♪ いつも可愛いけど余計にね」

「うっ、うぅ……」

 

 

 普段はA-RISEのリーダーとして英玲奈とあんじゅを引っ張るツバサだが、こういった恋愛沙汰には弱いみたいだ。今も顔を真っ赤にして俺と目を合わせようともしない。いつもはステージに上がっているコイツの姿を見ることが多く、その時のコイツはまさに女神。からかわれただけで悶絶するような小心者とは到底思えない。これはファンには見せられないギャップだが、そういった一面を俺だけが見ることができるってのも優越感かな。

 

 

「つうかお前が俺のことをそこまで意識してくれているとは思わなかったよ」

「そりゃ私の周りの男の子なんて零君だけだし、色々お世話になってるし……」

「お前モテそうなのに誰とも付き合ったことないのか?」

「ツバサちゃんは小さい頃からアイドルとして有名だったから、高嶺の花すぎて近づく男すらいなかったんだよ」

「周りの男性はみんなツバサに憧れを抱くだけだっただろうからね。だからこそ君のような自分と対等に接してくれる男性に惹かれているんだ」

「ま、また知ったような口を利いて……」

 

 

 2人のツバサ煽りが止まらない。長年一緒にいただけのことはあり、彼女の心は完全に透けて見えているようだ。

 でもあまりコイツをイジメると羞恥心が爆発してしまいかねないので、ここらで助け舟を出しがてら話題を変えてやるとするか。

 

 

「さっきからやたら注目されてる気がするんだけど、俺ってそんなに有名人なのか? この会場に入ってからもやたら女の子たちに挨拶されたし」

「そりゃ零くんが手を出したスクールアイドルは確実に成長できるジンクスがあるんだから、是非ともお目にかかりたいって子が多いんだよ」

「マジで? 俺ってそんなにパワースポットなの?」

「μ'sやAqoursがその最たる例だろ? 言ってしまえば私たちだってそうだ。なんというか、君がいることで心の持ち方が違う……みたいな感じかな」

「それは俺に自分を見てもらいたいから頑張れるってことか?」

「そ、それは……」

「あっれ~? あれだけ私のことをからかってきたのに、英玲奈だって満更でもなさそうじゃん? 英玲奈が頑張る原動力は零君だったんだね~へぇ~」

「な゛っ!? そ、そりゃ彼には色々助けてもらったり、練習に付き合ってくれているから……」

 

 

 今度はツバサの逆襲が始まった。英玲奈は頬を染めながら後退りするが、ツバサはここぞとばかりに彼女を追い詰める。まあ自業自得というか何というか……。

 ツバサを救出するために話題を変えたのに、結局この騒動はまだ終わらない。本人たちが楽しそうなので別にいいのだが、どうやら話のネタの中心は俺のようなのでなんとかしなきゃという責任を感じてしまう。つうか当の本人がいる前で恋バナをされると、こっちもどう反応していいのか微妙なんだけど……。

 

 

「2人共あっさり恥ずかしがって可愛いんだから♪ アイドルなんだったら、もっと精神力を鍛えないとね」

「は、恥ずかしがってなどいない!! 彼がいる前でこんな話をされて迷惑しているだけだ」

「ホントにぃ~? 私知ってるんだから、今日の打ち上げに零くんが来てくれるってツバサちゃんから聞いた時、ほんのり笑みを浮かべていたこと。嬉しかったんでしょ?」

「ほら! やっぱり英玲奈も喜んでるじゃん!」

「それは来てくれないよりかは来てくれた方がいいと思って……」

「英玲奈ちゃんも零くん狙いだったとはねぇ~。これはツバサちゃんもうかうかしていられないよねぇ~」

「狙うだなんてそんなことは……」

 

 

 自分の心を見透かされ、見事に集中砲火を受けた英玲奈はあっという間に身を縮こまらせる。さっきまでツバサを煽っていた勢いはどこへやら、一転して崖っぷちに追い込まれてしまう。

 ていうか俺ってA-RISEの2人から狙われてんのか……。なんとなくそんな気がするのは分かってたけど、ここまで感情を露わされるのは初めてだから少し戸惑ってしまう。女の子からアプローチされることには慣れているが、コイツらはもはやスクールアイドルのようなアマチュアではなくガチのアイドルと言っても差し支えない存在だ。そんな高嶺の花たちに言い寄られると流石の俺でもビビらずにはいられない。

 

 

「そんなことを言ったらあんじゅだって、結構彼に連絡してるじゃないか。ライブの控室でも電話しているところをよく見るぞ」

「それは緊張を解すためであって、別に他意はないわよ?」

「なるほど、あんじゅにとっての緊張を解く方法が男の声を聞くことなんだね。へぇ~」

「だって零くんの声を聞くと安心するし、勇気をもらえるんだから仕方ないじゃない!」

「あんじゅも私たちと同じだよね?? 理由を付けて押し通ろうなんてそうはいかないから」

「そもそもそれでよく私たちをあれだけ煽れたな……。ライブ本番前に特定の男性の声を聞いて心を落ち着ける。そこに特別な感情がないわけがない。これは黒だな」

「も、もう2人共……」

 

 

 英玲奈の言う通り、確かにあんじゅは時々俺に電話を寄こしてくる。それもライブの前などイベントでの重要な場面でだ。彼女はいつも他人の恋愛沙汰ばかりに首を突っ込んでいるため自分の恋愛には興味がないと思っていたが、同じメンバーの2人は見抜かれていたらしい。そりゃ普通に考えて女が男に電話すること自体プライベートで起こらねぇもんな。それこそ特別な感情を持っていない限りではだ。

 

 

「零君に電話をしているあんじゅの声って、いつもの人の心を見透かしたようなミステリアスな雰囲気じゃなくて、しっかりと女の子だよね。上手く言えないけど」

「それって私が普段は女の子っぽくないってこと? ひっど~い!」

「そうじゃなくて、あんじゅも恋する乙女なんだなぁと思ってね」

「こ、恋とかそんなのじゃないんだけど……」

「そろそろ観念したらどうだ? 口では強がっているけど、君の顔はトマトのように真っ赤だぞ? それにいつものふわっとした口調にも余裕がなくなっているみたいだが」

「そうそう。これでめでたくA-RISE全員が零君のモノになっちゃったってことで」

「お前らはいいのかそれで……」

 

 

 なんかツバサが物凄い結論を叩き出したが、どうして俺の周りの女の子はみんな二股以上もOK思考なのか。俺を好きでいてくれる女の子をみんな幸せにしたいという勝手な発想、俺の持つそんな病原菌が感染してしまったのかもしれない。感染したらもれなく社会不適応になるその病気がとうとうA-RISEの奴らにまで浸食し始めた。まあそれに関しては俺に不利益はないため反省も後悔もしないわけだが。

 

 

「また相手にする女の子が増えるのか……。別に困らないけど俺の身体がもつか心配だ」

「零くん、もう私たちとの身体の関係を心配してるの? 相変わらずエッチだねぇ~」

「えぇっ!? さ、流石にそれは早すぎるというか何というか……」

「そりゃさ、可愛い女の子と付き合ってんのにエロいことを考えない男なんていないだろ。むしろ微塵も考えないのであればそれはそれで問題あると思うぞ? よく女の子の悩み事であるだろ、私をオンナとして見てくれないのかなぁって」

「君の言いたいことは分からなくもないが……。というか、μ'sのみんなともそういう関係だったりするのか? その……大人の関係って言えばいいのか……」

「そうだが何か?」

「複数の女の子に手を出していることを当然のように語ってるの、今思えば異常だよね……」

 

 

 μ'sのみんなとの関係はもう5年以上も続いているし、周りからも咎められていないのでもはや今更感がある。Aqoursの梨子からは唯一ツッコミを入れられたことはあったが、それも俺の巧みな話術によって半ば洗脳気味に納得させたこともあった。その関係を内緒にはしているのだが、A-RISEのように俺たちの事情を知っている奴らもいて、しかも暗黙的に認められているのがこれまた異常レベルを引き上げていた。

 

 

「しかしμ'sのみんなってとっても幸せそうだよね。たまに穂乃果とお出かけしたりするけど、ずっと零君の話ばかりしてるもん。可愛い女の子だったら見境のない最低男だっていうのに」

「そんな最低男を好きになったのはお前の方じゃないのか?」

「そ、そうだけど……。もし、もしだよ? 私とあなたが付き合ったとして、私も穂乃果みたいに笑顔になれるのかなぁって思っただけだから」

「なれる。俺は大切な人を絶対に悲しませたりはしない。今もこれからもずっと」

「やけに自信満々だな。聞けば今度はAqoursのみんなともいい関係になっているみたいじゃないか。ただでさえたくさんの女の子を抱え込んでいるのに、1人1人の笑顔を見ていられる余裕があるのか疑問だよ」

「それこそ愚問だ。だって俺だぞ? 天に選ばれた天才にできないことなんてねぇよ」

「凄いね、そこまで自分自身を持ち上げている人見たことないよ。でも零くんの良さはそこだし、その頼れる姿に私たちも惹かれちゃったのかもね」

「俺ほど女の子のことを考えてる男はいないぞ。惹きつけられて当然だ」

「そういうことをキメ顔で言わなければもっとカッコいいのに」

 

 

 自分に能力がないと思い込んで後ろ向きになるよりも、自分には何かをやり遂げる力があると思っていた方が自信に繋がる。自分に自信が持てればそれだけで前向きになれるし、周りの人からも好意的な目を向けられる。もちろん俺はその気持ちだけではなく、しっかりと結果を伴う男だ。だって俺だもん。どれだけの女の子がいようと幸せにできないはずがない。むしろ俺と1つになってくれるのであれば大歓迎だ。別にイキっていると言われてもいい、それが俺の人生の歩み方だから。

 

 

「そうだ、今度の休み俺の家に泊まりに来るか? 女の子と親睦を深める時は一晩を共にするのが毎回の定番なんだ。一緒に出かけたことはあるけど、泊りがけは今までなかったからさ」

「零君の家に!? それって自宅デート……?」

「そんな生温いものじゃないぞ。男の家に来るってならそれなりの覚悟をしてもらわないと。つまり下着の選別くらいはちゃんとやっとけってことだ」

「ちょっ、何をする気!?」

「あ、あくまで友人として泊まりに行くのではないのか!? いくらなんでも淫らな欲求が溜まり過ぎだぞ……」

「だから言ったろ、男1人が女3人を侍らせているのに何も起きないわけがねぇって。なぁあんじゅ?」

「そうだねぇ~いい下着を買わなくっちゃ!」

「あんじゅはのほほんとし過ぎなんだよ……」

 

 

 話の流れでお泊り会をすることになり、急遽A-RISEメンバーの襲来が確定した。高嶺の花とも言われたこの美人3人を自分の家で独占できるなんて、もはや支配欲が止まらなくなりそうだ。こういった背徳的感情が好きだったりするのが俺の欠点なのかもしれない。もう今更治す気はないけどさ。

 

 もちろん自分の欲を満たすためだけに企画したわけじゃない。この3人から初めて実感することができる好意を受け取ったんだ。最初はからかいからかわれつつの拙い告白だったけど、その気持ちを裏切るつもりはない。男として俺なりに彼女たちの想いに答えてあげるつもりだ。

 

 これから彼女たちとの関係がどう進展するかは分からないけど、これが最初の一歩なのかもしれないな。

 

 

「ツバサちゃんも下着を買いに行かないとね。いつもの子供っぽいおパンツじゃ色気ないでしょ?」

「あんじゅ!? それは誰にも言わないでって言ってるでしょ!?」

「零。済まないが聞かなかったことにしてあげてくれ」

「いや、逆に見てみたい」

「零君!?」

 

 

 うん、色んな意味で楽しいお泊り会になりそうだ。

 




 後編に続きそうな勢いですが1話完結です。A-RISEの面々にもいいキャラ付けができたと思っているので、また機会があったら零君との絡みを描いてみたいです。

 この小説も400話と長丁場ですが、次回からは虹ヶ咲のアニメと連動してしばらく虹ヶ咲中心のストーリーを描いて行こうと思っています。アニメによってキャラの理解も進むので、今までよりももっと魅力的に描けるかと。

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