ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 虹ヶ咲に新しいメンバーが追加されたってことで、重い腰を上げて久々の最新話となりました。

 ぶっちゃけ恋愛過程を描くのは面倒だったので1話読み切り。恋愛モノよりもネタとして見ていただけると嬉しいです。

 ちなみに新キャラの説明はある程度していますが、詳しく知っておきたい方は先に調べておくと楽しめるかも……



 話の時系列はこの小説でのスクールアイドルフェスティバル終了後です。


即堕ち栞子

 俺は歩夢からの連絡により都内の喫茶店に呼び出された。用件も何も聞かされてないので少し不穏だが、また虹学スクールアイドルの指導でもしてもらいたいのだろうか。それなら直接学校に呼び出せばいいのに……。

 

 そんなことを考えつつ所定の喫茶店の前に来たのだが、歩夢の姿は見当たらない。待ち合わせ時間ギリギリに到着したのでアイツが来ていないのは不可解だが、男1人でシャレオツなカフェに入るのはかなりハードルが高いので、とりあえずここで待つことにする。そう思った矢先、見知らぬ女の子が俺の目の前にやって来た。

 

 

「神崎零さん」

「あん?」

 

 

 肩に掛からないくらいの黒髪ショートカット。ちらっと見えた八重歯が特徴的な高校生くらい女の子が話しかけてきた。見知らぬ美少女に声を掛けられるなんて俺も有名になったもんだ――――なんて楽観的に捉えるのはまだ子供。名も知らぬ美少女が男に話しかけるなんて怪しい勧誘の匂いがプンプンするぞ。

 

 

「怪しい壺を売りつけるなら他の男にしてくれ」

「違います」

「街角アンケートには答えない性分なんだ」

「だから違います」

「逆ナンは勘弁してくれ。お前は可愛いけど、彼女持ちなもんでな」

「か、かわっ!? 軽率な発言、やっぱり危険な人……」

「そっちから話しかけておいて勝手に不審者判定はどうかと思うぞ……」

 

 

 初対面なのに睨まれるほど警戒されているとはあまりにも理不尽すぎる。見た目の雰囲気的にお堅い感じがしていたのだが、ちょっと話しただけでここまで嫌悪されるとは……。Aqoursの面子と出会った時は俺の痴漢未遂の罪で中々に悪い印象を与えてしまったが、今回俺は正真正銘この子に何もしていないはず。もう意味わからん。

 

 

「申し遅れました。三船(みふね)栞子(しおりこ)と申します。一度あなたにお会いしたくて、上原さんに頼みこの場をセッティングしていただいたのです。上原さんから何も聞いていないのですか?」

「な~んにも聞かされてないが。当日のお楽しみとだけ言われてたからな」

「上原さん……。まぁ無事に出会えたのでいいです。とりあえず喫茶店に入りましょう。店の前でナンパをされていると勘違いされたら迷惑ですから」

「どうして俺が迷惑をかけてる側なんだよ……」

 

 

 出会って早々多数の理不尽が俺に襲い掛かるが、それを仕向けた張本人は至って澄ました顔だ。どうやらよっぽど俺に言いたいことがあるらしいが、この定期的に女子高校生に敵意を向けられる自分をなんとかしたいよ。

 ていうかこの子、歩夢の知り合いらしいが一体何者なんだろうか……?

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 俺たちは喫茶店に入り、お互いに向かい合って座っている――――のだが、どうも空気が重い。周りの客はカップルで食事を楽しんでいたり、女友達同士で談笑していたりと和気藹々としているため、俺たちのテーブルだけ別次元のようだ。

 

 テーブルに着くなり俺たちは軽く自己紹介する。三船栞子は最近虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーに加入したメンバーであり、中須かすみや桜坂しずく、天王寺璃奈と同じ1年生らしい。今は学園の生徒会長を務めていて、最初はスクールアイドルを頑なに認めない絵里のような奴だったようだ。それから歩夢たちと紆余曲折あってスクールアイドル堕ちしたっぽいのだが、どうやらその過程で俺のことを知ったらしい。俺への印象がどうも悪い方向に傾いているみたいだけど……。

 

 

「単刀直入に言います。上原さんたちに手を出すのはやめていただけませんか?」

「て、手を出す……?」

「はい、調べはついています。あなたが幾多の女性と浮気をしていることに」

「浮気だぁ?」

 

 

 とか強気に出てみるも、あながち間違いじゃないのが心に突き刺さるところ。コイツがどこからその情報を仕入れてきたのかは知らないが、俺がたくさんの女の子と関係を持っていることは公然には隠しているはずだ。

 

 

「上原さんたちが頻繁にあなたの名前を出すので気になって聞いてみたのです。そうしたら上原さんたち全員とプライベートでお付き合いがあるようではないですか。しかも皆さん、あなたの話をしている時はライブをしている時と同じくらいに輝いている」

「それくらいだったらいいじゃねぇか。思春期の女の子だったら男の1人や2人くらいとそんな関係になるだろ」

「私たちはスクールアイドルです。そんな浮ついた心は認められません」

「認められないわぁ~ってか」

「は?」

「いやそんな怖い顔すんなって冗談だから……」

 

 

 

 コイツがスクールアイドルに入った生い立ちといい、どうにも絵里を思い出しちゃうんだよな。そのせいで思わずふざけてしまったが、殺傷能力を持っていそうな鋭い目を向けられてビビってしまう。どうやら向こうは本気で俺と歩夢たちを遠ざけようとしているみたいだ。まあ俺はこれまでコイツのような敵意剥き出しの女の子たちを何人も相手にしてきたし、結局その子たちも俺と関係を持つことになったんだがな。目の前の三船もつまりそういうことになる可能性が……?

 

 こうして向かい合ってみれば、やはりスクールアイドルになるくらいの容姿と魅力が彼女にはある。日本舞踊を嗜む和風美女であり、意志を感じさせる厳粛な風格。俺より5、6歳も年下なのにこちらの身が引き締まってしまうほどの凛然としたオーラ。そんな奴がスクールアイドルになったんだから、歩夢たちにとっては大きな戦力だろう。そんな子に出会えたのは偶然なのか、それとも俺の女の子を呼び込むスキルが有能なのか。どちらにせよまずコイツの警戒心を解かないと話にならないけどさ。

 

 

「もうネタは上がっています。上原さんたちだけではなく、μ'sやAqoursの皆さんともただならぬ関係を持っているようで」

「英雄色を好むって言うだろ? たくさんの女の子と付き合うのも必然ってわけよ」

「なんて軽薄な……。ますますあなたを皆さんに近付けるべきではないと思いました」

「そんなに睨むなって。俺は女の子の笑顔が好きなんだ」

「あなたのいいところを1つも見ていないのにどう笑えと……」

 

 

 マズい、このままでは俺の好感度がどんどん下がってしまう。まぁ全ては三船に対する俺の言動のせいなのだが、別に間違ったことは言っていない。正論を正しく言えないこの世の中、なんか悲しいね。そんな冗談を言ってる場合じゃないってのは分かってるけども……。

 

 

「複数の女性と付き合っているだけでも人としてどうかと思いますが、こちらにはそれ以上に咎めるべきことがたくさんあります」

「ほぅ、言ってみろ」

「どうして上から目線なんですか……。いいでしょう、その自信を打ち砕いてみせます」

「なんか趣旨変わってないか……?」

 

 

 三船は俺のことを完全にスクールアイドルの敵だと思っているようだ。μ'sもAqoursも、なんなら虹ヶ咲も俺が育てたようなものだし、俺の唾が付いた3グループがこの前のスクフェスで優勝争いをしていたことを知らないのか? スクールアイドルの敵どころか、むしろ先導者なんだけどな。

 

 

「1つ、女性がトイレに行くのを阻止して反応を見て楽しんでいたこと。2つ、実の妹と身体の関係を持っていること。3つ、教育実習生なのに生徒であるAqoursの皆さんとお付き合いしていること。4つ、女子小学生と中学生に淫行したこと」

「待て待て待て! ここ喫茶店だから! 女の子の口からそんな爆弾発言はヤバいって!」

「どうです? 降参するなら今のうちですよ?」

「そもそもどうやってその情報を仕入れてきたんだよ……」

「スクールアイドルに入ってからというもの、人脈が凄まじく広がりました。それにどこからもあなたの名前が聞こえてくるので、黒歴史を収集するのは容易かったです」

「アイツら普段どんな会話してんだ……」

 

 

 三船の口から語られる俺の悪行の数々。未成年淫行はもちろん、教師生徒の肉体関係や近親相姦など口に出すだけでも人によっては反吐が出そうだ。でもこうして今までに行ってきた変態行為を列挙されると、その時の情景が鮮明に思い浮かんで何だか懐かしくなる。残念ながら俺に反省の二文字がないんでね。これもいい思い出なんだ。

 

 それにしても俺のいないところで勝手に世間話で話題に出しやがって。話のネタにするのはいいが、一般受けしないような際どいネタを持ち出すのはやめていただきたい。そう、目の前の鬼みたいに過敏に反応する奴がいるからさ。

 

 

「あなたの犯罪を世に暴露すれば、もう社会では生きていけなくなりますよ。でも私も鬼ではありません。スクールアイドルから手を引いてくださるのであれば、あなたのことは見逃しましょう」

「これはまた随分と嫌われてることで……。でも思い出してみろ、俺の話をしているみんなの顔を。楽しそうだっただろ?」

「ま、まぁ……ライブをやっている時と同じくらいには」

「そんな俺が社会から抹殺されてみろ、アイツらが悲しむだろ? そのせいでスクールアイドルの活動ができなくなっちまうかもしれない」

「まさか私に脅しをかけようとしていますか? 皆さんを悲しませないよう、あなたの悪行に目を瞑れと……?」

「そういうことだな」

「なんて狡猾な……」

 

 

 それなりに俺を打ち負かす準備をしていたようだが、残念ながら高校時代から悪行三昧してきた上に罪から逃げ続けてきた俺に勝つのは不可能だ。どうやら三船はいいところの娘らしいのだが、そんな箱入り女子高生と淫行に幾度となく手を染めてる汚い大人の俺とでは勝敗は目に見えている。

 

 

「まぁお前の言い分も一理あるし、俺の頼みを1つ聞いてくれたらアイツらに会うのはやめてやる」

「本当ですか? 一応聞いておきます……」

「今日1日だけでいい、俺と付き合え」

「え……? つ、付き合うって……」

「堅物生徒会長で箱入り娘じゃ話の流れで分からないか? 今日1日は俺のものになれって言ってんだ」

「は、はぁ!?」

 

 

 三船は顔を赤くしその場で立ち上がる。その反応を見るだけでこれまでの人生で男と一切の付き合いがなかったことが分かる。今までどの男の手垢も付いていない女子高校生……うん、字面だけでも唆る。しかもソイツはスクールアイドルになるくらいの美少女と来たもんだ。そりゃ自分のモノにしたくなるよ。

 

 

「いいですよ。私の犠牲で皆さんを守れるのであればお付き合いします」

「いい友情だな。その気概が保てるかどうかも見ものだ」

「私は皆さんとは違い、あなたに靡くことはありません。あなたのような軽薄な男性が一番嫌いな人種ですから」

「なんというフラグ……。そんな大見得を切って後で堕ちても知らないぞ?」

「そんなことは断じてあり得ません。むしろあなたに社会の秩序というものを教えて差し上げます!」

 

 

 未だかつてこれまで分かりやすい死亡フラグがあっただろうか? いや、ない。

 威勢だけは素晴らしいのだが、喫茶店の中でそんなに叫ぶと注目を浴びるからやめてもらいたい。なるほど、コイツは自分の固執に酔って周りが見えなくなるところがあるらしい。そのお堅さのメッキが剥がれて女を見せる時が楽しみだな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「どうした栞子? 服の袖を掴まれたら帰れないんだが?」

「その、まだ零さんと一緒にいたいと言いますか……」

「随分としおらしくなったな。そっちの方が可愛いよ」

「か、可愛いってもう……あなたって人は……」

 

 

 夕日で紅く照り付ける街道。その真ん中で夕日に負けないくらい赤面している少女。なんとも素晴らしい絵面だ。

 俺と栞子は1日デートをしていたわけだが、その間にコイツの態度もかなり柔らかくなった。いや、この態度を見ればそれ以上の気持ちを俺に向けていることが分かるだろう。いつの間にかお互いに名前呼びになっているあたり、関係も大きく深まった。どんな卑劣な手段を使ったかと言われたらそんなことはなく、ただ普通に遊んでいただけなんだけどな。

 

 そもそも栞子は男と遊んだ経験どころか、女友達とも遊んだ経験がなかったようだ。それに性格があまりにも現実主義でハードな考えの持ち主のため近寄りがたく、同性の友達すら少なかったらしい。だからこそこうして誰かと遊びに行くこと自体が新鮮なのだ。それに人生初のデート、しかも相手は幾多の女の子と付き合って女心を心得ている俺だ。そんなデートが楽しめない訳がない。

 

 最初は表情も硬く嫌々俺の隣を歩いているようだったが、広場の出店で食べ歩きをしたりデパートでウィンドウショッピングをしたり、他愛もない世間話をしている間にいつの間にか心の距離が縮まっていた。次第に笑顔も見せ、もはや俺への反目はなくなっているようだ。俺から特別なことは何もしてない。ただ一緒に彼女が楽しめるように隣を歩いていただけだ。

 

 

「俺と別れるのが名残惜しいと思ってくれたのなら今日は楽しんでくれたって証拠だな。嬉しいよ」

「はい、とても楽しかったです。学校が終わった後はお稽古があったり、休日はボランティア活動をしたりしてこうやって遊ぶ機会はなかったので……」

「だろうな。自己紹介してくれた時からそんな奴だと思ってたよ」

「まさか、私のために今回のお出かけを提案してくださったのですか?」

「さぁな」

 

 

 俺が栞子を誘ったのは可愛い女の子とデートができればいいというただの打算であり、別に彼女の境遇を察したからではない。俺はこれまでの人生で自分自身が満足すればいいという利己的な精神で動いているから今回もいつも通りだ。それが毎回いい方向に転んでいるだけってことだな。

 

 

「もうすぐ日が落ちる。早く帰らなきゃ家族に怒られるんじゃなかったのか? 最初はそれを理由に帰る気満々だったのに」

「それはデートというものが楽しいと知らなかったものですから……。だからもう少しだけ、一緒にいてもいいですか?」

 

 

 夕日をバックに赤面しながら俺の袖を指で摘まむ三船栞子。大和撫子な見た目も相まってとても絵になる。

 そんな子にここまで誘われたら断る気にはなれない。それに女子高校生に求められるのは優越感、独占欲、支配欲、その他様々な背徳感情に満ちて気分がいい。しかも相手は大和撫子の美少女と来たもんだ。むしろこっちから手放すまいと捕まえておきたいくらいだ。

 

 

「あの……ダメ、ですか?」

「ダメじゃねぇよ。むしろあんなに規律を重んじるお前が門限破りだなんて、随分と不良になったなぁと思ってさ」

「確かに自分でも自分は堅いと思う時はありますけど……。でも以前上原さんたちと遊びに出かけた時、アイスを2段重ねで食べてしまう禁忌を犯してしまいました! スクールアイドルがあんなにカロリーが高いものを2個同時に! こ、これでお堅いなんて言わせません……よ?」

「それで不良になったつもりとは、ホントお前可愛いな」

「ふぇっ!? ど、どこに可愛い要素が!?」

 

 

 どうやら栞子はアイス2個食いで罪を感じているらしい。よく食べ過ぎで体重を気にしている穂乃果や花陽に聞かせてやりたいよ全く。しかもそのエピソードを無理矢理黒歴史にして門限破りを許されようとしているところがこれまたピュアだ。お堅いのは絵里やダイヤもそうだったが、コイツはソイツらよりも純粋だなこりゃ。

 

 

「別に俺はいくらでも付き合ってやってもいいんだが、夕暮れ時に女が男を誘うってことがどういうことか分かってるんだろうな?」

「えぇっと、どういうことですか……?」

「はぁ~これだからいいところの娘は……。男と女が夜にすることなんて1つしかねぇだろ」

「え……? はっ、そ、そそそそそんな私と!? でも私は学生ですし、流石に男性とそのようなお付き合いは……」

「真面目なんだよお前は。人生ってのは掟破りなことをしないと成功しないんだよ。生徒会長をやったりボランティア活動をしたりするのは立派だよ。だけど社会で綺麗だとされているレールに乗っかっているだけじゃ一般人のままだ。スクールアイドルになるってことはな、そういった経験も必要なんだよ」

「なるほど、勉強になります」

 

 

 出会った頃は俺の言葉なんて聞く耳を持たなかったのに、今では何でもホイホイと信じてしまっている。聞くところによると新人のスクールアイドルは先輩のパシりになるといった中須かすみの嘘を堂々と信じていたらしい。厳粛な過程で育ったゆえか、信頼を置ける人を疑うことを知らないようだ。なるほど、これは色々俺の好みの色に染めることができそうだぞ……。

 

 

「で、どうなんだ? これ以上俺と一緒にいるなら、それなりの覚悟をしてもらわないと」

「き、緊張はしますけど覚悟はあります! まだ私はスクールアイドルの端くれですが、上原さんたちみたいな立派なスクールアイドルになるためなら逃げたりしません!」

「そうか。スクールアイドルとして重要なのは女性としての魅力だ。歌やダンスが上手いのはもちろんだが、世間の目が一番最初に触れるのは自分の容姿だ。つまり一目で魅力的に映ることが大事なんだよ」

「女性としての魅力……」

「だから俺が鍛えてやるよ。女としての魅力をな」

「えっ、れ、零さん……??」

 

 

 俺は近くの壁に栞子を追い込んだ。頬を染めながらも目は驚きに満ちている。

 傍には大人のホテルがネオンの輝きと共に俺たちを待っている。恐らくコイツはこれから何が起こるか想像もしていないだろう。それなのに無謀にも覚悟を持ってしまうとは、そんな世間知らずのJKちゃんに社会を教えてあげないとな……。

 

 

「な~んてね」

「へ……?」

 

 

 俺は壁から離れて栞子を解放する。いきなり追い込みすぐに離れる謎行動に唖然としているのか、きょとんとした顔つきで俺を見つめている。

 

 

「出会ったばかりの女の子といきなりホテル行きとか、お前の言う通り犯罪者になっちまう」

「ちょっ、せ、せっかく思い切って覚悟をしたのに……」

「悪い悪い。俺なりにお前の覚悟を試させてもらっただけだ。ま、新人にしちゃ俺に立ち向かってきたことだけでも合格だよ」

「試しただけだったのですか……」

「なんだ? もしかして本当に俺と繋がりたかったのか?」

「つ、つなっ!? そ、そんなことはありません!!」

「これ以上ないってくらい顔赤くなってんぞ? お前、嘘つけないだろ」

「ち、ちがっ、これは……!! うぅ……も、もう門限なので帰ります!!」

 

 

 出会った時は面の皮が堅いと思っていたが、剥いでみると表情も豊かだし面白い子だ。融通の効かない面も多く自分の認めないことはとことん淘汰する人間だけど、それ故に新しい経験には新鮮味を感じて高揚する性格。これまで外食や寄り道すらしたことがなかったコイツのことだ、男とのデートなんて初体験の連続だっただろう。何かもウブってのが俺好みで気に入ったよ。

 

 

「お前がもっと俺のことを好きになってくれて、俺もお前のことをもっと好きになったら、今日やれなかったことを考えてやってもいい。どうだ?」

「~~~~ッ!? し、失礼します!!」

 

 

 あらあら、こちらを振り向くことなく立ち去ってしまった。

 でも俺は見逃さなかったぞ。夕日に負けないくらい耳が赤くなってたこと。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

《翌日》

 

 

「あれ? 栞子ちゃんスマホをじ~っと見つめてどうしたの?」

「う、上原さん!? これは違います!!」

「何が違うって――――あっ、もしかして零さんとお出かけした時の写真?」

「こ、これはそ、その……。うぅ……」

 

 

「信じて送り出したしお子が調教されて帰ってきた……」

 




 また零君の携帯の連絡先が増えましたとさ。彼と知り合いの女の子って何人いるのかもう数えるのも面倒なので誰か数えてください(笑)


 ていうか零君を描くのが久々過ぎてキャラが高校時代の頃に戻っているような気がしてならない……

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