閉鎖空間での尿意の恐怖を体験したことのある人は多いはず……
尿意を催すのは人間なら誰でも毎日といっていいほど体験する事象だが、厄介なのはどこで襲い掛かってくるのかが分からないところである。事前に用を足しておくことである程度の危機回避はできるものの、尿意というのは気まぐれであり、いくらこちらが万全な状態であっても突然やって来る鬱陶しさ。それが電車内などの閉鎖空間だとなおさら絶望。しかも足掻いたところで収まる事象ではなく、刻一刻と決壊する膀胱を必死に抑えつけて耐えなければならない。その時の自分がいかに不格好であろうが、どれだけ周りから奇異な目で見られようが、その場で膀胱という名のダムが決壊するよりかは全然マシだ。
そして今、そんな状況に苛まれているのが皆さんご存知、小泉花陽だった。
俺、花陽、ダイヤの乗ったエレベーターは突如停止し、管理室と連絡を取ったところ救助まで30分は要する模様。つまり現在進行形で尿意に襲われている花陽は、約30分の間この閉鎖空間で己の膀胱と戦わないといけない。なんともまあ恐ろしくも面白くなってきたことで。こんなことを言ってしまうと非常に不謹慎なのだが、尿意の猛攻に耐えている女の子を見るのはそこそこ好きだったりする。
さてはて、花陽は耐えきるのことができるのか……? こんなことでワクワクすると、自分の変態度が極限を振り切ってると実感するよ。
花陽はもう隠す必要がなくなって吹っ切れたのか、さっきよりも更に内股となっていた。尿意に耐える唸り声も徐々に大きくなってきており、このままでは救助が来るまでに膀胱のダムが決壊してしまうだろう。ダイヤは苦しみに耐える花陽の身体を支えてやりたいと彼女に手を伸ばそうとしているが、今にも黄金砲が発射されそうな彼女の様子を見て泣く泣く渋っている。下手に触れたらいつ膀胱が起爆するか分かったものじゃない。ただ見守ることしかできない自分に、ダイヤはもどかしそうにしていた。
「は、花陽さん……」
「大丈夫。大丈夫だから……うぅ」
いや、そんな弱々しい声を聞かされるとなおさら心配するって。こんな状況で元気な声を出せって方が無茶なのは分かるが、もはや何をしようがこのまま傍観しているだけでも彼女のダムは崩れ去りそうだ。
「もうこれはあれだ。出すしかないってやつだな」
「はぁ!? 教師たるものが何を言っているのですか!?」
「いやツッコミどころそこ!? 教師じゃなくても人間としてダメな発言だったと思うが……」
「ツッコミどころがどうであれ、この状況で変なジョークはやめてくださります?」
「別のことに集中すると尿意って忘れるもんだぞ? ほら、トイレに行きたいと思っていたのに作業に没頭していたら行くのを忘れることってない?」
「そうかもしれませんが、それはいつでも行ける状況だからこそ成り立っている理論であって、今回のケースは行きたいけど行けない状況だから困っているのではありませんか」
真っ当な正論にぐぅの音もでない。そもそも正論とかそうでないかとかは関係なく、単純に花陽の集中力を少しでも別のことに割かせて尿意を意識の彼方へ消し飛ばそうと思っていたのだが、そもそも彼女に襲い掛かっている尿意の強さはそんなヤワじゃなかった。タイムリミットは寸前にまで迫っており、ちょっとでも意識を飛ばしたら黄金水が垂れ流される危険な状況なのだ。だからもう気を抜くことなんてできない。できることは……そう、耐えるだけ。
まあいっそのこと出した方が楽になるとは思うが、それは俺が当事者じゃないから言えることなんだろう。
いつ花陽が黄金を放つのか? 彼女の緊張感とは別の緊張感が俺にはあった。あまりにも不謹慎すぎるが、だって男の子なんだもん仕方がない。女の子の恥ずかしい姿を見たいのはSの極みだ。もちろんできるだけの対策は考えてやるけどね。
そう思ってポケットの中に手を突っ込もうとした時、その中に既に別のモノが入っていることを思い出した。
俺の服の右ポケットにはスポーツドリンクが入っていた空のペットボトルが1つ。なんだ、これで解決じゃねぇか。
「こんないいところにペットボトルがあるなんてな。ほら」
「ほらってなに!? 零君もしかして……」
「後ろ向いておいてやるから、それに出せ」
「やっぱり!? そんなことできないよ!!」
「まあ女の子には厳しいか……」
「そもそも男女関わらず、ペットボトルに出すなんて恥ずかしい行為だと思いますわ……」
どれだけ恥ずかしい行為であろうとも、このまま垂れ流すことになったら救助に来た人やエレベーターを待っている人にまで漏らしたことがバレてしまう。だったらプライドを捨て去ってでもボトラーになった方がまだマシだろうよ。下手に我慢をして限界を超え、床に黄金の水溜まりを形成してしまったら最後、俺たちもどんな顔をしたいいのか分からないからさ……。
「どうすんだ? 漏らして世間体に恥を晒すのか、それともペットボトルに放出して楽になってしまうのか」
「どうして零君の前で出すこと前提なの!? 耐えるから!!」
「その威勢がいつまで続くかねぇ……」
「先生、どうしてそんなに楽しそうなんですか……」
「逆に聞くけど、尿意に悶える花陽を黙って見守るだけの方がシュールな光景じゃね?」
「それは……」
花陽はさっきから自然と『あぁ……』やら『うぅ……』やら、小さな呻き語をずっと漏らしている。内股で顔を赤くして呻いている女の子を何も言わずに見守るって、もはやそっちの方が変態な気がするんだ。だったら少しでも花陽の緊張感を和らげるために何かしら喋りかけておいた方がいいのかもしれない、そう思った。あとは単純に花陽の反応が面白いからちょっと弄って遊んでいる、それだけだ。
その時、尿意に思考も身体も支配されている花陽の隣で、ダイヤが忙しなく携帯を弄っていることに気が付く。
「ありました! 尿意を抑える方法が!」
「ほ、本当!? ていうかそんな方法があるんだ……」
「えぇ。情報化社会のこのご時世、どんな症状でもその場でできる応急措置くらい調べればすぐに出てきますわ」
「は、早く……!!」
「そうですね……まずはその体勢! 背をピンと伸ばしてください!」
「えぇっ!? 動いたら漏れちゃうんだけど!?」
「尿意対策の1つとして、前屈みになるのは避けた方が良いと。前屈みの体勢はお腹が膀胱を圧迫するそうで……」
「そ、そんなぁ……」
花陽は内股前屈みという、男がしていたら興奮していると即バレの体勢をしている。エレベーターに乗り込んだ時からそのような格好だったので、如何にその体勢を崩したらヤバいのかはもはや一目瞭然だった。だけどその体勢こそが尿意を加速させているのだとしたら自ら墓穴を掘っていたことになる。ダム決壊のリスクを背負いながらも尿意を和らげる可能性に賭けるか、それともリスクを背負うくらいならそのまま耐え抜くか……さぁ、面白くなってきたぞ。
…………なんだろう、今日の俺って物凄く陰険な気がする。いつものことかもしれないけどさぁ。
「どうします? 自分で身体を動かせないのなら手伝いますが……」
「ありがとう。でも大丈夫、自分で動かせるから――――ひぅっ!!」
「花陽さん!?」
「だ、ダメだぁ……」
ちょっと身体を動かしただけで起爆しそうになる膀胱に、もはや花陽は屈服していた。まるでエロ小説のような言い回しだが、この現状を見ているとそんな表現が正しいのだと実感できる。
ただでさえ彼女はいつも弱々しいのに、ここまで貧弱になってしまうとあまりにも見ていられないので思わず抱きしめたくなってくる。だがそんなことをすればお漏らしどころか俺の脚にまでぶっ掛けられてしまうので、全年齢対象で健全なこの作品としては何としても避けなければならない事態である。そもそもお漏らしプレイなんて偏屈趣味は俺も持ち合わせていないよ。まあ興味がない訳じゃないのだが……それは聞かなかったことにしてくれ。
「身体が動かせないとなると、できる対策は限られてきますね」
「触れたら爆発する爆弾みたいになってるよなお前」
「仕方ないよ!! 出ちゃうものは出ちゃうんだから!!」
「だからいっそのこと出せばいいのに。ペットボトルもあるんだしさぁ」
「絶対にイヤ!!」
おいおい、俺はお前をそんなワガママな子に育てた覚えはないぞ? 一刻も早く身体の中でたぷたぷと溜まっている尿を放出したい。でも人前では恥ずかしいから我慢をする。だったらペットボトルを貸してやるから、俺たちがそっぽを向いて耳を塞いでいる間にやればいい。でもそれもイヤだ。うん、これは困ったちゃんだ。今なおこの状況で己のプライドを保ちつつ羞恥心を抑えたいという気概は十分なのだが、やっぱそこは男と女の子の違いってやつか。まあ男であろうが人前で尿を放出することに躊躇いがないと言えばウソになるが……。
するとその時、ダイヤがまたしても携帯で何か良さげな尿意の対策案を見つけたようだった。
「これです! これならば身体を動かす必要もありませんから、花陽さんも耐えられると思いますわ!」
「どれどれ……?」
俺はダイヤの携帯の画面を覗き見る。
そこには女性の顔のイラストが描かれており、顎の部分に赤い目印が矢印と共に記されていた。尿意を抑える方法なのにどうして顔面のイラストなんて……? そんなことを考えつつも、声を出しながらイラストの下の文章を読んでいく。ちなみにその対策方法のタイトルは『尿量を減らすツボ』だそうだ。
「“尿量を減らすツボ”とは、“あごの膨らみの中央”である。このツボを刺激すると、膀胱の筋肉の伸縮性を高めて尿を多く溜めることができるという――――だってさ。人間っつうのはつくづく変なツボばかり持ってるよな」
「あごの膨らみの中央って――――このあたりかな?」
「そうそう。そこを指で押さえる感じで……って」
「零君……?」
ツボはいくらでも押してもらって構わないのだが、花陽が指であごを下から上へ押しているせいか、必然的に俺を上目遣いで見上げる形となっている。本人は全くそんな気もないし尿意に耐えているのでそれどころではないと思うのだが、俺から見たらあざとく誘っているようにしか見えない。普段おとなしい彼女がここまで攻めてくることはそれほどないため、本人が無自覚にせよ無駄に意識をしてしまう。しかもだよ、さっきから尿意に悶えているせいか頬を赤くしているので余計にムードが漂ってくる始末。何も知らない人がこの状況を見たら、野外でキスをおっぱじめる空気読めないカップルだと思われるだろう。現にほら、花陽の顔がどんどん赤くなって――――って、あれ?
「れ、零君……。そんなに見つめられると恥ずかしいと言うか……」
「えっ、そんなつもりはなかったんだけど!! あごを自分でクイッと上げるお前の姿が可愛かっただけで……」
「か、かわっ!? わ、私もそんなつもりであごを上げてたんじゃないよ!?」
「分かってる! 分かってるけどさぁ、意識しちゃうだろ……」
「そ、そうなんだ……えへへ」
おいおい、いきなりそんな暖かい笑顔は反則だろ……? ここで笑顔を向けられるなんて思ってなかったから、心構えができていなかった俺は柄にもなく激しく動揺していた。もう既に何人もの女の子と付き合って恋人にまで漕ぎ着けているのに、未だにひょんな笑顔であっさり心を奪われるウブさが残っていたとはな……。いやでも仕方ないじゃん、可愛んだもん!
「あのぉ……私のこと、忘れてません? いや確実に忘れていましたよね……?」
「ダイヤ……」
「な゛ぁ!? なんなんですかその『お前いたのか』みたいな反応!? エレベーターで男女の営みなどはしたない……」
「男女の営みって、ただ見つめ合ってただけだろ!?」
「そうだよ!! そんなエッチなことなんて!!」
「誰もそんな如何わしいことをしているなんて言ってませんが……」
「え゛っ!?」
「なに墓穴掘ってんだお前……」
男女の営み=エッチなことを想像する辺り、さすが隠れむっつりスケベの花陽ちゃんと言ったところか。まあ普通は猥褻行為を想像してしまうのが当たり前なので、これはダイヤの言い方が意地悪だと思ったのだが……ここでツッコミを入れると俺にまで飛び火しそうだからやめておこう。
ちなみにダイヤの存在を忘れていたか覚えていたかについてだが、さっきまで一緒にいたのに何故か忘れてたよね! ほら、エレベーターみたいな閉鎖空間で女の子といいムードになるって風情を感じるじゃん? その雰囲気に感化されて俺の意識が花陽にしか向いていなかったんだ。決してダイヤを無碍に扱っていた訳ではないのであしからず。
「花陽さん! そんなことよりももう大丈夫なんですか!?」
「大丈夫って何が……あっ、あぁっ!?」
「さっきまで散々苦しんでいたのに忘れていたのですか……」
「零君が可愛いって言ってくれたから思わず舞い上がって……んっ、お、思い出したらまた……!!」
「あ~あ、ダイヤが茶々を入れなかったら、救助が来るまで耐えられたかもしれないのに」
「私のせいですの!?」
やはり尿意とは全く別のことに対して集中力を使えば、膀胱に迫る危機など忘れてしまうと証明されたな。今はまた内股の体勢に戻っちゃったけど、さっきまではダイヤに弁解をするためなのか普通に立って喋っていた。"病は気から"と良く言ったものだが、"尿意は忘れることから"なのかもしれない。漏らしてしまう恐怖に駆られいつまでも尿意を気にしていたら、ずっとその地獄から抜け出すことはできない。でも何か1つのきっかけで尿意を意識から消し無我の境地に達することができれば、さっきの花陽のように平常でいられるだろう。
まあそれでまた思い出してしまった場合は、思い出す前の地獄よりも更に辛い闇の底を彷徨う訳だが……。そう、今のコイツのようにね。
「ど、どうしよう……もうダメ……」
「諦めないでください! このまま出してしまったら、先生の前で恥を晒すことになりますよ」
「もう花陽とは5年以上も一緒にいるんだから、コイツの恥なんて知り過ぎるほど知ってるよ」
「それはそれで変態が極まっていると言いますか……」
「そこで引くなよ!」
「分かりました! 花陽さんにこれ以上恥をかかせないためにも――――先生の目を潰します!!」
「何言っちゃってんのお前!? つうか手に持ってるそのムチはなんだよ!?」
ダイヤは買い物袋から、明らかにSMプレイを意識して作られたであろう本格的なムチを取り出した。どうしてそんなモノを買っていたのかは謎だが、あのムチを振って俺の目をミミズ腫れにすることで疑似的に失明させようと考えているのだろう。いくら先輩の恥を隠したいとは言え、かつての恩師の目を潰すなんて俺はそんなデンジャラスな子に育てた覚えはないぞ?? ダイヤも花陽の切羽詰まった様態を見て相当焦っているのか、まるでRPGの混乱状態のように目を回している。このままでは本当に顔面を叩かれてモンスターの風貌にされかねない。でもエレベーターだから逃げ場もないし、どうすんだこの状況……!?
「このままではいずれ花陽さんは漏らして恥をかきます。だったら先生もミミズ腫れという恥を、私は恩師を襲ったという罪悪感を一生抱き続けます。喧嘩両成敗です」
「ひっでぇ理論を暴露しやがって。それにその言葉はちょっとニュアンス違うからな……」
「花陽さんは仲間です。その仲間が恥という枷を背負うのであれば、私たちも同等の重みを背負うべきです!!」
「落ち着け!! ムチをピンと張るな!!」
このままでは救助に来た人がエレベーターの扉を開けた時、漏らしている女の子とムチを持って懺悔してる女の子、更に目元がミミズ腫れになってる男を見てドン引きしてしまうだろう。一体エレベーターの中でどんな戦争が繰り広げられていたのか、想像したくてもできないに違いない。そんな事態を避けるためにも、そして俺の目を守るためにも、なんとしても花陽には気持く漏らしてもらって恥をかかせないようにしないと。
「や、やめてダイヤちゃん!」
「花陽さん……しかし」
「………するから」
「へ?」
「ペットボトルの中でするから!!」
「え……え゛!?」
遂に花陽は我慢の限界が訪れて、ボトラーに成り下がる覚悟ができたらしい。恥なんて捨てて最初からペットボトルに出していれば楽になれたのに、ここまでよく持ち堪えたもんだ。だが人間は追い詰められれば追い詰められるほど楽な方に走りたがるもの。どれだけ羞恥を浴びようが、花陽はその楽な方を選んだって訳だ。
「れ、零君。1つ相談があるんだけど……」
「あぁ、ちゃんと後ろを向いておくし、耳も塞いでやるから安心しろ」
「違うの! そのぉ……ペットボトルを持っていて欲しいなぁ~って……」
「はぁ!? 俺でいいのかよ!?」
「そ、そうですわ! その役目なら私が!!」
「男性とか女性とか関係なくて、出すところを見られるのは結局恥ずかしいもん……。それだったら零君の方がいいかなぁと……」
「先生……。いくら女性好きだからと言って、洗脳は犯罪ですわ!!」
「してねぇよ!!」
まさか尿放出のサポートに俺が抜擢されるとは思ってもいなかった。彼女の言う通り確かにエレベーターで用を足すなんて恥辱は男女関係ないが、それでも黄金水を放出する姿を見られるのが同性ではなく俺がいいってのも物凄い度胸だ。これはこの5年間恋人で居続けたからこその信頼ゆえなのだろうか。排尿の手伝いを彼氏に頼むっつうのも大概変態行為だと思うけどな。
だが花陽が勇気を出して俺に頼んできたんだ、もちろん断る訳にはいかない。
「悪いなダイヤ。ちょっとあっち向いてくれ」
「花陽さんのご指名とあらば仕方ありません。耳も塞いでおきますから」
「ありがとな。さぁ花陽、出しやすいように少し持ち上げるぞ。よっと!」
「ひゃあっ!? も、もう急に身体を動かさないで出ちゃうと思ったよ!!」
「ペットボトルの準備もできたから、あとはパンツを脱ぐだけだぞ?」
「うぅ、急に恥ずかしくなってきた……」
「もう今更だろそんなの、さあ早く!」
「そんなに急かさないでよ! ぬ、脱ぐけど前は見ちゃダメだよ!?」
「無心でいるから大丈夫だって。安心して排泄物を世に巻き散らすがいい」
「その言い方汚すぎるよぉ……」
なんだろうな、この体勢。俺は花陽の胸と腹の間部分を右腕で抱えてやり、ペットボトルを持った左手を彼女の股の下に配置する。アダルト界隈では放尿プレイといった奇抜な趣向が存在するのだが、まさか自分たちがそのシチュエーションを体験するとは夢にも見ていなかった。未だかつてない状況に俺自身も興奮しつつ、同時に何をやっているのかと冷静になる自分もいた。
花陽も俺に抱きかかえられながら股を開いているせいで、傍から見たらAVの撮影をやっていると思われても仕方のない格好だ。まだパンツは脱いでいないため大切なところが丸出しという状況ではないのだが、これからエレベーターの中で彼女が半裸で、しかもペットボトルに放尿すると考えると――――いかん、変な性癖に目覚めてしまいそうだ。
「れ、零君! あまり変なところ触らないで!」
「変なところって具体的にどこだよ? 言ってくれないとお前の身体を抑えることすらできねぇだろ」
「そ、それは……察して!」
「無茶言うな。それに早くしないと救助の人が―――――」
その時だった。
エレベーターの扉が開き、外には作業着を来た救助の人と思わしき人たちと、何が起こっているのかと騒ぎを聞きつけた野次馬たちが集まっていた。だが沢山の人がいるのにも関わらず、辺りはシーンと静まり返っている。エレベーターの扉が開く前の騒がしさがどれだけのものかは知らないが、扉が開いてその中に目を瞑り耳を塞いでいる女の子。そして、女の子を抱きかかえながら股の下にペットボトルを忍ばせる変態。更にパンツを脱ごうとしている痴女。こんな光景を見て呆然としない奴はいないだろう。
「…………」
「…………」
「…………」
俺も花陽もダイヤも、開いた口が塞がらなかった。
俺たちは何事もなかったかのようにエレベーターから脱出すると、動けず未だ尿意を引き摺っている花陽を引っ張りながら黙ってトイレへ向かった。
うん、今日のことは忘れることにしよう。救助に30分はかかると言っていたくせに15分程度で来た救助部隊を呪いつつ、そして羞恥心という重い十字架を背負いながら俺たちはデパート内の人混みへと溶け込んでいった。
ほぼ年単位だけど定期的にですが、今回のような尿意を耐える話は過去にいくつかあったので弁解させてください。別に私は特段尿にまつわるプレイが好きな訳じゃありませんよ……? まあ嫌いでもないというか、どちらかと言えば好きな部類なのですが……(笑)
次回はSaint Snowがこの小説に再登場します!
新たに☆10評価をくださった
ネオスさん、ぴょこさん
ありがとうございます!
まだ評価をつけてくださっていない方は、よろしければ小説に☆10評価をつけていってください!