ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 新生μ's結成まで短編ではなく連載モノ。意外と話が進まないのでもう少し掛かりそうです。

 今回は前半と後半の温度差が凄まじい……
 どうしてこうなった……


妹様凱旋!!

 

 

前回のラブライブ!

 

 入学式直前、俺は今年から音ノ木坂学院に通う雪穂と亜里沙に遭遇!!大天使亜里沙様のお陰で、真姫たちの呪縛から解放された俺は、再び自由の身に。流石は天使様!!

 そして穂乃果たちを手伝いに生徒会室にいったはいいが、案の定雑用を押し付けられテンションダダ落ち。

 そこでことりに新入生の女の子のスリーサイズを記した手帳が見つかり、生徒会室は一気に修羅場に!?俺は再び幼馴染組にボコボコにされてしまいましたとさ。

 

 めでたしめでた……くねぇ!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「もうっ!!零君反省した?」

「したした、しましたよ……」

 

 

 現在、俺と穂乃果は2人で入学式が行われる講堂へと向かっている。海未とことりは書類仕事を片付け次第、俺たちと合流する予定だ。

 生徒会室で一波乱あり、また天国への階段を上がってしまったが何とか帰還。穂乃果たちに無理矢理反省させられ今に至る。今日だけで何回ボロボロになればいいんだよ……

 

 

「零君と穂乃果たちは恋人同士なんだから、あんまり他の女の子に鼻の下伸ばしちゃダメだよ!!」

「だから悪かったって。もう十分反省したからさ……」

「ホントにぃ~?零君いっつも反省してるじゃん!!」

「いっつもって……」

 

 

 そう言われれば『怒られる』⇒『反省する』の無限ループを、みんなと付き合い始めてから延々と繰り返しているような気がする。もはや反省詐欺になってしまい、最近みんなが要求する反省の基準が高くなってきた。もう何度も無理矢理色々な場所に付き合わされたりしている。

 この前は凛と一緒にラーメン巡り(費用は全て俺)、その前はことりとケーキバイキング(費用は全て俺)、その前はにこと洋服屋巡り(費用は全て俺)などなど、数えていたらキリがない。

 

 あれ?これってデートじゃね?掛かった費用を除けばの話だが……

 

 

「あんなに穂乃果たちのこと好きって言ってくれたのに……」

「穂乃果……」

 

 

 そう言って穂乃果は悲しそうな表情を見せた。いつも元気いっぱいの彼女だからこそ、その表情を見ると余計に俺の心がズキズキと痛む。今までは何だかんだ言って水に流してくれていたんだが、いつしか俺はそれに甘えていたのかもしれないな。

 

 そこで俺は思わず、彼女を抱きしめてしまった。

 

 

「れ、零君!?」

「勝手に悪い。でもお前の顔を見ていたら、こうしたくなった。嫌だったか?」

「うぅん……零君に抱きつくの、久しぶりだぁ♪」

 

 

 俺たちはお互いに真正面から抱きしめ合い、穂乃果は俺の胸に顔を埋める。

 女の子特有の甘い匂いと穂乃果の優しい温もりで、俺はあっという間に彼女の世界へと引き込まれた。たぶん穂乃果も同じ気持ちに浸っているのだろう、恍惚とした表情のまま俺の胸に顔を擦り付けている。

 

 

「やっぱ暖かいな穂乃果は。ずっとこうしていたいよ」

「うん、穂乃果も。零君に抱きしめられるとすっごく安心するんだぁ♪」

 

 

 そして俺たちはさらに力強くお互いを抱きしめる。周りの目など一切お構いなしに、俺たちは2人の世界にのめり込んでいた。

 もう始業式が終わり、部活の勧誘をする生徒以外はみんな帰ってしまった。その勧誘する生徒は入学式が行われる講堂前に終結しているため、校舎内には人は皆無と言っていいほどいない。

 

 

「ゴメンな、いつもお前たちに迷惑ばかりかけて。みんなを笑顔にするのが俺の努めなのにな……」

「もう謝らなくてもいいんだよ。穂乃果たち分かってるから」

「分かってる?」

「うん、零君はちゃんと穂乃果たちを見ていてくれる。今みたいにね♪」

「穂乃果……ありがとな」

「ちょっと変態さんなところはあるけど、それでドキドキしたことが何度もあるから……」

 

 

 可愛すぎるだろ!!何だこの生き物は!?今すぐお持ち帰りしたい!!!!

 ……取り乱した。でもこの俺が取り乱すぐらい今の穂乃果には魅力がある。もちろん普段も魅力の塊なのだが、いつもの活発で元気いっぱいな彼女とは違い、今は乙女心が前面に押し出されている。

 

 そして俺たちはさらなる深みへと足を踏み入れた。

 

 

「ねぇ零君……チューしていい?」

「えっ!?ここでか!?」

「もうちょっとしたら入学式でスピーチがあるから、そこで緊張しないように、ね♪」

 

 

 キスとスピーチにどんな因果関係があるのかは知らないが、たぶん恋人間の営みに理由なんていらないと思う。

 生徒はほとんど校舎に残っていないし穂乃果から来てくれたんだ、これを断るなんて許されるハズもない。

 

 

「そうか、じゃあ俺からいくぞ?」

「うん、来て♪」

 

 

 俺は自分の唇を、恍惚な表情をしている穂乃果の唇へ向かって優しく口づけする。遂に俺たちは校舎内で愛を確かめ合ってしまった。しかも相手は生徒会長。海未なんかにバレたら反省文どころでは済まされないだろう。

 

 

「んっ、ん……」

 

 

 穂乃果は軽く声を上げながら、この時間を堪能しているようだ。俺は声こそ上げてはいないが、十分に穂乃果との愛を確かめていた。

 彼女の熱い唇の感触に、俺は何も考えられなくなるぐらい穂乃果に引き込まれていた。

 

 そしてお互いがお互いの感触を十分に堪能した後、俺は穂乃果の唇から自分の唇を離す。

 その時の穂乃果の少し名残惜しそうな顔が、また俺の心を刺激する。

 

 

「えぇ~もっとしたい!!」

「もう時間ギリギリだぞ。講堂裏で先生が待ってくれているんだろ?」

「む~……じゃあまた今度やってくれる?」

「あぁ、お前が望むのならいつでも」

「えへへ、ありがと♪じゃあ行ってくるね!!」

「おう、頑張れよ!!」

 

 

 そして俺は講堂へ向かう穂乃果をその場で見送った。俺は生徒会役員ではないから講堂には入れないしな。

 改めて、穂乃果たちと付き合えてよかったと思う。付き合いだしてからそれまで以上に彼女たちの色々な姿を見ることができ、新たな発見もあった。もっともっと、彼女たちの新しい魅力を探し出したい。

 

 

「しょうがねぇから海未たちを手伝ってやるか」

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああ!!いたぁああああああああ!!」

 

 

 突然俺の後方から、耳を突き刺すような声が響き渡った。

 この声には聞き覚えがある。さらに姿なんて見なくても分かる。俺の身体が勝手に拒否反応を起こしてガタガタ震えるぐらいだからな……

 

 来るっ!!奴がドンドン俺に迫ってくる!!

 

 

 嵐が!!台風が!!地獄が!!悪魔が!!恐怖が!!迫ってくる!!

 

 

「お兄ちゃぁああああああああああん!!」

「ぐぇっ!!首に絡みつくな窒息死するだろ!!」

「会いたかったよ~~♪」

「だから話聞けよ!!」

 

 

 コイツは俺が出会いたくない奴ランキング第二位、俺の妹の神崎楓だ。

 見た目は絵里並みのスタイルに海未と同じぐらい綺麗で長い髪(コイツは茶髪だが)、胸はことりと同じ、その容姿は高校一年生に成り立てとは思えない。本人曰くパーフェクトボディなのだが、性格に難がありすぎてそのパーフェクトを帳消しにしてしまっている残念な妹だ。

 

 

「それよりなんでお前がここにいる!?入学式はどうした!?」

「あんなもの出る必要あるの?どうせお兄ちゃんも始業式サボったんでしょ?」

「それは……まぁ」

「ほらぁ!!やっぱり兄妹だと以心伝心なんだね♪」

「言葉の意味履き違えてるからな!!ていうかもう離せよ!!」

「やだねぇ~~だ!!」

 

 

 

 家の中、公衆の面前、学院内……所構わずブラコンを発揮するのがコイツの最大の欠点だ。『私はお兄ちゃんと付き合うので私への告白は禁止です』というお触書が、コイツの行く先々で広まっているらしい。もう恥ずかしすぎてコイツの行くところには行けねぇよ。

 

 

「零!!なんですか廊下で騒いで!?」

「零くん何かあったの!?」

 

「おお、海未にことり!!いいところに来てくれた!!」

 

 

 騒ぎすぎて生徒会室まで聞こえていたのか、海未とことりが助太刀に来てくれた。戦力になるかは分からないが、この場をなだめるぐらいはできるだろう…………できるかな?

 

 

「わぁ♪楓ちゃんだ、こんにちは♪」

「こんにちはですぅ~、南先輩♪」

 

 

 何だろう……お互いにあまあまボイスで挨拶したのにも関わらず、楓の挨拶はやけに黒さが混じっているような気がする。こうして見るとことりの純粋さがよく分かるな。

 

 

「入学おめでとうございます、楓さん」

「ありがとうございますぅ~、園田先輩♪」

 

 

 ウゼェなコイツ……先輩に媚を売っているというか、明らかに舐めてるだろ。どれだけ猫被ってんだよ……

 しかもずっとニコニコしっぱなしだし、高校生になって一段とウザくなったな。

 

 

「入学式はどうしたのですか?もう始まっていますよ?」

「あんなの出る必要ないですよ。お偉いさんが定型文をペラペラ喋るだけですよねぇ?あっ、そういえば南先輩のお母様でしたっけ?すいませぇ~ん♪」

 

 

 ウゼェえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!

 コイツ、さっきからことりと海未を煽りすぎじゃないか!?今までもそうだったけど、今回は特にコイツの煽りスキルが光ってる。毎日これに付き合わされると思うと、もうこれからの学院生活が心配になってきた。

 

 

「あははは……やっぱり零くんと似てるね」

「そうですよね!!なのにお兄ちゃんは認めないんですよぉ~。妹と一つになれるだなんて普通嬉しくありません?」

「嬉しくない!!それに『妹と一つ』って、変な意味にも聞こえるからやめろ!!」

「えっ!?まさかお兄ちゃん、そこまで欲求不満だなんて……でも私は妹だし血が繋がってるし……でもでもお兄ちゃんに命令されたら……」

「もうツッコミ疲れて早速頭が痛くなってきたぞ……」

 

 

 ついさっきまで穂乃果といい感じだったのに、めちゃくちゃ幸せな気分だったのに、コイツが来ただけですべてがぶち壊されてしまった。返してくれよ、俺の至福のひと時を!!

 

 

「さっき荷物を家に運んだから、今日から待望の2人暮らしだね♪」

「あぁ、今日から最悪の2人暮らしだ……」

「「2人暮らし……?」」

「うっ……そういや話してなかったっけ」

 

 

 またしてもことりと海未から邪悪な気配が漂ってきた。これは早急に説明しないと、また生徒会室の時と同じ目に遭ってしまう。

 でも実の妹にも嫉妬するなんて思ってもみなかったぞ。それだけ俺のことを好きでいてくれているのか、それとも愛情がまた変な方向へと歪んでしまっているのか。

 

 

「実家からは遠すぎて学院に通えないから、仕方なく俺の家へ居候させるんだ」

「仕方なくってなによ~~!!」

「事実だ」

「ホントにお兄ちゃんは照れ屋なんだからぁ~♪素直に嬉しいって言えばいいのに♪」

 

 

 もうこの短時間だけでこれだけ疲れているんだ、毎日家でも学校でもこんなやり取りを続けていたら今度は本気で死んじゃうよ?

 さらに恐ろしいのは、俺が死にかけてもコイツは一切躊躇しないということだ。もし仮に俺がくたばっても、楓なら無理やりにでも俺を起こして絡みついてきそうだ。

 

 

「でも、ことりは賑やかになっていいと思うなぁ」

「ですよね?流石、南先輩は分かってらっしゃる!!頭がお堅い2人とは違いますねぇ~」

「お前、百歩譲って俺はいいけど先輩の海未にまでそんなことを……」

「目上の人だろうと、自分の本心を偽ってペコペコするのは勘弁だからね!!ありのままの私で生きる!!これが私のモットーです!!」

「本当に兄妹そっくりですね……性別を除けば鏡を見ているみたいです」

 

 

 えっ!?俺ってこんなにウザイのか!?確かに人を煽ることはあるが、楓よりはウザくないと信じたい。大丈夫だよね?

 それにしてもコイツが来るのが少し早かったら、俺と穂乃果の営みを見られてしまっていた。もしそうなってしまったら……どう弁解する?コイツが側にいるっていうことは、これからもその危険性があるということだ。

 

 

「私がお兄ちゃんと一緒にいる限り、ラブコメもイチャイチャもそう簡単にはさせませんよ!!覚悟してください!!」

 

 

 楓が人差し指をビシッとことりと海未へ向けて指す。

 そこで俺たちは顔を見合わせた。ラブコメもイチャイチャもなにも、俺たちはもう付き合っているのだ。しかももう既にキスまで済ませてしまっている。恐らく楓は俺たちがそんな関係になっていないと思い調子に乗っているのだろうが、現実はそう甘くはなかった。

 俺たち3人と楓の空気が全く違うことは俺たちしか気付いていない。楓はずっと余裕そうな表情だ。その、なんだ……なんか済まない。

 

 この流れから分かると思うが、楓には俺たちの関係は話していない。もし話したら全人類の想像を絶する災害が巻き起こるだろう。ちなみに雪穂と亜里沙には話してある。

 

 

「楓。とりあえず入学式に行って来い。そこで提出書類とかも配られるみたいだからな」

「えぇ~……生徒会室でもらえません?」

「ん~……確かなかったと思うけど」

「メンドくさ~い!!」

「いいから行って来い。今なら穂乃果のスピーチが聞けるぞ」

「あっ、それは面白そうかも。あとでネタにしちゃお♪」

「最悪だなお前……」

 

 

 ちょっとでも先輩のミスを見つければ、たちまちそれをほじくり返してネタにする。まさにゲス野郎だな。ドス黒さが極まってるわ。

 楓も観念したのか、クルッと俺たちに背を向けて多分講堂へと走り出した。本当は俺も生徒会の2人も、廊下を走るなって注意しなきゃいけないんだけど、今はアイツを追い払うことに専念してそれどころではなかった。

 

 

「はぁ~……本当に嵐のような妹さんですね。これからの学院生活が心配になってきましたよ」

「奇遇だな、俺もだ。アイツ一人だけでこの学院潰せるんじゃないか?」

「でもことりは楓ちゃんみたいな元気いっぱいの子、好きだよ♪」

「お前の斜め上のポジティブ思考を見習いたいよ……」

 

 

 ことりって、よく思考が他の人よりも斜め上に行くことが多いんだよな。常識人に見えて、実は違いましたぁ~という絵里みたいな典型的なパターンだ。

 そう考えれば、俺たち3年生組の中でマトモな奴って一人もいないよな?

 

 

※見解リストvol.2※

 

3年生組

零←変態

穂乃果←3バカの一角

ことり←天使第一号、おっとり、天然

海未←一応常識人(一応が重要)

 

2年生組

花陽←天使第二号、常識人

凛←3バカの一角

真姫←常識人、ツンデレ(重要)

 

卒業生組

絵里←常識人、実はちょっと抜けている

希←もう変態の仲間でいいだろ

にこ←3バカの一角

 

新一年生組

雪穂←ガチ常識人

亜里沙←天使第三号

楓←論外

 

 

 

 

「そういや、部活の勧誘はどうするんだ?一応ビラは作ってあるけど」

「う~ん……あと一人なんだよねぇ」

 

 

 一応勧誘をする予定でここまで来たのだが、未だに確定はしていなかった。

 『μ's』の名前には『9人の女神』という意味が込められているらしい。絵里たちが卒業したことで現時点でのメンバーは6人。そこに雪穂と亜里沙が入ると8人だ。つまりあと一人足りない。

 ここで勧誘してたくさんに希望者が出てしまうと、アイドル事務所みたいに選定をしなければならなくなり、それは折角希望してくれた人の多数を蹴ってしまうことになる。そんな失礼なことをするわけにはいかない。

 

 だが勧誘をしない場合、誰一人として希望者がいなければ8人で活動しなければならない。それはそれでいいのかもしれないが、しっかりと『μ's』を引き継いだんだ、みんな9人で活動したいという思いが強い。

 

 

「さぁて、どうすっかなぁ……」

 

 

 ふと窓の外を見下ろすと、そこには講堂へ向かっている楓の後ろ姿が見えた。

 

 一瞬ある考えが頭に浮かんだのだが、有り得ないと思ってすぐに振り払った。身勝手な想いで穂乃果たちを期待させるわけにはいかないしな。

 

 

「……ねぇな…………ねぇ、よな?」

 

 

 俺は楓の姿が見えなくなるまで、ずっとアイツの背中を見つめていた。

 

 




 第一話で『第三話までには全キャラ出します』って言っていたのにも関わらず出ていません。相変わらずの予告詐欺ですね(笑)


 この小説から読んで下さっている方で、妹様の活躍が見たい方は前作の『妹様襲来!!』や『μ's外大戦争(零看病攻防戦)』で登場しているので是非ご覧下さい。


 『日常』の活動報告にて、「過去にラブライブのR‐18指定の小説を投稿したことがある。しかし今は削除済み」みたいな記述をしたところ、それを見てみたいという方が多数いらっしゃったので公開しました。普通の検索では表示されないので、「R‐18」フィルターを外して検索するか、私の名前から飛んでもらうと表示されると思います。


 高評価をくださった方、ありがとうございます!感想も評価も、頂くとモチベーションも高まるのでとても嬉しいです!!その人向けの特典小説をお送りしたいぐらいですね!


 次回の予定は、やっとみんなの顔合わせとなります。予定通りに行けばですが(笑)

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